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別に私の趣味でもないよ。ちょっと使い勝手が良かっただけ。
[ちょっとグロいかなー? とは常々思っていたが、さすがにストレートに言われると少々凹む。
と、そんな事で落ち込む暇もなく、ゲルダの手の上に出現した光球に神経が警戒を発する。しかし、光球から放たれた光条は、上空の雲を吹き飛ばし視界から消えうせた。と、リンクするように光球も消えた]
(何をする気――?)
[予測がつかない。だが、気を抜けばやられると理解している...は、左右に浮いている脳に思念を送った]
「ギギィギギィ!」
「キキィキキィ!」
[同時に脳は似たような音を発し始め、刹那、左側の脳から多重防壁結界を。右の脳から闇の光線がゲルダに向けて放たれる]
魔獣多重召喚符――!
[魔獣を使い魔とし、符に直接宿らせて使役し、起動時に彼女の思考を読み取りながら最適な魔術を発動させる四枚目の新符術だ]
[攻撃する気配を感じれば無意識に風の防壁が形成されるが
光線の出力が防壁の出力を上回り貫通した其れがわき腹を抉り行く。
肉が抉れ、あふれ始める紅に服が紅に染まり行く。
わき腹を押さえながら数歩後ろへ――寮棟の入り口へよろめき下がる。
思考を探られている事不快感、精神防壁を展開するが――思考がイメージとして探り取られる。
そのイメージは雨。 降り注ぐ雨。
入り口に置かれた傘立てから真紅の傘を取り出せば、青空に向けて傘を開き、力尽きるようにしりもちをついた。
僅かな間を置き青空に光が瞬き中庭一帯に降り注ぐのは先ほど射出された光。
雨の如く、次々と光が落ちてくるが――光は不思議と傘をは避けていく。
ミリィが接近した時に備えて、攻撃準備は有る程度整えているが、これに耐えられれば正直勝てる見込みは限りなく0に近づくだろう。]
[06]
(しまった。魔獣の出力が抑えきれない……)
[本来はかなり高位に存在する魔獣を使役したため、...の魔力では押さえがきかなかったのか、光線はゲルダの脇腹を削り取った。
さすがにあの傷はまずいのでは? と思い、幼馴染に駆け寄ろうとして、ゲルダの不思議な行動が気にかかった。この状況で何故傘をさすのか?
その答えは、右肩にいる魔獣が齎した。左の魔獣と意思を通わせ、同時に上空に向けて多重防壁を展開していく。そして...が見上げるより早く、光条は着弾した]
ぐぅぅぅぅぅ!
[魔獣の使役と言っても、大本の魔力は...のものだ。着弾と同時に大量の魔力が削られていくのを実感しながら、次の手を考え――]
って、もうやれることっていったら、これくらいなのよね。
[光条に押し潰されそうになりながら、...は両足を力の限り踏みしめると、流れている左腕の血を使って地面に文字を描いた]
祖は何ぞ!
[瞬間、ゲルダから逃げる時に毀れた符九枚が各々別の輝きを発し始めた]
『我らは天に輝く星の長なり』
[符の返答も九つの声が重なり合う]
天空を統べる高き者達! 我が願いを叶えたまへ!
『北天から大地を見守る聖なる輝きは、汝の思いを叶えたる』
なれば、今ここに召喚されよ!
『我ら北斗九星職位総主なり――』
[九つの符が九人の武人の姿へと変化する。即ち第1陽明星、第2陰精星、第3真人星、第4玄冥星、第5丹元星、第6北極星、第7天関星、第8洞明星、第9隠元星!
北斗九星職位総主は互いに行路を交えながら、光条を外から包み込むように覆い隠していく――]
[最初の数発が着弾したが――ミリィの召還した何かが光を覆い隠していく。
わき腹を伝い落ち、地面に広がる紅。
もう、攻撃を続行する余力も無く、霞む視界の中自分の敗北を理解した。
傘が落ちる乾いた音。
もう、傘を握る力も無く――世界から音が消えてゆく。
視界が傾き、地面に倒れこめば強烈な眠気のようなもにに耐えられなくなり*目を閉じた。*]
…まさかっ!
[中庭へと辿り着く直前。ハッとするように暗翠を一点へと。その先にあるのは降り注ぐ光]
[更に足を早めたその先に見たものは──]
[北斗九星職位総主が覆った光条は、まるでうねる龍のように抵抗するも、星の主を自負する北斗九星職位総主は、当然と言わんばかりに互いを輝かせ、光条を力づくで粉砕した。
防壁から圧力がなくなったところで、魔獣は提供される魔力が尽きて無へと帰還した。しかし、...はまだやるべきことがあるため、その場に倒れてはいけなかった]
……北斗九星職位総主。
『応!』
[北斗九星職位総主へ呼びかけると、彼らは一斉にベルダへと向かい突撃をして、傷口にぶつかると同時に消滅していく。
元々魔力の塊である彼らだから、方向性を調整すれば簡単な応急魔術と同等の効果を発揮させることも可能である……というのを、魔獣召喚時に暴走させてしまい、実家の神社を粉砕しかけたときに身をもって体験していた]
はぁ……。後二秒でも長く攻撃されてたら、こっちが魔力切れで倒れてたわよ。
[治療につぎ込む魔力を全てゲルダに回してしまったため、仕方なく破れて使い物にならない服の一部を千切って包帯代わりにしつつ、己の傷を治療し始めた]
[目の前ではミリィが使役しているらしい武人がゲルダへと突撃している。倒れたまま動かない相手に何を、と思ったが、良く見ればそれは治療の一環だったらしく。僅かホッと胸を撫で下ろす]
ミリィ! ゲルダ!
[名を呼び、二人の傍へと駆け寄った]
[さすがに立っているのも疲れてきたので、座って治療の続きをと思っていたところに、聞きなれた声が聞こえたので視線を向けると、そこにライヒアルトの姿があった]
あ、ラ――。
[と名前を呼びそうになって、一旦沈黙した。それから徐にライヒアルトとゲルダの間に移動してから、自分を体を抱くようにしてから一言]
スケベ。
[一応、傷だらけとはいえ、素肌を晒しているのだから、とりあえず、そう言っておいた]
は?
[一瞬何が何だか分からず抜けた声を出す。けれど状況を把握すると視線を逸らし頭をがりと掻いてから]
……着とけ。
無いよりはマシだろ。
[腰に巻いていた上着を外してミリィに投げた。尤もそれも腕の部分と左脇がいくらか破けているのだが]
…その様子だとゲルダが負けたみたいだな。
[あの謝罪はそう言う意味だったのかと、ようやく合点がいった]
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