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集会場は不信と不安がない交ぜになった奇妙な空気に満たされていた。
人狼なんて本当にいるのだろうか。
もしいるとすれば、あの旅のよそ者か。まさか、以前からの住人であるあいつが……
どうやらこの中には、村人が6人、人狼が2人、占い師が1人、霊能者が1人、守護者が1人、囁き狂人が1人含まれているようだ。
あー、諸君、聞いてくれ。もう噂になっているようだが、まずいことになった。
この間の旅人が殺された件、やはり人狼の仕業のようだ。
当日、現場に出入り出来たのは今ここにいる者で全部だ。
とにかく十分に注意してくれ。
自警団長 アーヴァインが「時間を進める」を選択しました
…再婚、ですか…。
まぁ、それについて口を挟むべきじゃないでしょうけども、ねぇ…。
[強い酒の入ったグラスをテーブルにおいて、頭を抱えていたりとか。]
[ ローズマリーの微笑む様子と告げられた言葉とには、何か思うところがあるのか僅かに表情がぎこちなくなるも、]
余り不用意にそういう事を仰られると、調子に乗りますよ?
[直ぐに軽口を叩く。
視線を彼女から逸らせば、アーヴァインとの話を終えたのか、赤髪の少女の姿が見えた。話はもう終わったのだろうか、と思う。]
アーヴァインさんが再婚、ねぇ。
ちょくちょく屋敷に来てる人って……誰だろ?
[自分もよく、祖母の言いつけで訪ねてくるけれど。
そんな相手になりそうな女性はいたろうか、と小首を傾げて思案する]
…僕は、今でも覚えていますよ…姉さん。
遠く離れていてもいつも聞こえていたあの声を。
…その声が、聞こえなくなった日のことも。
あら、調子に乗ってしまうの?
そんなことを言われると、わたしの方こそ調子に乗ってしまうわ?
[ぎこちない表情は、見なかったことにしておきましょうか。
わたしはそう思いながら、軽く笑う。
広間にたくさんの人。
少し、気後れしてしまう。]
しかし、再婚するにしてもこんな山の中に居たんじゃ難しい気がするけど…。
[酒を飲み干し頭を抱える様子に少し心配をして]
苦労するな、あんたも…。
ふぅん……。
あ。案外、ばーちゃんは聞いてるかもね。
[さっぱり、というルーサーの言葉に気のない声を上げた後、ふとそれに思い至る。
祖母とアーヴァインは、茶飲み仲間のような存在でもあったのだから]
[広間に入る直前、緑髪の女性と茶髪の青年と擦れ違う。
女性に対する複雑な感情は気取られないように一つ礼をして、中へと入った]
[ 女と話しながらも、意識は未だ広間の方に取られていた。彼の男の流していた、血の匂い。あれも手にこびりついていた赤も、やけに鼻を突いて仕方が無かった。厄介事は御免だ。否。厄介事を起こしてしまいそうなのは、自分だろう。]
『……面倒臭い……』
[ 内心呟くと同時に、違和感を覚える。此処に居ない筈の人物の声が聞えた気がした。正確に云えば其れは声というにも及ず、直接的に響くかの如きもの。]
/中/
さて、霊能者ゲット。
いつ表にでるとしますかにゃー。
霊能COと女の子COが同義だからなぁ……タイミング難しいかも。
あー、でも良かった。
霊能弾かれたら泣けるよw
[さて。ホールまで戻ってきたものの、広間への入り口前でなにやら親しく話している(ように見える)ハーヴェイとローズマリーに、少し躊躇う。
しかし湯上りに廊下で佇むのはすこーしよろしくなかったらしく、小さなくしゃみ。]
……っしゅん!
えっと、こんばんわ…です。
[何も悪い事をしていないのだけれど、ちょっとばつが悪そうに二人に挨拶を。]
[まだすこし火照る頬のまま、広間の前迄戻ってくる。
出ていく時にすれ違った緑の髪の艶やかな女性と真面目そうな青年がまだそこにいるのを少し意外に思いながらも、軽く頭を下げた。]
[くしゅんっ。小さなくしゃみを聞いて、わたしはそちらを見る。
そこにいたのは、昨日も会った少年。]
あら、こんばんは。
大丈夫? 寒いのかしら?
[少し考えて、肩にかけていたショールを外して、少年の肩にかけることにした]
……何方も何方、でしょうかね?
[ 悪戯っぽい笑みを浮かべながら言葉を返す。]
調子に乗り過ぎないうちに、
[ 失礼しますと続けようとしたところに、小さな嚔と、掛けられる声。視線を向ければ其処には湯上りらしい少年の姿が在った。]
ん、今晩和。ちゃんと頭洗ったか?
いえ、お構いなく。
[酔いが回ってきたのか、ややとろんとした目で青い髪の旅人を見返す。]
…義兄さんの個人的な問題ですからね。
…死んだ元妻の弟がとやかく言うようなことじゃないでしょうよ、えぇ…。
メイのおばあさんが知ってる、か?
村に戻ったら訊いてみるのも良いかもなー。
[しかしどことなく他人事ではあるのでさらりと笑って言う]
[思考に混ざるように響く声に、
ふと懐かしいものと違和感を同時に覚える。
姉とかつてそうしたように届き、触れ合う心は、
姉とは違う…どうも男性のように思えた。]
…あなたは?
[本能に染み付いていたそれは、すぐに勘を取り戻す。
かつて、そうであったように。]
[ふわり。
肩にかけられたショールの温もりと、彼女の移り香なのか石鹸とは違う甘い香りに、湯冷めしかけた頬が一気に火照る。]
ぇ、あ…ありがとう…ございます。
えっと、もう大丈夫です…!
[なんだか逆に熱くなった気もするくらいだったけど、せっかくの温もりをすぐに返すのはなんだがらと自分に言い訳して、元気に返事する。
結果的に邪魔してしまったのか、去り行くハーヴェイの背におやすみなさいと言いかけて。投げられた言葉に、むぅと唸る。]
えーっ、ちゃんとしっかり洗いましたよ、ほらっ!
濡れてるでしょ?
[…だからくしゃみする羽目になったのだが。]
[ナサニエルの言葉にこく、と頷いて]
うん、案外ぽろっと話してたりね?
……戻ったら……うん、戻ったら聞ける、けど……。
[ほんの少し、陰った瞳を窓の方へ向けて、途切れがちに呟き]
[和やかな雰囲気に少しだけ身じろぎして、挨拶の言葉を口にする]
……こんばんは。
[三人の前を通り過ぎて広間へ入ろうとして、少しだけ迷った。
ここに戻って、何をするというのか。
けれど、ノブにかけた手は止まらなかった。]
……酔ってんな、かなり。
[コーネリアスの様子にちょっと焦ってみたり]
そうかも知れないけどさ、もしかしたら相談する為に呼んだのかもしれないし?
[ “あなたは?”
そう、返って来る聲。今、目の前に居る三人の声とは明らかに異なる其れ。答えるべきか否か――逡巡の後、先程と同じ様に思念を零す。]
……俺は、俺。
ハーヴェイ=ローウェル……其れ以外の、何者でもない。
[ 然し、此の表現も妥当ではないように思えた。]
何だ、此れは?
……精神感応にでも目覚めたか。其れとも、気でも触れたか。
[ 疑問の聲は自嘲の色を含む。何時もの口調すら、其処には無かった。]
まあ、アーヴァインさんもこの年で男やもめというのは辛い。
そういう事なんでしょうな。
……二度も最愛の人を失ったわけですから、ね。
[残りのブランデーをグラスに開け、飲み干す。
顔色一つ変わらない。]
[広間に入るとすぐに、扉の側にいた使用人の少女に気づいた。
彼女がアーヴァインに取次いでくれたのだと思い出す。]
さっきはありがとう。
貴方、名前は?
本当に大丈夫?
……あら、お風呂に入ってたの?
湯冷めしては大変よ。
[ハーヴェイとのやり取りを聞きながら、そう言った。
風邪を引いたら、大変だから。
赤髪の少女が扉に手をかけるのを見て、広間の中に、顔出ししたほうがいいのかしら? と思った。]
[ふと、懐かしい――忌まわしい臭いが鼻先を掠めたのは気のせいだろうか]
[彼女の双眸に僅か鋭い光が宿り、…すぐに消え失せた]
[不機嫌そうなコーネリアスにどう言えば良いか悩みながら]
そうじゃなきゃこの時期にわざわざ呼ばないんじゃ?
[真相はさっぱり分からないのだけど。
そしてルーサーの言葉にふと引っかかり]
二度も?
[とだけ訊き返す]
……っと、お喋りが過ぎました。
私が喋った事は内密に。
バレたら締め上げられてしまいます。
[にこにこと笑いつつナサニエルの質問を流す。
そして。使用人を呼び出してワインを持ってくるよう頼んだ。]
……と、其れでは失礼します。
[ 今度こそそう告げてニ階ではなく外へ向かおうとすれば、不機嫌そうな声に立ち止まって少年を見遣り、口角を上げクスと小さく笑う。]
濡れていれば、洗ってあるって訳じゃないだろうに。
[ 云いながら擦れ違いさまに其の頭を撫でるというよりは軽く叩いて、]
広間に入って温まっておいたほうが、好いんじゃないか。
其れじゃ。
[片手を振って其の場を立ち去り、通り掛った女の召使にタオルを預ければ、赤い絨毯の上を緩やかに歩んでいく。]
…僕と"話せる"のは、姉だけだとおもっていました。
まさか、あなたが同族とは、ね。
[ハーヴェイの名に、書生の姿を思い出し。]
/中/
とりあえず、今回の目標。
初 回 襲 撃 回 避
……ちょっと回文みたいですね。
死にフラグは立てない! できれば生存でエピにいきたい……。
[二度って、どういう事だろう、とふと思いつつ。
でも、そこまで踏み込んで知る気はなくて]
……ん……ボク、部屋に戻りますね。
[酒盛りも始まりそうだし、と思いつつ、広間を出ようと扉の方へ]
まあ、奥方を失ったのが『二度目』という事だけは言っておきます。
それ以上は、今の私の口からはちょっと。
[それきり、この話題に関しては完全に口を噤んでしまった。
こころなしか、表情もやや暗い。]
同族?
[ 其の単語が聴こえれば、廊下を歩みながら思わず眉を顰めた。皆の前から立ち去った後で好かったと思う。斯うして他者と意識を交わせる体験は初めてなれど、思い当たる節が無い訳ではなかった。然し其れは決して好い想起ではない。]
……まさか。
[ 声となって零れ落ち掛けた呟きを、何とか“聲”に留める。]
[賑やかな室内。少女が来てからというもの、銀髪の男性の様子が少々おかしい。奥方の弟という身分にあっては無理はないのかもしれない。
丁度話題の少女が声を掛けて来て]
あ…いいえ。お役目ですから。
私のことはネリーとお呼びくださいませ。
[例え奥方の子でなくとも、この少女には罪はない筈だった。微笑んで会釈をする]
[使用人からワインを受け取り]
さて、酒宴の続きと行きましょうか。
[強引に話題を打ち切り、自分のグラスとナサニエルのグラスにワインを注ぐ。]
[問い掛けをさらりと流され、余程の事かと思いながら。
同じ疑問に行き当たったらしいコーネリアスを見る。
彼の問いも流すのだろうか?とルーサーを見る]
[扉の前に立ったまま、室内に視線を巡らす。
大人達の間では宴会が始まっているようだ。
和やかな雰囲気を見るに、彼らはもともと知り合いなのだろうか。
この館に集まってる人たちは不思議だと、改めて思う。
何故、彼らはここにいるのだろう]
本当に、大丈夫です。
…ローズマリーさんがこれを貸してくれたから。
[ショールに包まって、元気な笑顔を向ける。
けれど広間へ入ろうとする少女の姿に、確かに此処で話していても冷えていくだけと考えて、広間へと足を向ける。]
ショール一枚じゃぁ、少し寒いわ?
[少年の笑顔はとても可愛らしい。
わたしは少し考えて、ハーヴェイに頭を下げてから、
彼の後につづいて広間に入る]
―→広間―
/中/
ト書きがいまいち不明なのですよ(´・ω・)
「彼女=ネリー」なのだけど、他の女性表すときにちと不便にゃり。
[やや強引に話を変える様子にそれ以上訊く事も出来ず。
目の前でそそがれたワインのグラスを取って]
まぁ、言えない事は誰にでもあるから、ね。
[以前ローズに言った言葉をくり返して、グラスに口をつける。
先日のものとはまた違う、芳醇な香り]
[が、ハーヴェイに投げられた言葉に、慌てて振り向いて、]
ちゃんと、洗いましたってば!
濡らしてるだけなんてそんなこと…してませんっ!
[一瞬口ごもったのは、たまにめんどくさくてちゃんと洗ってない事もあるからで。でも今日はちゃんと洗ってるし、女性達の前だし必死に反論。
さっくり笑いながら去られたのも、もちろんお約束。]
[暫く鋭い目で牧師の目を見つめていたが、ふ…と笑みつつその長い銀の髪をひとふさ、指に絡めた。]
別に、関係のないことですよ、えぇ。
…姉亡き今では、あの人とは赤の他人ですから。
いろいろよくしてはもらいましたけど、ね。
[ 去り際に先程の侍女に何処へ行くのかと問われれば、]
一寸、煙草を吸いに。直ぐ戻ります。
……まさか、こんな夜中から森に入りませんよ。
[微苦笑を浮かべながらそう答え、重い観音扉を開けば夕方よりも冷えた夜の風が吹き込み、黒曜石の瞳を細めた。自然、僅かに身体が震える。]
あー……、上着持って来るんだった。しまった。
[ トビーの事は云えなかったかもしれないと思いつつも、其の儘外へと出る。流石に闇が深い為に崖の方に近寄りはせず、館の壁に背を凭れて天を仰いだ。]
[出ようとすれば、ちょうど居なかった面々が戻ってくる所で。
行き違いになったなあ、と思いつつ、軽い挨拶をして、広間を出る]
……さて、どうしようかな。
[小さく独りごちてから、足を向けるのは音楽室]
─広間→音楽室─
ネリー、ね。
私はヘンリエッタ。
これからよろしくね。
[これから。
自分で言った言葉に、自分でも驚いた。
ここにいなさいと、彼は言ったけれど、自分はここで何をすると言うのだろう。]
俺は……
父が、そうだったと聞いている。
[ 父。其れを口に――否、聲とするのは些か躊躇いがあれど、容易に伝わる方法だと判断してそう答える。声が震えるのと同様に、思念には揺れが現れたろうか。]
“人狼”。
[ 人にして獣の力を持つ者。或いは、獣にして人の心を持つ者。]
そう、呼ばれるものであったと。
[けれど、広間でぬくもった方がいいとの言葉はいかにも正論で。]
…そうですね。
ボクに貸してくれたから、ローズマリーさんが冷えちゃいそう…よかったら一緒に行きませんか…?
[どうやら広間から出てきたのではなく、入ろうとしているローズマリーの言葉を受け取り、おずおずと広間へと促した。]
−→広間−
[ 闇夜に煌々と輝く月は光の雫を零し青年の横顔を照らす。]
呪われし血だと、母は云っていたが。
[ 其れを映す黒曜石もまた金の色を帯びて、人には在らざる輝きを孕む。]
─音楽室─
[当たり前と言えるかも知れないが、そこには誰もいなくて。
ただ、静かにピアノや、それ以外の楽器が佇むのみ]
……なんか、急に色々起きたなあ……。
さすがに居辛いけど、でも……。
[呟いて、鍵盤に指を落とし。
音色を一つ、紡ぐ]
……多分、まだ……ムリ、だよね。
[ため息混じりの呟きは他の誰の耳にも届く事無く、ただ、*紡がれる旋律にけて*]
ヘンリエッタ様…ですね。
宜しくお願い致します。
[少女の目線の高さに屈んで、告げられた名を繰り返した。
少女が僅か戸惑っているように見え、ほんの少しだけの違和感、けれどそれはすぐに消えた]
[多分、まだ無理。
父は、諦めてはいないだろう。
『娘』を『取り戻す』事を。
だから、まだ、ここを離れることはできない。
でなければ、強引に動かされてしまう。
全てを]
……ボクが望んでるのは……そんな形じゃないよ……。
わかってよ……。
[掠れた呟きは、泣きそうな響きを帯びていたかもしれず]
わたしは、大丈夫よ?
[トビーの言葉に笑って。
メイを見送ると、一緒に広間に入った。
出て行く牧師さんは、とてもお疲れのようだから、頭を下げて]
お父上が…。
[そういえば、彼は母子家庭だったとふと思い出す。]
そう、我らは人狼。
人に化け、人に巣食い、人を喰らう獣。
…少なくとも、僕と姉は。
[既に酔いが回っているらしいコーネリアスと、速いペースでグラスを空けるルーサーの様子に心中察したか何も言えず]
あまり旅人が余計なことに口を挟んでも、ね。
[そういって自分もグラスを空けて、また新たにグラスに注いで。
普段の自分から見れば、それは無茶なペースかもしれないが]
−広間−
[広間に足を踏み入れれば、ネリーと赤毛の少女が自己紹介をしているようだった。]
ヘンリエッタ…か……。
[ネリーが繰り返すのにつられるようにその名を呟いて。
ふと、金の髪の少女の姿が見えないことに気付く。そして彼女の名を知らないことも。]
……まぁ、別にいいけど。ボク明日には帰るし。
[なんだか残念な気がするのは、気のせいだろう。たぶん。]
[自分の名前の後につけられた『様』にも違和感を覚え、ヘンリエッタの視線が彷徨う。
不安そうな幼い子供の表情が一瞬だけ覗き、すぐに隠れた。]
ねえ、ネリー、早速お願いがあるんだけど。
[そこで一端困ったように、照れたように笑った。]
私の寝室はどこなのかな?
お父さんには空いている場所を好きに使うように言われたのだけど、私にはわからないから……。
[ ポケットから取り出したシガレットを口に銜えれば今度は落とす事もなく、片手で真鍮製のジッポライターの蓋を開けてフリントホイールを回す。小さな音を立てて火が点り、其れを煙草へと移した。ややして、風に揺られながら白が辺りに漂い始め闇を塗り替えるも、其れも直ぐに消え失せ煙草特有の匂いだけが残る。]
…………ふう。
[ 仰いだ天には煌めく月。
溜息交じりに煙を吐き出せば、漸く一息ついたという気がした。]
俺の父も、“そう”だったらしい。
[ 目を眇めながら答える。闇の中に一人佇む彼に、普段の人当たりの好い雰囲気は何処にも無い。何もかも如何でもよさそうな、気怠けな表情ばかりが在る。]
……喰らったのか?
[ナサニエルにつられて手を振り返し。
ローズマリーと一緒にいるという事が彼に勇気を与えたのか、グラスを弄ぶコーネリアスに近づいて声を掛ける。]
あの…コーネリアスさん。
昨夜は…幽霊と間違えちゃってごめんなさい…。
[首は痛いので、身体ごと折り曲げるように御辞儀する。
氷だけが残ったグラスでは、何を飲んでいたかなんて想像が付かなかったのは、幸か不幸か。]
ああ、空いている部屋なら2階に…
ご案内致しましょうか?
[欠伸をする様を見て、小さく笑いながら。
どの程度の距離を少女が歩いて来たのかは分からないが、何しろ来たばかりだ。疲れていても無理はない]
…全く、姉が聞いたらどう思うのでしょうね…。
他所に子を作っているわ、再婚なのを隠しているわ、
…また、新しい女に手をつけているわ…。
[手を振り返すトビーににやっと笑い、彼がコーネリアスに近付き謝罪の言葉を言うのを聞いて]
あ、真相分かったみてーだなぁ。
[くすくすと笑うも、今のコーネリアスにそういう事を言っても大丈夫かとふと不安に]
[ ふいと視線を下ろせば、彼岸には黒に染まる深き森。否、向こうからすれば此方が彼岸か。まるで現世から隔離されたかの如き幽玄なる此の館の在る、此方側こそが。だからこそ、自分は此処に惹かれるのだろうが。]
『然しあれだけ人が多くちゃな……』
[ 安らぐ暇も何も無かった。厄介事は御免だと再び呟いて、生まれては直ぐさま薄れゆく白を見送りながら、*目を閉じた。*]
[コーネリアスの呟きも聞こえる。
……新しい女、ではないから違うだろうとは思うけれど、少し耳に痛い言葉。
それにしても子供とは何の話だろう。]
聞いた覚えもないけれど……
[言葉を口の中で転がして]
ん、きたばかりだけれど……
あぁ、そこの人が、怪我をしていた人かしら
……暖かくしておいてあげないとね。
[部屋の中の、彼を見ることが出来た。眠っている姿。……わたしがきていたら、治療は出来ていただろうけれど。
起こすのも忍びない。]
先に、休むわ。
おやすみなさい?
[子供とか、そういう話を聞きに、アーヴァインの部屋に行こうと*決めた*]
それ、本人に言ってやったら?
[コーネリアスの呟きにそう返して。
側のソファにいまだ眠っている男を見遣って]
こいつ、このままにして置けないよなぁ?
どうすんだ、これ?
…ああ。
[声を掛ける間もなく、少女は半ば夢の中に旅立ちかけているようだった]
ご案内致しましょう。
[そう囁くように言って、少女を抱き抱える。使用人を長くやっているお陰か、割と力はあるようだった。
その場にいる者に軽く会釈をして、空いた寝室へと彼女は*向かう*]
――へえ?
[ 相手の言葉を聞きながらも関心は無かった様子だったが、憎しみを孕んだ聲を聴けば些か関心の色が混じる。]
[ 一転して淡々と続けられた台詞には、先程の問い掛けは単なる確認に過ぎなかったのか、そう、と然して衝撃を受けた様子も無く呟く様な聲を洩らしたのみ。
彼の手は相も変わらず火の点いた煙草を弄り、口唇が音を紡ぐ事はない。此の“会話”は奇妙な感覚ではあったが、直ぐに慣れてしまいそうだった。恐らくは、彼の人狼としての本能に植え付けられた性質なのだろう。]
[訝しげな声に怖気づくも、今を逃したら家に帰れないと言葉を紡ぐ。]
えっと、その、ホールの奥さんと…よく似てたから、幽霊かと思ってそれで…怖がっちゃって…。
[最後の方は随分と小さな声だったけど、それでも辛うじて言い切る。]
[正直な所、コーネリアスが館に住んでいた頃、彼は幼なすぎて記憶があやふやで。真相を教えてもらえるまで、すっかりきれいさっぱり奥さんの弟と言う存在を忘れていたのだ。
なんで思い出せたのかというと、それは実に単純で。
「あのおねーちゃんきれー」とコーネリアスを見て言ったらば、青年に仄かに思いを寄せていたらしい姉ちゃんに拳骨を見舞われた、その痛みを思い出しただけなのであるが。]
[怪我人の処遇を問えば、部屋が用意できているとの答が返り]
ふーん、じゃぁそっちに運んだ方がいいな。
俺ももう上に行こうと思ってるから、よかったら運ぶの手伝うけど?
[その申し出にお願いしますと言われて、それでは、と男を運ぶ為の用意を]
で、部屋何処?…あ、そう?分かった。
[そう言って、怪我をした男を運ぶ為に二階へ。
無事に運び終えれば、そのまま自分に与えられた部屋へと*戻っていくだろう*]
…僕の不在の時に…姉は、
[言いかけて、言い澱む声。]
あの薔薇の茂みで…喰らったそうです。
一夜の宿を借りに来たと見せかけて、姉を押し倒そうとした旅人を。
「見られてしまった。」
そう、姉は僕に囁きました。
姉の声が聞こえたのは、それが最後。
[クスクスと笑うコーネリアスに、無意識に片足を引いたのは本能のなせる業か。]
『…なんか、怖いよぅ……』
[”優しい”と言ってたメイに内心クレームつけつつ、こくこくと頷く。首の痛みより心と言うか空気が痛い。何でみんなバタバタといなくなるのーとかいう心の叫びは誰かに聞こえてるはずだ、きっと。]
夜だったし…ガラス越しだったし…牧師様と一緒にいてたし…。
今、明るい所で見たら…違うってわかるけど……。
[消え入りそうな声で言って、しょぼん。]
[ “父”と称しはしたが、彼は其の男とは逢った事が無く、顔も知らない。
物心ついた時には既に片親は居らず、幼い彼は無邪気にも問うた事があった。
「どうして、うちには父さんがいないの?」
其の言葉を聞いた時の母の表情は、今でも忘れられない。細い柳眉は顰められ薔薇色の唇は歪み柘榴石の双眸は僅かに潤んで、涙が零れ落ちそうだった。何か重大な過失を犯してしまったのかと、彼は慌てて母に謝罪し、もう訊かないと誓った。
母は其の誓いに頷くでも無く、唯、顔を俯かせてハーヴェイが生まれる前に死したとだけ云った。父の話を聞いたのは、其れきり。]
[ 其れからというもの、母は彼を、癖を、口調を、食事の好みを、一挙一動を注意深く観察するようになり、時折其の瞳は愁いや憤怒に彩られた。
決して生活に愚痴を云う事は無かった母だが、幾ら経っても其れだけは止める事が無く、寧ろ年を追う毎に増していったように思う。其の理由を問う事は何故だか憚られ、彼は母の機嫌を損ねるまいと努力したが、成果があったのかは解らない。]
嗚呼、
[ ――だからか。続きは聲にも成らず彼のうちに秘められた。]
貴方の姉は、薔薇の下で肉を喰らって。
其れで、彼の男――アーヴァインに殺された。
実の妻であるにも関わらず。
[ 繰り返す。]
ま、別にかまいませんけどね。
[からころと、グラスの中に溶け残る氷を弄びつつ。]
…ですが…それ、本当に僕ですか?
