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[二つの姿が見えなくなり、足音が遠ざかっても、視線は暫く通路の先に向けられていた。
やがてゆらり立ち上がり、無人になった部屋の中に入る。開け放された窓から呆とした目で外を*眺めた。*]
[止まった音に、掌の痛みを堪えながら振り向く。
普段とは違う、目線の合う位置に、ヒサタカの顔が見えた。
真っ直ぐに見つめて来る眼差しから、…ふい、と目を逸らす]
………ついて、来んな。
[はっきりとした、拒絶。
今までの低い声ともまた違う、疎んじるような]
大丈夫だから。
[後の言葉は、付足したに過ぎなかった。
最上段で大人しく待っていた仔犬を抱き上げ、
今度は駆けずに、けれど、*早足に部屋へと向かう*
後ろを振り返る事はなく]
[矢を放った姿勢のまま、地面に転がる。擦り傷にわずかに歯を噛み締めながら、矢の行く末を見る
だが、矢はヨウコの後頭部を掠めただけで、致命傷には程遠い
そして、目の前の光景は見ていられないほど痛ましい]
…………や、やめて……やめろぉ!!
[*絶叫*]
[フユは目を閉じる事も出来ずに、惨劇を、サヤカがこときれる最後の一瞬まで余さず見つめていた。]
(嗚呼拙い。)
[憑魔は酷い飢餓感に襲われて]
[瞼が落ち、フユの意識は*途切れた*。]
[届いたコエに、ピクリと顔を上げる。
そこでようやく背後に突き立った矢と。
先程までは無かった人の気配に気が付いて。
視界はまだ戻らない。
両の目から止まることの無い涙を流し]
や…ダメ……!
まだ、まだたりないのに!!
[悲鳴のような声を上げる。
見えないはずの目で、一度だけサヤカを見て。
何かを振り払うように頭を振って。
小さく頷くと、闇の中へ*駆けてゆく*]
―昨夜:寮―
[騒がしい声は聞かずに、上の階へとゆく。
自分の部屋にたどりつくと、ちいさく笑みを溢した]
みぃつけた
[置きっぱなしのバトンを掴む。少しひんやりして気持ちよかった。
くるくると回しながら、考える]
誰がやったのかなぁ。
ね、亘?
[写真に語りかけて]
……ほんと、さっさとはかなくなってしまえばいいのに
[どこかで血のにおいがした。それは彼女にまでは届かなかったけれど]
ま、いこっかなぁ
[下の人たちがあわててかけてゆく様子には、気付かずに]
桜……桜花だっけ?
答えなかったらもやしちゃおっかなぁ
[向かうは桜の花の下]
[人の集まる先をみたら、そこに近付くだろうか。
なにが起きたのかを誰かに聞いて、どういう顔を浮かべたのかは、うつむいていてわかるまい。
桜に聞くか聞かないか。
バトンを握って*考える*]
─昨夜─
[飛び出した後、背後で起きていた事になど気づく余裕はなく。
白と黒とを翻しつつ、走る。
伝わる感覚が伝えるのは、焦燥。
交差する声が、それを更に募らせて]
……っ!?
[やがて目に入った光景に、息を飲む]
あれは……九条さんと……霧生先輩っ!?
[夏休み前に知り合った後輩と、先日名を聞いたばかりの先輩と。
二人が交差し、紅が舞うのを、目に留める。
そこにいるのが何か、何が起きたか。
それは、説明を求めるまでもなく、内なる知識が物語る]
……くっ……。
[憑魔に反応して暴走しそうになる、風の力。
それを必死で押さえ込みつつ。
今はただ、*その場へ向けて駆けて行く*]
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