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ううん、誰か――
[いるんじゃないか、と。
そんな言葉は、茂みの音に止まる。
そこから現れたミハイルを見て、瞬いて。
告げられた言葉に、少し拗ねたような表情を作ってみせる]
あら、そんなこと。
ミハイルもじゃない。出歩いて、しかも森なんて――
[不自然な言葉のとぎれ。それから、うつむいてしまうのに、こちらも言葉が止まった]
……あなた、具合悪いの…?
[羞恥に染まる肌も
顔を隠すその仕草も
意地悪と紡ぐ声さえ可愛いと思う。
思うもののそれ以上言葉を重ねれば
カチューシャを困らせるだろうと思い飲み込んだ]
─ 自宅 ─
…、ん。
[ごく小さく零される笑みに返る声は、ごく短い。
恐れぬという指先は、それでも微かな震えを帯びていた。
堪らず、一度地面へ俯く]
心配してくれたの。…ありがと、イヴァン。
イヴァンこそこんな時間に、危ないのに。
[声がくぐもる。
問い返しに、ふるふると首をまた振った。
それ以上をこたえずに、続く願いに顔をあげる]
[暗くなった道では、他に誰か居てもよくは見えず。
というか袋で視界をふさいでいるから明るくても見えはしなかった。
ユーリーにつれてきてもらったキリルの家の前。
そろ、と周囲を見れば玄関から離れた位置に居るレイスと、玄関先のイヴァンが見える]
……なんだろ……?
[同じような疑問を零し。
ユーリーが丁寧におろしてくれる仕草に、ありがとう、と小さく告げて]
……たすかりました、けど……恥ずかしいので、次ぎはやらないでほしいです……
[そんな頼みを、しておいた]
イヴァン。それは駄目。
駄目なの…大好きだから。大好き。
だからお願い、……っ
[もう帰って。とまで言葉にはならずに扉を掴む。
ほそく開いた木の扉は、切迫した声の調子を恋人に伝えよう。
それでも不安定な境界は、力篭めれば容易に開く]
明日の朝じゃ、駄目…?
[拒みきるには迷いも多く、揺れる声が問いを向けた]
…っ
[ミハイルの声に、肩をきゅっと竦めた。
けれど、次の言葉が降ってこないのに、瞑った目を片目だけ開けて]
ミハイル!?
[大きな声を出した。
車椅子を咄嗟に動かし、彼の側に倒れるまでに間に合うか]
[どういう状況なのかは掴めない。
疑問零すカチューシャにわからないと言うように首を傾げる。
礼の言葉が聞こえれば目許を和ませ]
――…そうだね、善処しよう。
[頼みを了承するのは
また彼女が怪我することがないよう望む気持ちがあったから。
ひら、と手を掲げるのみで次を約束する言葉は紡がない]
[扉開けば、紅い月の光が目に飛び込む。
そうなれば本能抑える自信は、もう既にない。
恋人との境隔てるのは、僅かに開いた薄い木の扉が一枚だけ。
そして傍には兄も居る。
やがて程なく、カチューシャも来るであろうに]
…ひと、多すぎる……
[懸命に堪える。今本能を解き放つのは、自殺行為だ]
― レイスとキリルの家の傍 ―
[善処、という言葉にちょっと不満そうな視線を向け]
……怪我しないように、しますから。
今日は、ありがとう……
[ユーリーにいろいろな意味を込めてのお礼をもう一度つげた。
彼が立ち去るのなら見送って。
振り返った玄関先にイヴァンがいるから、たぶんキリルも居るだろうと、まだ家に入るのは遠慮している。
レイスが断片的に聞き取った会話も知らないから、ただその場にいるだけだった**]
―― レイスとキリルの家 ――
俺?