[意味深に、ぽつり。]
…えぇ。
[静かに返す声。]
姉は暴漢に襲われた…と、義兄から来た知らせには。
…嘘だというのは解っていましたけどね。
[別に構わない、という言葉に心の底から安堵して。
ぎこちないながらも笑みを浮かべ、よかった…と呟こうとして、]
…………………………え゛?
[硬直]
……丸きりの嘘でも無いだろう。
襲われたのは本当でも、殺ったのは――というだけで。
[ 嘘も方便。そんな言い回しが思い起こされて、小さく哂う。]
ならば、此処へは……恨みを晴らしに?
[ ふと疑問に思い問い掛けた其の言葉は、興味故というよりは自分がそんな事に巻き込まれたくがない為。]
…そういうことになりますね。
[淡々と、ぽつり。]
手伝えとは、言いませんよ。僕ひとりで十分です。
…むしろ、邪魔して欲しくないくらいで。
[ 左の手を右肘のうちに乗せて腕を組み、当然だと云わんばかりに息を吐けば、矢張り大気は白に染まる。煙草の長さは既に三分の二程になっていた。]
邪魔等するか。……俺は、感知しない。
[ 其れは逆に云えば、アーヴァインの殺害を見過ごすという事にも成る訳だが。]
[ 届いた聲に薄く瞼の間から覗けば、月は黙して自らの従属者たる青年を見下ろす。長く見詰めていれば、其れ丈で魅入られてしまいそうな程に冷艶な光。緩やかに一度首を振って其れを払い、]
……それに。
[代わりに呟く様な思念を零す。]
其の事が本当ならば、アーヴァインは……俺にとっても害をなす存在だからな。
居なくなって貰った方が、都合が好い。
[ 母の遺した言葉が指すところが彼の推測通りで在れば、の話だが。]
[ 母が死の間際に遺した言葉。
何かあれば、アーヴァインさんを頼りなさい――と。
聞いた時には何故其の男なのかと思ったものだが、彼が人狼の存在を知っていたのならば、話は違った。……とは云えど、母自身が其の事を知っていたかいないか、今となっては真実は不明であるが。]
[ 聲が聴こえなくなった後も、青年は暫く其の場に佇んでいた。耳に届くのは風の唸り、木々のざわめき。其れに混じり獣の遠吠えが聞えた気がしたのは幻聴に違いない。寒さに依るものではない悪寒が背筋に走り、微かに躰を震わせた。
軈て吸い終えれば崖の方へと歩み、短くなった煙草を軽く放り投げれば風に攫われる事も無く、小さな焔の揺らめきが綺麗な弧を描いて奈落の底へと堕ちていく。其の光景は黄昏時のものとよく似ている筈なのに、全く異なった様相を見せていた。]
……。
[ 其れを瞬きもせずに見送る黒曜石の眸は、*酷く無感情なものだった。*]
/中の人/
……恐らく、彼らの予測と真実とは違う気がしているのだが。
アーヴァイン殺害はコーネリアスに任せて好い、と。言い換え無し村だと余り打ち合わせの必要が無いので、中の人発言が少なくて済みますね。
因みに自分で殺るのならば「最後の晩餐」に准えようかと思っていましたが。何処かで使えるだろうか。
嗚呼、狂人は誰なのかな。見られている事を意識しておかねば。
[夢。][夢を見る。]
[暗く深い森の中を疾走する]
[影。]
[樹の間より洩れ出ずる月の光、]
[皓々と照らすその光を浴びて。]
[闇と光のモザイクの中]
[かろがろと。]
[傷めつけられた身体が冷えないようにと、暖炉の火は一晩中燃やされ]
[一時期は落ち着いたものの、夜半過ぎより発熱し、]
[明け方まで苦しげな呻きを断続的に発し続けた。]
[唇を湿らせる様に水を与えられれば、]
[乾きに反応してか、傷ついた唇が開き、受け入れ。]
[噎せない様に少しずつ流し込まれるそれを]
[咽喉へと。]
/中/
メモ:RSS謎動作。
日付変更後から、村データの新規読み込みが止まってた。
旧データを削除後新規に読み込んだら表示。
募集・開始前のデータは、朝になった時点では更新されて、何もない状態に。
[黄金の眸。]
[甘く甘い命の水。]
[泉の如く湧き出づる][紅く、赫いその美酒を。]
[頭を喪った胴体から噴水の如く溢れるそれを、]
[或いは捥ぎ取った首級より滴るそれを。]
[開いた口に受ける時に広がるその味。]
[紅く、赫く]
[視界が塗り潰されていく]
[憎しみ][憎悪が]
[伝わってくる]
[赫く、紅い闇の向こうから。]
[声]
[二つの声]
[低く遠く][微かに]
[その言葉はしかとは聞き取れず]
[ただ単調な旋律のように]
[熱い息を吐き]
[切れ切れに言葉を吐き出す。]
……………ィン。
なぜ、な
い や
いっ に
……したく、ない。
…………………………………………
や め
ひ と
なり……い。
[涙が目蓋の下から溢れて流れる。]
[その後は人の名前にも聞こえる音節を唇に浮かべるのだが]
[声にならずに聞き取れぬまま呼吸音に紛れ消えていく。]
あー……、そこを、なんとか。
[ 帰る前にと本を数冊貸借して行こうとすれば、届けをアーヴァインに確認して貰わねばならないと侍女に釘を刺される。男の使用人は既に麓へと向かったらしく、ネリーが来たとは云え普段より多い客の対応に大童の彼女は、もう一度ハーヴェイに駄目です、と強く云い残し足早に其の場を去っていく。]
……今回は諦めるかな……。
[ 本中毒に近い彼にとって其れは苦渋の選択なのだが、主の確認を待っていては何時まで経っても館から出られないよう気がする。トビーの手紙を受け取らないのだって、態とに思えて仕方無いのだから。普段ならば兎も角、やけに人の多い此の館に滞在するのは少々厭気が指した。]
『それに』
[ 緋色の絨毯を踏み締めながら、昨夜の事を思い返し小さく息を零す。]
『……彼奴が其の気なら、さっさと立ち去るのが利巧だしな』
[ 彼の義弟も、此れ程に人が居る時に……等という愚挙は犯さないとは思うが。
今回は、とは云ったものの――少なくともアーヴァインに逢う機会に関しては、次はもう無いのだろうと思う。本の貸借については別の話となるが、其れも容易では無くなるだろうか。]
−客室−
[目が覚めたのは、彼にしては珍しく日が高く上った後で。
いまだ鈍く霞がかった頭を持ち上げ、辺りを見回す。]
……ぁれ? ボク………? ぅわっ、もう昼じゃんっ!
[上質な厚いカーテン越しにも、今が早朝でないのは明白で。素っ頓狂な声を上げて飛び起きる。
そのまま鞄を引っつかみ、ドアノブを掴み開けようとして――]
−自室−
…ぅ……。
[寝台の上で身じろぎ、情けない呻き声を上げた。
うずくまった背中にさらりと銀の髪が流れる。]
…流石に、深酒が祟りましたか……。
[優れぬ気分のまま、寝台の上で丸まっている。]
[何かが引っかかる感触に良く見れば、内側から鍵がかかっているようだった。]
…え? 何でボク、鍵なんてかけて……?
[訝しげな表情を浮かべつつ、カチンと開錠して。そのまま廊下へと踏み出して、ようやく現実に頭が追いついたらしく、]
ゆ う れ い …ぃた…んだっ…け……?
[硬直。]
[――とりあえず、今は陽の高い真昼間で。
廊下にも人影なんてどこにもなくて。
何よりかにより、その存在を否定したくって。]
……ゆ、幽霊なんているわけないじゃん、おおげさだなぁ。
[えらく乾いた声音で、強がり言って。
ギクシャクと足を運んで誰かしら人が居るであろう広間を目指そうと。(やっぱり怖い)]
[よろりとふらつく白い影を見、絶叫。]
ぃゃーーーっ! 今は昼間ですってばーーーっ!
[涙ながらに廊下を駆けて、階段を半ば飛び降りるように広間へ逃走。]
[ 簡単に纏め終えた荷物を手に部屋の外へと出れば、廊下中に響き渡る少年の悲鳴に眉を顰め耳を押える。視線を向ければ猛スピードで走り去る小柄な後ろ姿。]
……今度は何なんだ。
[ 叫びの余韻が消えた頃、漸く耳から手を離し呆れ顔で疑問の呟きを零しながらも、直ぐ傍に在るコーネリアスの姿を認めれば合点がいった様子。]
……。
[ 額に手を当てた。]
−→広間−
[――しかし、広間にはまだ誰も来ていなかったようで。涙目で隅っこでガタガタブルブルと。]
ぅえーん、なんで昼間っから幽霊なんてぇぇー………ぇ゛?
[そう言えば。
幽霊もいるけど、コーネリアスさんもいる訳で。]
………また、やっちゃった?
[今度はいやーな汗がだらだらと。]
あー……。
[ 彼が少年に真実を伝え幽霊騒ぎは解決した筈だったのだが、其れは気の所為だったか。然う思いながらも具合の悪そうなコーネリアスに近寄り声を掛ける。]
……大丈夫ですか?
―二階・客室―
[廊下に響く叫び声に、まどろみから目をさます。
寝起きのぼんやりした頭でも、それが意味する事は察する事が出来て。
くす、と笑み]
……まったく。
そんなにふらふら出てくるモノじゃないのに、幽霊なんて。
大体……。
[独りごちる言葉はかすれ、音にはならずに]
―客室―
……なんだぁ、今のは?
[その声に思い当たる物はあれど、原因が思い浮かばずに]
…様子、見に行くか。
[そう呟き身支度を整え部屋を出る。
夕べ怪我人を運び込んだ部屋の前を通ると、使用人が出てきたので様子を尋ね、落ち着いていると聞けば安心して広間へと向かう]
――で。
[ 斯うして顔を合わせているのに聲を交わすというのは奇妙な感覚だが、]
昨夜のは俺の夢だった……って事は無い、よな?
[確認するように、謂う。]
―→広間―
[広間へと足を運び見回すと、隅で震える少年が一人]
…どした?またなんか怖いもんでも見たか?
[だいたい予想はつきはしたが]
二日酔い……、
[ つい先日飲み過ぎたと云っていたのでは無かったろうか。昨日、自身が広間から消えた後何があったか等知らない――娘だと名乗り出た少女の件は兎も角――彼は、其れにも若干の呆れを覚えつつも、]
取り敢えず、水でも貰っては?
[表面上は心配の素振りを見せておく。何時もの事だ。]
…残念ながら。
[視線を上げてその目を見る。
僅かに瞳の奥に何かが煌き…]
巻き込まれたくなければ、早々に立ち去る方がよろしいかと。
さて、と……どうしよっかなぁ……。
[小さく、呟く。
そろそろ祖母が心配ではあるのだが、帰るには別の心配事もあるため、容易くは行かず]
……もう少し、様子見、かな。
[長逗留になる分には、ここの主は何も言わないから。
そういう意味では、気楽なのだけれど]
[自分の中の勇気を闘い、あっさりと白旗を上げた所で、広間の扉が開いて。ぎゅぅと目を瞑って震えるも、かけられた声に、ぱっと喜色を浮かべ顔を上げる。]
…ナサニエルさんっ!
あの、さっきボク、ゆ…コーネリアスさんか幽霊を見ちゃって…
[辛うじて幽霊よりも先にコーネリアスの名をあげたのは、今が昼間だったからだろう。]
[ 向けられた瞳の微かな煌きに目を瞬かせ、息を呑む。]
……云われなくとも。
[ 立ち去る男を見送りながら返す聲は微かに揺らいだろうか。]
然しお前も、此れだけ人が居るのに行動は起こせないだろう。
ま、へこんでても仕方ないし……。
お湯使わせてもらって、さっぱりしよ。
[小さく呟くと、着替やら何やらを一式揃え。
どことなくふわふわとした足取りで*浴場へ*]
[予想通りの返事に笑って]
今は昼間だからなぁ。
幽霊はないんじゃないか?
そんなに怖がってばかりだと、大事な人を守れないぜ?
[そういって、ぽん、と軽く頭を撫でてやった]
[ 少々危なげな足取りで階段を降りていく男を見送れば、細く息を吐いた。
荷物を背負い直し、廊下の突き当たりに在る窓を見遣る。今は晴れているようだったが、何時天気が崩れるとも知れない。出るならば早い方が良さそうか、と思う。]
[頭に乗せられた温もりとおおらかな声に、なんだか自分が余計に小さく思えて、しょんぼりと肩が下がる。]
う…ん。……そうだよね。
ありがとう、ナサニエルさん。
[それでも、”あれ”が幽霊じゃないと言われれば少し元気も出てきて。ナサニエルに、小声で頑張ります、と頷(略)]
……。
[ 其方の可能性も在るかと考えていなかった訳ではないが。]
然様で。いざとなったら食事にも出来る、……か?
……まあ、俺には関係無い話だな。
[ 僅かな沈黙の後、至って興味の無さそうな様子で謂う。]
[トビーの様子を眺めつつ、そのうちに誤解は解けるだろうかと心中で笑いながら。
適当な椅子に腰掛けて、事の行方を*見守ることに*]
/中の人/
書吟鳶と冒学とでは部屋の在る方角(?)が違うっぽい。
西側東側に分かれていて、中央に階段がある感じだろうか。
[ 出発するにしても食事を済ませてからかと考え、遅れて広間に向かえば或る意味予想通りの光景が広がっていた。再び呆れた表情になりつつも皆に挨拶を済ませ、軈て運ばれて来た昼食を摂る。二日酔いのコーネリアスがソファに沈み込んでいるのを見れば、確かに其の少々蒼褪めた顔色は幽霊というか何と云うか、人成らざるものには見えたかもしれない。]
……が、好い加減に慣れろと。
[ 其れでも思わず、呟きは零れてしまった。]
[ 食事を終えれば帰宅する旨を告げ、此の場に居ない皆にも宜しくと軽く頭を下げて広間を後にする。未だ用事を終えられないトビーが、若干恨みがましい目で此方を見て来たかもしれないが、敢えて無視しておく。
そしてアーヴァインに見付かって引き留められる前に――恐らく主は未だ自室だろうが――と、早々に館を出た。]
[ハーヴェイのツッコミ…もとい呟きは、ナサニエルの背に隠れる彼の心にぐさりと突き刺さった。
さらに言えばコーネリアスはなんだか具合が悪そうで、二日酔いという理由はわからずともなんだか罪悪感も湧いてきていたりする。]
…………ぅー。
ぁー…騒がしくしてごめんなさいぃー。
[小さな声で、広間の皆へと謝罪する。ついうっかり頭を下げようとして苦しんだりもして余計にあきれられただけかも知れないが。]
[やがて昼食が広間に運ばれれば、今更ながらに育ち盛りのお腹が空腹を訴えて。椅子にちょこんと座り、朝食の分までたっぷりと胃袋に詰めんでいく。
その途中、さっさと食事を終えて館を後にするハーヴェイの背を若干恨みがましい目で見てしまったのは、きっと自分にはない青年の毒舌…もとい弁舌の強さと要領の良さゆえだろう。たぶん。]
……ごちそうさまでしたー。 …けふ。
[帰るとなればついお腹いっぱい詰め込んでしまうのは貧乏性ゆえか。皿を下げていく使用人のおばさんが笑みを抑えきれずにいる様子に少し赤くなる。
鞄を持って、館の主のいぬまにお暇しようと立ち上がれば、患部なのにちっとも大切にしてもらえない首が抗議のように鈍い痛みを発して、溜息。]
ぃったー。
……まぁ、帰ってからでいっか。
[風呂に入った時に包帯は巻きなおしたし、とシップの張替えは諦めて、宥めるようにそこをさすって。
ふと、何か大切な事を忘れているような違和感を覚えて――]
[思わず出した大声は、コーネリアスの頭痛を増したか否か。
しかしそんな事に彼が気がつくはずもなく、慌てて客室に戻り、寝具に埋もれたままだったショールをぱたぱた叩いて簡単に畳む。]
………ちゃんとお礼言わないとなぁ。
[そんな風に呟いた頬が少し火照っていたのは、階段を駆け上がったせいではないだろう。
――しかしまぁ、ローズマリーと逢ってショールを返す前にアーヴァインと遇ってしまい。行き倒れの青年の怪我の理由がわからぬ今、子供の彼が1人出て行くのは危険だと説得されてしまうのは *運命と言うヤツなのだろうか?*]
[ 安定性の悪い吊り橋を危なげ無く渡り終え、乾いた固い土を踏み締める。
然し空気は湿り気を帯びていて、早急に下りる必要があるように思えた。黒の視線は緩やかな坂道の先へと向けられ、目指す先は天に煌めく陽光とは対照的に薄闇に覆われていた。来る際にカンテラを無くしたのが、益々悔やまれる。
地に視線を落とせば、森へと繋がる一筋の道に、黒ずんだ緋色の軌跡が点々と続いているのが目に入った。其れも、ずっと奥まで。……彼の男のものだろうか。]
[ 血の痕。
既に乾き切っているにも関わらず、其の赤い色と僅かに残る匂いに甚く惹かれる。
“同族”と感応した所為か、獣としての性質と感覚とが、以前に増して強くなっている事に、否が応でも気付かされた。ずっと封じて来た筈の其れが。]
……。
[ 瞳を閉じて首を振り、其れから目を離す。]
[ 成る可く其れを見ないようにしながら暫しの間黙々と歩を進めていたが、樹間から覗く太陽が翳ったのに気付き顔を上げ天を仰いだ。空は見る見るうちに暗澹たる雲に包まれ灰色がかっていく。山の天気は変わり易いとはよく云ったものだ。]
げ、拙……。
[ 小さく舌打ちをして、振り返り自らの歩んで来た道を見遣る。
館の影は既に見えぬにしても、未だ大した距離を進んではいない。麓までの道程を考えれば、今なら戻る方が早いのは明白だった。唯でさえ冷えるというのに、雨具も無しに雨の中を歩く等というのは正気の沙汰ではない。]
[ 再び、緋色が目に入る。思考が逸れる。
――彼の男は、アーヴァインを殺すのだと云っていた。
血の惨劇。“また”あの鮮やかな色彩が見られるあの馨しい匂いが嗅げるあの甘美なる味を味わえるかもしれない。其れは、酷く魅力的なものに思えた。アーヴァインは駄目だとしても他の人間は如何だろう。容疑者は沢山居るのだ。]
[ ぐらりと、世界が揺らぐ。]
[ 同族の味方も、人間の助力も、する気は無かった。
自分以外に信じられるもの等無かったから。
唯、自らの欲望さえ満たせれば好いと思った。]
[ ガサリ。風も無いのに視界の端で傍ら茂みが揺れた。
深き森には人を喰う魔が棲まう。其の様な言伝えが想起されたか、青年は視線だけを些か機械的にゆっくりと動かす。
――闇の奥で煌く、金色の眸。
遥か遠くにも聞える低い唸りは雷鳴か。
降り出した雨が一滴、頬を濡らし*伝い落ちる。*]
[目の前には、倒れ伏した人、人、人。
手に発砲したばかりの銃が握られ、硝煙をたなびかせている。
銃は便利な道具だ。
遠くから使えば簡単に人を殺す事が出来る。
刃物や鈍器のように人の肉や骨を断つ感触を伝えることもない。
しかし、それでも。
人を殺した事には変わりない。
私の罪は、許される事などないのだ。
私は屍の向こうから歩いてくる『彼女』にも銃口を向け、躊躇うことなく発砲する。
……そこで、目が覚めた。]
[ 頬を打つ雨にも意識が奪われる事は無く、闇色の瞳は真っ直ぐに其れを見据える。欲望の光を湛え爛々と輝く金色の眸。
他の部位は辺りを包む黒に紛れて見えないのにも関わらず、其れは獣だと判った。理性等欠片も無い、欲望を剥き出しにした狼。
或いは、其れは――。]
[ 彼自身か。
村の老体は森の深きに棲まうと云うが、魔はもっと傍に在る。より近しいものだ。気が付けば直ぐ其処にも迫っている。]
[ 何れだけの時間そうしていたのか、不意に金の光は黒き闇の中へと消えた。
額に張り付いた髪も水を吸い込んだ服も、重みを増して滴をポタポタと零す。陽光は失われ、代わりに木々の合間から覗くのは遠くに落ちる稲光。]
(……寒。)
[ 我に返ってみれば思うのはそんな事で、再び傾斜を見上げれば躊躇いなく来た道を辿り館を目指す。
大地に描かれた緋い雫の軌跡は、今宵の雨に*埋没する事だろう。*]
[ベッドから身を起こす。
『あの時』の夢を見た。酷い頭痛がする。
外を見ると、日はとっぷりと暮れていた。
やはり、昨日飲んだアレのせいだ。
もったいないと思って飲んでしまったのだが、それがいけなかったらしい。
口の中には、未だにあの生ぬるい風味が残っている。
そのうえ、あんな夢を見たせいか妙に息苦しい。
無性に空気が吸いたくなり、窓を開けようとした。が、開かない。
忘れていた。この屋敷の窓は嵌め殺しだ。
その場で深呼吸をするが、やはり息苦しい。
仕方がない。
軽く身支度を整えて、*新鮮な空気を吸いに屋敷の外へと足を運んだ。*]
[ぷつり、]
[繊維を噛み切り]
[骨から肉をこそげとる]
[その感触も]
[じゅわ、]
[脂の蕩ける様な]
[やわらかい膚も]
――回想・自室――
[早朝。目を覚ませば旅支度を整える少女に、使用人の一人が声を掛ける。
――内容は滞在を促す物で、少女は頑なに首を横に振るが、恩人の申し出と聞けば渋々承諾して、もう一日だけと屋敷内でゆっくり時を過ごす旨を使用人に伝えた。]
[旅支度が無駄になれば、余った時間は何を求める?
