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本屋 クレイグ を 2人が心の中で指差しました。
給仕人 ユーリ を 1人が心の中で指差しました。
装飾工 メリル を 1人が心の中で指差しました。
化粧師 ノクロ を 2人が心の中で指差しました。
織師 ミレイユ を 1人が心の中で指差しました。
薬師 コレット を 2人が心の中で指差しました。
本屋 クレイグ は人々の意思により処断されたのです……。
次の日の朝、看板娘 サリィ が無残な姿で発見されました。
今、ここにいるのは、給仕人 ユーリ、装飾工 メリル、化粧師 ノクロ、織師 ミレイユ、道具屋 エト、薬師 コレット、絵描き ミケル の全部で 7 人かしら。
─ 都市の通り ─
[予定より早く用事が済んだため、焼物が冷めるまでの時間を散歩することで潰すことにする]
あー、出たついでだし、パン調達して帰るかー。
[ストックしているパンが少なくなって来たことを思い出し、製パンを生業としている者のところへ行くことに。
歩みは工房から離れるように進んだ]
此処にも不摂生がいたか。
怪我してる時くらいは寝食しっかりとるべし。
[ノクロの右腕に巻かれた包帯をちらと見遣り、軽い小言。]
思った事を言ったまでだよ。
……へぇ、ノクロはそんな風に思ってたのか。
そうだと、いいなぁ。
僕がみたもの、もっとちゃんと伝えればテレーズにも見えてたのかな。
[僅か目を伏せ、小さな声が漏れた。
クレイグの件には視線が一度つ、とそれる。
捲っていた袖を元に戻しながら]
じゃあその後くらい。
……なんか同じしるしがあるせいかさぁ。
遠くにいてもクレイグの声が聞こえるんだよね。
僕の声もあっちに筒抜けみたいでさー。
[隠すべきこととは思わないのかあっけらかんと笑った。]
[サリィが、台車を持つ。台車なら持たせても、大丈夫だろうと思ったから、ミケルは声をかけなかった。
ミレイユの様子もおかしいし、二人の様子を見ていて。
だから、その一瞬、何があったのかさっぱりとわからなかった。
いきなり、消えたのだ。
消えた。
人が。
サリィが。
今ここにいたはずの彼女が、どこにもいない。
手に持っていた荷物が、地面に落ちた。
困惑のまま、ミレイユを見る。
それから、サリィのいたはずの場所を見て。]
……サリィちゃん?
[呆然とした声で、ただ名前を呼んだ**]
― 都市の通り ―
[こちらの言葉に、クレイグはなんと答えただろうか。
いずれにしろ、軽い別れの言葉を交わし、その場を離れようとした]
[異変に気付いたのは、その時のこと]
……クレイグ?
[ふっと力が抜けたように傾ぐ、クレイグの体]
ほら、食事を抜いてばっかりいるから……
[苦笑を浮かべたのは、まさかそんなに早くその刻が来るなんて、思っても見なかったから。
支えようと伸ばした腕を擦り抜け、クレイグは倒れる]
くるくるり。
輪がまわり。
時がすすみ。
くるくるり。
さあ、集めましょう。
さあ、行きましょう。
[何かを送るように、
何かを受け取るように、
両の腕を差し伸べて]
……さあ、咲かせましょう。
クレイグ! 一体、どうし……
クレイグっ!!
[触れた手に雪の冷たさを感じるのも一瞬。
クレイグの体は、とけるように消えていく。
――父の時に、見たような光景]
あ、…………
[膝を着いたまま、立ち上がれなくなって。
もう何もない地面の辺りを、いつまでも見詰めていた]
やぁん俺は寝食しっかりしてますぅー。
…いやクレイグがな、苔の広場で転寝かましてたんだよ。
嵌り込み過ぎるとああなるんかなーと思ってな?
