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のんだくれ ケネス は、書生 ハーヴェイ を占った。
次の日の朝、自警団長 アーヴァイン が無残な姿で発見された。
……そして、その日、村には新たなルールが付け加えられた。
見分けの付かない人狼を排するため、1日1人ずつ疑わしい者を処刑する。誰を処刑するかは全員の投票によって決める……
無辜の者も犠牲になるが、やむを得ない……
そして、人間と人狼の暗く静かな戦いが始まった。
現在の生存者は、書生 ハーヴェイ、村長の娘 シャーロット、冒険家 ナサニエル、お尋ね者 クインジー、学生 ラッセル、教師 イザベラ、踊り子 キャロル、見習いメイド ネリー、見習い看護婦 ニーナ、流れ者 ギルバート、のんだくれ ケネスの11名。
―深夜―
[かつては誰かの私室であったと思しい闌れた部屋。
色褪せたカーテンの隙間から、蒼白の月光が細い束となって床に落ちている。]
[終焉の番人たるアーヴァインは、埃避けの掛け布を剥ぎ取られた長椅子を、ナイトの駒が移動した黒白の盤面を見た。]
[盤面を睨み、沈思するように卓子の前で足を止める。]
[僅かの時を置いて、無骨な指が白いポーンの駒を摘み、]
[コツ]
[石同士を打ちつける小さな音]
[敵方の黒のポーンを取り除いて、換わりにその桝目を埋めた。]
[手に入れた駒を自陣側の卓上に置き、番人は部屋を立ち去った。]
[――終焉の使者たる獣が、今宵訪れることを確信しながら。*]
のんだくれ ケネスは、流れ者 ギルバート を投票先に選びました。
のんだくれ ケネスは、お尋ね者 クインジー を能力(占う)の対象に選びました。
ああ。ひょっとしたらあそこに……
[唇に指を当て、僅かの間黙考していたが]
……そうですね。
もしかしたらあるかも知れない場所の心当たりがあります。
後で案内しましょう。
今日はもう遅いですから、明日では如何ですか?
先程城の中を見て回っている間に見つけたんですが、夢中で歩いていましたので、そこまでの道順も定かでないんですよ。
迷っても明るくなってからの方が安心でしょう。
[そう言って、ゆったりと微笑みかけた。*]
─キッチン・調理中─
[ダンプリングはシンプルにコンソメスープとネギと共に煮込み。もう一品、とほうれん草や牛乳等を取り出して来てほうれん草のグラタンを作り始める。オーブンに入れて焼くだけとなった後、目的の銀食器を探し始めた。途中ナサニエルに問われて探しながら返答する]
え?
心当たりあるの?
[返って来たのは期待を呼び起こす言葉。振り返り、紅紫をナサニエルへと向ける]
ええ、明日でも構わないわ。
案内お願いしても良いかしら。
[少し嬉しげにしながら言葉を返す。相手の微笑みには自然笑みを返していた]
[その後は居眠りしてしまったラッセルに声をかけ、出来上がった料理をダイニングへと運び、ささやかな晩餐始める*だろうか*]
[ラッセルに会うことはなく、部屋に戻る]
[水差しをテーブルに置き、窓の外を見た]
[明るい月だ]
[そして、一面――緋い]
似合わないな
[低い声に含まれた感情は、自嘲]
[左目を喪った男は、左目で見た最期を、今も鮮明に見ている]
[暫く、外の景色を眺めた後、男は身を横たえた]
[外の緋の中には、泉も含まれていたことに、気付くのは*明朝の事であった*]
[いっときながら現に返ったのは調理も終わる頃。
蕩けた眼が傍らの女を見上げ、小さく、その名を呼んだ]
どうだった?
[その手に在るスケッチブックを見、感想を求めつつ手を伸ばす。
けれど肝心の女の声は意識の表層にしか届かず、
己が返した言葉すら、朧に霞んで消えた。
彼女の求める答えが其処にはなかったのは、確かな事。
シャーロットに促されて食卓へ向かった後の、
食事の匂いも味も、よく覚えてはいない。
傍目にも、起きているか怪しく見えたことだろう。
はっきりと目の覚めたときには残念がるに違いなかった]
[――そうして朝陽の昇る頃、彼は部屋にいた。
ブランケットを纏って白い寝台の上に丸くなり、
傍らのテーブルにはスケッチブックが置かれていたが、
カーテンも扉も閉められず役目を果たさぬまま。
注ぐ光の欠片にも届く音にも目覚めを呼ばれることはない。
刻まれた時を知るのも、未だ、*先の話*]
[緋の原に踏み潰した跡を残し苛立ちを抱え向かうのは広間。番人の胸倉を掴み上げ酒臭い息を陰鬱な顔に近づける]
…てめえ、知ってること全部吐きやがれ。
[押し殺した声にも番人が返すのは今までに話したものと同じ。だが聞き流してた時には耳に残らなかった情報――何が何人いるかを得て目がぎらつく]
へえ、そうかい。
だがそんなかにゃアンタも入ってるってえ計算だ。違うか?
なら馴れ合うわけにゃいかねえなあ。
[ねめつける小声が静かな室内に響くことはない。答えを待たず突き放し、身の安全を図れる場を探し一夜を明かした]
[醒めていたとしても全ては塗り潰されよう。
何よりも馨しく本能を呼び起こす――
モノクロームの世界の中に蘇る、鮮烈なあかに拠って。
眼で見るのではないその色彩が、かれの知る唯一の、いろ。]
まったく…旨い酒にありつけると思えば碌なもんじゃねえな。
終焉の獣に狩られるなんざ悪夢もいいところだ。
気づかれねえ内にさっさと見つけ出して…狩ってやる。
[廊下の暗がりに低い呟きを落とし、食料を求め動く。酒も食料も泉の傍に置いてきた。ポケットに残るのは鞘をしたナイフを探り警戒しながら動く。
やがて辿り着くのは全ての廊下と繋がるだろう玄関ホール。見開く目に映るのは緋の原にも負けない色鮮やかな大輪の緋]
…チクショウめ!
[踏み潰された彼岸の花に似た緋が番人のものだと認識した瞬間、感じたのは焦燥と憎悪]
[陽がのぼってすぐか、男は水差しの水をそのまま飲んだ]
[窓の外の風景に、違和感を覚えたのか目を細める]
[然しすぐには気付かずに、外へ出た]
……なんだ?
[少し進むと、冷えた空気に何かの臭い]
[それが嗅ぎ親しんだ戦場と同じであると、気付くのは数瞬後]
[どこからだと、警戒に足音は殺された]
[階段を数段降りると、玄関の緋色が――傍の男が見えた]
[押し殺された足音は耳に届かない。ぎらつく目が熱心に這うのは獣の爪痕。かけられた冷静な声にばっと振り返り睨み付ける。言葉の意味が届くのは少し遅い]
…あ゛、そうだな。アンタに任せる。
疑うより先に隠す、か。
それは獣の爪痕を?