自身に問い掛けながら、少女は屋敷内を探索し始める。]
[書庫で古い本に手を伸ばし、音楽室で鍵盤に白く細い指を落とせば、薄紅色の唇からはアリアが零れ落ちる。細くも高く透き通る歌声は、この屋敷の誰の耳にも届くことは無く、まだ日が昇りきらない静謐な空間に、僅かに漂っては消えていく。]
[日が中央に昇る正午、少女は音楽室を出て再び屋敷内を探索し始める。
途中、使用人に声を掛けられれば、厨房で彼らと食事を共にし、再び屋敷内を歩き始める。]
[使用人から教わったとおり、屋敷の裏手にある庭園に顔を出し、花を愛でること数時間。日が傾き始めたのをきっかけに、少女は広間へと向かう。途中、書庫から本を一冊拝借し、使用人にティーセットを準備してもらって…。]
――庭園→書庫→広間へ――
――広間――
[中に入ると、昨日挨拶を交わしたナサニエルの姿が目に入り、軽く会釈をする。
他に何人かいるようだったので、微笑を浮かべながら挨拶を済ませ、一角のテーブルに着き本を開く。]
[給仕を申し出られればお願いしますと唇に乗せ、熱いアールグレイをティーカップに注いでもらい、ゆったりと啜りながら。しかし他の人の邪魔になら無いようにひっそりと、少女は自分の時を刻んでいる。]
[ 其の頃。静かに刻まれる少女の時とは正反対に、青年の時間は甚く騒がしかった。
俄かに降り出した雨は愈強さを増してザアァという音が耳を突き、其れに混じるのは泥濘るんだ土を跳ね上げる音。暗い登り道を走るのは些か危なっかしいが、のんびりしていては凍えて動けなくなりそうだった。
森を抜ければ館が見え、深く吐いた息は安堵か嘆きか、兎も角白に染まる間も無く雨に流されていく。]
─音楽室─
あー……降って来たなあ。
[ふと見やった窓の向こうの様子に、ぽつりと独りごちる。
浴場で汗を流した後、また、音楽室でピアノを弾いていたのだが、さすがに空腹に我に返ったところだった]
……これじゃ、帰りたくても帰れない、かあ。
ま、父さんを黙らせる口実にはなるから、いいか。
[呟きと共に口の端に浮かぶ笑みは、苦笑と見えただろうか]
―自室―
[ここに来てからというもの来客への対応に追われ、荷の整理をまだ済ませていなかった。お勤めの合間に与えられた部屋に立ち寄ると、替えの服をクローゼットに仕舞い、一通り整理を終えると一息吐く。
ふと、開いたスーツケースの隅に視線が注がれる。
見つめるのは無機質な双眸]
…
[が、ふいと視線は逸らされ。
そしてそれに触れることなく、ケースの蓋は閉じられた]
それにしても……。
[小さく、呟いて。そっと、胸元に手を当てる。
昼間、浴場で自分の身体を見て、目を疑った]
これ……あれだよね。
ばーちゃんの言ってた……巫女の印とかって言うの……。
[左の胸。
さすがに、誤魔化すのが難しくなってきた膨らみの上に浮かんでいた形。
そこに浮かんでいた、祖母の一族に伝わるという力の、印]
……また……視えるように、なっちゃうのかな……。
トビーくん、笑えなくなるなあ……。
[左の胸──場所的には、心臓のある辺りか。
そこを、押さえるように手を触れつつ、雨の帳を見つめて]
しっかりしろ、メイ。
気にしすぎちゃダメ……気にしないの。
どうせ……どうせ、何も起こらない。
これだって……きっと、すぐに、消える。
……消えるはずなんだから。
[まるで言い聞かせるように、呟いて。
ゆっくりと窓辺を離れ、音楽室を出る]
[──然うして眼を見開いたまま、]
[何れ程の時間が経ったのだろうか]
[ざ────]
[くぐもった][雨音]
[部屋の中にも漂い]
[ 目に入りかけた前髪を退け手の甲で顔を拭うも、其の手も濡れているが為に和らげる効果しかない。
森と館との間に架かる吊り橋が、今日は特に怨めしく思えた。風が然程無いのが唯一の救いか。ギィと橋の立てる軋みすら雨音に紛れ、揺れは降り注ぐ雨滴に隠される。
寒さに音を上げる躰と悴んだ手とにもう少しだと云い聞かせ、如何にか渡り終えればベルを鳴らすが、其の古びた鐘の音すら掻き消されるか。]
[窓の外を眺めては、降りしきる雨音に耳を傾け]
引き止められて…正解だったのかしら…
[小さく呟く。カップの底に残る紅茶を飲み干し静かに本を閉じた少女の眼差しは、いつの間にか窓越しの暗闇の中に*奪われていた*]
―廊下―
[外で降る雨の音は次第に強さを増していた。何となく、暗鬱な気分にさせられるような。
丁度同じ程のタイミングで出てきたらしいメイの姿を見つければ小さく会釈をして、自らは二階に向かおうと。
その耳に、玄関のほうから微かにベルの音が届いた気がした]
[音楽室を出て、広間へと向かう。
ふと、人の気配を感じればネリーの姿が。
会釈するのにやあ、と挨拶を返した直後に、ベルの音らしきものを捉えた気がした]
……また、誰か来たのかな?
[ 開かれた扉。今度は紛れも無く安堵の息を吐く。]
あー……っと、今晩和。
……済みません、取り敢えずタオル御願い出来ますか。
[ 殆ど感覚の失せ赤らんだ手を軽く不利、バツが悪そうに苦笑を浮かべつつ云う。寒さ故か、顔色は蒼褪めていた。濡れた髪から服から、パタパタと止め処無く水が滴っていく。]
―広間―
[どれ位ぼんやりとしていたのか。
広間に現れたウェンディに会釈を返し、周りを伺う。
相変わらずの様子に一つ息を吐き、恐らくは昨日飲み過ぎたせい、と]
それにしても静かだな…。
[きっといつもはこんな感じなのだろうと。
その静けさを打ち消すように、雨音]
降って来たのか。
[そういえば先ほどハーヴェイが帰ると言っていたが、大丈夫だろうかとふと思い。
微かに届くドアベルの音にあぁ、やはり…と]
[開いた扉の向こうにいた者に、きょとん、とまばたいて]
ハーヴェイ……何、やってんの、そんなになって。
[問いかける声には呆れと共に、僅かに心配の響きも織り込まれ]
[扉の向こうにいたのは酷く濡れそぼってはいたけれど、ここ数日で見慣れた客人であることは一目瞭然であった。
その酷い姿に思わずきゃ、と小さく声を上げつつも]
しょ…少々お待ちを!
[奥の部屋へとぱたぱたと駆け出して行く]
[そういえば、とふと思い出す。
昨日のあの怪我人はどうしているだろう?
先ほど訊いた時は落ち着いていると言っていたけれど]
そろそろ、目ぇ覚ますころかな…?
[怪我の程度から流石に気にはなって、立ち上がり彼が居る部屋へと様子を伺いに]
―広間→二階・客室―
途中で降り出して来たんだから仕方無いだろうが。
御蔭でずぶ濡れ……って、あ゛ー……。
[ メイに誤魔化すような言葉を返す途中、ポケットを漁れば案の定グシャグシャのシガレットケース。此れでは使い物に成らないだろう。]
一箱しか持って来て無かったのに。
[ 思わず愚痴が零れるも、]
あ、済みません。助かります。
[慌てて駆けて行くネリーを見れば小さく頭を下げる。]
[その部屋の前に立てば、一応驚かせぬようにと軽くドアを叩いてからゆっくりと開いて。
近付こうと見れば、目を覚ましているようでゆっくりと視線が漂う]
気が付いたか…?
あぁ、様子を見に来ただけだから安心していい。
[昨夜の怯えた姿を思い出し、刺激をしないようにと声を掛けて]
何してるんだか、もう……。
[返ってきた言葉に、ため息一つ。
それから、ぐしゃぐしゃのシガレットケースとこぼれた愚痴に、くく、と笑い声を上げて]
あーあ、ご愁傷様。
身体に悪いものやってるから、罰でもあたったんじゃない?
[冗談めかした口調でこんな言葉を投げかけて]
―回想―
[眠る前に、隠し子の話を聞いた。といっても、彼のその口調は楽しげで、重いものなど感じさせない。
それだけで本当のことなんてわかるようなもの。]
ん、そうね。じゃぁ、今度はわたしの番?
……え、その話が好いの? いつも同じ事しか言っていないというのに、不思議なこと。
そうね、そう。
ずっと昔の話だわ。その村に住んでいた子供が大人になってしまうくらい昔の話。
[頭を撫でてくる手は心地よい。わたしは請われるままに話し始める。]
そう。
それはずっと昔の話。
ある日、人狼が現れました。
長老様は、殺せといいます。でも誰が人狼なのでしょう。
村の人々は、話し合いました。疑いあいました。
「お前がやったんだ」
「いいや、お前に違いない」
そんな中、異能者がいました。
彼女は、その白い肌を黒く、何かに浸食されたように染めて言いました。
「あなたが人狼よ」
果たして、彼は人狼でした。
それから彼女は、探せと村人に言われました。彼女はその身体の一部に、毒を受けるためにそれを続けました。
だけれど、そのもう一人の人狼に。
彼女が気づくことはありませんでした。
彼はまだ、彼女の娘と、同じ年頃だったから。
そうしてその日。
泊まりにきた彼に、彼女は殺されました。
彼女の娘は、箪笥の中で、それを見ていました。
彼女を殺した彼は、彼女の娘にも爪を振るいました。
まるで玩具に対するように。
それでも、突然興味をなくしたように、彼は去りました。
その後。
人狼の痕跡は、何もなくなりました。
[大きめのバスタオルを引っ張り出すと、再び玄関へと向かった。慌ただしく駆ける音が雨音に混じり館内に響く]
済みません、お待たせ致しましたっ
[そう言いながら青年に手渡した。
それから湯浴みの用意はできていただろうか、とまた駆けて行く]
[こちらへと向けられる視線に驚きが混じるのを見れば、やはり怯えさせたかと]
俺はあんたには危害は加えない、ここにそんな奴は居ない。
怪我はどうだ?まだ痛むか?
[どう声を掛けたものかと悩み、当たり障りのない言葉を掛ける]
あ、俺はナサニエル。
…あんたの名前は?言いたくないなら言わなくて良いけど。
罰、ねえ……。
[ メイの発した言葉に、一瞬遠い表情になりはしたものの、]
無駄に吸う自称愛煙家どもと違って、俺は節度ある吸い方しているんだが。
[可笑しそうな様子を目をすがめて見やれば、役に立たなくなったケースを片手で潰しつつ不機嫌そうに云う。
事実吸い始めたのは十八の頃からだし、月に一箱もあれば充分だった。]
……誰か持っていると好いんだけどな……、
暫くは帰れないだろうし。
[突然叫び声を上げた男に驚き、落ち着かせようと体を支えて]
おいっ!しっかりしろ!
ここは安全だ、だから落ち着け!!
[まるで子供のように怯える彼を宥めるように支えて]
……いったい何があったって言うんだ?
[それは誰に問うでもなく零れた疑問]
[節度、という言葉に小首を傾げ]
まあ、そうかもね。
煙苦手なボクからすると、五十歩百歩だけど。
[さらりと言いつつ、しばらく帰れない、という言葉には、雨の勢いから、確かにね、と呟いて]
うーん、アーヴァインさんは吸う人だったっけ……?
[記憶を辿り始めたその矢先。
響いている、激しい雨音。
それすら引き裂くような、叫び声が届いて]
……や……な、何?
[震える呟きをもらしつつ。
握り締めた手が、無意識のように左の胸元に押し当てられた]
[支えようと身体に触れたナサニエル]
[その手の感触に][ギクリと]
[振り解こうと暴れる。]
[行動は幼児の様でもその力は確かに成人した男のもので]
[身を竦めて子供のように泣く男を、宥めるようにそっと撫でて。
本来なら母親の仕事だろうが、施設で育った自分には他人事と思えずに]
よっぽど辛い目にあったんだな、あんた。
[それ以上は何も言えず、訊けずに、だた彼が落ち着くのを待って]
[包帯に包まれた傷だらけの肢体]
[けれどもそれは無力ではなく。]
[恐らくは実用の為に鍛えられたと思しい]
[しなやかな筋肉に包まれたそれで]
………う……うぅ………
!!!!
[ぱっと]
[毛布を跳ね飛ばし]
[触れる手から逃げようとするかの様に]
[ベッドから飛び降り]
[走り出す。]
[押さえていた腕を跳ね除け、ベッドを降り走り去ろうとする男を追う]
おい!無理するな、危ないから!!
[叫んだところで止まる筈も無く、ただ追いかけて]
俺は人前じゃ吸わないから好いんだ。
[ 其れでも、染み付いた匂いは容易には取れない訳だが。
耳に届いた悲鳴に眉を険しくし天井を見遣っていたが、胸に手を当てるメイの姿に視線を下ろす。]
……大丈夫か?
[ 視線を下ろす刹那緩やかに黒曜石の瞳が瞬かれる。]
『って、俺は……何を。』
[ 確かに他人の事等如何でも好いと思う事は在れど、其れ程迄に自分は冷酷な人間だったか。]
[逃げる男を追いかけながら]
いったい何があったんだ?
あいつの体つきは簡単にやられるような奴じゃない事を証明してる…。
それに、あの様子…あれは幼児退行だろう…。
そして微かに聞こえた『──しないで……』と言う呟き。
……どうしたって言うんだよ、まったく!
[そう思いながらも、追いかけ続ける]
[声の聞こえた方──階段を見やって、立ち尽くしていたが、問いかけにはっと我に返って]
え、あ。
あ、うん。
何でもない、よ?
[とっさに笑顔を作りつつ、ほらなんでもない、と言いたげにぱたぱたと手を振るものの。
どうにも、不自然さは拭えなくて]
[頭を抱え蹲る男に近付き、目線を合わせるようにしゃがんで]
ほら、急に動くから…。
俺は敵じゃない、って言ってるだろう?
…ナサニエル、だ。分かるか?
[驚かさぬように、できるだけ静かな声で]
[少女は反射した窓の奥に続く闇に、瞳を奪われたまま時を過ごしていた。]
[途中、ナサニエルが室外へ足を運んだ気配と、玄関先で誰かが訪れたような気配は微かに感じ取れていたが、階上の叫び声は聞こえることなく――]
嫌な雨…長く続かなければ良いのだけども…
[雨音によって呼び起こされるのは過去に出来ないほどの真新しい記憶か。
緩やかに襲ってくる頭の痛みに僅かに顔を歪めながら、少女はようやく窓の闇から開放された。]
……そうか?
[ やや間を置いてから、不自然な表情に返した青年の様子も些か不自然だったろうか。
視線を宙に巡らせて僅かに思考すると、未だ濡れていた手をタオルで拭きメイの頭をポンと撫でる。]
まあ、云いたく無い事なら云わなくて好いし。
云いたくなったら何時でもどうぞ。
[ 軽く笑みを作って云うも、直後にくしゃみ。]
……寒っ。
人間か、獣か…って?
なんだそりゃ、そんな話があるか。
人狼でも出たのならともかく……
人狼?
まさか、こんな所にそんな物がいるわけない…よな?
人か獣か、ってあんた…人を化け物みたいに……
[そこまで言って思い当たる、ある、魔物の話。
人を喰らう獣、人の姿を真似た……]
あんた、まさか……あれを?あれに襲われた、のか?
[拒絶の視線は、きっとそれを恐れての物かと思えばそれ以上何も言えず]
[頭を撫でられた瞬間、身体がわずか震える。
相手によってはそうでもないものの、触れられるのが苦手なのはどうにもならなくて]
『……まあ、他意がないのわかるから、なんてことないけど』
ん……まあ……気が向いたら?
[呟きは心の奥に止め、声に出すのは曖昧な言葉。
それから、くしゃみと、それに続いた言葉に嘆息して]
……そりゃ、寒いでしょ……。
[呆れたように言いつつ、浴場に続く廊下を見やる。
様子を見に行ったネリーは、そろそろ戻ってくるだろうか、と思いつつ]
/中の人/
成る程成る程?
然し[]内も聞えているのか。まあ特に問題は無し。
問題は浴場でメイと鉢合わせ出来なかった事で……
否、知っておきたいじゃないですか。
後、撫でる(触れる)のは駄目なんじゃないかなと思いつつやった俺。
[痛みを訴え泣く様子は本当に子供のようで。
また怯えさせるだろうけれど、そっと声を掛けて]
まだ休んでいた方が良い。
歩くのも辛いんだろう?
[ふゆりと時計を見上げれば、結構な時間で。少女は使用人が準備した食事の匂いに誘われるように、広間のテーブルに改めて着く。]
[鼻をくすぐる匂いに、自然と頬が緩むのは人間の本能。では、両親を喰らった人狼の本能は?――
雨によって呼び起こされた記憶に誘われてか、おかしな思考が頭を擡げる。
その思考を振り払うように、少女は二、三、頭を振る。一つに纏めた金糸がさらりと背中を舞い落ちる。
衣服越しに得た感触に、平常心を取り戻しつつ、再び食事と向き合う。]
――そういえば…昨日居た方々たちは…この雨の中屋外へ?それともまだ…室内の何処かで時を過ごしているのでしょうか…。
[薄紅色の唇から漏れた独り言は、宙に舞う。]
/中/
泣いている怪我人ギルバート(しかも幼児化)を放置できるわけないじゃないかぁぁ!!
とりあえず、ギルに絡みに行く癖は何とかした方が良いと思った…うん。
<ヘンリエッタ寝室>
[音がする。
何かが割れるような激しい音が、遠くから。
ああ、また。
今起きちゃ駄目だ。寝た振りをしておいた方がいい。
毛布を被って隠れていれば平気。
そこまで考えて、身を被う寝具の違和感に、目が覚めた。
意識が覚醒していくとともに、耳を打っているのは破壊音ではなく、雨音だと気づく。
横たわったまま、ほのかな明りに誘われて窓を見れば、鈍い色の雨雲。]
……雨か。
[薄暗い室内には全く見覚えがなく、束の間自分のいる場所が判らずに混乱した。
思い出したのは館の主の笑み。]
来ちゃったんだよね……。
[ メイの内心に気付く事は無く――其れは相手も同様だろうが――取り敢えずガシガシと頭を拭く。零れる滴の量は少なくなれど、代わりに其れを吸い込んだ絨毯は確りと濡れていた。]
……見て来る……。
[ 再びくしゃみが出そうになるのを口許を押えて堪えつつ、*浴場へと向かった。*]
[彼が頷くのを見て、少しだけ安心をして]
ベッドに戻った方が良い。
…立てるか?
[とりあえず手を貸せるようにと、そっと差し出して]
―浴場―
[階上の叫び声は、閉め切られ湯気の立ち込める浴室には然程大きくは届かなかった。それでも何かあったのだろうか、と眉を顰める。
加減を確かめるために濡れた手を拭き、手袋を嵌め直す。
身体が冷え切っているであろう客人を呼びに、玄関へと向かった]
―浴場→玄関―
[弾力のある寝具に慣れず、立ち上がろうとして逆に仰向けに倒れた。]
わ!
[思わず声がこぼれる。]
ベッドはいつもの方がいいかなぁ……。
[暗い天井を見たまま呟くと、自分の声が腹に響いた。]
お腹減った……。
[応えるようにぐうとなった腹部を抑え、少女は起き上がった。]
とりあえず、ごはん。
……すぐ、あったまれるといいね……。
[見てくる、と言って歩き出した背に向けてぽつりと呟き。
それから、二階にまた、不安げな視線を向ける]
……何があったんだろ……。
[呟く声には、視線と同様に不安が織り込まれ]
また……視なきゃ、なんないの?
[続いた呟きは更に小さくかすれ。
何者の耳にも届く事無く、雨音にとけたろうか]
[彼が手を取ったことに少し驚いたけれど。
そのままゆっくり立ち上がらせベッドまで連れて行く]
とりあえずここは安全だからさ。
あんたを傷つけるものは居ない…だから安心して休むといいよ。
[恐らく使用人が用意してくれたのだろう衣装を適当に見につけると、水差しと洗面器だけが用意された簡素な洗面台で顔を洗う。
簡素なと言っても、少女には十分に行き届いたもてなしだったが。
鏡を見ずに、器用に髪を結ぶ。結い終わってはじめて、部屋に鏡があることに気づき珍しげに眺めた。
少しだけまがっていたリボンを整え、鏡の中の自分に満足したのか少しだけ微笑んだ。]
さて、行きましょうか。
[赤い髪の少女は、廊下へと続く扉に手をかけた。]
[立ち上がろうとするも力が入らぬ様で]
[もどかしげに][震え]
[産まれたての仔鹿が初めて立つ時の如く]
[それでもナサニエルに付き添われ]
[何とかベッドに辿り着く。]
/中の人/
人狼:ハーヴェイ、コーネリアス
占師:ローズマリー
霊能:メイ
狂人:ギルバート
で、OK? 後は守護者……妥当なのはナサニエル辺りでしょうか。
折角の奇数進行なので、早めに見極めて何処かでGJさせたいですが。
そして何方がラストウルフになるのやら。
俺の行動が人狼臭いのは、皆丸判りだと思いますが。
[廊下に出た時、何か物音と叫びが聞こえたような気がして思わず立ち止まる。
けれど、辺りを見回しても人影はない。耳をすましても聞こえるのは雨音ばかり。
軽く息を吐いて、ヘンリエッタは広間を探し、廊下を歩き始めた。]
[彼をベッドへと向かわせながら、どこかと問う声に]
あぁ、ここか?
アーヴァインって言う人の屋敷だよ。
って言っても、俺も泊り客の一人なんだけどね。
[そういって、頭痛を訴える彼を寝かしつける]
[すぅっと][瞳を閉じて]
[枕に頬を押し付ける。]
[力尽きたように]
[ぐったりとベッドの上で]
[再び眠りに付いたかのように]
[*沈黙。*]
/中の人/
読み返してみたらネリー辺りも気になりますか。過去設定かもしれないけれども。
……ルーサー牧師? 素で怪し過ぎるというか黒幕ですから、彼の方。
─広間─
[中に入ってぐるり、と見回す。
昨夜の賑やかさとは打って変わって、今は、人影も少ない。
ソファでぐったりとしているコーネリアスと、食事中のウェンディ。
銀と金、対照的な髪色の二人の他は、給仕役を務める使用人の女性がいるだけで]
……や、こんばんは。
なんだか、ここは静かだね。
<広間前>
[歩いても歩いても変わらなく思える廊下に不安を感じながらも、なんとか一人で広間を探し当てられたのは、漂う匂いの所為だ。
空腹を訴える本能に案内されるように、広間の扉を明けた]
─玄関ホール─
[頭からつま先まで濡れ鼠になった黒衣の男が帰ってくる。
両手には大事そうに聖書を抱えている。
ずしりと重いその感触を確かめると、自室まで着替えを取りに行ってから浴場へ向かった。
ずぶ濡れになった聖書だけは大事そうに抱えたまま。]
─玄関ホール→自室→浴場─
[目を閉じ、眠ったように見える彼に安堵の溜息。
そっと起こさぬようにそこを離れて部屋を出る]
……落ち着くには時間がかかりそうだなぁ。
[そう呟いて、再び階下の広間に向かおうと]
─浴場─
[じっとりと濡れた革張りの聖書を大事そうに抱えたまま、そろりと浴場に足を踏み入れる。
誰もいない事を確認しつつ聖書を置き、左手の手袋を脱ごうと──]
-広間-
[扉をあけると目に飛び込んで来たのは少女の背中。
視界を遮る背中の後ろから、ひょいと顔を出して室内を確認する。
昨日の夜にちらりと見かけた、金の髪の少女が食事の席についている。
広間にただよう夕食のにおいに反応して、ヘンリエッタのお腹がぐうとなった。]
[あれきり、階上から声は聞こえては来ない。
やはりあの怪我人だろうか。彼は何者なのだろうか。
見上げる視線は、知らず厳しいものになっていた]
[ ネリーと擦れ違い様に準備が出来た事を告げられれば、再び感謝の言葉を述べて浴場に向かい、脱衣場からでも其の温かさは伝わりほっと息を吐いた。服は兎も角濡れた荷物は如何しようかと迷ったが、仕方が無いので中身だけを出して脱衣所の端に並べておく。とは云っても、最小限の着替え程度と筆記用具や手帳程度しか入っていなかったが。……本を借りていなくて好かったと心底思う。
其れらの作業を終えれば立ち上がって、自分の服を脱ごうとロッカーへと戻り、]
……ああ。ルーサーさん、今晩和。
[牧師の姿を見付け、軽く会釈。]
[黙々と食事を続けている少女の耳を、少し大人びた少女の声が掠めて行く。]
あ…メイさん…?こんばんは。メイさんも…お食事ですか?
[振り返り――笑みを浮かべ…。当たり障りの無い質問と共に投げ掛けられた言葉に僅かに頷き]
そうですわね…。ここは…特別静かなようで…
[曖昧に笑う。そして、その背後から顔を出す年端の変わらない少女にも、同じような笑みを浮かべ――]
こんばんは。あなたもお食事ですの?
[ナフキンを取り外し、会釈をした。
どうやら少女の食事は終ったらしい。]
/中/
今回(って言うか今日から)話し言葉以外はなるべくカタカナを使わないとか頑張ってみようと思ったんですけど……すでにリボンで挫折orz 飾り紐とか何か違う……。
………へ?
[慌てて振り返る。手袋はそのまま。]
おや、どうなされました。濡れ鼠じゃないですか。
[とは言いつつ、彼もまた濡れ鼠。
しかも、微かに煙臭い臭いがするような。]
―→広間―
[広間へと戻り、使用人の女性に軽い食事を頼んで、また二階の彼にも胃に負担が掛からぬ物を、と。
周りを見渡し、その場に居る人々に会釈をして]
…ふぅ。
[少し大きな溜息と共に席について、程なくして運ばれてきた食事を摂り始める]
[扉の開閉と、人の気配。
それから、微かな音に気づいて振り返れば、鮮やかな赤毛の少女の姿が目に入る]
や、こんばんは。
[にこ、と笑いかけつつ。ここにいたら邪魔だな、と気づいてテーブルの方へと移動し。
ウェンディの問いにはうん、と頷く]
どうしてもね、ピアノに夢中になると、食べるの忘れちゃうから。
思い出した時、ちゃんと食べないとならないんだ。
[冗談めかして言いつつ、席につく]
[どうにも、そのまま眠ってしまったようで、窓を叩く雨音に目を開ける。]
…おや、これはお見苦しいところを。
[気まずそうな笑み]
[ため息をつくナサニエルの様子に、やや、首を傾げて]
ナサさん……?
何か……あったの?