[不気味なだけのシナを作ってさらりと元通り。
怪我の個数に触れられたら全力で目を逸らしただろうが]
言葉の力ってのは結構偉大だと思うぜ、俺は。
いいんじゃねえの、今後ってことでさ。
まだまだ伝える時間はあると思うぜ。
[テレーズが、今、どうなっているか。知らぬ故に。
知れた後にはきっと、残酷な棘に成るだろう、言葉]
[随分と軽く告げられる言葉にはたりと瞬く]
へぇ、それも『力』のひとつなんかね。
俺は何にも聞こえないから、同じ印はいねーのかなー。
本当かー?
ま、いいや、そういう事にしとくから
ああならないように、な?
[シナ作る様子に困ったように笑い誤魔化されておく。
それる視線に気づけば自覚あるものと思いそれ以上は言わず]
伝える時間、あればいいんだけどな。
いつ終わりが来てもおかしくないんだよなぁ。
[小さく溜息混じりにノクロに返してしまう。]
不思議な『力』だよな。
色んな話が出来ておもしろくはあるけど
[筒抜けなのはなー、とぼやきかけた所で、動きが止まった。]
[背を撫でていたサリィの手が離れて、ゆっくりと体勢を整え。
後をついていこうと、台車を持つ彼女の、背中に目を向けて]
[その瞬間、未だ少し残っていた強張りが、目の奥の恐れが、
すべての感情が、その表情から抜け落ちた]
……クレイグの気配が。
[不意に漏れるのは途惑うような響き。
ノクロへと視線向けて]
何かあったかもしれない。
クレイグの声が、聞こえない。
気配も、感じられなくなった。
[異変を感じ、伝える声が僅か震える。
クレイグが何処にいるかは聞かぬままだったから
結局探すあてもなく、ひとまずは当初の目的地を目指そうとして**]
[それだけ言って、がくりと頭を下げる]
黙っていてごめんなさい……メリルさん。
『死神』が降る刻には、命が刈られていくんです。
それでクレイグは……!
[絞り出すような声で、告げるのは謝罪の言葉。
そのまま頭を上げられず、肩は微かに震えていた]
はーい。
[いいこのおへんじ。のような声で返して笑う。
自覚あっても直さないというか直せないのがこの男だが]
…ま、『死神』に『糧』だもんなあ。
乗り越えた先を信じるとしようぜ。
[よいしょと荷を持ち直してしまったから、その背を叩けない。
出来るのは少しだけ首を傾いで笑うだけだ]
俺は何にもないからなー、何かあれば……、エト?
[急に止まる動き。
余分に一歩進んだ足を止めて振り返る]
…聞こえない?
筒抜けだったくらいの声が?
[震える声が異常を思わせる。
『印』も『力』も異常ではあるけれど、それ以上に]
……『死神の降る刻』。
俺たちの『命』を刈って、天上青の糧とするものが、『降りて』きた。
[一言一句、違わずに。
苔の広場で伝えられた言葉をなぞる]
…冗談じゃねぇ!
おいエト急ぐぞ!テレーズに伝承訊かんと何もわからん!
[動きの鈍ったエトに向けて声を荒げる。
焦り速まる足の先で、操手を失った台車と遭遇するかは、判らない**]
─ 都市の通り ─
── しに……がみ……?
[焦燥は消えぬまま、ユーリが紡ぐ言葉>>16を耳にする]
刈られる とか、 力に飲まれた とか、 それって ───
[全てを言い切る前にユーリから真実>>17を告げられ、『死神が降る刻』に起こることをようやく知った。
抱いていた疑問の答えはしばし言葉を失わせる]
────────……………
そ、 それじゃあ、クー は
[本当に死んでしまったのだと、理解した途端、足から力が抜けてその場に座り込んでしまった。
視線はしばらくクレイグが倒れた箇所を彷徨っていたけれど、ユーリが顔を上げずに肩を震わせているのに気付き、右手が動く]
ユーリ、謝らない で。
驚いた し、 すごい、 悲しい けど。
避けられることじゃ ないんでしょ?