俺がやったとはなぜ考えない?
[酒の抜けた頭は冷酷に状況を判断していく。生き抜く為に]
[布団を持ったまま階下へと降りる]
[投げ捨てなかったのは、自分もそれを見るためか]
酷いな
人の手じゃこうはならない
[目を細める]
終焉の使者とかいう、人狼の仕業か?
[緋に染まる体に、布団をかける]
それくらいしか思いつかないが
……どういう殺し方をしたらこうなるやら
[戻ってきた赤毛をちらりと見て場所を譲る。一歩下がったところに立ちクインジーの問いを肯定する言葉を発す]
アンタの言うよーに人の手でその傷は無理だな。
猛獣の爪かそれに酷似した形の武器でなきゃ平行な切り口なんざ作れねえだろ。
[医者に似た言い口で傷を指し、布団の白に隠されるのを眺める]
だがそんな武器があろうとなかろうと殺しがあったのは変わらねえ。終焉の獣とやらが居ることにはな。
あの話が本当だったということか
[体に付いた場所から、布団はゆるやかに緋に染まる]
そういう武器がない事もないが――
持っているような奴はいなかった
それにこれは、人では作りにくい傷だったな
[隠れきれはしない体]
[足の先を見下ろして、男は玄関の戸へ向かう]
少し空気を換えるぞ
臭い
ああ、ずっと見ててもしゃーねえな。
[同意に頷き、落ち着き払った強面の男の動作から目線を緋に侵食される布団に戻す。次に向くのはクインジーとは別の方向]
俺はあっちを開けてくらあ。
頼む
[言いながら、玄関の戸を開ける]
[冷えた風が道を通り、わずかに布団を揺らした]
弔って――それから、獣を探すか
まさかあの戯言が、本当だとはな
[死者を見下ろした男は、目を細めた]
確か――使者が二人だったか
コイツが獣だったとしても、そうそうボロは出さねえな。
口止めより先に隠そうとしたくらいだ。
今すぐ俺を殺しゃしねえだろう。
[言われた事に従うのは疑いを晴らしたからではない。仮に獣だとしても味方を得ぬ内に仕留められぬと見たから]
[クインジーが玄関の戸を開けた瞬間、部屋のカーテンが大きくはためく。ずっとポケットに入れっぱなしだった手をようやく出して払う。冷たい風を背にホールに戻り、男でなくその後ろの扉向こうに広がる緋を見た]
弔う暇なんてあるのかねえ。
ま、やりてえなら止めねえよ。
[ポケットに親指を引っ掛けて細まる隻眼を見る]
そう、使者とやらが二人、それに協力する者もいるらしいな。
そして番人はソイツらじゃなかったってことだ。
[廊下で女たちと別れた後。
探し物は見つからず、結局はキャロルに教えられた水場の布を持って部屋へと戻った。
包帯の下にあるのは、縦横無尽の引っ掻き傷。
それは包帯に覆われる全域に及んでいた。
そこにあるものを隠そうとするかのよに]
……ったく。
[腕を覆う紅、それを拭いもせずに白で覆い隠した後、眠りに落ちた]
[やがて呼び込まれた目覚めは気だるい。
何か、夢らしきものを見た気もしたが、定かではなく。
重たい息を吐き出しながら身を起こし、ふらりと外へ出た]
……なんだ……これ。
[何がどう、と。
説明できる訳ではない、異様な感覚。
しばし躊躇った後、それを感じる方へ――玄関へと歩みを進めた]
埋めるか燃やさないと腐るぜ
よけいに酷い臭いになる
[戻ってきたケネスに言う]
番人は単なる被害者というわけか
武器になりそうなもんを探してこないとな
[言いながらも、男は刃を離したことがない]
[黒の衣の内にある]
/*
うーん、出たくなって来たけどナサニエルやりたいことありそうな雰囲気だから出にくいな。
あ、合流する前にしちゃえば良いのか(気付くの遅)
ところで今日は誰を死なすかなー。
私死んだらワロス
と言ってもまだ48h更新か。
役職示唆しないと。
[放置したなら腐るまで生きる気の男に口を歪める。皮肉めいているが笑みの形]
限られた手の内を減らす馬鹿なら狩るのも楽だがな。
終焉の幕が切って落とされた…とかあのキザな男なら言うのかね。
俺にゃ単なる宣戦布告にしか見えねえがな。
[重い息を吐く男から、聞こえた足音の方を見る。瞬く蒼氷にぎらつく目を向けた]
なん……だ?
[口をついたのは、惚けた声]
……一体、何、が。
[外気が呼び込まれ、冷えた空間には、薄れはすれど、何のものかは察しのつく臭いが漂っていた。
蒼氷はやがて、場所に不似合いな布団へと向いて再度、瞬き。
それから、向けられた視線の主へ問うような眼差しを向けた]
何があったか、アンタは本当に知らねえのか?
[ナサニエルを運んだ広間ではすぐに踵を返したので記憶はないに等しい。疑いの目を持って包帯に手を伸ばす。猛禽の爪に似た動き]
……どう考えても異常な状況で、知っている事をわざわざ聞くほど悪趣味じゃ……。
[悪趣味じゃない、と言う言葉は途切れる。
左腕へと伸びる、手の動き。
意識よりも先に身体が反応し、後ろに向けて飛びずさっていた]
……見掛けによって、か?
荒っぽいな、あんた。
[隠さず舌打ちし、距離を詰める]
死体が転がってて手負いのヤツがいる。疑うのは当然だ。
見せて下さいとでもお願いすりゃ見せてくれるのか?
[制止の声がかかるより早くその腕を掴もうと動く。欲するのは緋の一滴で十分。包帯の上から力づくで得ようとする姿は言われるままに荒っぽい]
そういわれてもなっ!
こっちは、ここに来た時から手負いなんでね。
それを理由に疑われても、納得はできんかな!
[言って信じるとは到底思えぬものの、それでもそれは自身の真実。
傷を持つ理由、それを癒すのを厭う理由は霞の奥ではあるけれど]
[ただ、左腕を他者の目に晒すのはできぬ事、と。
それだけは確たる意思としてそこにあるが故に。
腕を掴もうとする動きをかわすべく身体を低く構え、大きく横へと跳んだ]
[ハーヴェイがやってきて、問いかけに答えようとした矢先、先に問いが返る]
[暫し二人をみていたが、近付くとケネスに告げた]
そいつのは、確かに昨日からあったぞ
お前もいつまでも治療しないから悪い
[増えていてもわからないがと、口にはしないが]
[ささやかな晩餐の後は片付けをしてから自室とした部屋へ戻り。しばしの休息を取る]
[夜明け後。目は自然と覚めた。鏡が無いまま身嗜みを整え、出来る限りチェックをすると部屋を出る。ナサニエルとの約束を果たすべく彼を探そうとするが、部屋がどれか分からず、ましてやそこにまだ居ると言う保証もない。おそらくそれはナサニエルも同じだろうと、予測がつけやすいであろう広間へ向かうことにした]
[階段を降り、まず辿り着くのは全ての廊下に通ずる玄関ホール。そこまで来て、ようやく静かな騒ぎに気がついた]
……ちょっと、貴方達何やってるの!?
