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―廊下・表の流れよりいくらか前か―
なにそれって、視たままというか。
おっと。ティル?
[突然座り込んだティルに怪訝そうに。
もう一度手を頭にのせれば、琥珀の煌きはその手に集い、風竜の変調を癒そうと。
だが直接的な傷でない限り、痛み緩和の領域は自分ではなくアーベルあたりのもので。上手く治癒が届いたかは分からない。]
[泡の盾。左手に生んだ盾とは違い、全方向をカバーすることは出来るが、それに伴い、強度は弱い。
ましてや、「揺らすもの」の影響か『力ある剣』の影響か、力を強化したものの攻撃を受けきるには弱すぎた]
―――まずい、か!
[防いだと思った、次の瞬間には、その泡の盾を破り、ナターリエへと襲い掛かる水の矢。
致命傷だけは避けるように、自らの体を変容させようとしたとき―――光の幕がナターリエを包んだ]
……!?
[それは、攻撃の力が触れると、瞬時にその反属性、或いは等価の属性を造り出して中和していく]
この力……?
卵…。
[思わぬ呼ばれ方に一瞬気が抜けた。
が、その直後]
ティル殿!?
[その詳細までは知る由もなく。だが記憶の封印というものは、方向性が違えども、自らも知るもので]
…予定の通り食堂まで、行きましょう。お疲れなのやもしれません。
[そっと提案してみた]
[動けない様子の機鋼の仔の前に出て、大地の竜の側に寄る]
お手伝いしましょう。
[青年の手が、添うように黒の腕輪へと伸びた。口元には笑み]
[心話は聞こえる。
矛先が変わったのかね、とは心話にも乗らない独り言。
どちらにせよ、自分はただ遠くから見据えるのみ。]
< 叫ばれる月闇の竜の名より、生命の竜の出現に与えられた癒しの力が疼くような感覚を覚え、其方に視線を走らせかけた。
されどそれより、うねる砂へと意識は奪われた >
……何を、
< 敢えて呟きを落とし、抑えかけられた影は方向を変え、砂の軌跡を辿る。
即ち、力を放った老竜自身、そして、その腕輪へと。
未だ揺らされしものとは言えず、己に親しい力を、剣は容易には跳ね除けられまいと。しかしほんの僅か闇に寄った力は、触れれば剣にとっては毒とも成り得るが >
そうですね。
ティル殿、歩けなければ背負いましょうか?
[エルザの提案に深く頷いて、見た目はまだ小さい疾風竜の顔を覗き込む。
なんだかイラっとしたので、パチッと小さな静電気をクレメンスに一度飛ばしておいた。八つ当たり。]
あ……だいじょぶ。
[駆け寄るミリィの声に、ぽそりと返す。
ふる、と頭を振った所に、送り込まれる癒しの力。
それは、頭痛を和らげこそすれ、消すには至らない]
あー、うん。
飯、食ってないから、力でないのかもしれねーし。
[エルザの提案には、素直に頷いた]
[傍に進み出るアーベル。荒事は出来ぬはずでは…?]
…戦えぬなら下がって居れと、言うたはずじゃが?
[伸びる相手の手は左腕に。しかし手は印を結ぶべく忙しなく動く]
そろそろ
[呟いた言葉は、あちらには聞こえまい。]
良いですね。
[闇の羽根は空を打ち。
あふれた力は蝙蝠に転じ、そこらへんにあふれ返る混沌の欠片を掴む。]
[それは、当然のことながらそこの集団の方へと飛んだ。
混沌の欠片をぶつけるために。]
―東殿・翠樹の個室―
……ッ!?
[窓の割れるような音、そして様々な力の奔流に飛び起きて]
何が起きてるの……?
[翠樹の仔の姿も、黄蛇の姿も無く。
不安を抱えながら、身なりを整えることなく、部屋を飛び出していく]
や、歩けるから、へーき。
[ミリィの申し出は、にい、と笑って断った。
さすがに、男の矜持というものがあるわけで。
飛んだ静電気には気づいたが、その意味はわからず、きょとり]
―廊下・表の流れよりいくらか前か―
[あまり効果がないようなので、手はすぐ離す。
無駄なことに力は使わないように、は長年の経験則か。
突然ミリィから静電気飛ばされたら、髭がぴろんと上を向いた。本人は気づいてない。]
[精神と影輝の属を持つ腕輪へと、精神の力を流し込む。
反発にしろ高めるにしろ、砂への集中を乱す為に]
…見ているだけでは何も成せませんから。
[影輝の影と精神の竜、二者の力は腕輪の力を抑えるか否か]
[戸惑った様子の、ナターリエの耳に届くのはオトフリートの声。
瞬時に、ナターリエがその方向へと向く]
オトフリート!
世界の停滞を止める為にも、お主を……止める!
[パン!と音を立てて、ナターリエが床を叩く―――否。それは床ではなく水溜り。
水を介して、力は外に広がる水溜りへと移動して、オトフリートの下にある水溜りから、巨大な槍を天空へと伸ばした]
―食堂―
[先ほど出た窓から中に入り、手早く首飾りを外した。]
約束です。
お願いしますね、ベアトリーチェ殿。
[そっと囁き、台所の水を使い、あたりに水の魔法の痕跡を。
仔が持つと気付かれぬよう、軽い仕掛け。]
[それから隣の部屋――先ほど馬が蹴り壊した窓のところへ行き、拾ったタイをしめなおした。
これで、見えない。]
[何か感じ取ったのか、スプーン咥えたままぽつり。]
お前ィだって、人の事いえねぇっての…。
[結界の外、激しくなる騒ぎが伝わっても、
今は何も出来そうにないのが歯がゆい。]
[おいさんの気配は当然無視した]
――…なるほど。
[影輝の竜の名に、添えられる影の力の意味を知る。
ならば目を引く行動を取るオティーリエに隠れ、剣を奪い邪魔者を消そうと意識を絞った。彼女の本当の意図はまだ知らず]
[ナターリエへと向かう影を防ぐべく向かった砂を辿り、影が己へと向かってくる。向かう先は、腕輪]
ちぃ……ノーラ殿も、と言うことか!
[結ぶ印は防御壁を作り出し。周囲を取り巻く砂が迫る影を防ごうと間に滑り込む]
ノーラ殿……何ゆえあやつに加担する!
あれらに剣が渡るは世界が「揺らすもの」の干渉を受けると言うことじゃぞ!
『均衡』を司りしお主が何ゆえ…!
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