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[突いて出た軽口には]
そうかい、それならばもっと敬意ももってくれるとありがたいけどな。
[軽口を返して、
ゼルギウスを部屋につれていく途中]
しっかりと体拭いて着替えてから寝るんだぞ、
そこまでは俺もさすがに面倒みきれんからな。
[部屋の前につくと]
じゃあ、おやすみ。
ウェンデルがきたらしっかり礼をいうんだぞ、
それからゲルダに明日謝っておくんだぞ。
[最後までおせっかいな言葉を残してゼルギウスが部屋に入るのを見送った]
[ゼルギウスを送り終えて廊下を歩きながら顔をしかめる]
嫌な夜……?
いや…どうなんだろうな…わからない。
[かじかむ手をさすりながら自室へと*戻っていった*]
それはヤダ。
[即答する辺り、調子が少し戻って来たようだ]
[移動途中の注意には頷きを返して]
分かってるって。
ホント、お節介だよな。
お節介と言うか、口煩い。
ん、お休み。
[そう言って笑いを漏らしてから部屋の中へと入って行った]
…!
[驚いた表情を、常の顔に隠す事は出来なかった。]
エーリ
[後を追い、手を取ったがすぐに離れ、エーリッヒは二階へとあがっていく。
追おうとしたが、足は進まなかった。
呼び止めたところで、何を言えば良いのか。
かける言葉が見つからなかったからだ。]
エーリ…。
[人を殺したと。
あのエーリッヒが。
俄かには信じられなかったが。
それが嘘でない事は、友人の態度が物語っていた。]
それでも俺は……
この衝動を、その後の快楽を…とめることはできない。
[かすかに呟く、
その夜仲間がギュンターを殺す意識を感じれば目を覚まし一人部屋の中で笑みをうかべ]
ああ、なんだか少しすっきりしたよ。
ありがとう、ベアトリーチェ。
俺達は秘密の仲間、だよな?
[質問は答えを特に答えをもとめるものではなく、
ほのかな快楽にしばしひたり再びの眠りに落ちていった。]
─二階自室─
[言われた通りに濡れた髪をタオルで拭き]
[身体も拭いてから着替えて一息つく]
[マテウスのお陰で落ち着いては来たが、不安であることには変わりなくて]
[少しぼんやりとしていると、扉をノックする音が響いた]
はいはい。
……あ。
[扉を開けた先に居たのは料理を持ったウェンデル]
[お互い顔を合わせると少し気拙い雰囲気が漂った]
ええと…。
飯、持って来てくれてありがと。
それと、さっきはごめん。
[料理を持って来てくれた礼と、取り乱して反する意識を向けたことに謝罪する]
[それから逡巡の後、低く声を顰めて]
…痣の話は、本当に?
[背に投げかけられた言葉の確認を取ろうと訊ねた]
[簡単な説明でもされれば、今のゼルギウスならば受け入れる姿勢も見せるだろうか]
[相手が懐かしさを思い起こさせる青年であることも]
[おそらくは*起因している*]
…。
[緩く首を振る。
その事については、また後で折を見て本人に聞くしかなかった。
むしろ聞かない方が良いのかも知れないが。
気がつくとゼルギウスとマテウスの気配は消えており。
おそらくマテウスがゼルギウスを連れて行ったのかと思いながら。
一人廊下の壁に背を預け、黙ったまま聞いていた情報を整理した。
このなかに人狼がいる。いないかもしれないが、いる可能性が高い。
死体にあった獣の傷は、間違いなくこの目で見た。あれが獣の仕業の可能性もなくはない、が。
それに、ここに居る何人もが、人狼がいると断定するような言い方をする。
エーリッヒと同じように、何らかの形で人狼と関わった者がいるということで。つまりは人狼は存在するという事で。]
人狼…。
[いるのなら。
選ばなければならない。]
いや、だな。選ぶなんて。
[ぽつりと呟くと―――ずきと頭が痛んだ。
ぎゅ、と目を閉じそれに耐える。
痛みを感じたまま、暫くの間その場に留まった。]
[頭痛が治まった後、ゆっくりとした足取りで広間に戻り。
そこに居たイヴァンに近づいてゆく。]
…まだ顔色悪いみたいだが。
昨日みたいに、ここで寝るなよ?
[額にぐいと、熱を計る時のように手を当ててから。
まだ広間に残っていた者がいたら、休むからと一言声をかけて二階へと*戻った。*]
[元々、口数が多い方ではないものの。
それでも、さすがに食事の間の口数は少なく。
いつもなら、片付けるまでそこにいるところだが、早々に二階へと引っ込んでいた]
……は。
まったく、やってられねぇ……。
[口をついたのは、悪態。
その様子に、猫が不安げに、鳴いた]
……大丈夫だ、ヴィンデ。
わかってるから。
[不安げな猫を抱き上げて、撫でてやる。
温かさに感じるのは、安らぎ]
もっとも……わかってるから、嫌、なんだがな……。
……動き出してしまえば、止められない。
[理由までは知らぬものの。
その事実は、以前の事でわかっている。
要素が揃ってしまえば、止められないのだと。
狂ったように哂っていた者の記憶は、六年の歳月を経ても追いすがる悪夢の一つ]
……逃げた所で……無駄、という事なのか……。
[伏せられる、暗き翠。
猫がまた、鳴くのを撫でて。
筆が進むとは思えぬものの、再び机へと向かった]
─翌朝/二階・個室─
[やはりというか、そんな状況で言の葉が紡げるはずもなく、夜半過ぎには眠りに就く事となったのだが。
黎明。
異変は、不意に訪れた]
……ん……。
…………っ!?