この、『死神の降る刻』って。
[目まぐるしく状況が変化する中で、遠い昔に両親から聞いた話を思い出した。
そう、忘れていたけれど、聞いたことがあったのだ。
『死神の降る刻』についてを]
花が咲くまで、 続く。
それは避けられない運命みたいな もの。
悲しい けど、 乗り越えなきゃならないもの なんだ。
[浮いた右手はユーリの左肩へ。
震え続けるようなら、宥めるように何度か肩を擦るつもりだ]
[メリルの手が触れる辺りにある蓮華草。
そしてこちらの視線の先、先に見た時より色鮮やかに咲く蒲公英]
クレイグにも、しるしは表れていました。
恐らくは、待宵草が。
[それを口にした女性の姿が脳裏を過ぎるも、口には出さず。
ただ、少し滲んだような眼差しをメリルへと向けた]
─ 都市の通り ─
──…そっか、やっぱり、そうなんだ。
[一年に一度廻り来ると聞いて、視線が僅かに落ちた。
避けられないのは仕方が無いとは思えるが、続いた言葉に視線は再びユーリ>>22へと向けられ、瞠目する]
──── ッ
そんな、 これ が…?
[それだけでも驚きだというのに、更に耳に入る内容に、一瞬呼吸が止まったような気がした]
…………クー、も。
そ……か。
引き寄せやすい って、本当 なんだね。
[刈られたのかまでは分からないけれど、クレイグが刻に巻き込まれたのは事実で。
それが真実となり、伝承の信憑性を増すことになる]
……うん、わか った。
教えてくれてありがとう、ユーリ。
[未だ思考の整理は済んでいないけれど、状況は理解出来たため、ユーリに礼を言って。
滲む眼差しを向けてくる相手に、少し迷いながらも彼の左肩を擦っていた右手を頭へと伸ばした]
─── しょうがないって、直ぐには割り切れない けど。
あんまり悲しんでても、あの子は多分、喜んだりはしないだろうから。
アタシ達は、アタシ達のやれること、しよ?
[笑みを浮かべてはみたけれど、物悲しさはどうしても消しきれなかった]
― 都市の通り ―
[驚愕した様子のメリル>>24を哀しげな眼差しで見詰め、小さく頷く。
――こんな表情を見たくはなかったから、出来れば秘めておこうと思っていた。
けれどクレイグが消えた今、全てに目を背けたままではいられないと思った]
……ごめんなさい。
あの時、言えなくて。
[初めから全て打ち明けているべきだったのかは、今もわからない。
ただ、礼を言う彼女に頷いた。
頭に手が伸ばされるのに気付けば、少し照れた顔をしつつも、素直に受け入れた]
はい。
僕も……そうしようと思います。
メリルさんに頼まれた仕事のこともありますから。
[物悲しさの残るメリルに向かって、どうにか微笑みを見せようとする]
では、僕、そろそろ行かないと。
[断りを入れ立ち上がろうとしたその時、鞄から覗く真新しい本に気付いた。
ふっと目元を緩ませて、表紙の文字を指でなぞる]
やれる事をやる、ですか、まったく。
[奇しくも姉と似た言葉を遺した青年を思い、苦笑に似た溜息をひとつ]
貴方の力……まだまだ借りますからね?
覚悟してくださいよ。
[本に向けてか、それを記した者に向けてか。
そう呟いて、少しだけ瞑目した**]
うん、アタシも ─── 行かなきゃ。
[立ち上がろうとするのを見て、こちらも土を払いながら立ち上がって]
それじゃあ、また。
[刻が続く以上、次にまた会えるかは分からない。
けれど、敢えてそう言葉を紡ぎ、籠を持ってユーリと別れた。
歩み進む先は、当初の目的地とは変わっている**]
─ 自宅 ─
ら、
ら、
ら……
[動作はいつもどおりの不確かではあるが、
どこかやわらかく、軽い]
一生は一年。
周期は一年。
……だからきっと、わたくしは見られないのだなと諦めていた。
でも、
生きていて良かった。
生きていて、良かったわ。
─ テレーズ宅前 ─
[落とした荷物を拾わなくては。
そう思っても、今見たものの衝撃は消えない。
視線を巡らせると、ミレイユが崩れ落ちた姿をとらえる。
考えるより先に、足が動いた。]
ミレイユちゃん…!