[相対するケネスとハーヴェイ。険悪なムードであることは直ぐに見て取れた。そちらに目が向いているためか、その先の惨劇にはまだ気付いて居ない]
……はいはい、俺が悪うございました。
[クインジーの言葉に、不機嫌な声でこう返し]
そちらさんに因縁つけられた、としか言えんが。
[上から聞こえたシャーロットには、それ以外に返せぬ答えを]
因縁って……何かあったの?
[階段を降り切って三人が居る傍まで近付く。表情は訝しげなものとなり、それぞれの顔を順繰りに見やった]
来た時からだと?
だったら余計にやばいだろうが。
手負いの獣ほど性質の悪いもんはねえよ!
[クインジーの肯定と何より割って入る女の声に動きを止める。二日酔いの頭に甲高く喚かれるのは微かに残る苦手意識]
ったく、煩そうなのが来たぜ。
オイてめえ、後で覚えてろ。
[ハーヴェイにチンピラじみた捨て台詞を残しその場を去る。向かうのは*食料の得られる場所*]
――ねえ。
絵、描いても良い。
[ 窓越しの空は昏く、隙間を縫って零れ落ちる光は心許無い。
眼前の少女の頬に落ちる影は濃く、肌は白かった。微笑みと共に投げた問いかけに、きつく結んだ唇が戦慄く。音は漏れず、短い吐息ばかりが零れていた。
僕の部屋に来る人は、誰も彼も怯えた表情(かお)をしていたから、僕はそのうちに笑うのを止め、笑い方も忘れてしまった。人を、描くことも。
巧く描けはしなかったし、描いたとしたって、意味の無いものになってしまうから――]
その何か、を聞こうとしたら、この騒ぎでね。
[シャーロットの問いに、短く返して]
……あんたの考え方の方が、よっぽどタチ悪いってんだ。
[捨て台詞を残して去る男の背に向けて、低く吐き捨てた]
[闇が包む。
月が照らす。
花が散る。
遠い泣き声。
鼻孔を擽る 甘い匂い]
嗚呼、
[頬を伝う滴。
混ざり合う。
咽喉を下る液体。]
……何よ、見ない方が良い、って。
[要領を得ず訝しげな表情のまま紅紫の瞳をクインジーに向ける]
それに随分と歯切れが悪いじゃない。
ここで何があったのかを聞いたら、掴みかかられたんだよ。
……で、結局何があったんだよ。
大分、物騒な言葉も聞こえた気がしたが。
[首を傾げるシャーロットに答えて、立ち上がり。
続いた問いは、クインジーへ]
普通の状態なら止めるがな
今はそうも言っていられないということだ
[ハーヴェイとシャーロットを順にみた]
昨日の話が本当だったということがわかった
掴みかかられたって。
じゃあ理由もなくってこと?
随分と乱暴なのね、あの人。
ただの飲んだくれかと思ったけど、更に乱暴だなんて。
[最低、と言う言葉は表情に現れたか。嫌悪するように眉根を寄せ、ハーヴェイに言葉を返す。続くハーヴェイのクインジーに対する問いは自分も知りたい部分であり、再び視線はクインジーへと向く]
…昨日の話って。
番人が言ってた終焉がどうのこうのって言う、あれ?
どこに居たって。
部屋に居たとしか言えないわ。
その前だったらキッチンで料理作った後、ナサニエルやネリー、ラッセル達とダイニングで食べてたけど。
…何よその聞き方。
疑ってるような物言いは。
[クインジーの問いに昨日のことをそのまま伝える。けれどその問いはどこか引っかかるものを覚えて、ぎゅう、と眉根に皺を寄せ、紅紫を細めた]
……昨日の、話。
[短い説明。
蒼氷は赤髪と、不自然な布団の間を数度行き交う]
……『終焉』?
[小さく呟き、それから、肩を竦めて]
昨日は、包帯代わりを探して。見つけた後は客室で寝てた。
……証明する術はないが、そこらは大体お互い様だろ。
疑わざるを得ない状況だと、番人が身をもって教えた。それだけだ
[シャーロットの言葉に、ため息]
意味は通じたか?
……誰も証明などできないだろう
終焉の使者が名乗り出るとも思わない
それでも一応、聞いただけだ
[調理の手伝いをすることもなく、女は唯少年の傍らに居た]
[未だ微睡みの裡にあるような響きで名を呼ばれ]
[女は顔を俯けた]
[背に垂らした金色が首を伝って、胸へと垂れる]
はい。
[スケッチブックを少年の手に返し]
[感想を求める問いかけに、女は少しの沈黙を作る]
花には、あかが浮かぶようでした。
他はすこうし、さむそうでございました。
[ささめく様に告げる言の葉]
[尋ねようと小さくくれないを開き、蕩む眼を見て、首を横に振る]
[食事を取る事もなく、その場を退いて、空き部屋へ]
[背の金色を下ろし、手首の鈴を外し、女は寝台に伏せた]
[空の流れは月から陽へ]
[鏡の無いままに身嗜みを整え、部屋を出る]
……痛い。
[起き上がった拍子にスケッチブックは転がり落ち、
ぱらぱらと捲れた頁は白紙の位置で止まった。
欠伸を噛み殺し、毛布の中から這い出る。
何も描かれていない頁を見詰め暫く茫としていたが、
目覚めきっていない足取りで、部屋を出た]
番人が身を以って…?
何よそれ、どう言う……。
[クインジーの言葉は確信を持って紡がれる。それにより立てられる予測。否定したい気持ちもあったが、彷徨った紅紫はホール内に不自然の置かれた布団を捉えた]
っ………───!
