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[冷えた肉と澱んだ血の臭いでも]
[彼には遠い記憶を想起させるナニカではあり]
[必死に手繰り寄せようと]
[思考の霧の中を彷徨う]
/中の人/
囁けるのに囁かない狂人って、人狼にとってもマゾいですね。
絡みたいのにpt無くて絡めないと(´・ω・`)
[あの、断崖を見た時に]
[閃いた]
[ナニカを]
[確りとした「想い」の手触りを]
[もう一度][取り戻そうと]
[あの全身を貫いた快感に似た衝撃は何だったのだろうか
――温室――
[立ち去るコーネリアスの後姿と、ルーサーの表情を見比べても、少女には何一つ汲み取れる物はなく。
温かい手をすり抜ければ、温室に咲く花を一つ一つ見て回り、芳しい香りに顔を近づけては、思案するように指を伸ばす。]
静かにお眠り 可愛い子 バラの花に守られて
カーネーションもその眠りを優しく見守っているわ
夜が明けたら また神様が目を覚ましてくれるから
静かにお眠り 可愛い子 空に舞う白い天使が
色褪せない天国の花が咲く木陰に誘うから…
[薄紅色の柔らかい唇から、微かに子守唄が零れる。
それは誰に向けての歌声か。少女にすら*今は解らない*]
―ニ階・客室―
[ 食事を摂りはしたものの其の味は殆ど感じられず、唯、胃の中に流し込んだだけに近かった。読書をするでも午睡するでもなく、背を壁に凭れ掛けさせ仰いだ天井は少し黄色がかった古惚けた白。空虚な黒の眸が緩やかに下ろされ、見遣った足許の敷布は変えたばかりの真っ新な白。其処に赤の色彩は存在しない。
室内を見渡しても先日迄と変わった物は何一つ無く、嵌め殺しの窓の外に覗く天には夜の帳が降り始める。窓辺に立って崖の方を見遣れば、吊り橋の失われた谷間の闇は尚昏い。
此岸と彼岸、幽明の境を繋ぐ懸け橋は既に無く、此処から逃出す事は最早出来ない。彼の召使が麓迄辿り着けたか如何かは不明だが、半狂乱の女の譫言を聞けば態々来る者も居まい。否、メイやトビーの家族は別だろうか。何方にせよ、彼には其の様な者は存在しないが。]
[ 些か乱暴に椅子に座り込めば、青年は片肘を卓上に乗せ頬杖を突いた。其処に置かれた黒の手帳は既に乾いていたが、収縮した紙に乗せられたインクは滲み、何が書かれていたかは最早殆ど読み取れない。ペンケースの中からペンを一本取り出せば指の合間に其れを挟んでクルと幾度か回して弄んでいたが、軈て其れにも厭きたか、持ち替えて指先で摘むと机を軽く叩く。
トン、トン、トン。一定の間を置いて、規則正しい小さな音が鼓膜を打つ。母親は我が子を寝かし付ける為、其の小さな背を優しく叩くのにも似ていたろうか。]
[ 然し其の音も不意に止み感情の見えぬ眸が手帳に向けられたかと思えば、歪に変形した白の紙に再び純然たる黒のインクが乗せられる。縦横無尽に引かれた其れは文字でも何でも無く、唯の線の乱舞に過ぎない。全てを埋め尽くすかの如く只管に、黒く黒く黒く、無心で*塗り潰していく。*]
[摘み取った花を手に義兄の部屋へ。
佇む行き倒れの男の姿に軽く頭を下げ。]
…あなたは悲しんでくれるのですか。
[微かに声をかけると、遺体へと歩み寄り、花を手向ける。]
義兄さん。
姉さんを看取った時、あなたはどんな気持ちだったんでしょう…。
[物言わぬその遺体に、小さく問いかける。]
[階下に降りれば、廊下に響くピアノの調べ。
メイがまた、奏でているのだろう。
西日が長い影を作る時間。
こうしてピアノを弾く姉の横で歌い、義兄はそれを静かに笑いながら聴いていたものだ。
部屋に入る。
メイは気づかぬまま音色を奏で続ける。
それに合わせるように*紡ぐ歌声。*]
―ナサニエルの部屋―
[わたしが幾度目か目を覚ましたとき、彼は眠っていた。
指先をそっと見る。
何も変わらぬ事に安堵して、そっとたちあがり――
窓の外。
違和感を覚えた。]
[そっと部屋を出る。
その前に、彼にそっとタオルケットをかける。
わたしはそのまま外へ向かう。
消えた釣り橋の方に]
―つりばしのあった所―
ない、わ。
…どうして
[呟きは口の中に。
わたしは崖の縁に近づく。
そこからは焦げた臭いがした、気がした。]
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