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…え?
[不意に開かれた物置の扉。
薄暗さに慣れた目を眇めた男は、
女物のショールに鼻先を埋めたまま静止した]
…
落ち着くから ?
[薄布越しで声がくぐもった]
…そう、なのか。
[じ、と無遠慮にニキータを見詰める。
指先は、こつこつと忙しなく自身の唇を叩く]
…。
落ち着いているところ、すまないが。
これを片付けさせてはくれないか。
[表出する感情は淡いが、これでも驚いてはいるらしい。
色々と指摘したくなる箇所はあるのだが、有り過ぎて何も言えなくなったらしい。
自身の目的のみを端的に伝えた]
…そう、なんだ。
[女の視線を感じ、男の視線は横に逃げる。
こつこつ唇を叩く微かな音らしきものは秒針を思わせる]
すまん。
[彼女が手にした用具を見てのそりと這い出る。
あまり清潔でない男の匂いがむわりと漂ったかもしれず。
本人は気づいた様子もなく、
ショールを抱えたまま廊下の隅に所在無さげに佇んだ]
…
[収まる場所がなくなってしまった]
[ヴィクトールの茶目っ気ある仕草には和んだのだが
はぐらかしたものをズバリ言われた事に困惑しての表情で
それに対し弱気な考え>>75を抱いているとは露とも知れない。
菓子差し出されていたら躊躇うことなくぱくつくくらいの
一見軽薄にも見える行為をイヴァンは抵抗なく行う。
フィグネリアの礼と断り>>78にもあっさり引き下がり
白い肌が染まるのを愉しげに見つめながら差し出した菓子をぱくり。
スープが一段落し彼女が椅子に座る頃にはパン種も寝かせる段階。
容れ物の中の魚へと手を掛けた所でアリョールからの声>>81]
一応人数分はあるはずだよ。
[ゆると頷き気さくな響きを返した]
―2階物置部屋―
[素直に退いてもらえたので、ひとまず持ち出したものを元の場所にしまう]
ケホ――…、
[その際に咳き込んだのは、確実に掃除用具の為では無く、眉を顰めた。
潔癖症めいている彼女以外ならば、そう気になる事もないのかもしれないが、少なくとも彼女にとっては不快だった]
…行く場所が無いなら、少し水を浴びてきたらどうだ?
[物置部屋から出て直ぐ。
遠慮も何も無く、寧ろ棘すら有る様な響きで言葉を投げる]
[菓子を一つ食べた後、果物にも手を伸す。
新鮮な果物など、余り食べたことはなかった。
一つ二つ口にしたところで、アリョールが部屋に入ってきた]
アリョールさん……。多分、人数分は作るつもりですけど。
お腹が減ったならここのお菓子とか、果物とか摘まんだらどうかしら?
[と、皿を勧めて。
イヴァンが魚を捌き出せば椅子から立ちあがってその様子を横で見ることにした]
―2階物置―
[咳き込みに身を竦めた男は
物置の中に居た時よりも肩身狭そうに]
…水
[言われて連想するのは湖畔の冷たい水。
しょんぼりとうな垂れてから、
ようやく何を言われたのか気づく]
申し訳ない…
[なるべく彼女と距離を取ろうと
廊下の壁に背をべたりとつけたまま
ずりずりと遠ざかっていった]
その、なんだ。
こちらこそ、すまない。
[しょんぼりと項垂れる様子は、何処か叱られた小動物を思わせた。
が、不快なものは不快であるし、苦手なものは苦手なのである。
遠ざかるのを確認すると、一つ息を吐き、自身の荷物を置いた部屋へと向かう]
そう言えば、あれは…タチアナのものだったような…?
何故、彼が?