[白を染める紅。それは最初に見た緋色にも似ていて、それらが散らばっているような錯覚を覚えた]
(─あの緋色は、以前にも、見たことが、ある─)
[それは言葉にはならず息を飲むに留まり、更に視線はその布団の上を凝視する。紅紫が、すっと滅紫へと変じた]
[チリン]
[朝の空気に触れ、鈴が微かな音を立てる]
[玄関での出来事は、未だ遠く]
[開かれたままの扉から出てくる人影を女は見つけ]
おはようございます。
[何処か朧げな足取りの少年に声を掛けた]
『番人』が。
[それが意味する所は察しがつき。
同時、左の腕が、疼く。
それを抑えるように掴みつつ]
……名乗りを上げるくらいなら、こうはならん、だろうな。
[呟くよな言葉の後、蒼氷は布団へと。
空白の後、足がそちらへ向いて動いた]
見たいなら見れば良いが、倒れても放っておくぞ
[近寄るハーヴェイにそう言うだけ]
[シャーロットの様子は、ただみるだけだった]
[何も無い空間、そこに何かがあるかのように視線を注ぐ。しかし夢幻は直ぐ様掻き消え、滅紫は紅紫へと戻る]
……っ。
…クインジー。
さっき、番人が身を以って証明したって、言ったわよね。
…もしかして、これって…。
[訊ねながら、紅紫は布団を捉える。その傍にはいつの間にかハーヴェイが移動していた]
/*
うーん、まだ分かりにくいかな。
自覚症状としては三日目らしいから、無意識であるように描写したいんだけど。
難しい(´・ω・`)
……あんたな。
俺を何だと。
[クインジーの言葉に、そちらを見やりつつ、ため息混じりにこう返す。
それから、布団の傍らに膝を突き、ほんの僅か捲って、その下を垣間見た]
……これは……。
[零れるのは、掠れた呟き]
はい。
[名を呼ばれ、短い答えを]
[足を留めた少年の傍らに寄り、首を傾げる]
[豊かな金色が、僅かに揺れた]
遅くまで、起きていらしたのでしょうか。
[酷く眠たげな様に、問い掛けて]
[碧の眼差しは声の響く方角へと向いた]
…賑やかですね。向かわれますか?
[隠されていたもの。
それは、人の死。
『終焉』の一つの在り方]
『止められ』なかった……?
[心の奥、零れた言葉。
霞が、微か、揺らいだ]
んーんー……
きちんと、寝たよ。
いつもより遅かったかもしれないけれど。
[ゆるゆると頭を振る度に、
寝癖のついた髪が揺れた。
続く問いには、かくん、と一度頷いた]
何か、あったのかな。
[目を擦り、女と同じ方向へ眼差しを転じる]
………そう。
[肯定を含む言葉に返した言葉は短いものだった。両腕で自身の身体を抱えるようにし、身を小さくしながら微かに震えた。それで居て倒れずに居たのは、半ば意地だったかも知れない]
……それが、真実ってことね。
よぅく分かったわ。
[紡がれる声は覚悟を決めたような低いもの]
……は。
まったく、笑えやしない……。
[隠されていたものを再び隠し、低く吐き捨てる]
『終焉』……ね。
こうなりたくなければ……って訳か。
[呟きは、瞳の色さながらに冷えた声]
そうですか。
[リィン]
[緋の爪先で、癖のついたあかを摘む]
[そうして、華奢な掌を乗せて撫で付ける]
私には、分かりませんが。
[頷く態を見て、緋色の靴は騒ぎの方角、玄関へと向かう]
[人影が幾つかと、布団]
[床に広がる緋の色に、女は瞬いてくれないを閉じた]
[微かに手首の鈴が震える]
[進む足を追って進み、玄関ホールに辿り着く。
未だ現実か理解していない態で、声をかける]
おはよー……
最悪の、かたち?
[イザベラの台詞に一度瞬き、
ゆっくりと開いた]
[増えた気配に紅紫はすっと細められる]
──番人は終焉を望まぬなら探し出し殺せと言った。
終焉の使者たる人狼は己が正体を知る。
それを殺せと言われて黙って居られるかしら?
あの時は信じてなかったけど、これはあの話がなされた時点で見えていた結果なのかも知れないわね。
[それはイザベラの言葉に対してのもの。未だ腕は身体を抱えていたが、紡ぐ言葉ははきとしていた]
己が正体を知るは己のみ。
誰が人狼なのかも分からない。
信じられるのは自分だけ、ってところかしら。
[そこまで言うと踵を返し、玄関ホールから立ち去ろうと歩き始める]
ま……私も、ここまでのものとは想定していませんでした。
[藪睨みの左眼が小刻みに震える。]
私は止めませんけど、実物を見ようとすると
周囲の皆さんは止めると思います。
[ラッセルにため息まじりで。]
そういうことです。死にました。
[近くの扉から、窓から、風が通り、緋の気配が散っていく]
[十字を切る人の仕草は、死者を悼むもの]
どなたかに、終焉が。
[誰に問いかけるでもない呟き]
[その場を離れていく人影を碧は映し、女は被せられた布団の傍らへと寄る]
怪我人
[ハーヴェイにかえすのは軽い一言]
[シャーロットは見ないのだろうと、男はふたたび横たわった死体を見た]
[鈴の音、イザベラの声]
[やってきた人々に、男は場を譲った]
見ない方が良い
[ラッセルには一言を]
[ホールで話される会話を背に、足は廊下の奥へと向かう。突き付けられた事実に約束は頭の隅へと追いやられ、少女の姿はとある一室へと*消えて行った*]
変な事を、謂う。
終わりを齎した――
唯、それだけなのに。
そう、口にした者が、番人が、
初めに終焉を迎えるのなんて。
当たり前なのに。
ええ、死にました。私も実物は見ていませんが、
小耳に挟んだ話によると、それは無残だそうです。
[メモを開き、淡々と描写するように。]
事故死の線は考えられないでしょう。
人為的…と言っていいものかわかりませんが、
何者かの仕業と断定してもよろしいでしょう。
[鋭い眼光がラッセルを捉える。]
ここにいるのは私たちだけ。
後で、アリバイの確認などした方がいいでしょうか。
[緋のドレスの胸元で十字を切り、祈りの言の葉を]
これはどなたでいらっしゃるのでしょうか。
[それを知り得ていそうな男に、眼差しを向ける]
見ないほうが良いとは。
それはなにゆえに。
[先に居た二人を見て、女は問う]
番人だ
[キャロルの問いに、男は答えた]
[それから、次いだ言葉に*死体へと近付いた*]
――人の手によるものじゃないからな
綺麗な死体じゃない
[クインジーの静止は届かず、
イザベラの視線にも其方を向かず。
夢から覚めた面持ちで、眉間に皺を寄せた。
血臭――否、それを越した、死の臭い。
口許を、手で押さえる]
……、気持ち、わるい。
―深夜・回想―
[終焉の地の番人たるアーヴァインは、自らが預かるその城の内部を灯りを持たずに巡回する。]
[この地で城を守り待ち続けることこそが、彼に課せられた務め、であるが故に。]
[それは、定められた約定の日が来ても変わらぬ彼の使命。]
[だから彼は、あのチェス盤の部屋を出た後も、常の通りに回廊を巡り、部屋部屋を確認して回る。]
[唯一つ常と異なっていたのは、]
[階段を下りて来た彼を待ち受ける者たちが居たこと。]
終焉を齎すものが、番人殿のおっしゃるとおりふたり居るならば。
尋ねられ、庇いあうのかもしれませんね。
[女性の確認という事の葉にくれないは開かれた]
[乾いた緋の色彩は、風に触れ、暗く色を変えていく]
これは、番人殿。
[男から得られた答えに、微かに女は顔を伏せた]
きれいでは、ないのですね。
――やあ。
[掛けられた声は、はっきりとした揶揄と僅かな親密さを漂わせていた。]
久しぶりだな。元気だったか?
