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――…… わからないわ。
でも、……
鳥は、風に乗るのでしょう。
[白い鳥、が見えた。
尋ねる声に答えただけ。
誰かのそれと重なったかもしれない]
見えているのかも、しれなくてよ。
[屋上へ続く階段の前、腕を壊してしまった石像。ユリアンの姿。
その傍にも、おそらく城の到る所に咲く白い花。]
――…
[階段を上る途中にもそれはあるだろうか]
?
[ ――――― !]
[一瞬、下の方から嫌な音と城全体が揺れるのを感じた。]
[笑ったまま、至近距離で顔を見合わせる。
今はダーヴィッドを見詰めていて振り返る事のない扉の前を、幾人かが通り抜けて行く気配を感じる。慌ただしい音。その中に、ノーラと、ベアトリーチェの声が混じっている気がした。]
何でも。
無謀なくらいで、良いんだ。
ダーヴィッド。
[ダーヴィッドの首筋をなぞる指先が感じるのは、随分とゆっくりに感じられる動脈の音。首輪にかける手が震えた。サファイアブルーの両眼は強く見開かれたまま。]
屋上の空なら、知って──
鳥?
確かに空に鳥は居るかもしれないが。
そうだね。
[目を細める]
きっと鳥には風が見えるんだ。
[うしろから現れる姿]
[ちらほらと姿が見えた]
[ノーラ]
[ベアトリーチェ]
[金の髪の女]
[偏屈な男]
でも───リーチェみたいに素直な子なら、風が見えるかな。
[呟く]
[開いた扉から、風が吹き込んでくる。それを感じると同時、地面が揺れる]
あぶ、ない。ノーラさん、身を屈めて。ゆっくり上るの。
[杖で身体を支えて、階段から転げ落ちないように。一歩一歩、確かめて屋上を目指す]
[嗚呼。時間が、ない。
やってくる人たち。
ヘルムートの、ダーヴィッドの 姿が ない]
―― いそいで
[その場にいる者たちに
そして姿の見えないものたちに]
……急ぐのよ
あたしもライヒアルト、あなたと一緒に生きたい。
[初めて正確に名前を呼んで言った。
屋上につけばライヒアルトの腕に少し体重を預けて休んだ。]
白いいばらの花があって、白い鳥が飛んでる。
[解説するように言った。]
……ヘリに乗ろう。生きる為に。
[ライヒアルトを促し、ヘリに乗り込む為に歩き出した。]
…、痛っ
[階段途中でどこか打った。
じんと痛みが身体に広がる。
けれど揺れを感じた、それはつまり時間がないという事。]
…そうね。
[ゆっくり、そう言われれば頷いて]
[転びそうになったノーラの身体を支える。しっかりと。
風に乗って聞こえていた歌は止んでいて]
アーベルさんの声。もう屋上にいたのね。
[最後の段を後ろ足に、屋上へ。ノーラの手はしっかりと握って]
>>264
[そう、もう身体はとても冷たくて…
めぐらなくなる。生きていくための血液が……]
……議員、お気をつけて……
貴方を見るといったのに、もう、実は、見えません。
[空色の眸がどんどん消えて……]
ベアトリーチェ。
ヘリコプターに乗ったら…
[思い出す。薬を見つけた時に、中にもパソコンがあった事。]
ダーヴィッドから貰ったカードを
パソコン…四角い箱があるから
そこにカードを差し込むの。
そうするとヘリコプターは動くわ。
[よたよたとながら少女に伝える。
空が――星空が、近い。]
私はとても弱いのかもしれない。
[ダーヴィッドはいらえを返しただろうか。
そこから、最後の瞬間まで、
ダーヴィッドを見詰めたまま、瞬きもしない。
今まで数値を何度も確かめた、
ダーヴィッドの首輪を握り、
──力を籠める。
丈夫なそれに悲鳴のような裂音が走り、
首輪を通じて指先と掌に感じる、抵抗が無くなるまで。強く。
引き千切って、
失われ行く、生命を──奪った。]
───いたよ。待ってた。
[なんてね]
[冗談ぽく]
[ベアトリーチェに答える]
そういえば───ダーヴィッドと議員は?
[二人の姿がない]
[人を車椅子に乗せる気だったあの男は]
[焼野原の写真を撮ると言っていた男は]
[どこにいるのだろう]
[伝わる振動が何を意味するのかは、すぐに覚れた。
ゼルギウスからの返答。
城の崩壊の兆し]
……時間がない、な。
[呟いた所に、耳に届いた声。
初めて名を呼ばれたな、などと思いつつ]
……ああ。
一緒に行こう、ナターリエ。
[小さな声で名を紡ぎ。
振動でよろめく様子に、迷わず抱き上げた]
……上手く、見えん。
先導してくれ。
[まだ、見えてはいるけれど。
視界には、霞みがかかっていた]
[ヘリの扉を開く。
ノーラとベアトリーチェには手を貸そうとして。
アーベルにも手を伸ばすだろう。]
――… はやく!
[いない。 足りない。
扉の方を見る。嗚呼。]
パソコン? わかるといいけど。やってみる。でも、ノーラさんも行くのよ。
[ノーラの手を引いて、足に負担の掛からぬよう]
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