はは、危なくなんかあるもんか。大丈夫。
こう見えて案外強いよ。そうだな、狼が来たら、俺はともかく君は絶対守る。そのくらいには。
[しつこい男は嫌われる。分かってる。肩を落とす]
[決死の声音で拒否されて、拳にぐっと力が入った。
何かをこらえるみたいに]
狼は夜くるって、聞いたから。
どうしても嫌ならいいけど……
[賑やかな背後の気配が増えたのはそんな頃か。
びくりと肩が震える。細く扉を開けさせたせいで彼女が狼に襲われたらたまらない]
[けれどそうして警戒するように振り返ったのがいけなかったか、思わぬ力が入り、扉を無理に開けるように引く形になった]
……ん。今、周囲に皆がいる、から。
でも月が、もうそこに、
ごめん、ロラン。
もしも堪えられなかったら、暴かれてしまったら…許して。
俺、は…いーんだよ。おじさんはつよいからー。
[イライダの言葉>>396に、俯いたままそう答えた。
「森なんて」と言われるのには苦笑して。]
あぁ、なんか手がかりでもねぇかなーってな。
…なぁーんもみつかりゃしなかったけどよ。
[不自然に切れてしまったのには流石に気付かれて、]
ちょっと、寝不足。 眠れば治る、から。
[咄嗟に支えてくれようとしたのか。
近付いてきたロラン>>402の頭にはぽふ、と手を乗せた。
そのまま、ニ、三度撫でるように手を動かした後、]
ンなこた、どーだっていいから。
お前等、ちゃんと家帰って戸締りしろって…。
[グリグリ、とロランの髪の毛を乱した。]
ばっかじゃないの。
体調が万全でもないのに何を考えてるの。
[文句言うような口調。
ロランがあわてて近づくのを見て、自分も彼らへ近づいて]
だいたい探すなら夜じゃなくてもいいでしょ。
何でそういう馬鹿みたいなことするの。
家で戸締りくらいするけど、まずはあなたを送ってくのが先だと今日は言わせてもらうわ。
[きっぱりと言い切り、次いでロランを見る]
ねぇ、ロラン。一緒にこのおばかさんを家に連れていきましょう。
一人にしとくとまたふらふらするんなら、見張りで勝手に泊まるのもありね。
[不満そうな様子に少しだけ困ったような様子。
けれど怪我しないように、と彼女が言えば
安堵したように笑みを深め頷いた]
こちらこそ。
カーチャと話せてよかった。
[カチューシャが中に入れずにいるのが気になるが
彼女にも考えがあるだろうとお節介は控えておく。
男は彼女に別れを告げて
誰も居ない家へと戻ってゆく]
─ 自宅 ─
…っ、ばか!
そんなことを言って、本当に……!
[本当に、なんというのだろう。
言葉を切って唇を噛み締める。思わずまた、俯いた]
……明日の朝、イヴァンの家に行くから、
[頼りない約束を囁きかける。
俯いていたから、咄嗟の動きに反応は遅れた]
[聞こえる声に、頷く。
目を盗めるだろうか、とチラチラと2人を見あげ]
俺の所はふたり、かな。
…気を反らせられれバ。
[何時でも。
手の中で、握る手は強くなる]
[開かれた扉の頭上、凶暴なほど赤く月は輝いている。
今はと退いたのは、僅かに残る理性と判断。
ふたつ、足音が増えたのも先に人ならざる耳は捉えた]
イヴァンに、兄貴に…多分、カチューシャが、
[全て襲い尽くせたなら。
喉がこくりと鳴る。警鐘が脳裏に響いている]
―自宅前―
[泊まりに来る筈だった少女がすぐ近くまで来ていた。その事にも気付けはしない。
それくらい、視界は狭くなっていた。
扉の開く音がする。
実際には偶然に過ぎないそれが、彼の手で無理矢理開かれた、ように見えた。
何か思う前に、身体が動いていた。
懐の鋏を掴む。]
ばかっておま…!!
第一、わざわざ夜に入った訳じゃねぇ。
ちょっと引き際を見誤って夜になっちまっただけだ。
[――嘘だ。
夜なら夜で、普通の人間は出歩かない。
動くものを見つけたなら、ひたすら銃弾を撃ち込むつもりだった。
結局、銃弾は一発も放つことなく終わったが。
送るという話が出てくるのには、]
ちょっと待て、も、もう平気だ。
ちゃんとお前も送ってくから…!!
[これで帰りにイライダやロランが襲われたなら、生きてはいられないくらいに自分を許せそうもない。]
[闇色に包まれた家に男は明かりを灯してゆく。
奥にある自室にゆけば机に置かれたままのクッキーに手を伸ばした。
一欠けらを頬張りながら厨房でグラスを二つ出し
それに葡萄酒をなみなみと注ぐ]
――…は、
[一口含み、ゆっくりと嚥下して]
今夜は酔えそうにないな。
[シーマ、とくちびるのみで幼馴染の名を紡いだ**]
―― レイスとキリルの家 ――
あ、ごめ……
[無理矢理開けたみたいな形になってその拍子に香袋を落としてしまった。彼女が後ろに退くのを見れば、それを支えようと手を伸ばす]
[さっき彼女が扉越しに何かを言っていたのはきっと、扉に阻まれてしまって聞こえなかったけど]
ごめん。キリル。
[獣避けの香袋。キリルへ、と小さくリボンの宛名がついている。
それは触ると少しくしゃりとした感触がある]
[中をもし覗くなら、小さな走り書きで
『これは獣避けだけど、もしこの匂いが酷く嫌いだったらごめん。その時は俺の家に来て。一緒に逃げよう。しばらくは苦労をかけるけど、色々な意味で衣食住には不自由させないから』]
[そんなメモが、一つだけ。念のために入ってた]
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