[玄関ホールにわだかまる闇の中から、音も無く夜の獣が滑り出た。]
[吐き気を催したか、幾度か咳き込む。
視界がぐらつき、硬く目を瞑った。
足許までもがふらつきかけたものの、
倒れる前に差し出された腕に受け止められた]
夢じゃ、ない――…
[薄く開いた眼で虚空を睨み、呟いた]
だいじょうぶですか?
[ふらつき、か細い声を零す少年に向き直る]
[傍らにいた男が、少年を支えた様だった]
ゆきましょう?
此処に居る事が辛いのならば、広間にでも。
[薄く開いた眼を、碧の色で覗き込み、あかの髪を撫でた]
―深夜・回想―
[予期はしていたのだろう]
[番人は声の主に対して身構えたのみで、訪れた者達に終焉の地のさだめについて告げ知らせた時と同じく、巌のように冷静であった。]
[明り取りの窓より差し込む月の光で区切られたホールの]
[光と影、]
[それぞれの対極に番人と獣は相対して立つ。]
ん…… へい、き。
[彼方を見ていた瞳が現に戻される。
確りと己の足で地に立ち、息を吐く。
口許に当てていた手を外し、
笑みらしきものを作ってみせた]
ごめんね、ありがとう。
クーも。
[礼を言って身を離す]
ちょっと、すっきりしたいかな。
[謝罪と礼の言の葉に、女は首を横に振った]
いいえ。
――広間よりは、外の風の方がよろしいでしょうか?
[チリン]
[鈴の音を鳴らし、招くよう少年の前に指を差し出す]
―深夜・回想―
[永くて短い数瞬の時が過ぎ、]
[口火を切ったのは、三日月の嗤いを唇に張り付かせた獣。]
そうそう。
俺の同胞を紹介しておこう。
[大仰に身を翻し、闇の中に佇む年若い同胞へと]
[す、と手を差し伸べる。]
そうだね。
中だと、空気が篭ってそう。
[差し出された指と、鈴の音。
導かれるように、手を伸ばす。
布に隠された遺体を顧みることは、もうなかった]
[代わりのように想起するは昨晩の事]
―深夜・回想―
[導かれるように若き獣は闇より現れ出る]
初めまして――
[滑り落ちる挨拶は此の地を訪れた時と同じく稚く]
[されど]
[番人を映す瞳は熱に浮かされ、
形作られた笑みは艶やかだった]
では。
[あかの髪越しに、番人の姿を刹那だけ捉える]
[されど、少年の手を取り、引く時には既に背を向けて]
[開け放された玄関から、外に出る]
何処まで、ゆかれますか?
[答えを気にする風でもなく、女はくれないを笑みへと変えた]
これはフィン……
俺の愛し仔(いとしご)だ。
[そっと肩を抱き、少年のつややかな頬に顔を寄せる。]
[その表情と仕草は冗談めいているものの、肩に触れた指先と濡れた声に篭る熱は隠しようも無く]
……何処まで行っても、同じじゃないかな。
此処が終わりの場所だっていうのなら。
だから、何処でもいい。
[僅かに首を傾けつつ、言う。
吹く風は花弁を揺らしてざわめかす。
鼻の下に指を当て、軽く鳴らした]
―回想―
失礼を致しました。
私はネリィ…ネリーと。
[ナサニエルに問われ答える時、常と違う発音が一度だけ。
向けられた微笑に今度は逸らさず微笑を返した。
言われるままに野菜の皮を剥き、刻み、水を汲み。
そしてささやかな晩餐の間は穏やかに、口数少なく過ごした]
はい、それでは。
[片付けも済んだ後、シャーロット達とも別れて借りた部屋へ。
毛布は畳まれて長椅子の上に置かれたまま。寝台には寄らず、その長椅子に身体を預けると毛布を被って翠を*閉ざした*]
―深夜・回想―
[年若い同胞を抱き寄せたまま、顔だけを未だ沈黙を保つ番人へと向ける。]
[少年とよく似た、艶やかな笑みを唇に乗せて]
[朗々と宣言する、]
[終焉の開始を。]
―廊下―
[朝から血が騒ぐ。彼はそんな気がしていた。身体中の筋肉が、しなるのを待っているような気がしていたのだ。]
踊りたい、というのは子どもじみた欲求かもしれんが……「番人」殿も、動き回ることを止めはすまい。
よし、今日は外だ。
土の上は滑るが、泉の畔ならば、壁も無い分、動きやすい。
[くしゃり、とひとつ髪を掻き、ギルバートは外へと向かう。]
[睦言を囁かれたかのように、かれは笑った]
[番人に注ぐ眼差しに人の理も感情もない]
[ 狩りを愉しみ
血肉を求め
終焉を齎す ]
[獣が、其処に在った。]
[玄関に近付くギルバートの鼻先を、奇妙な臭いが突く。
鉄が錆び、腐りかけた臭い。
――否、ただの鉄は、錆びたりはしない。]
………ん?何だ?
変な臭いが………
[嫌な胸騒ぎを感じて、ギルバートは異臭の方向――玄関へと向かっていった。]
終わりの場所。
[躊躇う態で、女は鸚鵡返しにくれないを開いた]
けれど、終焉を齎すものが居なくなりさえすれば。
もっとずっと、永らえるのでしょう?
私はこの花を、うつくしいあかが見られなくなることを厭います。
それゆえに、人狼をも。
[さざめく花弁の音に紛れる様なか細い声]
[音を生んだ少年の口許を、女は見る]
[彼に従い]
[彼の力と成れるよう]
[若き獣は在らんとした]
[同胞の狩りを]
[舞い散る緋を]
[*意識の奥底に迄、焼き付ける*]
『番人』が、そう言っていたから。
[己の紡いだ言葉を繰り返す女に頷く。
それは、後の台詞の肯定ともなった。
確かに番人は言ったのだから。
「厭うならば人狼を殺せ」と。]
でも、その後にはどうなるんだろうね。
何処から来たかもわからないのに。
生きとし生けるものは、最後には終わってしまうのに。
[視線は真っ直ぐに向けられている。
揺れる花へ、かれらの作る道の先へ]
―玄関―
[ギルバートの右目――琥珀色の眼球に、赤い色をした塊が映る。
周囲の人間が発する言葉から、それが「番人」のからだであるということが分かるまでには、それほど長い時間が掛からなかった。]
(ああ――…)
[人間の身体とは、こうも容易く壊れるものか――そのような類いの言葉が、ギルバートの脳裏に浮かんでは消えた。
やがて、彼はちいさく呟く。]
―――『終焉』。
[飽きるほど聞かされた言葉を、*ひとつだけ*]
[昨夜あちこちを回った後で、借りて休んだ一部屋で、わたしは目を覚ましました。]
…?