[何となく、問うのはためらわれたものの。
大きなため息の理由として思い当たるものは先ほどの叫び声しか思い当たらず、そっと問いかけて]
[ 珍しく慌てた様子のルーサーに首を傾げるも、問い掛けられれば苦笑を浮かべる。]
ああ、帰ろうとしたら雨に掴まりまして。
……ルーサーさんこそ、如何されたんですか?
[ 目敏く……基、鼻敏く煙の臭いに気付けば目を眇め、]
何やら、妙な臭いもしますが。
[そう云い遣りつつも何時までも此の儘では居られないと、釦を外して上着を脱ぐ。余りの濡れように、傍に在った洗面台で思い切り絞れば滴り落ちる水。]
あ……こんばんは。
[金の髪の少女の笑みに、少しだけ気後れして反応が遅れる。
その間に、少女は食事を終了にしてしまったようだ。
食事の為に身につけた布を取り払う少女の、優雅な動きをただぼおっと見つめる。
年のころは自分と大して変わらないだろう。けれど、今まで自分が接して来た人間とは何か違うものを、ヘンリエッタは彼女に感じていた。
この子はいったい、何者なんだろう?
ただ気になって、少女を見つめた。]
[続けて入ってくるナサニエルにも軽く会釈をして。]
[メイの言葉には、僅かに頬を緩めて]
ピアノ…弾けるのね。羨ましいな。
でも、何かに夢中になるとつい食事を忘れてしまう気持ち、よく解るわ。
私も…そういったタイプだから。
[席に着く様を見つめながら、ティーカップを傾け――]
[ソファで目を覚ましたコーネリアスには、静かな笑みを湛え]
お気になさらずに。心地良さそうに眠っていたのを、逆に邪魔して申し訳ないくらいですわ?
[悪戯っぽい口調を。]
…………はっはっはっ。
気のせいですよ。
私が煙草を吸わないのはご存知でしょう?
[手早く衣服を脱いでいく。が、手袋はまだ嵌めたまま。
煙臭いのは気のせいではない。
正確に言うと、煙と火薬が混じったような臭いというべきか。]
[ようやく目を覚ました様子のコーネリアスに会釈をして。
メイの問いかけは今の溜息の事だろうと思い当たり]
あ、あぁ、昨夜の怪我人の様子を見に行ってな…。
怪我よりも…なんてーの?精神的な傷の方が大きいみたいでさ。
俺を見て怯えるんだよ…まったく何があったかしらねーけど、酷い事をする奴もいたもんだよなぁ。
[そういって再び溜息。
獣か、と問われた事は伏せて。
余計な心配はさせたくは無かったから]
[ツインテールの少女の声に、少女は親しみを込めた笑みを浮かべて席を促す]
ここの食事は美味しいわね。さぁ、あなたもどうぞ?
[見つめられる視線には悪意を感じない為、そのまま滑り落ちるように受け流す。]
そう言えば…私、あなたの名前を聞いてなかったんだけど…。良かったら教えてくれるかしら?
[彼女にだけ、僅かに砕けた表情を浮かべるのは、やはり外見の年齢が等しいという認識の所為なのだろうか]
---こんばんは。
[こちらを振り向いたメイの声に、知らず少女を凝視していた視線を外した。
メイの後について、食事の席に着く。
運ばれてくる暖かな食事に、知らず目を輝かせた。
いきおい良くパンに手をのばした時、青い髪の青年が、広間に入って来た。]
……ああ、ところでハーヴェイ君。
トビー君、まだ幽霊がいるかどうかびくびくしてたりします?
[逡巡した後、手袋も脱ぐ。
何か嵌めていた気もするが、左手はすぐ後ろに引っ込められたのでそれが何なのかはわからない。]
―広間―
[広間の戸を開ける。そこにはいつもながら人が多くいた。
暖かい空間に少しだけ安心する。
一礼し、いつものように扉の傍に控えた]
と、いうか、ボクの場合、ピアノ弾くくらいしか取り得がないとも言うんだけど。
……ここにお使いに来るのも、半分くらいはピアノが目当てだし、ね。
[羨ましいな、という言葉に笑みを交えて返しつつ、食事を始める。
料理の温かさに、僅かな緊張を緩めてくれるような心地になりつつ]
飲みすぎちゃったんですか?
ダメですよー、限度考えないと。
[薄く笑うコーネリアスに、冗談めかした言葉を返し。
嫌な雨、という表現には、小さくそうですね、とだけ]
…そうですか。一体なにがあったんでしょうね、…あんな酷いことを…。
[まるでよってたかって殴られたかのような昨日の傷を思いだし。]
そうですか? ……鼻には些か自信があるんですがね。
[ 僅かに悪戯っぽい笑みを浮かべてそう返すも、深く追求する心算は無いらしく、其れ以上言葉は加えずに手早く入浴の準備を整える。]
……ああ。
確か……、美味しいものが美味しく食べられなくなるから、でしたっけ。
[ 酒は嗜む――というか蟒蛇にも関わらず煙草を吸わないのは意外だったが、理由を聞けば納得した覚えがある。]
[ 煙と火薬の入り混じったような臭い。其の臭いも、人成らざる者である彼の鼻には感知出来ていたが、敢えて深く突っ込む事は無いだろう。]
じゃあ、さっきの……やっぱり、あの人の声、なんだ。
[ナサニエルの説明に、雨音すら凌駕した叫び声を思い返しつつ、僅かに眉を寄せる]
精神的……かぁ。
それじゃ、話せるようになるまではしばらくかかりそうだね……。
トビー、ですか?
[ 牧師の口から其の名が出れば一瞬驚いた表情になるも、直ぐに苦笑に変わる。]
……みたいですね。
今日もまた、コーネリアスさんを幽霊と間違えたようで。
[ 手袋を脱ぐのに躊躇しているのは解ったが、其れにも触れはしないでおく。然し、引っ込める仕草には瞬時眼つきが鋭くなりはしたか。]
実はね。あの幽霊騒ぎの時、私は一つだけ嘘を吐いたのですよ。
本当は戒律で禁じられているのですがね。
汝、偽る事なかれ。とね。
[ははは、と笑う。]
……『いる』んですよね。この屋敷。
なかなか『出て』は来ないのですが。
[席を勧めてくれた金の髪の少女に、はにかんだように笑みを返す。
少女の笑顔が、少しだけ親しいものに感じられたのは気のせいかも知れない。
気のせいだとしても、彼女の笑顔はヘンリエッタの心を少しだけ浮き立たせた。]
私はヘンリエッタ。
……あなたは?
[昨日、彼女が名乗っていたのをヘンリエッタはろくに聞いていなかった。
あの時は、自分のことに精一杯でだったから。]
[皆と話をしながら、先ほどの彼との会話を思い出す]
…人か、獣か……か。
だとすると…また、やらなきゃならないのか、俺は?
[そう考えて、上着の下、隠すようにホルダーに収められたそれにそっと触れる。
傍から見れば意味もなく脇を擦った様にも見えただろうか]
もう、あんな思いはしたくはない、のに…。
[聞こえてくるナサニエルの話に耳を傾けるも、少女には昨日目にした怪我人に対する同情の言葉など浮かんでくる余裕すらなく――]
大丈夫…きっと…違うことよ…。旅人の怪我なんて…よく聞く話――
[まるで自分に言い聞かせるように小さく呟き――]
…まともに話が出来る状態じゃなかったな。
何だか意味不明なことを呟くだけで、さ。
せめて名前だけでも聞ければ、って思ったんだけどね。
[あの様子では名前さえ忘れてしまっているのかも知れないと]
[ 笑いながら告げられた言葉に、僅か眉を顰める。]
……はい? 何が。
[ 声は些か素っ頓狂になってしまったろうか。云いながら取り敢えずはと浴場の扉を開ければ、一気に白い湯気が辺りに漂う。]
―そして太陽の高い時間―
何があったのかしら。叫び声だわ。
……ん、でもどうせ誰か出て行くでしょう。
[呟きながら、思い返す。]
あなたのせいではないわよ、アーヴァインさん。
あなたと昔付き合っていた女性が亡くなったのも、奥方様が亡くなったのも。
運が悪かっただけだわ。
……treaty。
わたしとあなたの間には、それだけよ。そしてそれはまだ、なのね。
[一人の部屋は、静か。
わたしは紅を塗って、それから部屋を出た。
と、階段をのぼったところで話す二人の姿を見つける]
あら、アーヴァインさん。どうかしたの?
こんにちは、トビー君。
あ、ショール? 風邪、引かなくて良かったわ。わたしは大丈夫よ、気にしないで?
[子供の元気な様子が、とても嬉しくて、わたしはそれじゃあ、と広間へ。
飲み物を貰って、部屋に戻って]
[浴場に足を踏み入れながら振り向き、人の悪い笑み。]
……だから、幽霊が。ですよ。
奥方の幽霊じゃないですよ。もっと『別のもの』です。
まあ、ハーヴェイ君には見えないみたいですね。
良かったじゃないですか。
まあ、私にも見えませんがね。『見た』って人が多いんですよ、この屋敷。
[肩をぽむ、と叩く。]
―そして今 部屋―
どうか、したのかしら。
[雨が酷い。窓の外の神鳴りが、地が水をはじく音が、少しうるさく感じられた。
それでもその中、伝わってくる悲鳴。
――それが終わって、わたしは立ち上がる。]
……誰かが、泣いているの?
[大人達の話を耳で聞き流しながら、ひたすら目の前の食事を口に運ぶ。
彼らが話しているのは、昨日の怪我人のことのようだ。
この部屋で寝ていた男の、怯えた寝顔を思い出してヘンリエッタは少しだけ眉をしかめた。
自分よりも大きくて強そうなあの男に、いったい何があったのだろう。
胸を掠めた不安を飲み込むように、スープを口に運んだ。]
[赤髪の少女が、はにかんだ笑みを見せてくれたことで、少女は先程までの思考を一蹴する。]
ヘンリエッタさん…というのね。よろしくね?
私はウェンディって言うの。短い間だけど…仲良くしましょうね?
[ここに来て初めてとも思える、歳相応の表情を浮かべて、少女はヘンリエッタに再び微笑んだ。]
[そして食事の為にテーブルに着いたヘンリエッタを温かい眼差しで見つめた後――]
ではみなさん、私はこれで失礼致します。
[入れ違いに入ってきたネリーにも丁寧に頭を下げると、少女は自らに割り当てられた客室へと歩みを*進めた*]
飲まれるような飲み方は、お酒にも申し訳ない、って、ばーちゃんが来てたら言われちゃいますよ?
[冗談めかした口調で言いつつ。
ナサニエルの話から伝わる状態の深刻さに、そっかあ、と呟く]
……でも、ほんとに……なんで、あんな怪我してたんだろ。
[独り言のように言いつつ、また、無意識の内に胸の辺りを押さえて]
[わたしは心配になって、誰かに話を聞こうと思った。
眠りが浅いせいか、身体は少し疲れている。
そっと広間の方を伺えば、ちょうど少女が出てくるときだった。
会釈をして見送り、まだ賑やかな中をのぞく]
こんばんは。
―→広間―
[聞くつもりはなくとも、その場にいれば客人の会話は自然と聞こえて来る。
どうやらかの男性の話題らしかった。叫び声はやはり彼のものだったらしい]
…
[雨音と会話に、ただ黙って耳を傾けている]
[ 其の云い様に、如何やら怖がらせたいらしいのだという事は容易に判断出来たが、其れに乗る程に彼の心情も暢気なものではなく。何と返したものかと目を伏せて額に手を当てる。]
……見られるなら見てみたいものですが、生憎信じていませんので。
[ 湯船に肩まで浸かれば漸く一息つきはしたものの、隣に居るのが此の牧師では心が休まらないような気がした。]
で、『別のもの』とは?
さて、そろそろ入りましょうか。
このまま突っ立っていると風邪を引きそうです。
[一足先に湯船のある方へ向かう。左手は隠したまま。]
[目の前の食事を思い出したように胃に収めながら]
どうしてなんだろうな…。
[思い出すのは、目を合わせることにすら怯えていた彼の姿]
いつか話してもらえると良いんだけどね。
[部屋に入ってきた、長い髪の女に目をやるも…ついと逸らし。
義兄が度々商売女を連れ込む…と、使用人から密かに告げ口されていた。]
…えぇ、なるべく控えます。
[孫を通してあの老婆に説教をされた気持ちになり、苦笑い。]
[笑顔を残し去っていった少女の後ろ姿を見送る。
その背で揺れる金の髪を少しの羨望で。
ウェンディ。
彼女と、もう少し話がしてみたい。
少女の名を、ヘンリエッタはしっかりと刻み込んだ。]
……ほんとに、ね。
[小さく呟いて、自分も止めていた食事を再開する。
それから、ローズマリーが入ってきたことにやや遅れて気づき、こんばんは、と小さく挨拶を]
[ 流石に其処まで露骨に隠されれば目に付いたか、]
……で、如何して御隠しに?
[何を、と云わぬまでも解るだろう。両手で湯を掬い顔を濡らせば、冷え切った躰には少々温か過ぎて熱い感じられる程だった。]
/中/
わーい! ウェンちゃんと仲良くなれそう♪(憧れ
そして、何げにギルの発言数が一番多いことに感動しました。
……今回、中の人発言多過ぎかな。
[続いて湯船に浸かる。気持ち良さそうだ。]
そうですね、一言で言うなら『怨霊』でしょうか。
だからあの時『知り合い』に似たローズさんを見てびっくりしてしまったのですよ。
ああ、化けて出て来たのかとそんな事まで思ってしまいました。
[湯船に肩まで浸かってから、ため息を吐く。]
私には『祟られる理由』が在りますから。
[左手の事を指摘され、軽く肩を竦めてからハーヴェイの目の前に左手を突き出す。
中指には、薔薇を象った指輪。]
ああ、これですか。
大の男が装飾品を身に付けているとなると、要らぬ詮索をする方が多くてね。
[にこりと笑う。]
…あぁ、昨夜の怪我人がね、ちょっと。
[ローズの問いに先ほども話した言葉をくり返す]
あなたのいる所まで聞こえたんですか?
[それほどまでに悲痛な姿を思い出し、軽く目を伏せて]
/中/
整理。
ウェン/金の髪の少女
コネ/銀の髪の青年
ルサ/牧師
メイ/青い髪の少女
ロズ/緑の髪の女性
トビ/使用人の少年
ネリ/使用人の少女
ギル/怪我人
ハヴ/暗い髪の青年
ナサ/青い髪の青年
……語彙すくな!
/中/
使用人だから話題に入れてくれないと入れないのが寂しいところなり(´・ω・)
早くアーヴァイン死なないかなー(コラ
―広間―
あぁ、あの方が……
[ナサニエルの答えに、昨日見た、寝ていた青年を思い出す。]
……えぇ、聞こえたわ。とても痛ましい泣き声。
少しでも、苦しみが癒えると良いのに。
悲しみが癒えると……
[目を伏せる様子に、彼も傷ついているのだろうかと、思う。]
……でも、泣きたいときに泣けるのは、とても、良いことかもしれないわね。
/中/
気付いたら残ptが一番少なくっ!!
しかも発言数二番目だよ(ギルこの先不在なら確実に抜くし!)
もうすぐ補給あるんだよね?
『怨霊』、ね。
[ 僅かに視線は逸らされ、此処では無い何処か遠くを見遣る。]
其れなら、俺も化けて出てこられるかもしれませんね。
[ 溜息を吐くルーサーを見遣り、対照的に些か冗談めかした口調で云えば薄い口唇は微かな笑みに象られるも、其の瞳の黒は決して笑って等いない。然し其れも、緩やかに瞬きをすれば直ぐに消え去り、視線は突き出された左手へと移る。]
……好いんじゃないですか? 趣味は色々ですよ。
薬指なら兎も角として。
[ 今度は確かに微笑を浮かべて、そう付け足した。]
そりゃどうも。
[笑みと共に再び肩を竦め、手を引っ込める。]
『異端審問官』というものをご存知ですか?
『それ』なんですよ、祟られる理由と言うのは。
……人が傷ついている姿は見ていて辛い。
[ましてそれが一方的なものであるならば。
それは自分自身が子供の頃に受けた傷にも似て]
それで少しでも気持ちが救われるなら良いんだけど…。
[ 躰が温まれば湯船から上がり、改めてコックを捻りシャワーで洗い流す。先程までは急激な体温の変化に肌がひり付く程だったが、今は丁度好く感じられた。ルーサーの言葉に顔だけを彼の方へと向けて頷きを返す。]
……其の存在だけは。実際に逢った事はありませんが、ね。
―広間―
そうね。
……とても、辛いものだわ。
[それを言う彼も、また辛そうにわたしには見えた。
近づいて、その顔を見上げる。]
あなたも。
溜め込んでは、駄目よ?
[交わされる会話をぼんやりと聞きつつ、食事を終えて。
食後の紅茶のカップを手に、窓辺に寄る]
……雨……止むかな。
[小さく、呟く。瞳に宿るのは、僅かな不安の色彩]
/中/
この大量の独り言をどう料理してくれようか…
(←独り言を使い切るのを生きがいにしている人)
相当量のネタが仕込めそうだよなぁ?
…中発言ばかりで申し訳ない。
[あのときは浴室にいたから、良くは聞こえなかったのだけど。
緑髪の女性の声を聞き]
それほどにまで…
[彼女は小さく呟く。
何故か、酷く厭な気分になった]
[食事を運ぼうか?との使用人の声に、気が進まぬと断れば、
少しは口にしておきなさいと、やわらかくよく冷えたチョコレートムースにベリーソースを添えて。無碍に断るわけにもいかず、緩慢に口へ運ぶ。
みなさんもいかが?と、使用人はデザートを置いていく。]
[多分、まだ、帰る事はできないけれど。
でも、それでも]
……帰りたい……。
[そう、思った。
恐らくは唯一、自分と同じ力を持つであろう、祖母の所へ。
ここにいて、その力のままに。
視たいと願わぬものを視るのは、辛いから]
ははは、ご冗談を。
目の前にいるじゃないですか。
[と、自分自身を指差す。]
ここに赴任する前からだったのですがね。その仕事を任されたのは。
ま、30年前の事件以降はとりあえず休業中です。
平和ですからね、この村。
[湯船の中で体を伸ばす。]
[近付き、此方を見上げるローズに苦笑して]
誰にも相談できる環境じゃなかったからね、俺の場合は。
旅なんかしてると余計に、ね。
…心配してくれてありがとう。その言葉だけで楽になる気がするよ。
知らなければ逢った事が無いも同然でしょう。
[ 牧師が話す間にもさっさと躰を洗い終えれば、軽く肩を竦めて見せる。平和という言葉には緩やかに首を傾けたが一応頷いて、視線を逸らし絞ったタオルで濡れた躰を拭き取っていく。然し、]
三十年前?
[聞えた単語に思わず問い返して、目を瞬かせた。]
[デザートをおいていく使用人の姿に、軽く頭をさげる。
ナサニエルの言葉は、少し、寂しさを覚えた。それを感じさせないように、微笑みを作る。]
……ん、そう言ってくれるのは、わたしにも嬉しいわ。
旅は、孤独ね。淋しくはない?
[ 当然ながら、獣の力を秘めた彼の耳には届いているのだが。人の姿をしてはいても、夜ともなれば其の感覚は人間よりも数段鋭い。]
“今の所は”、……か。
[ 呟きは声の代わりに聲と成る。]
ええ。30年前です。
もっとも、この話題は村の中でも最大の禁忌ですからね。
『関係者』は口外無用、という事になっているのです。
[先ほど見せた指輪を見せながら。]
これが、その証。
秘密の共有者、『共犯者』たる者の証なのですよ。
これ以上の事は、流石に話せませんね。
[ようやく、体を洗い終わったようだ。]
[目の前に置かれたデザートは甘く。
先ほどの騒ぎに疲れた心身に心地よく沁み込んで。
ローズの微笑みに釣られる様にこちらも笑みを返し]
好きでやってる事だからね…むしろ人との柵を作るよりは気楽で良いって思ってるよ。
…時々人恋しくもなるけどね。
[そういって口に運ぶデザートは口の中で溶けて]
そういえば、いつのまにお戻りで?
[わずかに漏れ聞こえる囁きに返すは微かな笑み。
銀色の匙ですくった黒くやわらかなデザートからは、紅い雫がわずかに滴り…]
あなたもいかがです?なかなかに味わい深い…。
[なにを、とはあえて言わず。]
/中/
あれ?『共犯者』…?C狂なのかな?
そして何気にローズに行ってみる俺。
向こうは仕事柄ってのもあるから、恋愛とは違うと思う…うん、多分。
……考えすぎ、かな。
でも、ばーちゃんの言ってた事がほんとなら。
……ううん。
ばーちゃんは、嘘はつかない。
まして……一族の……力に関することは、絶対に、嘘なんて言わないはず……。
[自分に、巫女の一族の力の事を教えた時の、祖母の真摯な様子を思い返せば、それは確信に近く。
だが、それ故に。
現状への不安は、どうしても消えなくて]
[ふと視線を逸らすと、碧い髪の人がぼんやりと窓の外を眺めているのが見えた。
何となくその様子が気にかかって]
如何か…なされました?
[余計なことかとは思いつつも、そっと声を掛けた]
でも……それなら。
つまり……そういう事、なんだよ……ね?
ボクはまた……視なきゃいけないの?
視たくない……何も……余計な事は、識りたくない……よ。
―広間―
確かに、人との柵を作るよりは、楽かもしれないわね。
[ちらりと、メイと、コーネリアス、そしてネリーを見やる。
彼らは、恐らくわたしのことを知っているのだろう。知ってしまっているのだろう。
自分の仕事を疎ましく感じたこともないけれど。
彼らの柵は、わたしを隔てるだろうことは判った。]
それじゃぁ、しばらく、ゆっくりしていくと良いわ?
そして若し、また旅に出るなら、ふもとの村に戻ってくると良いわ。
皆、優しいから、家族のように歓迎してくれると思う。
……え。
[不意の呼びかけに、はっと我に返る。
数回瞬いてから振り向けば、緑の髪が目に入り。
もう一度、瞬き]
あ……なんでも……なんでも、ないんだ。
ちょっと、考え事……。
早く、雨、止むといいな、って。
[早口に答えつつ。浮かぶのは、どこかぎこちない、作ったような笑み]
……然様で。
そんな貴重な御話、御聞かせ有難う御座いました。
[ 頭を下げて云いはするも、心は余り篭っていなかっただろうか。一足先に風呂を出よう――として、]
……あ゛……、着替え……。
[然う云えば全部びしょ濡れになっていたのだと思い出す。]
[食事が終わるのを見計らったように、いや、恐らく見計らって、使用人の女性がデザートを置いていった。]
私も、それ頂戴。
[言って、自分で大皿からムースを取り分ける。
ほんとうなら使用人にやってもらうべきなのかも知れないが、そういった作法は彼女の身にはついていない。
それを幸いと、皿にたっぷりとムースを載せて、少女は満足げな笑みを浮かべた。]
[ローズの表情がほんの少し曇るのは気付いたけど、聞くことはせずに]
そうだね、折角こんな立派な所に泊まれるんだし、ゆっくりしようと思ってる。
話のネタにもなりそうだ。
[麓の村の事を思い出し、確かに人が良い人たちだったと思い返し]
そうだね、帰るときにでも寄らせてもらおう。
…君はその時は歓迎してくれるかい?
あー……。それはお気の毒に。
でも生憎、私の着替えは渡せないのですよね。
そもそも私の服では大きすぎるでしょうし。
ま、脱衣場を探せば何か見つかるのではないですか?
[一足先に脱衣場へ。]
…ああ。
[ぎこちない笑みには一瞬だけ訝るような色が過ぎるけれど、特に何も言わぬまま。
視線を窓の外に向けて、頷く]
この雨では外に出るのも叶いませんからね…
[濡れ鼠のようになっていた青年、次いで浴室の辺りで擦れ違った牧師の姿を思い出した]
……雨に降られたんだから、仕方が無いだろう。
[ 云い訳めいた台詞だと、自分でも思った。本来の力を持ってすれば、其れでも下山する事は可能だったに違いないのだから。何故しなかったかと云えば――頭の中では解っていても、認めたくは無かった。]
其の様子だと、アーヴァイン以外にも殺る心算か?
