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─ リンゴの樹傍 ─
[伸ばした手は熟しきっていないリンゴを突く。
拾うことは無く、ただ暇を持て余すが如く。
その頭上には落ちずに留まった実がいくつか成っていた。
根元に転がるものとは違う、ほんのりと色付いた熟しかけの実]
……折角、成ったのに。
[あの嵐が無く、順調に熟せば絵にも描かれ、誰かの口に入ったであろうリンゴ。
貰いに来た人は既に赤く染まり、魔法の担い手もまた赤く染まるのかもしれない]
……好きで落ちたんじゃ、ないよね。
[呟いて、土がこびり付いたリンゴを少しだけ撫でた]
― 3階・ヘンリエッタの部屋の前 → ―
[言葉の通りに向かった3階。
扉を叩き、返らない声に不躾ながら扉を開くも姿は無く。
踵を返しながら、さて、と悩む]
[正直を言えば、検討などひとつも付かない。
主の書斎はないだろうし、寝室は余計に無いだろう。
書庫も食堂も台所も、館の室を浮かべても思い当たりはせず]
[ふ、と。何気なく向けた窓の向こう。
小さな、小さなあかいろ]
…………、
[一度、足を止めて。
逆手に持ったナイフを握り直して、歩む]
― → 林檎の樹の傍 ―
[階段を1階まで。廊下を歩み、扉を開けば外へ。
焼け落ちた吊り橋から然程離れていない樹の元に]
……ヘンリエッタ。
[少し距離のある内から、声を掛ける。
歩む速度は常の通り。
程近くまで寄ろうとするのも、常の儘に]
─ リンゴの樹傍 ─
[離れた位置からかけられる声>>71。
首を巡らせてそちらを見、姿を視認するとしゃがんでいる状態から立ち上がった。
ふわり、と両サイドの髪とスカートの裾が揺れる]
…なぁに、ヒューバートさん。
[声に声を返して相手の顔を見上げた。
動きに呼応して、胸元の銀と赤も揺れる]
[それでも
もし、少女が彼を殺めようとするなら、いつものように隠し持っている短剣を振るう事にはなるだろうけれど。
今は、ただ、二人を見守る]
─ リンゴの樹傍 ─
[傍に来て膝をつく様子>>76をただじっと見詰める。
紡がれる言葉、浮かばぬ笑み。
それらを前にして、ヘンリエッタは悲しげな表情をした]
ヒューバートさん───
[一つ一つ紡がれる言葉はヘンリエッタを追い詰めるもの。
けれど、少女は何一つ揺れる気配を見せなかった]
──わたしじゃ、ないです。
[はっきりと告げる言葉。
瞳は真っ直ぐ、ヒューバートへと向けられる]
わたしがお父様を襲っただなんて、冗談でも言わないで。
…ヒューバートさん。
あなたがもつ『力』、本当に、正しいことを示しているのですか?
[口調は慣れ親しんだものから、一つ壁を挟んだものへ。
ヒューバートへの不信感は、そんな細かいところにも表れていた]
『力』を使って、ユージーンさんと、ネリーを視て、わたしを視ていない。
視ていないだけで、人狼だなんて決め付けないで。
その石が正しいことを言っている保障なんて、どこにも無い。
ヒューバートさん、石を信じすぎてないですか?
もし石が、人狼を人だと言っていたらどうするんですか?
わたし、その『力』、信じません。
わたしを人狼にしようとしている『力』なんて、信じません。
わたしが、お父様を襲っただなんて、そんなことあるはずが……!
[言葉を紡ぐにつれて、声は涙声へと変わっていき。
終には瞳から涙が零れ落ちる。
最後に紡いだ言葉はヘンリエッタの本心。
少女は知らないのだ、その事実を]
[表は一旦ヘンリエッタに任せて良いか、とハーノは判断する。
人狼であることは受け入れざるを得ないとは言え、人を襲ったことに関してはヘンリエッタは否定出来る。
ラッセルのことは目の当たりにしたが、父については全く知らないのだから]
― 2階・ラッセルの客室 ―
ぞろぞろついて行ってもねぇ。
[そう呟いて、手持ち無沙汰になると部屋を出た。
間際に一度振りかえり。]
それじゃさよなら、ラッセル様。
(もう会うこともないけれど)
[最後に笑って、扉を閉めた。]
[それは正しく糾弾。幼い子供を責め立てる、非道の行為。
けれど立ち止まる気は無い。『力』を持つ者として]
私は君が人狼だと判断した。
殺した理由が衝動でも、生きる為のものでも。
[続く言葉は、ほんの僅かに紡ぐに間を要した。
零れ落ちる涙を掬おうと伸ばす手は無意識では決して無く]
……私は、自分が生きる為に、人狼を殺すよ。
[落とす音は残酷なまま]
― →林檎の木の側 ―
[少し離れていても聞こえる二人の声。
ヒューバートの指摘は当然のように否定された。
次いで向けられる指摘は事実に基づいた物で、少女がなんであれ、信じない人には通じないのも事実。
その言葉に、偽りがないように見えて、そうして、それを振り払うかに頭を振る。
涙は、偽りとは思えなかったけれど]
………ペルソナ
[小さく、小さく呟く。
人は、信じ難いことがあった時、その記憶を封じる事がある。
偽りの記憶、偽りの人格……人狼は、その内にそれを持ってはいなかったか?
もし、それらが、完全に解離していたとすれば……]
まさか、ですよ、ねぇ……
─ リンゴの樹傍 ─
だったら!
[ヒューバートの言葉>>86 >>87に声を荒げる。
顔はもう涙でぐしゃぐしゃだ]
──だったら、せめて、視てからゆってください……!
わたしが人か、人狼か……石が本当に正しいことを言っているのかどうか…。
ただの推測で、殺されるなんて、イヤ……!!
[そこまで言い切って、服の袖で目元を何度も擦る。
涙を拭い終わって覗かせた瞳は、潤んだままだが拒絶の色を浮かべていた]
…こんなこと言いたくないけど。
わたしからしたら、そうやって人狼と人を判断していくヒューバートさんが人狼の可能性だってあるの。
わたしだけじゃない、他の人だってそう。
石を使って嘘をついてるのかもしれない。
あなたが自分の『力』を信じるというなら、わたしはわたしの判断を信じます。
あなたが、わたしを貶める人狼だと言うことを。
[突きつけられた選択肢。
その一つを選び取り、覚悟を口にする]
エッタ
[ヘンリエッタがヒューバートのことを断ち切った。
ハーノはそれを知り、寄り添うようにヘンリエッタの名を呼ぶ]
いきるためなの しかたないのよ
[誰もが抱く自己正当化の言葉。
人狼も人も、何ら変わらない証拠]
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