[近付いて、ミケルもまた、彼女のそばに膝をつく。
だけれど、そこで、どうしようと動きは止まって。
辺りを見回して、誰かに助けを求めようとするけれど、今はまだいなくて。
おずおずと、手を、彼女の頭に伸ばした。
消えていない。居る。
ちょっとためらいがちに、何度か、頭にそっと触れる。
ぎこちのない動きで。]
ミレイユちゃん、
……あの、ね。
だいじょうぶ。
[目を合わせようとして、言葉を考えて。
大丈夫? という問いかけではなく、安心させたいから、
ぎこちなく、笑って。
サリィは、消えてしまった。
いきなりだった。どうしたんだろうって、そんなことミケルにはわからないけれど。
ミレイユの様子が、気がかりで、安心してほしくて、精一杯笑おうとした。
それから、視線を、サリィと行こうとしていた方向に投げる。
そこに人の姿をとらえると、ほっとして、ようやく肩の力が抜けた。]
[台車はあるのにサリィはいなかった。
ミケルは、二人に、言葉を伝える。]
あの、いきなり。
サリィちゃんが、消えちゃった。
テレーズちゃん、家にいないって。
いないのに、いるって、思ったって、言ってた。
[どうしたらいいのだろう。
二人を見上げる視線は、途方にくれたように、頼りなかった**]
─ 自宅 ─
[カタン、
と組んだ薪が崩れる音で目が覚めた。
竈の火はぽっぽっと赤く燃え、焼くべき物を待っている]
……あの子たち、遅いわねえ。
[口元を隠して欠伸をし、のんびりとつぶやいた]
よい、しょ。
[膝掛けを剥いで、立ち上がった]
─ →クレイグの自宅 ─
[進路を変更してやって来たのは家主の消えた家。
『外出中』の札が下がっている扉を、躊躇いなく開いた]
─────…………
[弟の不在時に中に入ったことはなかったため、家主の居ない部屋は酷く冷たい空気が漂い、長く誰も居なかったような錯覚さえ覚える。
けれど作業台には本が積まれ、今にも作業を始めようとしていたのではと思える様相だった]
………これ、『周期』の。
[積まれた本のページを捲ると、過去に起きた『周期』についてが書かれていて。
数ページ捲った後、その表紙を閉じる]
何か しようとしてたのかな。
[花のことを調べようとしていたのだろうか。
それとも『死神』について調べようとしていたのだろうか。
今となってはその意図を知ることは出来ない]
[しばらくの間、作業場の中を眺めていたが、作業台の上にあるものを見つけると、緩やかな動きでそれに手を伸ばす]
────………
[指先で一度突き、微かに揺れる様を見て]
…………ッ
[急に表情を歪め、突いた物を掴み取ると弟の家を飛び出した]
─ →洞窟奥地・苔の広場 ─
[周囲の目も憚らず全速力で駆けて、居住区よりも奥まった所にある小さな空間へと向かう。
苔の群生地の辺りまで駆けて来て、息を上げながら速度を落とし、転がる岩の傍へと歩み寄った]
………おぉい、おまえら。
[のそりと動くものに声をかける。
少しばかり引き攣った、小さな声。
足から力を抜くようにしゃがみ込み、更に距離を近付けると、声をかけた相手は触角をゆらりと揺らした]
…クーが、さ。
もう、来れなくなっちゃったんだよ。
[ゆらり、ゆらり。
相槌を打つように触角が揺れる]
だから、さ。
代わりに、コイツをおまえらの仲間にしてやってくんないかな。
[言いながら、手に握りこんでいた物を岩の上へと置く。