[久しぶりに口にする甘味をうっとりと味わう。
お菓子は、彼女にとっては贅沢品だ。
これが食べれただけでも、ここに来て良かったかな。
心の中で、そう呟いた。]
[善悪………それを定めるのは法。
しかし、法を、罪を、罰を定め。執行するのはいつも人だ。
私は知っている。刑を執行する人々の苦悩を。
何故なら、私もそうだったから。
特別な力を何も与えられなかったが故に、その任を押し付けられたから。
人は、嫌な事を他人に押し付けたがる。異端審問官という役職はその最たるものだ。
字面だけ見れば偉そうな肩書きだが、実際の役割は人殺しだ。
私は魔女と疑われた者を殺し、人狼と疑われた者を殺してきた。
おかげで、すっかり銃の扱いにも慣れてしまった。
村人は皆、私にその任を押し付けた。自らが手を汚す事を厭って。
では、それを押し付けられた私の苦悩は、苦痛は。誰が引き受けてくれると言うのだ。
殺される者の恐怖は、誰でも想像出来るだろう。
しかし。
殺したくないにも関わらず殺さなければいけない者の苦悩は、どれだけの人が想像出来るのだろう。
乾いた服に着替え、ハーヴェイに気付かれないよう聖書に偽装した拳銃の入りの箱を確認しながら。
そんな事を考えていた。]
うん、こうも雨が強いと出るに出れないし。
ハーヴェイの二の舞には、なりたくないからなぁ。
……それに、いくらばーちゃんが心配でも。
さすがに、この雨の中、あの橋を渡るのは勇気がいるからね。
[どこか冗談めかした口調で言いつつ、すっかり冷めた紅茶のカップを空にして]
ん、そうね。
今日はとても人が多いし、きっと何か面白いことがあるわ。
[微笑を作って、わたしは少し考える。]
アーヴァインさんの隠し子疑惑とかも。
[そこにいる少女がそうだとは、わかるわけもない。
それから、続いた言葉に。]
もちろん、歓迎するわ。
……あなたがわたしを嫌わないでいてくれるなら
[ナサニエルの言葉が、とても嬉しくて。
作った表情が、本物になるなんて、わたしにはわからなかった。
それでも、やっぱり、気になるのは……そこで。]
ばーちゃんが心配、か。
心配は心配だけど、むしろ、自分が心配なのかもね、ボクは……。
[雨を見やりつつ。何となく、自嘲の呟きを、心の奥に]
[小皿に盛ったチョコレートムースをぺろりとたいらげて、お代りをしても良いかと思案しながら辺りを見回す。
緩慢にムースを口にする銀髪の男をなんとは無しに眺めた。
こんな美味しいものを食べているのに、あまり嬉しそうに見えないのを不思議に思う。
緩い動きは体調が悪いのだろうかと窺わせた。]
ハーヴェイ君、着替えになりそうなものは見つかりましたか?
[さっさと着替えを終え、いつもと同じのほほんとした笑みを浮かべながら聞いてみる。
手袋は代えの物を嵌め、聖書は持ってきたバスタオルに包んでおいた。]
……そうしてみます。
[ 余りの間抜けさに思わず肩を落とす。情け無いにも程があった。
結果的にルーサーに遅れて脱衣所に入り周囲を漁れば、軈て見付かったのは落ち着いた柄の浴衣。灰色の地に描かれているのは鎌輪奴柄。先日のローズマリーと云い、此処の主は東洋の温泉とやらに被れてでもいるのだろうかと思ったが、其れよりは――]
知識は何処で役立つか解らないもんだな……。
[考え付いた事は心のうちに留め、案外と手馴れた様子で其れを身に纏う。とは云えど冬の寒さ対しては少々薄いとも感じられるか。室内で着る分には不足無いが。後で使用人に何かしら頼もうかと考える。]
[「ばーちゃん」の言葉に少しだけ表情が曇る。
彼女の元の主人が亡くなったのは急な病気が原因だったから、心配する気持ちは分かる気がした]
吊り橋は、無理ですね…
ただでさえ揺れますから。
[真剣に頷く。それからテーブルのほうを見て]
とりあえず、甘い物でも如何ですか?
[デザートを示し、小さく微笑んだ]
[言われた言葉にくすくすと笑って、隠し子といわれ]
それは確かに気にはなるね。
[と赤い髪の少女をちら、と見て。
その先の言葉に軽く首を傾げて]
俺が君を嫌う理由は無いと思うけど…?
[自身がローズに向ける代名詞がいつの間にか変わっている事には気付かず。
微かに曇る表情に]
何か、気になる事があるのかい?
[それはただの疑問。
ローズの不安がそこにあるとは思わずに]
…ん?
[赤毛の少女の視線に気がつき、見返す。
…子供に罪は無いというか…悪いのは義兄の方なのだとわかってはいても、なんとなく複雑な心境なわけで。]
自分の首を絞める事態にならなければ好いけどな。
[ 興味の無さそうな様子は変わらねど、其れを望む心境が無いと云えば嘘になる。表に出さぬよう務めてはいるが、心中は揺れ動き酷く不安定だった。]
/中/
……ろずなさ?(ぇ
ていうか、今回は存在が地雷な自分の設定。
て……それっていつもかorz
まあ、踏み抜いた相手によっては、何事もないさ、きっと。
―広間―
ふう、いいお湯でした。
どうも皆様、こんばんは。
[バスタオルで包んだ『何か』を床に。
脱いだ後の服は、後から浴場まで取りに戻る予定だ。]
ネリーさん。ラプサンスーチョンを入れてきてください。
ホットミルクは持ってこないで下さいね。飲みたくありませんから。
ええ、また。
[ 早々に立ち去るルーサーを見送れば、がらんとした脱衣場に青年一人が取り残される。広げておいた荷物は直ぐに乾く筈も無く、取り敢えず濡れた衣服は洗濯して貰えるだろうかと傍の籠に入れたが、問題は其の他――主に手帳。日記を付ける習慣等無かったから、其れは単なる読書の覚書程度にしか過ぎないが。]
『取り敢えず、部屋に置いてくるか。』
[ 其の結論に至り、浴場を後にすれば先ずは自室へと向かう。]
[視線が合ってはじめて、自分が相手をじっと見ていたことに気づいた。
見返されて、何故か目を泳がせる。]
おいしくないの?
[じっと見ていたことを誤魔化すように問いを口にした。
そう言えば、二日酔いだとかなにか言っていたような気がする。]
[僅か、陰った表情に戸惑うものの、その内心の思いにまでは当然の如く気づけず]
うん、あの橋は慣れてるつもりでも怖いからね。
[真剣な様子に、こちらも真面目に頷き返し。
ようやく気づいたデザートの存在に、今度は自然に、口元をほころばせた]
そだね、甘い物食べて、嫌なことは考えない方がいいね。
[そちらに釣られるように視線を向けて、わたしは赤い髪の少女を見る]
? …ええ、気になるわ。なかなか。
[しかし結局なぜ彼女を見たのかわからないままで。
続いた言葉に何と答えようか、逡巡。]
……ううん、何もないわ。気にしないで。
嫌わないでくれるなら嬉しい。
[微笑を作って、やってきた牧師様に頭を下げる。
自分の仕事は、自分では嫌だとは思っては居ないけれど。
知ったときに、傷つけられるのは、もう嫌だった。]
[入って来た牧師に会釈をして]
…あ、はい。
かしこまりました。
[「何か」にちらと視線を寄越したが、注文を受ければ直ちに厨房へと向かう。
…ホットミルクは余程嫌だったのだなと、頭の片隅で思った]
…ま、おいしいですけどね。
どうも二日酔いで胃が荒れているんだか…あまり食欲が無いもので。
[半分くらいで手が止まっている。]
―ニ階・客室―
[ 浴場から持って来たタオルを机に敷き、其の上に濡れた品物を並べる。嵌め殺しの窓の向こうに広がるのは烏珠の夜。今宵は、月が見えない。]
しっかし……。
[ 小さく声を零して口許に手を当てる。
想起するのは森の奥に見た彼の金色の双眸。幻覚だったのか現実だったのかは解らず、未だ誰にも話していなかった。雨の所為で其れどころでは無かったというのが大きいが、容易に口外する気にもなれない。]
[テーブルに戻って、チョコレートムースを取り分けつつ。
ルーサーの問いに、そちらを振り返って]
デザートのチョコレートムースですよー。
[答えつつ、自分の分をがっちりと確保]
酒場の看板娘 ローズマリーは、牧童 トビー を能力(占う)の対象に選びました。
[やって来たルーサーに軽く頭を下げ]
…ホットミルクは嫌い?
[と訊ねるでもなく訊いて。
気になる、との言葉には頷き]
そのうち分かるとは思うけどね。
[と返し。
その後に続く言葉に、以前言っていた秘密と言う言葉を思い出す]
そう?ならもう訊かないよ。
秘密の一つくらいは…って前にも言ったかな?
…嫌う理由がないから、嫌いにはなれないな。
[ローズが何に不安を抱いているのかは分からなかったけれど、少しでもそれを軽くしようと、笑う]
おやおや、大丈夫ですか?
自分の飲める量はきちんと把握した方がいいですよ、コーネリアスさん。
[のほほんと微笑む。]
……んー。二日酔いには梅干を入れた番茶が効くらしいのですが。
この屋敷に梅干や番茶があったかどうか。
―厨房―
[立ち上る湯気は何か煙のような香りがした。珍しい香りだと思う。
やがて淹れ終え、トレーにカップを乗せて広間へと戻る]
―厨房→広間―
まあ、ホットミルクには嫌な思い出がありましてね。
ミルクティーやココアも受け付けないのですよ。
シチューは平気なのですが。
[特に気にした風もなく、ナサニエルに答えを返す。]
あ、どうも。
……ふー。やはりこの匂いは落ち着きますね。
[煙に似た匂いを吸い込み、ほうとため息。]
[秘密、と自分で言って、ちり、と胸が痛む]
俺の旅の話…人には言えない事。
それを知っても笑ってくれるんだろうか?
金に困って自分を売った事。
そして…身を守るためとはいえ人を……
あの時の男の遺体はどうなっただろう?
……男…いや、あれはきっと人の姿をした、何か。
獣と思ったから、殺した。
そうでなければ、俺が……だから、殺した。
もう、あんな事はしたくない、けど……
[傷ついた男の反応と言葉を思い出す]
人狼、が、居るというのだろうか?
―広間―
そのうち、わかるのかしら?
[本当は、違うことはもうわかっているけれど。
それから続いた言葉に申し訳なくなる。でも、わたしがそれを今、口にすることは出来なくて。
たとえ周りが知っていたとしても]
ありがとう。本当に、嬉しいわ。
あなたは、優しいひとね。ナサニエルさん。
[安心させるように、笑ってみせよう。]
[ 静かに響く雨音を耳にしながら部屋を後にすれば、慣れない下駄で廊下を歩み階段を降りていく。一歩間違えれば盛大に転びそうな気がして、此れを履き熟す東洋人は偉大だ等と少し間の抜けた事を考えつつ広間へと向かえば、賑やかな声。]
……今晩和。
[ 逡巡の後に扉を開き、軽く会釈をする。]
今日も大勢の方がいらっしゃるようで。
[二日酔い、の言葉に無意識に眉をしかめる。]
おいしいものが食べれなくなるまで、飲まなきゃいいのに。
[いくらかきつい口調で言うと、すこしだけ表情をやわらげて、声をかけて来た牧師の方に首をめぐらせた。]
ウメボシ?とかナントカ茶は良くわからないけど、確かに、クリームよりもお茶の方が二日酔いにはいいと思うわよ。
…今宵よりは、明日…でしょうかね。
[長くここで暮らしたゆえか、屋敷の構造は把握している。
天井裏すらも。
どう動けばもっとも効率よく、そして面白いことになるだろうか…それを緻密に考える。]
[梅干しを入れた番茶、という言葉が丁度耳に入る。
ありましたっけ、と問おうと使用人の姿を探すと、既に厨房へと向かっているところであった]
…ま、自重しますよ…。
[多少反省しているのか小さくため息をつき、
からころと(多少ぎこちなく)鳴る下駄の音に目をやってクスリと微笑む。]
おや、これは風流な。
まあ、私には必要のない薬ですがね。
何せ私はうわばみですから。ふふふ。
[ヘンリエッタに笑いかけながら、ラプサンスーチョンを啜る。]
ヘンリエッタさん。
お酒の飲みすぎも良くないですが煙草も良くないのですよ。
味覚が鈍くなってしまいますからね。
おいしい食事をしたいなら、煙草は吸わない事をおすすめします。
[まあ、まだ煙草の吸えない年ですから関係ないでしょうが。と付け加え。]
[デザートの甘さにほんの少し、張り詰めていたものが緩むのを感じつつ。
聞きなれた声に振り返って]
…………。
[沈黙、数瞬]
……ハーヴェイ、どしたの、そのかっこ?
[何となく、想像はつくけれど。敢えて聞いてみた]
[ヘンリエッタがそう言ったのに呼応するように、使用人の少女が茶器を牧師の前において行く。
紅茶にしてはいささか特徴のある、薬じみた匂いが鼻を突いた。]
……へんな匂い。
[それを口にし、ため息を吐く牧師をもの珍しそうに見る。]
[ コーネリアスを見遣るほんの一瞬に其の黒曜石は眇められるも、直ぐに人当たりの好さそうな表情へと変わり以降銀髪の男へと視線を移す事は無い。]
明日……、か。夜雨に紛れた方が好いと思うが。
[ 尤も、と後に付け加えられる言葉。]
騒ぎにしたいのならば話は別だけどな。
[ミルクティーもダメとの言葉に少し驚き]
…重症だな、それ。
[とぽつりと。
ミルクティーは美味しいのに、と付け足して。
優しい、とのローズの言葉には軽く首を振る]
俺は優しくはないよ?
……俺にも言えない事がある、だから訊かない。
君が笑ってくれるなら、いくらでも優しくなれると思うけどね。俺は。
[それは半分は社交辞令で半分は…だけどそれは胸の内に隠しておこう、と。
旅人に好かれても、寂しいだけだから]
/中/
しまった……。文化圏についていけてないorz
浴衣と言う言葉は、共通言語として有るっぽい。なら、番茶も梅干も皆知ってておかしくない。
ん、貧乏なので、舶来品など目にしたことがないのデスヨー。
[牧師の言葉に、ヘンリエッタはしかめ面でこくこくと頷く。]
お酒も煙草も嫌いよ。
このお菓子の方がずっとおいしいわ。
[さりげなく、2杯目のチョコームースをよそいはじめた。]
[ 元々目立つ事は得意では無い為に、皆の多様な反応と注目する様子に思わず其の場から逃出したくなったが危うく踏み留まる。いきなり逃走するのも奇妙極まり無いが、其の上こけようものならば恥に違いない。]
……どうも有難う御座います。貴女程ではないですが。
[ 普段通りの微笑を浮かべながらローズマリーの褒め言葉にはそう答えはするものの、数瞬の間沈黙したメイには半眼になり僅か顔を俯かせ額に右の人差指を当て、左手は右肘を支え腕を組む。]
如何したも、斯うしたも。
雨の所為で着替えが全滅したんだから仕方が無いだろう。
[ 好きで着ているんじゃないと云いたげに溜息を吐いた。]
優しいわ。
……ありがとう。
[社交辞令だとわかっていても、その言葉が嬉しくて。
わたしは、いつか、いつか。彼のかなしみも癒したいと思った。
それから、ハーヴェイの言葉を聞けば、首を横に振る。]
大変だったのね。でも、とても懐かしい気がする。
……本当、とてもよく似合っているわ。
[彼の母親を思い出す。]
…おや、着替えが。
[それは災難でしたね、とハーヴェイに声をかけ。]
サイズが合いそうなら、僕のを持ってこさせましょうか?
でもまぁ、その姿もお似合いですよ。
義兄の蔵書に翻訳モノの推理小説なんかもあったでしょ。
…それに出ていた挿絵の方に良く似ています。
[半ば予想通りの反応に、楽しげに笑いつつ]
ま、着る物ナシじゃ、困るもんね。
まさか、何にも着ないでいるわけにもいかないし。
[さらり、と返しつつ。ムースを一匙、口に運び]
でも、いいじゃない。似合ってるし。
[どうせ離れるのだから、と好意を寄せられても応じないようにして、今までやってきた。
彼女たちが望むのは安定した暮らしで、俺の旅の終わりを望む事だったから。
代わりにその欲を満たす物は、場末にある娼館。
なんの柵も後腐れもなく相手をしてくれる女。
もとよりそういう欲は薄く、故にそれで事足りた]
売っただの買っただの言ったら…嫌われるだろうな。
[だから、言えない。
秘密の一つ]
[程なくして、使用人が銀髪の男性の前に番茶を運ぶ。
それを横目で見ながら、耳に入ったハーヴェイの「仕方ない」との言葉に]
…申し訳ございません。
替えのものをご用意させて頂きます。
[青年の横を擦り抜け、着替えを*探しに行く*]
[ハーヴェイの言葉には少し同情的な気持ちを浮かべ]
あの雨で、か?
災難だったな。
[旅をしていればそれは日常、しかし彼には厳しいだろうか、とふと思う。
そして礼の言葉を口にするローズには笑って]
礼を言われる事はしていない、けどな。
[優しいのではなく、自分が嫌われたくないのだ、とは言えずに]
[ ローズマリーの台詞を聞けば、苦い表情で首を傾けた。]
……明日も帰れそうにありませんね、此の様子だと。
[ 然し次いだ言葉に彼女から視線は逸らされ火の揺れる暖炉へと向けられる。其れは幾度か見せたぎこちなさと似たものだったが、一瞬の事で。]
そうですか。
[ 微笑と共に、そう、端的に。]
…あんな目?
[その言葉に気になりはしたが、あまり訊くのも悪いかと]
まぁ、いろいろあったんだろうな、そこまで重症なんじゃ…。
[と一人で呟く]
[ コーネリアスの申し出には逡巡の様子を見せるも、流石にずっと浴衣姿は辛いものがあり、有り難くは思う――も、着替えを探しに行くネリーに瞬いて、済まない事を云ってしまったかと若干申し訳無い心地になる。]
ああ、推理小説ですか……。
確かに、有りましたね。矢張り東洋の、でしたか。
[ す、と黒の瞳が細められた。]
[牧師の甘いものばかり、の言葉に少しだけ唇を尖らせた。]
今まで甘いものなんて滅多に食べれなかったもの。
今までの分、少しばかり多く食べたって罰は当たらないと思うわ。
[口答えしたものの、牧師の空笑いにつられて笑う。]
なあんだ。
牧師さんだって好き嫌いあるんじゃない。
[くすくすと、年相応の素の笑顔で、ヘンリエッタはムースを口に運んだ。]
[……やはり、似過ぎていて非常に怖い。
彼女に視線を向ける事でさえかなり勇気がいる。
『幽霊ではない』と頭では分かっているのだが。]
あなたの言葉が、嬉しかったのだもの。
お礼位、言わせてくださいな。
[ナサニエルにわたしはそう言う。
優しい言葉に、顔は知らずにほころんでしまう。それを止めようなんて思えなかったけれど。
ハーヴェイの一瞬のぎこちなさには、気づかぬふりをしよう。
彼はきっと、色々あっただろうから。]
そうね、雨も酷いし。神鳴りも、すごいわ。まるで、何かに怒ってるみたい。
……怖い、ものね。
[わたしを見る牧師さまが、すぐに視線をそらしている。
似ている、というのがやはり問題なのかしら。
彼を見て、小さく微笑んでみる。]
[ 楽しげなメイに返す表情が些か不機嫌な様子なのも、予想通りだろうか。其の様な事はハーヴェイには考え付きもしないが。]
流石にそう云った趣味は無い。
[ メイの傍、空いていた椅子の一つを引き腰掛ければ頬杖を突く。似合うという言葉は少々意外だったのか、瞳を一度ゆっくりと瞬かせた。]
……其れはどうも。
[ 然し機嫌は余り好くなっていないらしく、]
それにしても、人が苦労している間に暢気にしてるんだからなぁ。
[ムースを口に運ぶのを横目に見遣りながら若干拗ねた様に云う。とは云えど、雨に降られたのは半ば自業自得な訳だが。]
[浴衣の青年の、帰れそうにないという言葉に窓を見やる。
外は真っ暗で何も見えないが、窓ガラスに打ち付けて流れる雨粒は見える。
いつの間にか、この雨音になれてしまっていたことに気づいた。]
……ああ、すみませんすみません。
どうしても初対面のイメージが刷り込まれているようで。
お気に触られました?
[ルーサーはローズマリーの様子を見ることにした。今度は視線を逸らさずに。]
[ メイやトビーに対する時と他者に対する態度の変わりようは或る意味では天賦の才と云えようか、若しくは母譲りのものか。兎も角、ナサニエルへと向ける表情は苦笑ではありながらも一転して柔らかい。]
ええ、災難でした。
……雨だけならば未だマシでしたが。
[ つい零れた言葉に口許を軽く手で押さえ、]
灯りも無かったですからね。
[そう付け加えればローズマリーに同意する様に頷いて、]
怒るような何かが、あったのでしょうかね。
或いは、此れから――……いえ、何でもありません。
と、言うか。
そういう趣味あったら色んな意味で大変だから。
[冗談めかした口調で言いつつ。
拗ねたような様子に気づけば、くすり、と笑んで]
褒めてるんだから、素直に聞けばいいのに。
暢気っていうか……甘い物食べてる時くらい、悩みは忘れないと。
美味しいものも美味しくなくなるからね。
[ 或いは、ではなく。後者なのだろう。
天の怒りか、天の知らせか、其れとも天が彼の男に味方しているのか。
其れは彼には解る筈もなかったが。]
[降る、と言うよりも流れると言う言葉のほうが似合そうな豪雨だ。
高台にあるこの土地が流れたりしないか、少々不安になってくる。]
明日は晴れるかしら……。
[ヘンリエッタは不安げに、窓に映る室内を見つめた。]
…………。
[お会いしてみたい、との言葉に硬直する。]
あ、ああ。しばらくの間は無理でしょうね。
彼女、今はとても遠い所にいますから。
[はは、と引きつった笑みを浮かべながら答える。]
…何処でどう喜ばれるか分からないもんだね。
[浮かぶのはどこか苦笑めいた笑み。
こうやって談笑することさえ久しぶりで。
饒舌なのはそのせいか、それとも相手のせいなのか。
不機嫌な様子のハーヴェイに気付けば、此方にも苦笑して]
起きちまった事をいつまでも言ってもしょうがないと思うぜ?
…それにしても、それ、どうやって着るんだ?
[浴衣など見るのは初めてで、それ故の疑問。
返事は期待していないけれど]
[ 些細な事に反応し過ぎだと、自分でも思う。今まで培って来たものも誤魔化して着たものも、何もかも崩れてしまいそうになる。其れでは、独りでは生きていけないと云うのに。
父は居なかった。
母も居なくなった。
同族だと云う男は現れたが、決して彼の味方ではない。
だからもう、独りであるのに。]
灯りもなく外へ出た、あなたへの神様からの贈り物だったりして?
[ハーヴェイの言葉には、そんな風に返す。
謝罪には首を横に振った。]
ううん、大丈夫よ。
それは、怖くないと言ったら嘘にはなるけれど。
きっと、一時的なものよ。わたしのほうこそ、おかしなことを言ってしまって御免なさい。
確かにあの橋は雨が降ると大変だよな…足元が滑ったら洒落にならない。
暗ければ尚更、だね。
[何かを言いよどんだ気がするが、それには気付かずに]
[すました顔の牧師に目を丸くすると、やはりくすくす笑った]
そうね。
私、好き嫌いのない牧師さんよりも好き嫌いのある牧師さんの方が好きだわ。
……確かに。
[ 先のメイの言葉にはやけに神妙な顔付きで頷いた。他者から見れば、真面目過ぎて可笑しくなってしまう程に。
ハーヴェイの呟きを聞き留めたのか、耳聡い侍女は直ぐさま彼にも夜食を運んで来る。甘い物で無かったのは若干期待外れだが、其れ迄願うのは贅沢だろう。]
素直な俺も、其れは其れで如何かと思う。
[ 妙なところで自覚は在るのか、そんな事をさらりと云う。]
……まあ、食欲は人間の三大欲求のうちの一つだからな。
[ 仄かに白い湯気の立つスープを一掬い、口に運ぶ。]
ふふふ。
そう言っていただけて光栄です。
ま、牧師もあくまで一人の人間ですから。
完璧を求められても困るってものです。
[ずずっと紅茶を啜りながらヘンリエッタに向かって微笑む。]
あら、残念だわ。
そっくりなら、お会いしてみたかったのに。
[牧師様が硬直している様子にも気づいたけれど、なんとなくそう続けてみた。
ナサニエルの言葉を聞いて、そう? と小さく。]
それじゃぁ、とても凄いことね。
意図しないで、喜ばせられるということだもの。
[話は続けていたくて、言葉を続ける]
此れですか?