[胸の辺りで両手を合わせて、首を傾げます。
部屋の中に何かがあった、というわけではなく、そうだとしてもこの眼には色しか分からないのですけれど。
わたしは少し考えます。
が、]
…あ。
灯を、返さないと。
[途中で、意識は別のほうへと向きました。]
そのあと、でございましょうか。
わたくしは、今、此処にて、あかが見られれば、それで。
[少年の視線の先を辿り、歩む足はその先へ]
終わるものゆえに、足掻くのではありませんか。
いつ断たれるかも知りえぬものゆえに。
[女は咲く花の茎に指を伸ばし]
[爪先で、千切る]
[指先に触れる毒液]
そう。このように、断たれる前に。
そういうもの?
オレには、よくわからない。
死にたいとも、思わないけれど。
ああ、でも――…
[遮られる視界。
女に歩み寄り、滴を受けたその手を取る]
花は、儚いね。
[濡れた指先は僅かに疼く]
[放置すれば、そのうちに腫れ上がる事になるだろう]
はい。
きっとこの花の群れも、少しすれば朽ちてしまうのでございましょう。
[手を取る様を不思議そうに見る]
[逆らう動きは無い]
[チリン]
このまま残しておけるのならば良いのでしょうが。
人は、抗えば、そうならないのかな。
それなら、それも、いいのかもしれない。
いつかの終わりはやって来るに違いないけれど。
[顔を寄せ、ついで眉を寄せた。
袖を引いて、そぅと女の指先を撫ぜる。
それが何の足しにもならないとしても]
……あなたは、枯れたくないんだよね。
駄目だよ。毒は危ないから。
浸ってしまえば抜け出せなくなる。
[そう言って、手を離す]
[色と手探りで探し当てた二つ、杖を右手に、灯を左手に。
昨日と同じように、扉から出ました。
途端、鼻先に届いたのは。]
…、何、かしら。
[辺りを見渡しますが、特に異変は見当たりません。
杖を使って足元に障害物がないかを確かめながら、灯と眼は違和の元を探りながら、ゆっくりと廊下を進みます。
階段に着いた頃には、異臭は更に強くなっていました。]
たしかに、いつかは。
それでも私は、うつくしいあかを諦められぬのです。
どうせなら、最期にまでは…
[嘯く様な呟きは、指先を拭う布の感触に途切れた]
…。
[手に持った緋の花が、空を舞い、地に落ちる]
[離された手を、胸元に引く]
[リィン]
…はい。
では、私は指を洗ってこようと思います。
あの。ありがとうございました。
[小さく頭を垂れた後、壁に凭れる少年に背を向ける]
[緋色の靴は、城の玄関へと]
[杖の先で一段一段を確かめながら、階下まで降りました。
臭いと人の声とがするほうへ、足を進めます。
こつりと微かな音が、誰かの耳には届いたでしょうか。
そうしてその頃には、その臭いが何であるかを理解していました。]
あの、何か――
どなたか、怪我をされたのですか?
[一瞬、眼は昨日と同じ――その場にいた青年の、白い色を見ました。
けれど、源はそこではありません。
次に眼は、彼らの中心へと動きます。
そこに、赤い色がありました。]
―玄関―
[ラッセルが大丈夫そうなのを見て、少し安心したように笑った]
[それからキャロルと出て行くのを見送る]
[息を吐いた]
……せめてここからどけるか
[開け放たれた玄関と窓の間、空気は留まることを知らない]
[薄くなったとはいえ、臭いは残る]
[ギルバートの口にした言葉を、男も口の中で転がした]
[やがて聞こえる杖の音――]
そこに、おられるのですか?
怪我なら早く――
[治療しなければと続けようとした声は、別の声に遮られました。
恐らくはその傍らにいる、赤い色の男のひとの声でしょう。]
殺され、た?
[眼はそちらに向けられました。]
[少年らと遅い晩餐を取った後。]
[適当な部屋に入り、古びた寝台の上で、埃のにおいのする寝具に包まったのが夜半の月が傾く頃。]
[激動の一日に肉体が疲弊していたのか、速やかに暗黒の眠りの国へと堕ちていった。]
[翌朝。]
[階下で番人の無惨な骸が発見された頃、男はちょうど心地良いまどろみに浸っていた。]
終焉の使者。
そんな…
[続いた言葉に、眉を寄せました。]
どうして、そうだと?
[遺体の傷は見ていませんし、仮に布団を剥いだとてこの眼では見えないでしょう。
それが幸いか、不幸なのかは分かりませんけれど。]
人の手による傷じゃない
死体は見慣れてるからな、それくらいはわかる
――先に見たあの男もそう言っていたぞ
見た奴らに聞けばいい
[問いには簡単な答えを]
終焉の使者が二人居るとなれば、誰にアリバイを聞いても無駄だろうな
[リィン]
[鈴を揺らし、黒の門をくぐる]
[多少、顔触れに変化は有ったものの、広がった緋色は変わらない]
[そこに居た人々に、女は唯一礼をするのみ]
[手を洗えそうな場所へと足を進めていく]
ケッ呑気なもんだぜ。
記憶ねえ傷持ちをよく放置出来るもんだ。
あん、あれか? いつのまにか出来ちまってたのかねえ?
[誰もいないキッチンに入り込み、食料より先に刃物を漁る。一番切れ味の良さそうな包丁を布巾に包み腰のベルトにねじ込んで辺りを見回した]
お、何か残ってるじゃねえか。上等だぜ。
…冷めてるにしちゃまあまあだな。
[鍋の蓋を開けて昨夜の残りを平らげ、足りない分を漁る。連なる腸詰を齧りながら日持ちのする食料を幾つか包む]
…傷。
[それを聞いて、床の白に手を伸ばし掛けて、…止めました。
その手を胸前まで引き戻し、杖を両手で握ります。]
本当に、いるのですね。
[眼を伏せました。
傍からは、祈りのようにも見えたかも知れません。]
ああ、いるだろう
――いつまでも此処に置いておくわけにはいかないな
見たくないなら、行っていろ
[言いながらしゃがみ、男は死体の傍にしゃがむ]
[布団ごと持ち上げるつもりではあった]
[鈴の音をさせ、キッチンの扉を開く]
[男が一人何かをする態を見つけ、女はくれないを開いた]
物取りの様でございますね。
[その反応を見る事無く、女はその場にある水を指先へと掛ける]
…本当に。
[胸の内だけで繰り返す言葉。
恐怖がないわけではありません。
ただ、そこにあるのは決して、それだけではありませんでした。]
お独りで、大丈夫ですか?