ここの住人を模した、虹色の殻を持つ焼物。
伸びた触角は揺れないけれど、姿かたちはほぼ同じ]
………だいじにしろって、いったじゃないか。
ばぁか。
[瞳に移る虹色が急にぼやけた。
滲んだ瞳を隠すように、膝に置いた手の甲に額を押し付ける。
震える声は次第にしゃくり上げるものへと変わり。
とおくに響く澄んだ音だけが辺りを包んでいた]
─ 洞窟奥地・苔の広場 ─
[上下していた肩が徐々に動きを緩め、しゃくり上げる声も途切れる]
………はぁ。
よし、すっきりした。
[手の甲に押し付けていた額を離すと、手の甲は目元を一往復して。
やや赤い色を目元に残した状態で顔を上げた]
今やれること、やんなきゃな。
[今がどんな『周期』なのかは理解した。
抗うことも難しいと解った。
だったら、『周期』だからと言って慌てふためく必要はない]
いつも通り、全力で過ごすだけだ。
[後悔なんて、後にならなきゃ分からないのだから]
もうすっかり冷えただろうな。
窯の器、回収しないと。
[今やれることと言えば、これまで続けてきた仕事。
サリィに頼まれていたスープ皿を届けるのが当面の目的となった。
しゃがんでいた状態から立ち上がり、虹色の殻を一度突いてからその場を後にする。
ちょっとばかし足が痺れて足元が覚束無くなったけれど、通りに戻る頃には何とか歩けるようになっていた]
― → テレーズ宅前 ―
[急いた気持ちは足を前に、更に前に。
抱える荷が邪魔に思えて、けれど手放せない。
――『日常』を手放してしまうみたいで]
[目的の建物が見える。
そうして、その前にふたつの人影と、台車]
[膝をつき、随分と低い位置から見上げる視線。
途方に暮れた瞳に置いてけぼりの子供を思わせたのは
その口から零れた言葉の所為もあったのだろうか]
…サリィが、消えた?
テレーズは家に、……。
[いない?と、口には出来なかった。
低く落ちていた視線はゆるりと上がりながら巡り。
…途中で足を止めていなければ、共に来ている筈の彼を]
まあ……。
まさか、何かあったんじゃ。
[ユーリの返答に、困惑の表情を皺に刻んで]
あの子たちが怪我をしたり、
勿体ない死に方をしてしまうようなことがあったら可愛そうだわ。
……ユーリちゃん、探してきてくれる?
[まだ赤さの残る左手を包むように指を組んで]
……あら、待って。
ユーリちゃん……。
貴方、なにか、
─ →自宅兼工房 ─
[パンの調達は一旦置くことにして、真っ直ぐ工房へと戻る。
窯から器を取り出すと、道具屋に卸す分と、個人へ届ける分に分けて籠に収めた]
……お、良い感じ。
壁に掛けといても良いかもね。
[平皿を両手に取ると、満足げな笑みを浮かべる。
緑地に広がる蒲公英の絵。
今回ばかりは実用性よりデザイン性を優先した。
何かを残したかったと言う訳ではない。
単に描いてみたかったのだ、身に宿った花を。
この皿にぴったりだと思ったから]
さて、行きますか。
[平皿は作業台の上に置き、配布する器を入れた籠を持ち工房を出る。
先に2・3軒配布先を回ってから、スープ皿を白花亭へと持って行った]
……。
[それから近づいてくる足音に、ゆっくりと顔を向けて。
ミケルが彼らに説明をする最中]
テレーズの時と。
ゆめと、一緒だった。
[何処まで届くかも怪しいちいさな声で、呟く]
─ →白花亭 ─
お邪魔さまー。
サリィに頼まれたスープ皿持って来たんだけど、サリィ居る?