[ ナサニエルに興味を示されれば食事の手を止め顔を上げ、]
……そんなに難しくはありませんよ。
要は一枚の布を纏って、帯で留めているだけですから。
遣り方を覚えれば、直ぐに誰にでも着られます。
[案外と丁寧に答えを返す。矢張り変わらぬ人当たりの好い様子で。然し続いた雨中の話には唯一言、そうですねとだけ返す。]
…自分が生き、子孫を残したいと思うのは、
どの生き物でも同様かと。
虫けらの類であってもね。
三大欲求など、人間に限ったことでもないでしょう。
[口にした言葉のほうが届いたのか、なんとなく囁き返す。
彼の人は未だ人でありたいとお思いか?と。]
あえて、人間らしい欲求を三つ挙げるならば、
…名誉と、財と、愛情。
それを欲し、奪い合うのが"人間"なのでしょうかね?
良くはわかりませんが。
そう、かな?
[ローズの言葉が嬉しくて微笑む]
喜んでもらえるのは嬉しいからね。
[そうしてハーヴェイから丁寧な説明を受けて感心したように]
それも先人の知恵って奴なのかねぇ…。
風呂に行ったときにでも試してみようかな。
[自分でやると恐ろしい事になりそうだけど、そこまで思い至らず。
その後の返事には、無事で何より、とだけを]
……そんな贈り物は遠慮したいです。
[ ミルクを淹れた紅茶を一啜りした後、ローズマリーへと紡いだ言葉は苦笑めいていたが、首を振られれば其れに対して彼は緩と頭を傾ける。]
いいえ。
俺の方が可笑しかったんですよ。妙な反応をして。
……きっと、疲れているんだと。
[ カチャリと卓上に置かれる白の陶器。浴衣には些か不似合いか却って似合いに見えるかは、彼には解らないし気にも留めないだろう。]
此の話は、此れで。
[2杯目のムースの最後のひとくちを名残惜しげに味わうと、さて、と呟いて匙をおいた。]
ご飯も食べたことだし、今日は部屋に戻るわ。
[昨日みたいに、ここで寝ちゃったら恥ずかしいもの、と言う言葉は心の中にしまっておいて少女は言った。]
おやすみなさい。
[大人達に向かって、軽く頭を下げると扉の近くにいた使用人の少女の方に近寄る。
昨日、部屋まで運んでもらった礼を言いそびれていたことに気づいたから。]
[神妙な顔つきで頷く様子に、楽しげな笑い声をもらして]
……それ、自分で言うのもどうかと思うけどー。
まあ、確かに、そうだけどね。
[続いた言葉には呆れを交えて返す]
食べてる時くらいは、幸せな気分でいないと。
[ちょっとやり切れそうにないし、という言葉はごく小さく呟いて。
それと共に瞳に浮かんだ陰りを覆い隠そうとするかのように、一度、目を閉じる]
……さて、と。
ボクはそろそろ、休もうかな?
[閉じた目を開きつつ、明るめの声で言って、立ち上がる]
えぇ、そうよ。
[ナサニエルの笑顔をみて、わたしも笑う。]
笑ってくれるのも、嬉しいことだわ。
[それから、ハーヴェイの言葉に、頷いて。
わたしは*話を楽しみながら、使用人から紅茶を貰った。*]
そういう意味では、生きとし生けるものは皆平等……、か。
[ 小さく零れる嗤い聲は彼が表に出す表情とは余りにも不釣合いで、誰も其の様な話をしている等と思いはしないだろう。然れど問い掛けに嗤いは止み、数瞬の沈黙が訪れる。ややあって、]
人で在ろうが、獣で在ろうが、俺は俺。
……何も変わりはしない。
[其れははぐらかした答えではあったが、真意でもあった。否、然うで在りたいという願いだろうか。]
名誉と、財と、愛情。……獣には、無いのかね。愛情は。
[ 感心した様子のナサニエルに薄い笑みを浮かべ、]
……そうですね。
先人が幾つもの知恵を残してくれたからこそ、今の俺達が在る訳で。
感謝しなければいけませんね。
[試してみようかと云う言葉には、矢張り彼も其処には思い当たらないのか、若しくは其処まで面倒を見る気が無いのか、唯、どうぞと頷きだけを返す。]
コーネリアスさん、梅番茶は効きましたか?
気休めにしかならないかもしれませんが、二日酔いにいいらしいですよ、それ。
[と、茶の器を指差しながら。]
…さて、どうなのでしょうね。
少なくとも僕は別に…誰になんと思われようとも。
誰かに嫌われないように無理をして振舞うなど、愚かしい。
[視線の先には、ぎこちないやり取りをする男女。]
狩りをしやすいように擬態はしますがね。
…姉さんさえ居れば、別に。
それを愛と呼ぶのかどうかは。
仲間意識…とか連帯感の方が近いとは思うのですが。
[ 目を閉じるメイの様子を見遣れば、何か思う事でもあったのか、]
食べてる時も、幸せで居られなくなったら……終わりかもな。
[励ますでもなく、一言そう述べる。スープの海に浮かぶ肉をスプーンに乗せれば、口内に運んで噛み砕いた。立ち上がるのに視線を移して、ん、と小さく声を洩らす。]
お休み。
[ 同じ様に赤髪の少女――後にヘンリエッタという名だと侍女から聞いた――を見送り、視線を卓上へと戻して食事を再開する。とは云っても既に夜も遅い為に量は少なく、後はスープとパンが少し残るのみではあったが。]
[ 人の肉を平然と喰らうようになった時。
自分は其れを幸せだと感じられるのだろうか。
人で在れば涙するのだろうか。
獣と成れば何も感じなくなるのだろうか。
彼の時は、如何だっただろうか――?]
[休むという二人に、おやすみ、と手を振って。
ローズの笑顔を見れば自然と笑みは深くなり]
そうだね、みんな笑顔でいられたなら、それが一番良いんだろうね。
[そう言った後で聞こえたハーヴェイの言葉に頷いて]
まったくその通りだね。
感謝しないといけない、いろいろとね。
[そしてその後のハーヴェイの反応には、可笑しくても笑わないでくれよ?と返して。
目の前に置かれた食後のお茶を飲み干して立ち上がる]
俺もそろそろ休ませて貰うかな。
また明日、な。
[去り際、ローズにもう一度視線を向けて、*広間を後にする*]
……まあ。
[ 小さく――普通の声と同じに調整が可能らしい――聲を発しスープの中に残されていた肉を平らげる。正円の椀は最早空っぽで、中には何も存在していない。]
母と父との間にも、そんなもの存在しなかったようだし。
[ 視線は卓上に向けられながらも、見ているのは過去の記憶。]
貴方の姉と彼の男との間には、如何だったんだろうな。
さて、と。私もそろそろお暇致します。
コーネリアスさん、深酒はくれぐれも避けるように。
では皆様、また明日。
[バスタオルに包まれた『何か』を大事そうに抱えなおし、*浴場へ脱いだ服を取りに向かった。*]
[ “みんな笑顔で”。其の様なものは、理想論に過ぎない。
生きとし生けるものが生き続けるには何かを奪わねばならない。命を、肉体を、心を、あらゆるものを。奪うものが居れば、奪われるものが居る。其れは当然の事だ。なのに如何して、皆が笑い続けられるというのだろう。
少なくとも母は、奪われる側だった。
他者の前では笑顔を作っても心は涙に濡れ、其れは自分の前でもそうだった。
彼女の本当の表情を見たのは、父に関しての問い掛けをしてしまった時の歪んだ顔と、自分を観察する時の瞳の色と――死の間際だけだったように思う。]
…さぁ、どうだったのでしょうね…。
[その感情が、擬態だったのか、独占欲だったのか、それとも愛と呼ばれるものなのか、今の自分では知ることもできず。
ロビーの肖像画をひとめ見上げて、*自室へと去る。*]
[ 彼程人が居たと云うのに、居なくなるのはあっという間だった。
食事を終えてカテラリーを置けば小さな音が鳴る。温くなった紅茶も一気に飲み干してしまえばする事も無い。侍女は何も言わずに食器を片付け、其の場を去った。
頬杖を突き直して何と無しに見遣れば、黒曜石の瞳には揺らめく焔が映り込む。]
簡単なものだな。
[ 同じ村に住まう面子は兎も角、現在此の館に集っている人々とは何の縁が在る訳でもない。此処と云う場所を離れれば、もう二度と逢う事も無いのだろう。其程に迄、人と人との絆等途切れ易いものだと思う。]
[ 寝台の上にはネリーが用意してくれたと思わしき着替えが置かれていた。上質な素材ではあれど派手ではなく、ゆったりとした作りの為に大きさにも問題は無さそうだった。感謝の言葉を呟き、取り敢えず其れは椅子に乗せておく。
卓上へと視線を移すも、陽の光どころか月の光すら無い此の時間では乾いている筈もなく、変わっているのは滴り落ちた水でタオルが濡れたくらいだろうか。
明日に期待するしかないか等と考えつ、寝台に寝転がり毛布を被る。半日も歩き通しだったが為に矢張り疲れが出たか途端目蓋が重くなり、目を瞑れば世界は闇に閉ざされ、思考が霞がかっていく。眠りは容易に*訪れそうだった。*]
[女が現れ][それはこの館の使用人であったが]
[温かいスープを飲ませ]
[汗を拭き][包帯を直し]
[何くれと世話をして]
[その間]
[霞の掛かった様な眸の儘]
[大人しく世話を受けていたが]
[名や怪我をした事情を問い掛ける声には反応せず]
[ただじっと]
[沈黙]
[従順ではあるけれど]
[やがて諦めた様に]
[女は口を閉ざし]
[包帯しか身に着けていなかった体に夜着を着せ]
[幼子にする様に][ベッドに寝かし付けると]
[食器や汚れた包帯を持って出て行った。]
[眸][見開いた儘]
[じっと]
[天井を見つめる。]
「如何して。」
[ 仄暗い感情を孕んだ震える女の声。]
「如何して。」
[ 其れは憤怒か悲哀か或いは両方か。]
「如何して、違うの。」
[ 彼は其の問い掛けに答える術を持たない。]
「如何して、如何して、如何して!」
[ 激情は憎悪を呼び起こし白い頬は濡れる。]
「もう、疲れてしまったの。」
[ 一転して弱々しい声は酷く優しい響きを持つ。]
「だから、御願い。」
[ 女は光無き空虚な柘榴石の瞳を青年に向ける。]
「私を、殺して。」
[ 手渡された其れは月光を受けて銀色に煌めく。]
「―――――」
[ 其の後に彼女は何と云ったのだったろうか。]
[やがて。]
[起き上がり]
[ベッドから足を下ろす]
[然うして立ち上がり、扉へと]
[ふらり、ふらりと]
[歩き出す。][素足の儘]
[床の冷たさは気にならないのか]
[気付いていないのか]
――……………ッ。
[ 余りにも鮮明な其れに勢い好く身を起こす。胸元、浴衣の合わせを掴めば心臓の鼓動が早まっているのが解り、躰には厭な汗が伝っていた。呼吸も大分荒くなっており、ニ、三度深呼吸をして何とか整える。もう片方の手を額へと当てがった。]
夢……。
[ 声は声に成らずに、聲と成って零れ落ちる。
然し其れとて、彼と其の“同族”以外に聞く者は居ない筈だった。]
[ぎぃ。]
[扉を開け]
[廊下へと彷徨い出て行く。]
[夢遊病者の様に]
[迷い子の様に]
[先程ナサニエルから逃げようと走り出した時と比べると、]
[それは格段に確りとした足取り。]
[時折][ゆらり、]
[平衡を崩して壁に手を着いて身を支えながらも]
コ エ
ど こ ?
[館を漫ろ歩く。]
[……或いは何かを捜し求めて。]
[ 止め処なく聞える雨音に気付けば、窓の外へと視線を投げる。もう既に陽の昇る時間かと思われたが、灰色の雲に包まれた空は今も尚暗く光等差してはいなかった。雨は止むどころか、益々其の激しさを増しているかの如くに思えた。
袖で頬を伝う雫を拭おうとして、自分の纏う衣服の特異さに気付く。然う云えば、
昨晩は着替えが無かったが為に仕方無く此れを着たのだった。そんな小さな要因でさえ、過去の悪夢を思い起こさせる切欠と成ったのだろうか。……馬鹿馬鹿しい。]
……俺は……。
[ 呟きの続きは途切れ、聲にすら成らなかった。
聲は返って来る事は無く、返って来た声を彼が知る事は無い。
汗ばんだ両の手を見詰め、壁に凭れかかれば黒曜石の瞳を*ゆっくりと閉じた*。]
[ハッとした表情が浮かび]
ナいてる?
[宙を見据えたまま]
[濡れた頬に指を]
[まるで何故泣いたのか分からない、とでも言う様な]
[不思議そうな]
[……………………]
[何処を如何歩いたのか]
[広い館の階段の隅で]
[元々不確かだった足取りが]
[更に覚束無くなり][力尽きて]
[ずるずると]
[壁を背に]
[その場にへたり込む。]
[寄る辺無い子供の眸]
[そろそろ夜も明けようと言うのに暗い館の中]
[風の唸り声と][雨の叩き付ける音]
[膝を抱えて、胎児の様に]
[丸くまるく][身を縮めて]
―廊下―
[雨音は一向に止む気配は無い。客人の食事の用意を整え、自らも簡単に済ませる。
医者を尋ねに行った筈の使用人は未だ戻ってはいないようだ。この雨だ、村に辿り着いていたとしても戻るに戻り得ぬのかもしれなかった。
丁度広間に戻ってきたもう一人の使用人と入れ違いになるようにして、廊下へと出る]
[ 眠りにつくのは早かったが、恐らくは夢見の所為だろうか覚醒も早く、目覚めは御世辞にも良好とは云えなかった。何をするでも無く茫として雨音を聞いていたが、何時までも然うしていても仕方無いと思ったか、寝台を抜け出し着替えを済ませる。白のシャツに茶褐色のセーター、黒のスラックス。借りた衣服とは云え、矢張り慣れない和装よりは幾分か好いと思えた。
扉を開いて部屋の外へと出るも、静寂の包む館を支配するのは唸る風の声と雨降りの音ばかり。天候の御蔭か室内にも関わらずやけに寒く感じられた。]
[ 流石に靴のサイズは丁度とはいかず、彼にとっては些か大きい。普段より少しずれた足音は緋色の絨毯に吸い込まれるも、……カン、カンと、階段を降りる時には体重が掛かる所為か僅かに響く。一階に降り立てば先ずは食事をと広間に向かおうとして、目の前を通り掛った侍女に声をかけられる。]
ああ、今日和。……如何かしましたか?
[ 昨夜の事で何か云われるのか内心身構えていたが、其れは主目的では無かったらしくほんの一、ニ言で終わる。然し続いて告げられた言葉に緩やかに瞬いた。]
晩餐会?
[ 折角斯うして多くの人々が集ったのだから、其の機会を設けたいのだと云う。詰まりはアーヴァインもまた、広間で皆と共に食事をするのだと。]
……まあ、別段、反対する理由も有りませんが。
……暢気なものだな。
[ 自らが義弟に復讐の機会を窺われている等とは、知りもしないのだろう。「今宵よりは、明日」。昨晩聴いた其の言葉に依れば、最期の食事となるというのに。]
[ 序に靴だけは先に暖炉の傍で乾かしたからと、召使の女はハーヴェイを案内しようとして歩み始めるも、急に足を止め階段の方を振り向くと小さな悲鳴をあげた。]
……?
[ 其れは先日、ネリーが橋の前で立ち往生していた様子を思わせ、まさかと彼女の傍に寄って視線の先を追えば、案の定と云うか階段の隅で壁を背にして蹲る男の姿。丁度影に成っていた所為か、直ぐには見付けられなかったようだ。]
何でまた、こんな所に……。
[ 青年の呟きに我に返った侍女が慌てて駆け寄り声を掛けるも如何やら意識は無いようで、唯、寒さ故にか僅かに震えているのが見て取れた。]
[ 男が何の為に部屋の外へと出て来ていたか等青年は知る由も無いし、自分の聲が聴こえていた等とは思いも寄らない。]
[広間を出る間際、晩餐会をするという話を聞いていた。温室のほうで飾る花を幾つか選び、足早に戻る。先日の幽霊騒動の真相は知らされてはいても、やはり薄暗い廊下は何となく不気味であった]
…!
[ふと女性の悲鳴を耳にし、その足はびくりと止まる。階段のほうから小さな話し声のようなものが聞こえていた。
何かあったのだろうかと小さく息を飲み、はやる気を抑えながらそうと近づいて行く]
[ 周囲を窺うも降り続く雨の所為か、彼ら以外に動く人の気配は無い。如何でも好い時には居る癖にと内心悪態を吐いたが、其れで何かが変わる筈も無くて耳の辺りに手を遣りながら、男と侍女の傍に近寄りしゃがみ込んだ。]
取り敢えず、広間に連れて行きましょうか。
其処までくらいならば、俺一人でも運べますから。
[ 心配そうな表情を浮かべそう申し出る。斯う云った自分の性質は好い加減厭になるが、既に染み付いてしまったものなのだから仕方が無い。
意識が完全に無いというよりは朦朧状態なのか其れとも無意識の譫言か、何を呟いているように聞えた。殆ど声にも成らない呻きのようなものだったが。]
……失礼しますね。
[ 呼び掛けようとして名を知らぬ事に気付き、また何と云ったものか迷いながらも、幼子を宥めるように声を掛けながら体勢を崩させ彼を負る。]
非力と思わせておいた方が得なので、御内密に。
[ 御世辞にも逞しくは見えない青年が自分よりも体格の好い男を背負う姿は奇妙に見えたか、控えていた侍女が驚きに目を瞬かせるのに、冗談めかして彼は云う。]
[ 正確には獣としての力なのだが、其れは此の女に云う必要等無い。覚醒が近付けば感覚も能力も其れに近しいものとなる。とは云えど本来の力には程遠いものではあるが。当然の如く呟きも聞えてはいたものの、其の意味は解らなかった。]
/中/
書:狼確定かな。んで流がC狂?
師は能力者じゃないようなので酒:占、学:霊か。
にしてもタイミング悪い子でごめんなさ…orz
[そこにいたのは青年と使用人の女性。それとあと1人、青年に負われているのが伺えた。青年の視線がこちらに向いたのを察して会釈し、そのままそちらに歩を進める]
ええと…
お手伝い致しましょう、か?
[事情を尋ねようかと思ったのだが、そう体格が良くは見えない青年が1人で男性を負っているのを見て、そちらが先かと思い直す。
それにしても然程重そうに見えないのには、僅か違和感を感じなくもなかったけれど]
[ お下げ髪の少女の姿を認めれば会釈代わりに今日和と声を掛け、]
事情の説明は……、
ずっと此の体勢も辛いので、取り敢えずは広間に着いてからで。
[矢張り冗談っぽく云って歩み出し手伝いの申し出には、そうですね、と呟く。]
扉を開けて貰えると嬉しいな、と。
……後は食事を頂けると。主に、俺の分を。
[ 其の言葉を聞けば侍女は此の場をネリーに任せ、自らは恭しく一礼をすると食事の準備に向かう。とは云っても既に作り置いている為に、温め直す程度の手間なのだが。其れを見送り、絨毯を踏み締めて広間へと向かう。]
―回想 昨夜―
[話をするのは楽しくて、やがて彼が部屋に戻るのを見送る。
残るのはわたしで、少し目を閉じた。明るくて、眩しくて。]
眠れるかしら?
[ううん、無理だわ。わたしは立ち上がり、水をもらう。
少しぬるめの水は、きっと薬をよくきかせてくれるだろう。
夢を見ない深い眠りは、*決して得られないだろうと思った*]
あ…はい。かしこまりました。
[頷いて、時折急ぎ足になりながら先導するように歩き出す。冗談めいた口調に、先程の違和感は既にどこかに消え失せていた。
両手に花を抱えながら、時折ちらと背中の男性を見遣る。意識はないようだった。
やがて先に広間の前に辿り着いて、扉を開く。細く洩れていた暖かな光が、廊下に溢れる]
どうぞ。
[扉の取手を握ったまま下がって、入るよう促した]
[ ネリーが扉を開くのに礼を云い、広間の中に入ればソファの上に男を寝かせる。降ろす瞬間に聞えたのは吐息か声か。然し其れは薪の爆ぜる音に掻き消された。]
毛布を掛けておいたほうがいいかな。
―書庫―
[細身の銀縁の眼鏡をかけて、本棚の前で書物に目を通している。]
…秘密。
[挿し絵には、薔薇の咲き乱れる茂み。]
[青年が中に入るのを見届けて自らも中に入り、扉を閉めた。まずはテーブルへと歩み、中央の花瓶へと花を活ける]
ああ、そうですね。
お持ち致しましょう。
[丁度背後で聞こえた声に反応を返して、もう一度廊下へと出る直前に男性を見ると、如何やら目を覚ましたようだった]
御願いします。
[ 立ち去ろうとするネリーに微笑を向けるも、届いた男の声に目を戻す。]
……ああ、起きていらっしゃいましたか。
此処ですか? アーヴァインという方の所有する館の、広間です。
[ 其の視線は柔らかい。]
…何処まで知っているのやら。
あの方も真意の読めぬ方だ。
[ぽつりとひとりごちて捲るページは、薬草の章へと。]
……はい?
[ 唐突な言葉に瞬いて僅かに首を傾げる。
然し広間の扉が再び開けば其方に気を取られ、召使の女が湯気の立つカップと軽食を卓上に並べて直ぐさま去っていくのを、感謝の言葉と共に見送った。如何やら、晩餐会の準備に忙しいようだった。]
飲めますか?
[ 手に取ったカップには、上品な香りのする菩提樹の花のハーブティー。其の匂いは遠い記憶を呼び起こすかのように思われた。]
[暫くして毛布を抱え、再び広間へと現れる。
――とほぼ同時、厨房から彼女を呼ぶ声]
はい、今すぐ!
[声を投げると、青年に毛布を任せて頭を下げ、厨房へと姿を消す。
男性が青年に何か呼び掛けているようだったが、それに耳を傾ける間も*なかった*]
そうですか。
[ 口許を笑みに象り男の指に温かなカップを触れさせる。]
どうぞ。……温まりますよ。
[ 受け取れるようならば手を離そうと。]
[気がつけば足は庭園へと向かうも、この雨の中、傘はみあたらず。
温室の窓に頬を寄せて、微かに歌う。]
If whose voice is not carried to you, either I erase everything.
It is sad to have repeated wrong Onage and trembles.
[指にカップが触れ][温かな温度]
[其れに気付き、もっと温まろうと]
[両の手を這わせる]
[が、]
[震える手はそれを受け取り切れず]
[揺れて]
[中の茶の幾らかを零してしまう。]
とっ、
[ 完全には手を離していなかったが為に器ごと落ちる事は無けれども、零れた滴は青年の手を濡らし床に落つる。其の熱さに、声をあげはせずとも息を呑み片眉を寄せた。]
[失望の色]
[或いは困惑の][嘆きの]
[重要な失敗をしでかしてしまった子供の様な]
[乱れた夜着][包帯の覗くそれに]
[広がる染み]
[濡れて]
―客間―
[目覚めはいつも通り、しかしどことなく穏やかなのは昨夜交わした会話のせいか。
自分に向けられた言葉を思い出し、苦笑]
…あんな事言われたのって、いつくらい振りだ?
[基本的に人当たりは良いほうで。
それは関係を潤滑にする為の手段と割り切っていたから、自分が優しいとは思えずに。
それに惹かれて来る物も居たけれど、此方に深入りする気は無く、故に…冷たいと言われる事には慣れているのだけれど]
でもきっと、そのうち……だろうな。
[いつか立ち去る身、きっと今回も深入りはしないだろう、と。
だけど、ローズの微笑みに混じるわずかな影はなぜか胸に残って]
…旅人に好かれても、迷惑だろう?
[自問自答]
[ 戻って来たネリーから毛布を受け取りはしたものの、男の夜着にも染みが広がったのを見れば替えをと頼む。侍女に呼ばれた彼女は若干慌してながらも、其れに頷き再び去っていった。]
……取り敢えず脱いだ方が好いですかね。
[ 濡れた自らの指を舐めれば仄かな甘み。呟く様に云ってから男を見遣れば覗く白の包帯に目を細めた。]
[いつまでも眠っても居られない、と身支度を整え、部屋を出る。
ホールで忙しそうな使用人の女性と行き合う。
また何かあったのか、と問えば、返る言葉は意外なもの]
晩餐会…?
また随分と酔狂な…いや、旨いもんが食えるんなら歓迎だけど。
きっと足止めを食ってる連中への気遣いもあるんだろうしね。
[楽しみにしてる、と付け加えて広間に向かおうと。
すると今度は向こうから声が掛かる]
…え?あの人が起きて来たって?それで…?
[ハーヴェイとネリーが運んでいったと聞いて、一瞬大丈夫だったかと心配にはなったけれど]
あぁ、そうなんだ。
じゃ、今は広間に?わかった。
[目覚めた、というのなら少しは話が聞けるだろうか?と思いながら広間へと向かう]
―→広間―
あの方、ですか?