[非力な上にこの眼では、碌に手伝いなどできないことは分かっていましたが。
言葉からその動きは予測できて、わたしはそう問いました。]
なんとかなるだろう
少なくとも――生きている時よりは
[手伝うというのなら止めはしない]
[外に運んだ後は、埋めるなど手間のかかることを、*一人でやる心算はない*]
[一度止まった言葉の続きは察しがついてか、僅か、眉を寄せ]
……確かに、な。
何かしらやっとかんと、まずいだろうし。
[続いた言葉にには、ため息を交えて同意を示す]
[涼やかな鈴の音にばっと振り向き、警戒する目つきで下から女を睨む。指を洗う仕草を見で追いながら口からぶら下げた腸詰を噛み千切る]
…ケッ、もう番人はいねえんだ。
ここにあるのは誰のものでもねえよ。
…その、
何か、探してきましょうか。
[埋めるならば掘る道具を、火葬ならば火を起こせるようなものを。
力仕事は難しいですし、探し物だって他の人がするより時間は掛かるでしょうけれど。]
そうですね。既に、誰の物でも。
――此処に於いて、確実に自己の所有物だと言えるのは、己が命程度に過ぎないのかもしれません。
[吐息混じりの呟き]
[入念に水を掛け、指を擦り、それでなお続く疼きに眼を伏せる]
……っ。
[小さく息をつめた後、辺りを見回す]
[一度眼差しが男に止まり、くれないを開いた]
貴方は既に番人殿の事はご存知でいらっしゃいますか?
……必要なら、手は貸すが。
[何とかなる、という言葉に、短く問い、壁から身を離す]
怪我人だが、腕が全く使えん訳じゃない。
[疼きの鎮まった腕を軽く撫でる。
紅は変わらずそこに滲んではいるが、昨日ほどには色彩は広がってはいなかった]
まったくだ。それもいつ取り上げられるか知れねえと来てる。
…碌なもんじゃねえよ。
[キャロルに同意を返し、小さく息を詰める音にぎらつく目を女の濡れた指に向ける]
…ああ、番人なら見たぜ。
獣の爪に裂かれひでえ有様だったな。
アンタも見たようだが、その指先で裂いたんじゃねえだろうな?
それとも、…床を拭くのが先でしょうか。
[床の白に滲み、或いは広がる赤い色を、わたしは見つめました。
と、不意に声がしました。
振り向いた先に灯を翳し、目を凝らしてみると、緑色が見えます。]
何があったのですか。
この臭いは。
[散らされても残る異臭。
それが何であるかは確信しているような問い。
向けられた蒼氷を受け止める翠は、どこか色薄く]
床を。
…黒くなる前に?
[灯りを向けられれば僅かに目を細め]
それが必要であれば、布を持って参りましょう。
水場に積んでありましたから。
[言いながらゆっくりと段を降りてゆく]
ああ、確かに掃除も必要だな……。
[ニーナの言葉に今気づいた、と言わんばかりに呟いて]
『番人』が……死んだ。
『終焉』を齎す者の手にかかって、な。
[ネリーの問いに答える刹那、鎮まったはずの疼きが左の腕をかける。
僅か、眉が顰められた]
番人が、殺された…そうです。
[緑のひとの視線は、こちらに向いてはいないようでしたが。
その問いに違和感などを覚えることはなく、わたしはそれだけ言いました。]
ええ。
その様な干渉は、私も望まぬ所でございます。
[薄く清潔な布を見つけ、細く畳む]
[指先にその白を巻き、けれど、結び目を作るのに試行錯誤]
獣の爪?
この花の毒にさえ抗えぬ指が、その様な事を。
[平生と変わらぬ口ぶりで、男の様を見る]
お戯れを。
終焉の使者に、番人の方が。
[確認するように繰り返す。
じっと布団に覆われた「もの」を見た]
番人の方が言われたとおりにですか。
であるならば。
望まなけいのならば。
抗わなければいけませんか。
どこまで抗えば良いのでしょう。
[淡々と言葉を紡ぐ。
番人を見下ろしたまま、暫し瞑目した]
花の毒? あ゛ー、外のアレか。
[警戒の目は緩めないが死角の包丁の柄から指を離す。立ち上がり試行錯誤する女に近づき、ぶっきらぼうな声]
見せてみろ。ついでに縛ってやる。
……冷静だな、随分と。
[淡々と紡がれる言葉に、口をついたのはこんな呟き]
望まぬなら、抗うしかないだろ。
死にたくなければ、望まぬ変化を齎す者を。
『終焉』を齎す者に、『終焉』を齎すのみ。
[静かな口調で、こう返した後。
零れたのは、ため息]
……ま、問題は、それが誰かを見極める術が俺にはない、という事か。
…お願い、します。
[場所が分かるのであればそちらに任せたほうがいいかと、声にはそう返しました。
灯に対する反応は分からず、けれど正体は知れたので、手元に戻します。]
それと、何か…弔うための道具を。
…あの部屋に、あるかしら。
[昨日探索していて見つけた、倉庫のような部屋を思い出して、独りごちます。]
[記憶の霞が揺れる。
自分に、見極める術はない。
けれど。
異なるは術はある、と。
容認の方向への分岐を進んだ事で、認識は深さを増してゆく]
[肯定は頷きを以って]
[およそ丁寧とは言い難い口調は、内容と裏腹なもの]
よろしいのですか?
[考える間を置き、女は腕を持ち上げた]
終焉を齋す者を、探す…力。
それを持つひとも、いるのでしたか。
[聞こえた溜息に、白い塊を見ます。
尋ねたところで、番人は答えをくれません。]
探して、それで、…。
[続きは言いませんでした。
…不用意に言わないほうがいいと、そう思ったからです。]
[玄関ホールを立ち去り向かったのは倉庫のような部屋。迷うことなくその扉を開き、一直線にとある場所へと向かう]
……確か、この辺り……。
[荷物が積まれた中から目的の物を手にする。布に包まれた棒状の何か。しばしそれを見つめた後、ぎゅ、と握り締めた]
自分の身は、自分で護らないと。
信じられる者が居ないと言うのであれば、尚更。
[覆っていた布を少しずらし、中身を握り、抜き放つ。それは妙にその手にしっくりと馴染んだ。据えられた燭台に灯る炎が握ったそれに光を与え、暗がりできらりと光らせる]
[再び布へと包むと、それをどうにかケープの中に隠れるように仕込み、何事も無かったかの様に倉庫を出た]
冷静ですか。
…そうですね。
[死を目の前にしても深い感慨を覚えない自分を自覚する。
色を薄めた翠が揺らぐが平板な声は変わらず]
死は誰にも平等。
そんなところだけ、平等。
終焉を齎すものに終焉を。
やられる前に、やる。
[溜息に続く言葉には小さく瞬き]
見極める術があったとして。
それが真実であるか否かはどう見極めれば。
むずかしいです。
[息をついてから零れた呟きだけは幼げに]
……酷いものだ。
歌劇とはまるで違う――『死』とは、あくまで無惨なもの。美しいものたりえない。
せめてこの場所をきれいに拭くことくらいは必要だな……。
遺体は運ぶべきか?