[扉を開けて中に声をかける。
応対に出たのは彼女の父。
サリィは現在不在らしい]
そっか、じゃあこれ置いてくね。
サリィに言えば分かるから。
[籠からスープ皿を取り出しサリィの父に渡して、手を振りその場を辞した。
未だ、サリィの身に起きたことには気付いていない]
ああ、構わないわ。
大したことではないの。
これから起こることに比べたら、
どんなことも些細でしかないわ……。
[なんの話かと聞き返されれば、
目を細め、少し違った笑みになる]
本当?
本当に何のことかわからない?
隠してもダメよ……。
― テレーズ宅前 ―
[遣った視線が、はたと瞬く。
ミレイユへと落として、はたはたと瞬いて]
…ミレイユ?
どした、何か気になる事でもあったんか?
[かすかに耳に届いたのは言葉では無くて音だけだった。
荷を両手に抱え直し、よいせとしゃがみ込む。
視線が合う程では無いが先程よりは近付いた距離で、
こと、と軽く首を傾いで]
それは間違いよ、ユーリちゃん。
人生というのはね、暇つぶしなの。
「周期」を迎えるその時までの時間を、
ヒトは耐えて、無為に潰しているにしかすぎないのよ。
大事なのは、「あの花」。
主は「あの花」。
従はわたくしたち。
「あの花」を咲かせる為だけに、わたくしたち雪花は存在しているの。
[くす、
くす、
萎びた老女でありながら、少女のように透明に笑って]
[首筋にあてられた手。
まるで見透かすようにそこへ、不自由なはずの視線をあてて]
分かるわ。
分かるようになった、というのが正しいかしら。
わたくしはね、
選ばれたのよ、ユーリちゃん。
他の誰でもなく、
若い子供でも、美しい娘でも、力強い男でもなく、
無駄に死に、見送られる方になるはずだった、
このわたくしが。
[しなびた唇が、笑みに歪んだ]
─ →道具屋 ─
[白花亭を後にして向かうのは道具屋。
出来た器を卸すために向かったのだけれど]
………居ないんかーい!
[扉に掛けられた『休憩中』の札を見て思わず声を上げた]
休憩ってことは、テレーズのとこかなぁ。
しゃーない、次の機会にするか。
[日常のままに過ごそうと決めたから、そんな言葉もすんなり出てくる]
流石にテレーズのところに押しかけるのもなぁ…。
よし、じゃあ今度こそパンを。
[そう考えて一旦道具屋を後にすることにした]
― テレーズ宅前 ―
[消えた夢の話をするミレイユに視線が向く。
テレーズとサリィ。
二人が同じように消えたと裏付けるかのようなそれ。]
――…さっきまであんなに元気だったのに。
ほんと、突然なんだな。
[消えたと言われてもやはり実感は伴わない。
空虚さの滲む響きがぽつと落ちた。]
― テレーズ宅前 ―
[拒まぬミレイユの髪を梳くように撫でて。
僅かな躊躇いと、伏せる瞼]
…『死神の降る刻』。
俺たちの『命』を刈って、天上青の糧とするものが、『降りて』きた。
……ミレイユは、天上青は知ってるか?
[不安気な視線を受ける瞳は、哀しげな色を乗せて]
― テレーズ宅前 ―
諦めたくはないけど、さ。
だからって追いかけてくなよ?