[彼の行き倒れの方かと問い。]
…打ちつけたとか擦りむいたようには見えませんでしたが。
夜盗にでも襲われたのでしょうかね?
―広間―
[広間に入れば、件の男性とハーヴェイが向き合うのが見えて、できるだけ怪我人を刺激しないようにと声を掛ける]
よう、気が付いたんだな?
[よく見れば男の着衣は濡れていて、そこにあるカップを見て状況を把握する。
そしてハーヴェイに事の次第を訊ねようと]
何か話したかい?この人…
[その場の様子に相変わらず、とは思ったものの問いかけ、少し赤いその手を見る]
火傷…?
そう。
……階段の所で気絶していたから、広間に運んで。
[ 面倒臭いという呟きは同族に対しては素直に零れた。続けられた言葉には余り納得していない様子で、件の男の声が聞えるのに合わせ眉を顰める。]
それで、此程に恐慌状態に陥るものかな。
[ 其れよりも先程の同族の囁きが気になり、問い掛ける。]
……何を、見付けたんだ?
[ぼんやりとした男の視線に、状況は変わらないか、と溜息を吐き]
せめて、名前だけでも判ればな…
[そういって近付こうと。
しかし昨日の事を思い出して足を止める]
きず?
[ 男の呟きに訝り眉を顰めるも、]
ああ、今晩和。
[ナサニエルが遣って来たのに気付けば振り向いて声を返す。話したかという言葉には軽く目を伏せ緩やかに一度首を振り、]
いいえ、特には。
……少々御茶を零してしまって。
[特には、とのハーヴェイの答えは想定内で。
服の染みはお茶のせいと気付けば少しの安堵。
また怪我でもしたのかとの不安もあったから]
どういう目に遭えばこんな……
[いまだ落ち着かない様子の彼を見て言葉を濁す]
……さあ。
[ 其れはハーヴェイも疑問に思っている事で、軽く肩を竦めて見せれば、中身の零れたカップは卓上に置き、彼の分の紅茶を一啜りしてから立ち上がる。]
済みません、濡れた服を脱がせて毛布を掛けてあげて貰えますか?
後で、侍女の方が着替えを持って来ると思うので。
[ 傍らに置かれた毛布を指して云う口調は普段通りながらも、厄介事は他者に任せたいという心境があったか。]
俺は、少し席を外します。
晩餐会までには戻ると。
[ 疑問の声にも混乱の様子にも気付かなかったか、立ち止まる事は無く、用意された軽食にも手を付けずにナサニエルの横を擦り抜けて広間の入口へと向かう。
扉を開き立ち去る刹那、黒の視線が男へと*向けられた。*]
[ハーヴェイにいわれた言葉に側の毛布を見遣って頷く]
確かにこのままじゃ拙いもんな。
あぁ、また後で。
[そういって男に向き直る。
その、混乱した様子に昨日の事を思い出し僅かに顔を顰め]
…おい、大丈夫か?
[軽く身構え、何がおきても良いように、と]
[ 奇妙に思う事はあれど確信には至らない。家族でも同族でも無いのならば、彼にとって他者等は如何でも好いものだと*思えた。*]
――客室――
[どれ位眠りと目覚めを繰り返したのだろう。何度目かの覚醒に瞳をゆっくりと開ければ、日中の気配は感じられるが、外は嵐とも思えるほどの激しい雨。
少女は継続的に続く頭痛に悩まされながら、身を起こす]
――嫌な雨…。一体何時になったら…止んでくれるのかしら…
[薄紅色の唇が、僅かに色褪せる。漏れる吐息も、何処か重苦しい。]
このままでは…本当に陰気に負けてしまいそう…。
気分転換…しようっと…。
[重い体を引き摺るようにベッドから這い出れば、少女はゆっくりと浴場へと足を運んだ]
――客室→浴室へ――
[必死に何かを思い出そうとするかの様に]
[顔を顰めている]
[其の眸が潤んで]
[熱を孕み][頬が赤く]
[額には珠のような汗が浮かび]
―厨房→廊下―
[使用人からの用件は案外すぐに済んだ。男性の着替えを探し、再び広間へと向かう]
サイズは大丈夫でしょうか…
[腕に掛けた衣服を見て小さく呟きながらも、思考は別のほうへと向いていたのだけれど。
満身創痍で現れた男性。苦しげな声。
…何となく厭な感じがしていた]
[見つめる先の男の様子が変わる。
顔を顰め、熱に浮かされたように、赤く]
おい、しっかりしろって!
[それでも、声を掛けることしか出来ずに]
[ハッと]
[今初めてナサニエルが其処に居ると知った]
[そんな風に凝視して]
……殺したいのか。俺を。
[切ない][けれども凄惨な]
[微笑。]
/中/
ネリー>へんな誤解はしないでくれよ?(真顔)
あぁ、独り言が減らない…
(ネタ仕込もうと開けたらこの状況でうっかり発言してしまった人)
…は?
[突然はっきりした口調で男が告げる。
その言葉を一瞬理解出来ずに。
しかしその彼の表情は真剣そのものの、何かを覚悟したよう微笑で]
…何でそうなるんだ?
俺はあんたを助けたいとは思っても、殺したいって言う理由はないぜ?
――浴室――
[夜風を孕む雨は、やはり窓を叩きつけて。
しかし、温水の流れる音に不安を掻き立てる音は緩和する。]
誰も…居ないみたいね…。
[脱衣室を覗き、人影が居ないことを確認して、少女はするりと衣服を脱いでいく。
成長の止まってしまった少女の体つきは、その全てが幼いままで。色香も纏わない自身の体に苦笑を漏らしながら、自然と視線は背筋へと向かう。]
――こんな雨の日は…忘れてしまいたい記憶と共に…傷が…疼くわね…
[くすりと自嘲気味に微笑んだ少女の背中には――左半身を大きく覆う、一見火傷と見紛うような裂傷の痕が…。今も生々しい色合いを残したまま描かれていた――]
/中/
独り言 あと1464pt……
どうやって消費しろって言うんだこんなもんー!!!
←残すのはプライドが赦さないらしい(渇笑)
[扉に手を掛けたまま停止している彼女には、男性の表情までは見えはしなかったけれど、その言葉ははっきりと耳に届いた]
[息を飲んだ]
―一階・書斎―
[ 平時より賑かな館内でも此処は喧騒からは遠く、周囲に満ちる空気は幾らか冷たいながらも落ち着く。窓を叩く雨滴の音すらも快く感じられた。
先程の広間での出来事等無かったかの如く、彼は一人其処に居た。緩やかな足取りで室内を歩めば濃茶の髪が微かに揺れる。書棚の一つの前で足を止め暫し背表紙を眺めていたが、其のうちの一冊を抜き出そうと手を伸ばす。]
あー……、頁、折れてなきゃ好いが。
[ 独り言ちしゃがみ込んで本を拾い上げ……ようとして、其の手が反射的に引かれる。]
……っ。
[ 眉を顰めながら掌に視線を落とせば、如何やら紙で切ったらしく、指の腹には一筋の線。大分深かったのか、次第に赤が薄く滲み始める。]
……痛ぅ……、今日は厄日だな。
[ 小さく愚痴を洩らして、薄い口唇から舌を覗かせ、指先の緋色を舐め取る。彼の御茶とは全く異なる、独特の味。]
……“殺して”か。
[ 零れた囁き含まれる色は自嘲か哀愁か狂気か。
唯、僅か緋に濡れた青年の口唇には笑みが刻まれ、黒曜石の眸には仄暗い光が宿る。]
けれども、俺はお前といき たか た
[「行きたかった」なのか「生きたかった」なのか]
[それとも]
[すうっと]
[身体から力が抜けて行き]
[ぱたり、]
[*崩れ落ちる。*]
…死にたがりなど、食べてもおいしくありませんよ。
[実も蓋も無い返答を。
いくつかの花や木の葉を、酒の小瓶に潰して詰めてゆく。]
[此方が掛けた言葉には無言のままで、男の行動が読めずに見つめたまま。
その後の呟きに気付き、何かを問おうとした所で男が意識を失う]
…おい!どうした!?
[慌てて体を起こそうとして…酷い発熱に舌打ちをして]
無茶すっから…
[そうしてようやく扉を傍に佇むネリーに気付く]
あ、良い所に。
もしかして着替え持って来てくれたのかな?
酷い熱なんだ、着替えさせないと。
[とにかくこのままではいけない、と]
/中/
発言の撤回が多くて…(涙)
出来るだけ齟齬がないようにと思うと、発言前にリロードなんだけど、それで書き直してるうちにまた……
打つのが遅い自分を恨む……orz
……いきたかった…?
[男の呟きを反芻して、気を失った男を見つめる]
どういうことだ?
[もちろん返事は返らないが。
判ったのは男が殺されかけたらしい、という事と、誰か仲間が居たらしいという事]
これ以上無理させるわけにもいかねーしな…。
[いずれ判る時が来るんだろうか?とはただの希望]
[酷く戸惑ったかのように彼女の瞳の奥は揺れていた。
けれど]
あ、…はいっ
[ナサニエルの声に慌てたように頷いて、そちらへと歩み寄る]
─二階・客室─
雨……やまないな。
[ベッドの上で、膝を抱えるようにして座り込みつつ。
窓の向こうを見つめて、ぽつりと呟く]
……ばーちゃんに、相談したいんだけど……いつ、戻れるかなぁ……。
[はあ、と。
言葉と共に零れ落ちるのは、重苦しいため息で]
[伏せた瞳を、服の中へと向ける。
左胸の上に浮かびあがる、痣の如きもの。
力の印。
それは、昨日、気がついた時よりも色彩鮮やかで。
形だけを見れば、何かの花を思わせる美しさがあるのだけれど。
鮮烈過ぎる紅が。
強い恐怖を感じさせて]
[熱いお湯をその体に掛ければ、少しだけ身を竦めて汗を洗い流す。
傷自体に痛みはなく。ただ皮膚を抉らた為に感触が通常とは違い全てが過敏に反応する。
香り高い泡に包まれれば、戻りたい過去の記憶が蘇る。しかし少女がその苦悩を口にする相手は…居ない。]
そういえば…ヘンリエッタさんって…今日はどうしているのかしら…。
[塞ぎこむ心を留めるように、少女はわざと接点の無い事柄を口にし、思考をシフトする。
自らに目隠しをするとは言え、少女が彼女の名前を口にしたのには、何処かでヘンリエッタの事を気に掛けているからなのだが。]
夕食の時間には…会えるかしら…
[お湯で泡を流し、浴槽に足を入れる。身を沈めて僅かに上気した頬を指でなぞりながら、少女はヘンリエッタの事を考え僅かに楽しそうな笑みを*浮かべていた*]
/中/
さて、動き出したはいいけれど、下に移動するタイミングがつかめません(笑)。
にしても、うーん。
……能力者の当たりがつかないなあ、今回。
なーんとなく、とかとかはわかるんだけどねー。
と、いうかですね。
いくらなんでも、能力者なのは気づいてますよね、皆様??
……まあ、霊能で誤認された事は確かないから、大丈夫……な、はず。
多分。きっと。
ちょっと、ごめんよ…
[とりあえず着替えさせる為に男の体を持ち上げ服を脱がせようと。
あちこちに巻かれた包帯が痛々しく、ほんの少し顔を顰め。
ネリーが持ってきた着替えを受け取り]
ありがとう。
ちょっと手伝ってくれるかな?
[流石に一人では気を失った大人の扱いは難しく。
二人掛かりで着替えを終えれば、そのまま床に、という訳にも行かず、かといって部屋に運ぶにも無理があり]
……ここで良いか?
[目星を付けたのは暖炉の前のソファで。
何とかそこまで運んで男を寝かせて。
自分も近くの椅子に腰掛け*様子を伺って*]
……まあ、落ち込んでても、仕方ないよね。
[小さな呟きで、ループを続ける思考を一先ず区切って。
ぴょん、とベッドから飛び降りる]
あ……あれ?
[直後に襲う、視界の揺らぎ。
何か……霞がかかるような、そんな感じがするものの、それも一瞬のこと]
今の……感じ……。
[嫌な予感が掠める。
軽く、唇を噛みつつ、右手が無意識に左胸へ当てられ。
何かを掴もうとするような、そんな動きを]
……考えすぎ、思い過ごし……。
[掠れた呟き。
それは、何とか自分を納得させようとしているかのような、そんな、焦りめいたものを帯びて]
……大丈夫、きっと。
何も……何も視えたり、しない……。
[雨は未だ止む気配もなく。
温室の硝子窓の向こうには、
雨に濡れ、風に揺れる冬薔薇の茂み。]
That's my tears.
Though it's not yet cured, my sorrow be charmed by a sigh of a month…
My voice does'nt reach you.
Though the last words that you gave are still these places and continue crying.
Though I decided not to grieve, the moon cries in a night sky.
[*届くことの無い、微かな歌声。*]
ダメだな、こんなじゃ……。
しっかりしないと。
[小さく呟いて、ゆっくりと部屋を出る。
その足はごく自然に、音楽室へと向いて]
─…→音楽室─
大丈夫、大丈夫、大丈夫。
[廊下を歩きつつ、心の奥で繰り返す]
大丈夫、絶対、大丈夫。
[だが、繰り返せば繰り返すほど]
……大丈夫……何も起きない。
[不安は消えるどころか大きく膨らむようで]
[一旦自室へと向かい、クロゼットの天井をずらして屋根裏へ。
音も立てずに四つ足で疾走する。
十代の頃にやんちゃしたおかげで、この辺の構造は熟知していた。
目当ての部屋の天井板をずらす。
眼下には、文机に向かう癖のある黒い髪。]
─音楽室─
[楽器たちの空間に滑り込み、静かに佇むピアノに近づいて。
白い鍵盤に、そ、と指を落とす。
紡がれる音色は、いつもと変わらず、澄んで。
その響きは、ほんの僅かながら、気持ちを鎮めてくれた]
……早く、雨、止まないかな……。
[小さく、小さく独りごち。
緩やかに、緩やかに。
旋律を紡いで行く]
[頷き、けれど脱がせた服の下から顕になった包帯の跡を双眸に映せば、やはり眉を顰める。
着替えを終え、ソファーまで運ばれた男性を見ながら]
……違います、よね…
[無意識の低い呟きは、傍にいる者にも聞こえたかどうかは定かではない]
[背後から抱きすくめる様に襲い掛かると、
長く伸びた鉤爪を、その喉笛に。
だが、掻き切ることは無く、まっすぐ声帯だけを貫いて抜き取る。
…幾度も"練習"して、身につけた技術。
突然のことに、振り向いた義兄は眼を見開いて声を上げようとする。
だがそこから漏れるのは、ひゅぅと言うか細い笛のような音。]
…声を出されると、いろいろ厄介なんですよ。
あぁ、どうしました?義兄さん。
[妙に淡々と、いつものようにかける声。
その頬には、やわらかな笑み。]
[驚いて、胸を突き放そうとするその義兄の腕を取り、ねじりあげる。
骨付きチキンを食べる時のように、無造作に捻じ切る関節。
悲鳴の代わりにに漏れる息。]
…解ってますよね?
僕が何故、戻ってきたのか…くらい。
[関節を完全に外された腕を押さえて蹲る義兄を、静かに見下ろす冷たい笑み。]
[瓶の中身を口に含む。
花の香りに混ざった、ツンとする冷たい香りは一歩間違えば毒にすらなる薬。
ガタガタと震えるその顎を取り、
かつて姉が幾度もそうしたようにその唇に触れ、
無理やり花の香りを流し込む。]
済みません、有難う御座います。
[ 使用人の女に然う感謝の言葉を述べて頬笑み、軽く右の手を振ってみせる。人差し指には白いテープが一巻きされ、赤い軌跡は既に隠されていた。本来ならば救急箱の場所さえ訊けば充分だったのだが、晩餐会の下準備は殆ど終わり、後は広間に運ぶだけだからと態々手当てをしてくれたのだった。]
あー……っと、序にもう一つ。
……煙草って有りますか?
[ 未だ諦めていなかったらしく僅かに眉尻を下げて問えば、侍女は頬に手を添えて考え込む素振りを見せ、主に訊ねなければ解らないと答えた。其れを聞けば其れでは食事の際にでも尋ねて見ますと云い、会釈をして仕事に戻る彼女を見送る。]
[まだ動く左手で喉を押さえて咽返る義兄を横目に、テーブルの上に置きっぱなしだった葡萄酒で口を漱いだ。]
…大丈夫、死にゃしませんよ。
死には、ね…。
[その言葉の真意に、彼は気がついただろうか?]
[声にならぬ声で喚こうとし、床を這いつくばって後ずさる彼を、ゆっくりとした足取りで追う。]
…いろいろ良くしてくれたことは、感謝していますよ…義兄さん。
ですがね…。
[壁際で震える義兄を見下ろしつつ、室内の暖炉から、火かき棒を手に取る。
その先端を、炎の中に晒しつつ。]
[ 扨、広間に向かおうかとすれば、微かに零れるピアノの旋律が耳に留まる。
青年が此処で其れを聴くのは初めてで、雨音に混じる音色は書斎の静けさとは違う快さを齎す。誘われるように何と無しに其方へと歩みを進めれば、或る部屋の前迄辿り着いた。彼には縁の無い場所であるが為に足を踏み入れた事は無いが、確か音楽室だっただろうか。]
あなたは、二度も…僕から姉を奪った。
[熱したその金属棒を、彼の頬へと押し付ける。
肉のこげる特有の匂い。]
…それが許せない、それだけなんです。
[喉が潰れていなければ、その声は絶叫になっただろう。
必死で振り上げる左腕を事も無げにねじ上げ、無造作に引きちぎる。
どさりと放り出されたままひくつく、離れ離れになった腕と胴体。]
…おっと、これはいけない。失血死されては困るんですよ。
[ボタンが取れた時くらいの調子でそう言うと、焼けた火掻き棒を押し付ける。
傷口を焼いての、乱暴な止血。]
[ 音色に聴き入る青年には今は聲すらも届かずに、何が起こっているか等は知る由も無い――否、仮令知れたとしても、邪魔立てする気等有りはしなかったが。
館の主と訪問客。彼の男と青年の関係等、其の程度のものだった。]
[怯えきったまま見上げる、震える目。]
…あなたでも、そんな顔をするものなんですね、義兄さん。
[くすくすと楽しげに、口元に浮かぶ笑み。]
─音楽室─
[緩やかに、旋律を紡ぎつつ、ふと、記憶を過去に彷徨わせ。
家の事情で祖母の元に身を寄せたばかりの頃。
連れて来られたこの場所は、それまでとは余りに違っていて。
最初は、何もかも怖くて、祖母の後ろから出られなかったのだけれど。
いつの間にか。
ここに来て、ピアノを奏でる優しいひとと。
話すのが楽しい、と思うようになっていたのだ、と思い出し]
…さて、次は何処から行きましょうかね。
[傍らにしゃがみこむと、その顎を取って楽しげに覗きこむ。
パクパクと何事か言いたげに、義兄は必死で眼で訴える。]
…楽になんか、してあげませんよ。僕はイキの良いほうが好みなもんでね。
死者を喰らっても、味も素っ気も無い。
[ぺろり、とその頬を舐め。
既に常人ならば気を失っていてもおかしくない状況で、それでも意識を失えないのは、先ほど飲ませた薬が効いてきたからで。]
……幽霊、かあ。
[小さな声で、ぽつりと呟く]
出てくるのが、優しいひとだけなら……それなら。
視えたって、聴こえたって……全然、気にならないんだけど……ね。
[ふ、と伏せられる、瞳。
碧のはずのそれは、何故か。
淡い紫へと変貌しているようにも見え]
[シャツのボタンを爪で千切りとるように外し、首筋から胸へと舌を這わせていく。]
…あの売女とも、こんなことを?
[からかうようにかける声は、細く高く亡き姉のもののように。
やさしく撫でる白い指は鉤爪となり、
臍へと深々と突き刺さる。
果物を剥くように、無造作に裂かれる腹。]
[ トンと壁に背を凭れさせ顔を上げれば、其処には当然空は無くランプの焔に照らされる無機質な天井が見えるばかり。館の外、瀟瀟として吹き荒ぶ風雨も何処か遠くに、静謐な空間に漂う緩徐なる音色が現在は全てで。
漆黒の双眸を伏せて細く息を吐いた。]
[ 安らかな心地に成った事等、母を喪って以来殆ど無かった。
あるとすれば、其れは静寂に覆われた書斎の中でのみだろうか。若し其れすらも失われたなら、己は崩れてしまうかもしれない。
否、既に崩れているか。]
…そういえば、義兄さん。東洋の文化にも造詣が深かったですよね。
[腹の中から臓物を引きずり出しながら話すにしては、やけに暢気な言葉。
邪魔な腸を掻き出し、やわらかな肝臓へと歯を立てる。
昨夜食べたデザートのことを、僅かに思い出した。
些か新鮮さの無いひねた味だが、久しぶりの"食事"は格別で。
何より、触れた肌から伝わってくる恐怖と苦痛の色は、最上級のスパイスで。]
確か…"ハラキリ"でしたっけ?
あれって、切ってもすぐには死ねないんでしたよね。
…腹部の傷は致命傷にはなりにくいらしくて。
[縮み上がった胃に爪を立てれば、むせ返る様な吐瀉臭。
胃液が腹腔内を焼いていく。
苦しげに身を捩っていた動きが、小刻みな痙攣へと変化する。]
こうやって、内側からゆっくり溶けて腐り…三日ほど苦しんで死ぬのだとか。
[感覚の赴くままにしばし、旋律を紡ぎ続けるも、さすがに限度というものもあり。
何曲目か、数えるのも億劫になった曲の終りと共に、ようやく手を止める]
……ん?
[それと前後するように、扉が開く気配を感じて]
……あれ、誰かいるの?
[惚けた声で、問いを投げ]
[なるべく太い血管を傷つけぬよう。
出血が酷いところは焼きながら…
太腿に噛み付いて、未だ衰えるには早い筋肉を貪って飢えを満たす。
筋の固い膝から下は、なんとなく折り取って。
既に白目を剥いて痙攣を繰り返すだけの肉塊。
だがそれでも、その心臓は止まることなく。
胸元まで裂かれた皮膚と肉と胸骨の下で、鼓動を刻み続けている。]
……ん?
[ 僅か興味に駆られつつも演奏の邪魔をせぬようにと薄く扉を開けば、ピアノの前に座る人物に些か意外そうにして緩やかに一度、瞳を瞬かせた。]
メイか。
[ 名を紡ぐ青年の声もやや惚けていただろうか。口許に手を当てながら、様々な楽器で彩られた部屋の中に躰を滑り込ませ、そっと扉を閉める。其の小さな音ですら、何かを壊してしまうのではないかといように。]
[うわごとのように、唇だけが動き、
時折その目が恨みがましく、返り血に染まった白い顔を見上げる。]
…別に二つも要らないか。
片方だけでも十分見えますよね?
[さらりとそんなことが耳に入り、びくんと義兄の体が跳ねた。]
[入ってきた青年に、や、といつもの挨拶をして。
それから、意外そうな様子に気づいてか、僅か、首を傾げつつ]
うん、ボクだけど。
……意外かな、弾いてたのがボクで?
[問いかける声はやや、冗談めかした響きを帯びていたか]
[ぎゅっと閉じられたその瞼に唇を落とし、
長い鉤爪を目の際へと埋める。
抉り出された眼球では無く、そこにぽっかり開いた穴へと、
唇をよせ、舌を挿しいれて、やわらかな組織を味わう。]
…ここが一番、やわらかく甘い。
ごちそうさまでした。
[義兄を生きたまま食い荒らし、返り血を浴びたその姿で発したその言葉は、
その光景が恐ろしく見えなければ滑稽に見えただろう。
それでもまだ生きているその体を壁に持たせかけ、心臓が皆に良く見えるように、と…胸骨を引きちぎった。]
[眼窩からも、片目からも涙を流し、
引きつった笑顔の形に緩んだ口元からは、だらだらと涎が垂れていた。
時折、ひくり、ひくりと痙攣する肉塊の中心には剥き出しの心臓。
それでもまだ生きていることがひと目でわかるように。]
意外と云うか、驚いたというか。
[ 何方も然して変わらないのだが、ゆっくりと部屋に足を踏み入れ、視線を巡らせて彼方此方置かれた楽器を眺めながらピアノの傍ら迄来ればメイの方を見遣り、]
納得と云えば、納得かな。
[半ば独り言ちるように付け加える。]
音楽には詳しくないから上手くは云えないが、好い演奏だったと思う。
[ 言い方に問題はあるが、此れでも賛辞の心算らしい。]
まあ、ここ以外じゃ弾かないしね、ピアノ。
[返ってきた答えに、軽く肩をすくめ]
……それに、どっちかって言うと。
人に聴かせるよりは、自分が落ち着くために弾いてるようなもんだし、ねー。
[鍵盤に視線をやりつつ、ぽつりと呟く]
と、いうか……なんか、微妙に褒められてるのかどうかわからない気がするんだけど、それ。
[白い狼の姿へと変じると、返り血を浴びた服を暖炉へと放り込んだ。
木綿の薄手の服だったから、僅かな時間で跡形も無く燃え尽きるだろう。
千切りとった腕と、足と、眼球を、天井裏へ隠すように運び込む。]
…形見分けに差し上げるというのも、一興でしょうかね。
[喉の奥でくつりと、獣は哂う。
部屋の主が晩餐会のために出てゆくのを待ち、情婦の寝乱れた寝台にはその身体を愛撫した手を、
その目が実子と認めたらしい隠し子の少女の部屋には、ビー玉のような眼球を置いてやるのも良いかもと考える。]
落ち着く為に、か。
……俺の読書と、同じ様なものかな。
[ 此方も小さく呟けばチラと鍵盤を見るも直ぐに視線を僅かに上げ、続いたメイの言葉には心外そうな表情になる。]
個人的には大分上級の褒辞だったんだが。
[ 当人は至って真面目な様子。]
……と、だったら邪魔したか?