[感じたのは、違和感。
それに突き動かされるが如く、文字通りに跳ね起きる]
……いま、のは……。
[久しく感じる事のなかったもの。
意味するものは、知れるが故に、認めたくはなく。
ふるり、と頭を振った時。
外からの騒ぎが、耳に届いた]
……なん……だ?
[聞こえる声。
「団長が」
「村長に報せを」
「やはり、この中に」
飛び交うそれらは、今感じたものとも相まって、嫌な確信を強めてくる。
逡巡は、短く。
黒のコートを羽織ると、足早に外へ、声の聞こえる方へと向かった]
─翌朝/集会場・裏手─
[空気が冷たい。
外に出て最初に思ったのはそれ。
白い息を吐き出しつつ、向かった裏手には自衛団員たちの姿]
……何が……。
[起きた、と問うより先に、向けられるのは。
畏怖、恐怖、疑念。
それらが混沌とした鋭い視線]
何が、起きたんだ……?
[それに臆する事無く、再度、問いを投げる。
返ってきたのは、罵声すれすれの物言いによる、自衛団長が死んだ、との答え。
垣間見えた屍。
凍りついたその様子に、言葉が失せた]
[呆然と立ち尽くしていると、腕を掴まれ。
集会場内へ戻れ、と告げられた]
……俺たちは。
これから、どうなる。
[低い問いかけ。腕を掴んだ団員の表情が、酷く歪んだ。
その団員が何か言いかけるのを、上役らしき団員が制し、後から知らせる、と告げてくる]
わかった。
……離せよ。俺は、逃げも隠れもせん。
[そちらに頷き、腕を掴む団員に、睨むような目を向ける。
冷たさを帯びた翠に気圧されたのか、手の力は緩み。
それを振り払って、集会場の中へと戻った]
─翌朝/一階・広間─
[広間に戻り、暖炉の火を熾す。
空気が温まるのを感じつつ、テーブルに肘をついて、額を押さえた]
……人の、死……白御霊……視たくねぇって、言ってんだろうが……!
[掠れた呟きに、猫が案ずるように、一つ、鳴く。
それに何も答える事無く、そのまま動きを止めた]
[やがて、訪れた自衛団の通達。
自衛団長の死が人為的な者である事。
そして、それが人の手で成し得るとは思いがたい事。
人狼がこの中にいるという結論への到達。
そして]
……俺たちの手で、どうにかしろ、と。
横暴……だな。
[被害を拡大しないため、集会場は完全封鎖。
村との接触は以降一切禁止する旨と。
ここにいる者の手で、人狼を見つけて殺せ、という宣告に。
口をついたのは、やはり、*悪態だった*]
― 昨日:集会所一階・広間 ―
[席について、神に捧げる食前の祈りは空虚だった。
交わされる会話を聞き、広間を出る者らを見送る。そのうち幾人かは、ゼルギウスに会いに行くのだろうと思いながら。]
……ごちそうさま。
ありがとう。
[食べ終えたのは、降りて来ないものに伝えに行ったゲルダが戻った頃。感謝を述べて、片付け、ゼルギウスの分を用意する。
味に対しての感想がなかったのは、わからなかったから。ただ、栄養を与えられた身体は温まり、気持ちは僅か、和らいだ]
ゲルダは、すごいね。
…兄さんや、姉さんたちも。
僕には他人を気遣う余裕もなくて、ただ、押しつけるばかりだ。昔と、何も変わらない。
[幼馴染みの子供達は、自分より年上ばかり。後をついていっては、困らせたことを思い出す]
[弱音を溢したことへの謝罪と、もう一度感謝を告げた。
イヴァンにも、そっと歩み寄り、頭を下げる。
先の言に対して、思うものが消えてはいなかったが]
………貴方がたに、よき眠りの訪れますよう。
[囁くように言って、料理を手に階上へと向かう]
― 昨日:集会所二階・ゼルギウスの部屋 ―
[ゆっくりとしたノック。
返答を待つのは、短いようで長かった。
顔を出したゼルギウスの謝罪に首を振り、食事を差し出す。薄闇に紛れた表情は、わからない]
……ええ。
ここに来てから急に、現れたものです。
『選ばれし者には人狼の出現を告げる聖なる証。
神の下された命に従い彼の者を滅す役割を担う』
学校で、学んだことです。聖痕と、いうのだとか。
…伝承に過ぎないと思っていましたし、これがなければ、私も疑っていたでしょうね。
[人狼。その言葉を耳にしたときの自身の変容は知らず、ウェンデルは語る。
会話の途中、左の手袋を外して、手首辺りを指し示す。
長い袖と手袋、包帯。幾重にも封印された朱の花の、蔦が伸びていた]
これ。昨日より、広がっているみたいで。
…信じて貰いたかったのはきっと、自分ばかりが理解しているのが恐ろしかったから、なのでしょう。その癖、信じたくなくて、これを隠そうとした。
………すみません、勝手で。
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