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[問いかけに、ゆる、とまばたく。
どこか虚ろな面持ちは、呼びかけ方によるものと。
その呼び名されても笑めるのは。
露草色の若人だけと。
言にして語るはできず、ただ、ゆる、と首を振り]
……なんでもないよ?
俺は―と、風漣が先に言っちまったか。
[苦笑を浮かべ]
まあそう言う訳で宜しくな、音彩。
[散歩かと言う二つの問いに]
まあ散歩といやぁ散歩か―ちと烏の兄さんに用があってな。
ほんま?
[何かを感じ取るも]
[それが何かはわからず]
[……というよりも己の違いを感じてはいないからだが]
なぁんもあらへん?
[尋ねて]
ふうれんさまが元気のうと、おらぁいやじゃぁ
よろしうね、がえいにいさま。
[心配そうな眼差しと一転]
[にこにこと笑顔をにいさまへ]
からすにいさま?
[ちょっとぼうっとしていたらしい大兄を見て]
[きょとん]
烏のにいさまに?
[雅詠の返事に二人を見比べ。
それから、仔うさぎが烏の近くに留まるのを見つければ、そちらへと。
それは、何かから逃げるようにも見えようか]
なんでもない、よ?
風漣は……元気。
ああ、そうだねえ。
けどねいろ坊の願いだから、てるてる坊主も聞いてくれたのかもしれないよ。
[言いながら、仔うさぎを追う風漣に、ふと目を向ける]
[草食む仔うさぎの傍らへ。
紅緋は小さき獣へと]
元気だよ、風漣は。
[短く答え、ついだ問いには答えずに。
目を向けられるのに気がつけば、紅緋はそう、とそちらを見るか。
微か、不安を浮かべし色彩で]
[大兄に撫でられる小兄に]
[やっぱり心配そうな目を]
ふうれんさま。
……あっ。
[はたと何を思いついたか]
[あわあわと小さな鞄を探り]
[取り出したるは、さくらんぼ]
握り飯ほどおなかにはたまらんよ。
じゃけん、あまいん。
[にこにこと]
[差し出そうとして]
天狗の願いか。ああ、そうだねえ。
あの七色の橋は天狗とて、美しいと思うだろうからねえ。
[ねいろの言葉には、やはり優しげに答えよう。空に虹はまだ消えず]
[撫でられる感触に、ひとつ、まばたいて。
それは、何か思い起こさすのか。
紅緋の不安は──まだまだ残りはするものの。
微かなれど、和らぐか。
それでも、差し出された物には。
ふる、と首を振り、大丈夫だから、と呟くのみで。
注意深く、見たならば。
微かな怯えも読み取れようか]
[様子はやはり違い]
[きょとんとしたまま]
……ほんま、どうなさったん?
[小兄が]
[心配で]
[かなしそうで]
[ただ、見て]
[それはどこにもおかしさなど無い行動]
[似てるかと問われれば首を振り]
いや―何分俺が幼き頃の事なのでな―
[恐らくここで無くとも憶えておらぬよと、寂しき笑みを浮かべ言う]
[ふる、と、また、首を振る]
なんでも……ない、よ?
[繰り返されるのは、その言葉だけ。
それ以外に、術はなく。
ただ、鞠抱く腕に力を入れるのみ。
声にできぬ、言葉にできぬ、不安。
昨日、まどろみの内で見た夢は、ただ無為にそれを募らせて]
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