―広間―
[ソファで眠る男は目覚める気配も無く、時折魘されるように呻いて。
額の汗が流れ落ちるのを見、タオルを取に行くとその汗を拭って]
やっぱ、部屋に連れて行ったほうが良いかな…。
[ここで眠るよりは遥かに良い筈で、だけど一人にするのも不安が残り]
誰かの目が届いている方が良い、か?
[広間は今静かで、それ故に男の呻く声は耳について。
男に掛けた毛布を掛けなおし、再び元の椅子に]
しかし…ここに来てから変わった事ばかり続くな。
[ぽつり、独り言。
特に目的も無く一所に留まった事は無く、だから]
これ以上何もないと良いんだけど、ね。
んー……そうかもね。
[同じ様な、という言葉に、僅かな思案の後に頷いて。
心外そうな様子に、はあ、とため息を一つ]
まあ、いいけどね、その方がらしい気がするし……。
ありがと、素直に受け取っとく。
[にこ、と笑いながら言って。
邪魔、という言葉には、首を左右に振り]
そんな事ないよ、そろそろ切り上げようと思ってたし。
ピアノ弾くのに夢中になってご飯食べ損ねたら、勿体無いもん。
[とまれ、今はこの返り血を洗い流そうと、通風孔を通って屋根の上に出る。
雨は未だ、強く降りしきっている。
白に近い銀色の毛並みに、玉のように転がる雨粒。]
―自室―
[わたしはゆっくり身を起こす。からだの疲れはあまりないけれど、結局、きちんと眠れていない。
話した人のことを考えれば、心の中がほんのり暖かくなる。いまはそれで十分。]
……望んでは駄目よ。分かっているわ。
わたしは、なにも望んでは――
酒場の看板娘 ローズマリーは、冒険家 ナサニエル を能力(占う)の対象に選びました。
らしいって、其れこそ褒められているのか如何か解らないんだが。
[ 片手を腰に当てつつ小さく唸るも、笑みを向けられれば好いかと気を取り直す。]
……ああ、そうだ。
今夜は晩餐会だそうだ、アーヴァインさんも一緒に食べると。
だから、今日は特別御馳走かもしれないな。
[ 使用人の拘りか主の云い付けか、普段から其れなりに豪勢な食事を思い返せば彼れ以上の馳走はあるのかと思いながらも、部屋の扉に向けて歩みを進める。雨は未だ止まずとも、其の音は現在は些か遠い。]
[時折雷鳴が轟き、雲は厚く、月も見えない。
咥えて持ち出した彼の足を時計塔へと運び、
大時計の針に引っ掛ける。
針が動けば、いずれ真下の玄関前へと落下するはず。]
[男の様子を眺めながら、幾つもの思いを廻らせる]
明らかに複数の者に攻撃を受けた跡。
正気を失くし怯える男。
自分が殺されるという意識と、それを覚悟したような態度
[あぁ、昨日のあの言葉はそういう意味だったのかもしれない、と]
お前と、いきたかった……か。
仲間が、居たんだな……。
[恐らくは逸れたか、それとも…嫌な思いが浮かび慌てて否定するように頭を振る。
…けもの、と言う言葉はやはり彼の魔物を思い出させて。
溜息。
隠したナイフを確認するように、探って]
ん、大丈夫。
[疲れたまま動くのにはなれている。わたしはそっと部屋から出た。
ふと、昨日の泣き声を思い出す。]
……大丈夫かしら。一人で苦しんで
[一人で――
誰一人として、そんなふうに悲しむ、悲しいひとがいなければよいのに。
浮かんだ影はしまいこんで。]
そうだわ、晩餐会だったかしら。アーヴァインさん、はしゃいでいらしたわね。
[頭をきりかえようと呟いた]
―自室→広間―
十分に褒めてるつもりだけどー?
[軽い口調で言いつつ、鍵盤の蓋を閉めて]
晩餐会かあ……なら、相当こだわりそうだね。
[主も同席、する、という話にこんな呟きをもらしつつ。
ふと、窓の方を見やってから、自分も扉の方へ]
……それにしても雨。
止みそうな感じ、しないね。
[晩餐会の時間は刻々と近付いていた。並べられた皿にスープを取り分け、運ばれて来た料理を並べる。
その香りは部屋の外まで届くだろうか。
ふと、蒼い髪の男性が脇腹を撫でているのが視界に入る。
何となく気になって、そちらを見た]
[もし、今ここに、その、人狼が現れたら…?
ここに居る大半が女と子供。
そして怪我人と]
……俺に、何が出来る?
守る為に、何が……?
殺すしか、ない、のか?
あの時のように……。
-ヘンリエッタ私室・早朝-
[前日、眠り過ぎたせいだろうか。ヘンリエッタが目を覚ましたのは、まだ薄暗い早朝だった。
まだ肌寒いのを言い訳に、もう一度眠ろうとするが、上手く行かない。
仕方なく、雲に遮られ頼りにならない朝日のもと、起き上がる。
昨日の夜のような雷鳴はないものの、まだ雨音は続いていた。]
今日も雨か。
[雨は好きじゃない。湿気で髪の毛がもつれるし、雨漏りで家の中は落ち着かない。
何より、雨の日はあいつが家にいる。
思い出して、彼女は顔をしかめた。]
もう、関係ないもんね。
其れはどうも。
[ 矢張り軽い口調で返せば同じ様に窓の方を見遣る。空を覆う厚い灰色の雲に月は隠され、強く降り頻る雨の中には雷鳴すらも轟くか。]
……そうだな。厭な感じだ。
[ 小さく返して扉を開き、緋色の絨毯の敷かれた廊下へと踏み出せば一歩一歩と広間へ向かっていく。]
こんばんは
[わたしは中に入って二人に挨拶する。]
今日は晩餐会なのでしょう?
楽しみね。
……でもその人。怪我、だいじょうぶ?
[眠る青年を見る。
苦しそうだった。]
[料理の匂いに気付いてふと顔を上げる。
そろそろ晩餐会とやらが始まる時間だろうか?
ネリーの働く姿にぎこちなさはあるものの、それはきっと此処に慣れていないせいなのだろう]
…そろそろ、時間?
皆揃うのかな…
[そういえば今日はまだ姿を見ていない人が居るな、とふと思い。
しかし主主催の、となれば顔を見せるだろう、と]
[嫌な記憶を振り払うように首を降って、寝台を降りる。
昨日と同じ服に袖を通し、朝ご飯を求めて少女は部屋を出た。]
そう言えば、一応日中にここを見るのって初めてだ……。
[明り無しでも一応は明るい廊下を、物珍しげに見回した。
ここを訪れたのは日中ではあったが、アーヴァインへの面会を待つ間に日は暮れてしまっていた。昨日は起きた時には日が暮れかけていた。]
晴れていたら、きっともっと楽しいのになぁ。
[ひとり呟いて、左右を見回しながらゆっくりと廊下を歩き始めた。]
うん……なんか、やな感じする、ね。
[耳に届く雨音と雷鳴に、小さく呟く。
右手は無意識に、左の胸に添えられ]
でも、何にもないよね。
きっと、考えすぎ。
[歩きつつ、紡ぐ言葉は独り言めいて]
[屋根裏へと戻り、身体を振って雫を飛ばすと、天井の裏から下の様子を探る。
甘い女の匂いが漂う部屋には誰も居らず、天井板をずらすと、そのベッドへと腕を投げ込んだ。
おそらく昨夜も、そうしてそこにあったのだろう。]
[ 風雨も雷鳴も、別段苦手でも何でも無かった。母の仕事の関係上、殆ど毎晩独りで――稀には近所の農家と共に――過ごしていたけれど、怖いと思った事は一度も無かった。寧ろ、昼の太陽よりも夜の月の方が好ましい程だった。
今にして思えば、其れは人狼の血が流れているが故だったのだろうか。]
[眠る男を気遣う姿に、気遣うように其方を見た後で]
ん…ちょっと、ね。
熱が高くて…
さっき少し目を覚ましたんだけど。
[その男が自分に何を言ったかまでは告げずに、客観的事実のみを伝える]
――浴室――
[ほんのりと頬を染めれば、濡れた金の糸髪を慣れた手つきで小さく纏め。少女は服を羽織り客室へと戻る。]
――浴室→客室へ――
[部屋に入ると衣服を脱ぎ捨て、持参した鞄から薬品を取り出し丁寧に背中の傷へと刷り込む]
主は僕の羊飼い 僕はひもじいことがない
主は僕を緑の牧草の上に横たわらせ
静かな水のほとりに導いてくれる
たとえ死の影の谷を歩くことがあっても
僕は災いを恐れない
あなたがともにいてくれるから
あなたがなぐさめてくれるから
命の限りいつもめぐみと慈悲が僕を救ってくれる
何時までも主の家に住まおう いつまでも…
[薄紅色の唇からは、自然と教会音楽が零れ落ちる。
それは神に縋る想いからか。それとも――自らの不幸を嘲笑う為か――]
[教会の自室。
ゆらゆらと揺らめくランタンの火を頼りに、私は先日解決した……
いや、『終わらせた』事件の報告書を書いている最中だった。
ドアをノックする音がする。
ああ、いつもの差し入れか。
私は気のない返事を一つすると、部屋の鍵を開けて招き入れた。
彼は、湯気の漂ったマグカップを持って入ってきた。
ああ、いつものホットミルクだ。
私は一息付く為にペンを置いた。
「ありがとう。いただくよ」
にこりと笑ってマグカップを受け取り、喉に流し込む。
彼の作ったホットミルクはとてもおいしい。
今度、作り方を教わる事にしよう。]
[「ところで神父様」
「なんだい?」
「そのホットミルク、おいしいですか?」
「ん、おいしいよ。いつも通り、火加減もいい感じだしなによりほんのり甘い」
「ああ、そうですか。……本当に?」
「…………?!」
マグカップが手から滑り落ちる。
そのまま、私の意識も―――――]
「何もないよね。」
[ 独り言のように紡がれた言葉に、僅かに動きが止まる。何も無い筈は無かった。青年は知っていた。彼の男が、冗談では無く本気でやるであろうという事を。
或いは、もう――。]
……聴こえる、か?
[ 無意識に遮断していた意識を繋ぐかの如く聲を紡ぐ。]
[ネリーが此方を見るのに気付いて、自分の状態を確認して、変に気取られぬようにその手を離して]
……気付いてない、よな…。
[それでも、無意識にそれを頼るとは、と心の中で自嘲]
大丈夫、きっとこれは必要ない。
……あってたまるかよ。
[内心穏やかでは無いということを自覚して、小さく溜息を]
[女性の言葉に、横たわる男性のほうを見る。
――あの声が蘇る]
そう、ですね…
だいぶ、辛そうにしていらっしゃいましたが。
[逸らした視線を手元の作業に移しながら、応える。女性が目を伏せるのには気付かなかった]
[ 思考に耽っていたらしく反応が僅か遅れ、メイの方を見遣れば僅か首を傾げる。]
……うん?
[ 其れでも紡がれた言葉は聞いていたのか、逡巡の後、]
……考え過ぎだろう、考え過ぎ。
[事も無げに云うも、其の様子は少々ぎこちなかったろうか。緩やかだった速度を俄かに速めて廊下を歩み、広間の扉の前まで辿り着く。]
…あらかた、終わりましたよ。
ま、いろいろと余興を考えてみたのですがね。
…楽しんでもらえると良いのですが。
[くすくすと、喉の奥で笑う。]
…それにしてもまぁ…あれだけ本格的に料理したのは久しぶりです。…素材はちょっと硬かったですがね。
[言葉だけを聞けば、シチューを煮たのかと思うくらいに自然な声色。]
-ロビー・早朝-
[館の静けさに、思わず足音をしのばせて歩く。
広間ではまだ食事の準備が整ってはいなかった。
館の客人達はまだ皆眠っているのだろうが、使用人達は起きているだろう。
何か食べるものを貰えないかと、ヘンリエッタは使用人室を探し、歩いていた。
使用人の少女に聞いた通り、一階の玄関近くをうろうろする。
それらしき扉を求め見回した視線が、一枚の肖像画を見留めた。]
熱があるの……
怪我からきているのかしら?
目をさましたのなら、栄養のある、食べやすい食べ物を食べてもらわないと。
何もしないとなおる力にならないわ。
[ナサニエルとネリーの言葉に、近付いて彼を見る。
苦しそうな様子が痛くて、そっと頭を撫でていた。]
……。
[ 終わった。其の言葉の意味するところは単純かつ明快だった。]
嘸かし、好い趣味をした余興なんだろうな。
[ 紡ぐ聲は皮肉めいてはいたが、知りながら如何でも好いのだと止めなかった自分に其れを云う権利等無いだろう。そして、料理をしたと聴けば其れを想像して浮かぶ感情は嫌悪の念だけだとは云えなかった。]
そう、だね……うん。
考えすぎだね、きっと。
[肯定の言葉に、いくらか安堵を感じて、一つ息を吐く。
それでも、不安が完全に消えた訳ではなく。
僅かに足を速めたハーヴェイに合わせるように自分も歩みを早め、広間へとたどり着いた]
―自室―
………っ?!
[目が覚めた。寝汗が酷い。
またあの夢だ。喉の奥には、あの時飲んだホットミルクの味。]
……馬鹿馬鹿しい。今更何を恐れる必要がある。
[汗を拭い、身支度を整えてから私は広間へと向かった。]
考えすぎ、考えすぎ。
ちょっと天気が悪いから。
少し心配事があるから。
気持ちが、重くなってるだけ。
[心の奥で繰り返す。
言い聞かせるように。
不安を押さえ込むように]
……なんにも起きない……変わらないよ、ね?
[赤毛の少女の部屋にも、気配らしきものは感じず。
尤も、居たとしてもその微かな音には気づかなかっただろう。
ころりと、ビー玉のように転がり込む眼球は、鏡台の上へと落ち、鏡をじっと見つめていた。]
――客室――
[薬を塗り終わると、持参した鞄から服を取り出し着替えをする。くたびれた感が漂うも、元はそれなりに良い布地だったのだろう。小さく畳まれていても型崩れはなく、服は少女の体にしっくりと馴染む。]
ご飯…食べに行かなきゃ…。今日は晩餐会だって…係の人が言ってたし…。
[体を温めても頭痛は引きはせず。僅かにこめかみを指で押しながら髪を乾かすと、少女は静かに部屋を後にした。]
――客室→広間へ――
…そうだね…食べてくれると良いんだけど。
[そっと男の頭を撫でる姿にふと聖母が浮かぶ。
男はやはり意識が無いのか触れられても身じろぎもせずに]
やっぱり、優しいんだね。君は。
[銀の髪の美しい女の人。どことなく、見覚えのあるような気がしたが、それが誰に似ているのか思い出せない。
ただ、優しそうな笑みを浮かべた絵姿に、魅了されたようにしばし立ち尽くした。]
本物の絵があるなんて、やっぱりお金持ちなんだ……。
[美しい衣装に身を包んだ美しい女性。彼女が実在するとしたら、きっと幸せな女性なのだろう。
いつもぼろを纏って、不幸を嘆いてばかりいた自分の母親とは大違いだ。
人物に見とれていた視線はゆっくりと逸らされ、肖像画の額に飾り文字で記された名に気づく。
額の無い少女には、それが何を意味しているのはわからなかったけれど。]
[ひそかに自室に戻ると、人の姿へと変わる。
いや、化けると言った方が適切なのかも知れず。
クロゼットを開いて身支度を整える。]
[ 未だ人は其程集まってはおらず、広間の中は昨晩に比べれば静かなものだった。皆に会釈を軽くすれば中へと入り、眠る男の方へと視線を遣ればローズマリーが頭を撫でているのが見えた。]
今晩和。……今から皆さん、集まり始める頃でしょうかね。
−自室−
[晩餐会をやるという話を聞いて、流石にルーズな部屋着のままで行くわけにもと思い、クロゼットから紺のチュニックシャツを出して身につける。
鏡を見ながら、身だしなみを整え。]
[鏡に映る瞳は、水平線近くの赤い月。]
…おっと、いけない。
[柔和な表情を作って瞬けば、青灰色へと落ち着く双眸。]
─広間─
[たどり着いた広間は、まだどこか静かで。
眠る男性と、それを撫でる女性という、不思議な構図に一つ、瞬いてから。
こんばんは、と場にいる面々に挨拶を]
―広間―
おや皆様お揃いで。
少々遅れてしまいましたか?
[普段と同じ服装で、いつも通りの笑みを浮かべながら会釈する。
聖書もいつも通りその手の中に。]
普段と同じ服装ですが、これが正装ですのでご容赦を。
[そう言って、悪戯っぽく笑った。]
優しくなんて、ないわ。
[そっと触れる手はそのままにして。
ナサニエルの言葉に首を横に振った。
部屋の扉が開く音。]
こんばんは。きっと今から人で賑わうわ
[次々に集まる人々に挨拶をして。
もうすぐ始まるかと姿勢を正し、出来る限り非礼のないようにと。
こういう改まった席には慣れていないから]
−広間−
[ちょうど人々が集まってくるところで。
軽く挨拶をすると、室内へと入る。]
…おや。
[眠るあの怪我人の姿を訝しげに。]
ここよりも部屋の方が静かに休めるでしょうに…。
[ローズマリーとナサニエルの会話を聞くともなしに聴きながら、ふと見上げた先には大きな絵画。
――“最後の晩餐”]
…不吉。
[声が僅かに洩れた。
眉を寄せ、けれどきっと考え過ぎだと、…思う]
[いくつかの道草の後に、首尾良く使用人室を見つけだし早めの朝ご飯に預かると、少女は館の探険をはじめた。
今日は、夜の晩餐会とやらに出席さえすれば、他は何をしていても良いらしい。
館の客人達もそれぞれ、好き勝手に動いているようだ。]
たくさんお客を呼んで、自由にさせておくって言うのも変わってるんじゃないかと思うけど……。
[そう言うと、朝ご飯を出してくれた年輩の使用人は、うちの御主人ですからと当たり前のように笑って答えていた。
変わっているのは麓の村の噂でも聞いたし、自分をここに置いてくれたことでも何となく察してはいるが、館の主がどう言った性格なのか、少女にはどうもつかめない。
もう少し、彼のことを知りたいと思った。
けれど彼と話すことは恐ろしいような気がして、少女は何も言わず館を探索することにしたのだ。]
――広間――
[ドアを開けば、先程までの不調は一切見せず。
薄紅色の唇をきゅっとあげ、中に居る人達に挨拶をする。]
[ゆっくりと視線を泳がせると、怪我をしたという青年の横たわる姿が目に入り、少女の瞳に僅かながらも心配の色が滲む]
こんばんは…。そちらの方は…まだ宜しくないのでしょうか…
[青年を優しくなでる女性を見つめながら、誰に問い掛ける訳でもなく、呟きは唇を滑り落ち――]
[ ハーヴェイの呟きを聞いたが如くに、徐々に広間には人が集い始める。彼の後から現れた人々には会釈をし椅子に腰掛ければ、ルーサーの言葉にやや苦笑する。]
態々正装して来るのなんて、アーヴァインさんくらいじゃないですか?
[ 食事の準備も疾うに出来ているのだろう、此処に来る迄の間にも厨房からは好い香りが漂っていた。生憎と、館の主は未だ現れる素振りも見せなかったが。]
……主役は遅れて遣って来る、でしたか。
[ 椅子に座れば手を組んで顎を乗せ、入り口の方を見遣りつ誰にともなく云う。]
[眠る怪我人にちらりと視線を向ける。]
容態は、安定しているのですかね?
結局、まだお医者さんには診せていないと使用人さんから聞いたのですが。
[優しくないというローズにはそれ以上何も言えず。
恐らく昨日の自分の答えのように同じ所を廻るだけだろうから
次いで広間に現れたコーネリアスの言葉に]
ちょっと熱が高すぎて、うっかり動かせないんだ。
一人にしておくのも不安だし、ね。
もし何かあったときに、すぐに対応できた方が良いだろう?
[ましてこれから会食の時。
そこまで人目は届かないだろう、と]
[ネリーの呟きを聞いてから“最後の晩餐”の絵を見て]
あはは、何を怖がっているのですか。
私達招待客は11人、館の主人を入れても12人。
“最後の晩餐”には、数が足りませんよ。
あの絵は全員で13人描かれているでしょう?
[からからと笑い飛ばした。]
[続々と集まってくる客たちに、挨拶をしつつ、自分も席へと向かう。
何もない……そう、思っていても、不安があって]
……大丈夫……考えすぎなんだから。
[また、自分に言い聞かせるように呟いた時、ふと、耳に届いた短い声]
……不吉……って?
[声の主──ネリーの方を見つつ、小さく問う。
不安を宿した瞳の色彩は、淡い紫だが、本人はそれと気づくこともなく]
使用人の御一人が、麓に医者を呼びには行かれたのですが……。
[ 入って来る人々を見ていたがルーサーの言葉に窓の方へと視線を遣る。薄いカーテンに遮られてはいたが、未だに雨が降っているのは簡単に見て取れる。]
……此の雨ですからね。
[ルーサーの声には少し悩むように]
安定している…とは言えないかな…。
昨日ほどじゃないけど。
まだ医者が来ていないからね。
この雨じゃ明日になるんじゃないかって。
-広間-
[橋の向こうから、館の全貌が見えた時にも知ってはいた、館の広大さをヘンリエッタは実際歩いてみて、身を持って理解した。
広さもさることながら、その充実した室内に、つい時間を忘れ道を忘れ、広間に戻った時には室内はずいぶんと賑やかになっていた。]
こんばんは。
[館の主がまだ姿をみせていないことにほっとしながら、ヘンリエッタは軽く頭を下げた。]
……使用人の女性も入れれば、十三人ですけどね。
[ ルーサーの勘定に、思わずポソリと呟くも、]
まあ、其れでは些か強引過ぎるとは思いますが。
本来は御二人居るわけですしね。
[絵へと視線を戻してからそう付け加えた。]
[とりあえず、席に着こうとして、どこに座れば良いのかわからず辺りを見回す。
場の者たちの視線を追って、壁にかけられた絵画に気づいた。]
[ネリーの不吉、と言う言葉に先ほどの危惧が蘇る]
……大丈夫、大丈夫だ。
悪い事など起きるもんか。
[そう言いつつもまた腕は無意識に服の下のナイフを探って]
ぇ?
[呟いた声は意外に大きかったらしい。周りの反応にはっとして]
あ…いえ。
そう、ですよね。
[牧師の言葉に安堵した、というように笑みを作った]
申し訳ございません。
お気になさらないでくださいまし。
[周りを見渡し、視線は手許に戻る]
……あんま怖い事言うなよー。
折角の食事の前なんだからさ。
俺、こういう席って慣れてないんだよね。
普通に食ってて良いんだよな?
[半ば冗談めかして呟いて]
[牧師に図星を指され、少女の頬が朱に染まる。]
子供じゃあるまいし、迷子になんてならないわ。
ちょっと、この館が広過ぎたのよ。
[反射的に否定したのは、牧師の笑いをからかいと捉えたからだろうか。
しかし、その笑顔は不快ではなかった。]
ハーヴェイ君。
年下の女の子を苛めるような言動はよろしくありませんね。
それに、使用人の数まで含めるのは反則ですよ?
[ふふ、と笑う。]
好いんじゃないですか?
[ ナサニエルの言葉に軽く笑って、壁に掛けられた時計を見遣る。其の針はもう直ぐに、真上を指そうとしていた。]
多分。
怪我自体は大した事はないと思う。
自分で階段を下りたみたいだから。
[発熱は心因性のものも含んでいるのだろうとは心の中の呟き]
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