[軽く肩を竦めノクロを見遣る。
これ以上先にゆかれるのは嫌だと何処かで思っていたが
だからといって何かするでもなく
ただ運命をありのまま受け入れるしか出来ない性分。]
………短すぎるよ、な。
[溜息に似た吐息を漏らし化粧師の言葉に僅か頷く。]
貴方もわたくしと同じ歳になれば分かるわ、
ユーリちゃん。
人生がどんなに儚いものか。
ヒトがどんなに簡単に死ぬのか。
そして……、
ヒトがなぜ生きるのか。
[背を向けたユーリへ、ひとり言のようにつぶやく]
貴方に分かるかしら。
物心ついてから自分自身の生まれた年がその「周期」だったと、知った時の気持ちが。
天上にして至高の青……、頑張って頑張って長生きでもしないかぎり、それを見ることすらかなわないのだと、知った時の気持ちが。
[憧れと羨望を湛えた声は、
冷静な薬師のものではなく、
どこか「外」を望む若者のようにせつなく]
― テレーズ宅前 ―
[泣きそうなミレイユに、かける言葉が思いつかない。
だから撫でているだけだったけれど、ちょっとでも落ち着いてくれたら良いなと。
話しているとき、聞こえた。夢と一緒。
何がとは聞いたりしなかった。
エトとノクロの言葉は、今起きていることが何か知っているようだったから、ミケルはさっき落としたまま放っておいた荷物を拾って、話を聞いていた。]
― テレーズ宅前 ―
だーれが追うかよ。
[ミレイユの髪を撫でるまま、振り仰いでエトに笑う]
そんなつもりは毛頭無いし、そんな事望みやしねーだろ、誰も。
『刻』が終わる先に命あるなら、その分も生きる方がいい。
ただ、さ。
[ふ、と。眉尻は下がり、少しだけ弱い色を晒す]
みんな、生きていて欲しいだけなんだよ。
―テレーズ宅前―
え?天上青って。
山頂に咲く、花…… 、え。
[伝承それ自体は知っていたが。
先に紡がれた『死神』の言葉を理解したのは、ノクロの問いの答えを出している最中で]
『死神』が。
『周期』が、来てる……
……だから、“花を刈る”んだ……
[最後の方は、独り言にも似て]
コレットさん……。
[コレット>>72の羨望を籠めた呟きに、一度だけ振り返る。
周期が訪れてから伝承を知った自分にとって、天上青は刈られた命と対となるもの。
しかし周期の頃に生まれ、天上青に焦がれ続けて生きてきたなら――?
せつなく響く呟きに、青年はゆっくりと瞬いて]
それでも、僕には僕の時間がありますから。
僕にとっては、『今』が大事です。
[静かに、息を吐き出す]
行きますね。
……焦がれている貴女が、天上青を見られるように、祈っています。
[命を刈られるのは悲しいけれど、それは誰かの意志で為される事ではない。
だから、せめてそれを望み続けた彼女に、天上青を見届けて欲しいと願い。
今度こそ、その場を駆け出した]
― テレーズ宅前 ―
それ聞いて安心した。
誰も望まない。
天寿を全うして欲しいと願ってるよ。
[年下のノクロ、ミレイユ、ミケルへと順に視線を巡らせて]
――…うん。
[弱い色が見えるノクロを撫でようと手が彼の髪へと伸びた。]
― テレーズ宅前 ―
[再び降りてきた視線は、
荷物を拾い聞く体勢に入ったミケルに一旦止まる。
彼に花が咲いている事は知らないけれど、
彼の言葉がゆったりとしているのも知っているから、笑むだけで]
ああ、ミレイユもそれなりに話は知ってたんだな。
[山頂、の単語に、彼女が自分よりも知識がある事を悟る。
けれど]
……ミレイユ?
花を刈る、って…?
[独り言のように紡がれた知らぬ言葉。
知らず、訝しげな色が浮かぶ]
― 都市の通り ―
ミレイユー? ミケルー、居ませんかー?
[きょろきょろと周囲を見回しつつ、控え目ではあるが名前を呼んでみる。
コレットの言葉の通りなら、自分かサリィの家の方へ向かっているはずなのだが]
[花を刈る。
花、といえば、視線は自分の右足に。
お話をして、ノクロが撫でる時には、ミレイユから離れていた。
だから、動きには、やっぱりすぐには反応できなくて。]
…! ミレイユちゃん…!
[一拍後、慌てて呼び止めようとした。
エトとノクロの様子に、ほのぼのし始めていたのも、反応の遅れた理由の一つだろう。
慌てて、追いかけようとして、でも荷物が重いので、置いて。]
コレットおばあちゃんの、おつかいだから!
[お願いとか、そんなこといえなくて、小さくなる後姿を慌てておいかけた。]
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