というか、そもそも彼の名前は何だったか…。
[今更な事柄を幾つか思い返しつつ。
墓地に関わりの薄い相手は、名前も出てきにくい。
ニキータという名前を思い出すまでには、少しの時間を要した]
― 個室 ―
[鍵のかからない個室のなか。
思い返すのは古いお伽噺。
夜の間に見えるもの。
そんな話を思い出したけれど、小さく吐息をこぼして考えないようにした。
ふと気づけばそれなりに時間はたっていたようで、ベッドから立ち上がる]
あら――そういえば、貸したのだったわね。
[ショールを探して、首をかしげ。
小さく呟いた。
断り文句が面白くて覚えている。
その後、パンと葡萄酒を聞かれたら、ちゃんと美味しいものを教えたのだった]
[ どれ程微睡んでいたのか。
一瞬だったかもしれないし随分時間が経ったのかもしれない。
上半身を起こすと、やや乱れた髪の毛を撫でつけた。]
んん。
[ ヴィクトールは緩く拳を作り、
口元に近づけると咳を堪えるように呻く。
埃っぽい。
寝惚け眼で立ち上がると、上着を掛けた椅子に手をかけた。]
いや、気にしてない。から、だいじょぶ だ。
[去り際の謝罪へは、彼女ではなく壁の方を向いてした。
そのままずりずりと横歩き、階下へと向かう足は重い]
…誰も いませんように。
[個室に浴室がついている可能性も考えたが、
空き部屋が判らない。
水場は台所と隣接しているのが定石であるが、
近づくほどに良い香りがする事が人の居る証明で。
厨房の前の廊下で心が折れかけた]
本当、綺麗におろせるのね。
[身と骨に分けるのをじっと見て、それから野菜スープの鍋を見ると、弱くなった火に薪をくべて、鍋を火から少し遠ざける。
こしょうを振るとさらに煮込むために又蓋を]
そのお魚は焼いてしまうの?
[椅子に座ってからイヴァンへ声をかけた]
[すっかり綺麗になった部屋に戻り、荷物から1冊の本を取り出す。
以前にアレクセイの店にて買ったものだが、繰り返し読んでいる為、既にかなりよれている]
食事が出るのなら、下で待つか。
[深く考える事もなく階下へ向かい、広間の椅子に陣取り本を開く]
―二階/自室―
[ベッドの上で身動ぎすると、微かに埃が舞う。
深呼吸しようとは思えない、未だ埃っぽい空気の中
それでも吸い込む空気の色に思い寄せるのは、
広間のあの紙の記述のひとつを思い返したから。
「人狼の食欲を増進する香」。
ヴィクトールがその話題が出した時、曖昧に振る舞ったのは
確かに胸の内、過っていたものがあったからだったが――。]
…………何か食べた方が良い、な。
[備え付けの鏡を見て身なりを整える、などということもせず
ナイフも鉛筆も何も持たずに部屋を後にしようとして――、
そうだ、とスケッチブックの一ページにベルナルトの名を記す。
扉に張り付ける為のテープは備品の一つを見繕ったもの。
といっても仮に全員が既に部屋を見つけているのであれば、
確保済みであることを記す必要もないのかもしれなかったが。]
[ 上手くタイを締められない。
香による酩酊と、
歌のような呼び声と、
残る理性が、もどかしく普段通りの指の動きを行わせようとしているが、
何度目かの試みの後、漸くタイを締める。]
―2階個室―
[思考の海から戻った後は読書の続きを。
没頭すると他からの声も聞こえないほどになるのは、恐らく書店にやってくる人ならば知っているだろう。
親を亡くすまではそういったことは無く、外に出る事も多かったが。
ふと小腹がすいていることに気付いた時、漸く戻ってくる]
……あぁ。
[読みふけってしまったと目頭を押さえて、本に栞を挟む。
それからしっかりと立ち上がり、扉に手をかけた。がちゃり、と音が響く]
慣れ、だよ。
[微かに照れた様子でフィグネリアに返す。
問い掛けには少し考えて]
チーズ焼きにでもしてしまおうかと思ってたけど、キミも使う?
[運んできた釣果の大半は捌いてしまったが
容れ物の中にはベルナルトとの約束用に二尾ほど残る。
捌いた分を示しながら彼女に問い掛けて]
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