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〔どうしてだろう〕
〔今、目の前にいるのは異形の者〕
〔なのに〕
〔なのに〕
〔その笑顔が好ましいと思ってしまうのは〕
〔その行動に意味があると思ってしまうのは〕
お前、俺の、願いが、聞こえたのか?
〔かすれて上手く喋れず、空気の振動のような音になる〕
星を砕いて、開放……。
何から?
その開放って、なんのためのもの?
わからないよ……前にも、同じ事、言われた。
でも、ボクには、わかんないっ!
[対峙する者たちへ向けて、叫ぶ。
それは、ずっと引っかかっていたものだから]
ねえ、死にたがりのランディ。
どうすれば信じられるのかな。
私は以前同じ状況で。
同胞にも人間の協力者にも裏切られた。
勿論、人間達が許してくれるはずは無い。
死にたくなかった私は。
どうすれば良かったのかな?
[淡い微笑]
[首を振る]
私は村人だよ。
少なくともずっとそうだった。
皆と一緒に居るのが楽しかった。
だから頑張っていたんだよ。
必要以上に人間を手に掛けたりしなかった。
クレア…リディちゃんだって。
今まで同胞だなんて知らなかった。
彼女もまた、薬で抑えてまで。
頑張っていたのにね。
なのに。
…最初から……。
[爪に弾かれて、勢いを殺すように軽く地面を転がる。]
喰わなきゃ生きていけないって…なんで、そんなっ!
[使命は、奴等の脅威から人を守り、奴等を倒す事。
それはまるで本能のように、この星を刻まれた時から判っていたけど。
守りたい日常の一部に、倒さねばならぬものがあるなんて。]
…どうすりゃいいってんだ、ちきしょうっ!!
[それでも身体は、彼女を追って地を駆ける。]
これが起きたらね。
どっちかが死ぬまでは終わらないんだ。
道は開けない。
[真っ直ぐに]
[顔を上げる]
だから、生き残るつもりがあるなら。
貴方達が私を。
最後の赤の星であるこのエリスを。
砕かなければいけないんだよ!!
[宣言する]
[もう一つの名を名乗って]
[爪を構える]
人狼とはそういうものなんだ。
人間にとっては異端の存在。
人間は異端を許さないからね。
……この場合は当たり前だろうけれど。
[迫る銀を]
[青の星を]
[ギリギリで弾く]
[砕かなければ終わらない。
それは、この手で倒さねばならぬことで。]
…フラン。
[足が止まる。
ちらりと視界の隅に見えたのは、刀を抱いて震える細い腕。]
くそっ!
[どちらかしか選べないならば、きっと選んでしまうだろう。
けれども、迷いはまだ、その足を鈍らせて。]
フランさんっ……。
[宣された言葉に、唇をきつく噛む。
言われた言葉、その意味はわかる。
自身もまた、その定めの内に組み込まれたもの。
だから。
自分がどうしなければならないのかは。
知っていて]
……ボクは、誰もなくしたくない……けれどっ。
それで、同じになるなら……。
赤き星、砕くのも、躊躇わない……。
[静かに宣しつつ。
交差する青と銀を目で追う。
その状況に悲鳴を上げる心は、ぎゅ、と押さえ込んで]
[突然起こった出来事に目を疑う。
異形の爪を振り回すフランと、それに対するレッグ。
目の前で次々と自警団が倒れていく]
ちっ!
よりにもよって・・・。
[反射的に剣を抜くも、レッグやランディの様子を見て足を止める。
この状況で、部外者である自分に入り込む余地は・・・]
くそっ・・・!
[迷いを振り切ってレッグに全てを任せると、
倒れた自警団に向かって駆け出した]
[その爪は、肩を、腕を、切り裂いて。
その刃は、肩を、腕を、切り裂いて。
けれども、迷いは未だ、深く踏み込めぬ足へとまとわり付いて。]
〔起きてしまった惨劇はもう、戻る道がない〕
〔そう言われ、己の手のひらを見る〕
俺は、それでも。
お前に、生きて欲しかった。
だが、お前は。
ただの村娘、雑貨屋の看板娘の。
ただの、フランじゃない。
〔ゆっくりと、しかし、しっかりとした足取りで、フラン…エリスに近付いた〕
[次の瞬間]
[走り出す]
[その人に向かって]
ねえ、ランディ。
信じさせて。
止められるのなら…。
止めてみせてよ……!
[真っ直ぐに腕を伸ばす]
[その動きは凪ぐとも言えず]
[けれど確実にその首へと向かって]
…やめろぉぉっ!!!!
[何より見たくなかったのは、彼女がその手を下す事。
まるで親子のように、いや…それ以上に、仲良く見えたその人を殺める事。
振り下ろされるその腕に、巻き込まれることすらいとわずに、
二人の間に割って入り、手にした星の刃を突き立てようとする。]
〔異形の女が、自分の喉元に向かって真直ぐ突っ込んでくる〕
〔鋭い銀色の爪のその向こう〕
〔エリス…いや、フランの顔を、ただじっと、見つめていた〕
……レッグ!
[繰り出される銀とランディの間に飛び込む姿に、悲鳴じみた声が上がり]
……やだっ……!
[無意識の内に、そちらへと。
歩みを進めて]
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