焼くのはまずいかもしれない。番人殿だけでなく、花も城も焼けてしまう。
[ちいさく、溜息。]
死は、誰にも平等……か。
[呟く刹那、蒼氷は翳りを帯びて伏す。
だが、それは本当に一瞬の事で]
そう、やられる前に。
とはいえ、どこぞの酒臭い男みたいに、難癖つけて噛み付くやり方じゃ、ただ消耗するだけだ。
[先の騒動を思い出してか、口調は吐き捨てるよに]
見極める術が真実か、見極める術、ね。
確かに、それも問題か……。
そも、そんな力がある、と大っぴらに名乗り出るのも難しいだろ。
それこそ、『番人』の二の舞になりかねん。
はい。では私は布を持って参ります。
水も汲んで参りましょう。
[常盤の房を左右に揺らし、灯を持つ少女に頷いた]
弔いはどうすれば良いか分かりませんので。
ご存知の方々にお任せします。
[女が返事を考える間に目の前に立ち、持ち上げられた手を無骨な指で掬い上げる。綺麗と言い難い髪に隠れ検分する目は鋭い]
確かにコイツは毒にやられたようだな。
薬なんざねえし洗っておくのが一番だろ。
[あくまでもついでだと鼻を鳴らし、布を巻いていく手つきは慣れきった仕草。指を曲げられぬほどきつくなく、解けてしまうほど緩みはしない。その理由を問われても当然*記憶はなく*]
ほらよ、もう触るのはやめときな。
綺麗な華にゃ毒はつきもんだ。アンタがどうかは知らないがな。
…そうですね。
焼けてしまっては、困ります。
[別の声が語る、火の危険性にはひとつ頷きました。]
では、掘るものを探しましょうか。
[言って、昨日の記憶を頼りに、その方向に歩き出します。
当然、歩みはそう早くはないのですが。]
城が焼ける……のは。
それはさすがにまずい、か。
[ギルバートの言葉に、小さく呟く]
と、なると。少し離れた所に埋めるのが一番よさそうだな。
手伝う? その腕で
[言いかけた言葉は、大丈夫だという言葉に止まる]
[ため息]
なら手伝え
……どちらにせよここには置いておけない
花は燃えるかもしれないが、外で燃やすのが一番だ
それとも掘るか?
水に沈めるか?
花が焼けるのは、見たくありませんね。
あれだけ美しいものなのに。
[一面に広がる緋色の景色を。
今この状況でも美しいとそう口にして]
酒臭い男?
[初見の広間でしか会っていないためか、確りとは思い出せず。
けれど続く言葉に気を取られ]
ほんとうに、むずかしい。
[再び呟くように言うと、ペコリと頭を下げて水場へ向けて歩き出す]
掘る方が良いだろう。
水に沈めては、いずれ腐敗臭が泉から湧き出てしまう。
しかし土に埋めれば、いずれ彼の身体も、あの夢幻の花の栄養となり生まれ変わるだろう……。
シャベルはどこだろうな?
探せばあるだろう。玄関にほど近い倉庫かな?
花が燃えるのは、俺は別に構わんが、延焼されちゃかなわんからね。
[クインジーの問いに、肩を竦め]
泉に沈めるのは個人的には好ましくないし、埋めるのが妥当なんじゃないか?
[処置の終わった指先を、一度二度曲げて感触を確かめる]
[チリ、リィン]
ありがとうございます。
…なるべく毒に侵される事の無い様にはと。
――けれど、毒が生き延びる為に必要であるのなら。
[くれないを閉ざし、女は*俯いた*]
シャベルのある場所は知らないな
ならば適当に運んでおくか
[死体に布団ごしに触れた]
[冷たくなっている]
生憎と花には詳しくないんでな
――手伝うなら手伝え
[言いながら、両腕で持ち上げる]
[死体の頭がぐらりと垂れて、それでも凶行の痕跡を人の目からは隠した]
[ひとの声から遠ざかり、倉庫まで歩きました。
玄関から倉庫までは、距離はそう遠くなく。
とはいえ普通のひとより時間は掛かってしまうのですが。]
…ここかしら。
[杖で先を確かめながら、暗がりへと足を踏み出します。
青い色の女のひとが、先程までいた場所と同じでしょうか。
いずれにせよ、わたしにそれを知る由はありません。
中は埃っぽく、少し咳き込みました。]
酒臭い男……
ああ、あのネズミの御方か。
まあ、あれだけ生きることに貪欲な人間ならば、死体を見て、なりふり構わず人に当たり散らすのも分からないでもない。
[玄関から離れ、シャベルを探しに歩き出す。]
……終焉、か。
それをもたらす人間を探せ、ということか。そして……
(……それを殺せということか。)
倉庫になら、あるかもな。
[他にありそうな場所の心当たりもなく、軽く言い]
ああ、埋めるくらいは手伝うさ。
[運ぶのは任せる、と言外に言って。
持ち上げられる『番人』の亡骸に、微かな翳りを帯びた蒼氷を向けた]
庭師の為の倉庫くらいはあるだろう。
それより、青年。
その腕で土を掘っても大丈夫なのか?無理はしない程度に動いてくれれば十分だが。
[古城の庭にあった、小さく古ぼけた倉庫を探し出す。ガタガタと扉を動かし、強引にその場所を開けた。]
[後から倉庫に来る者達とはすれ違う形となったろうか。見えたとしても、廊下の奥に朱色のリボンが見えるだけだったかも知れない]
[歩みは広間へと向かう。冷えた空気のその空間に入り、そのまま窓辺へと歩み寄った。外には先程見た緋色と同じような色の花が咲き乱れている。惨状を思い出し、眉根が寄った]
(…あの時、何か…)
[思い出しそうになったことがあった。あの鮮やかな緋色は以前にも見たことがある。そんな気がして、何かが頭を掠めた。それが何なのかは分からずじまいなのであるが]
[広間の窓辺、その窓枠に寄りかかるようにしながら、カーテンから覗く外の緋色をしばし眺める]
体力を変に使うのは嫌なんでな
許せ
[死体に対して配慮などするつもりはなかった]
[男は引きずり出した死体を――少し痕は残ったが仕方ないと、地面に落とす]
[緋の花が咲く傍で、音を立てて落ちた死体から布がずれた]
ん、ああ。
[腕の事を言われ、視線を紅滲む包帯へと刹那、落とす]
見た目は派手だが、大して深い傷じゃないからな。
だから、大丈夫だ。
[軽い口調で返しながら、倉庫の戸が開くのを待って中を覗き込む。
倉庫の中に並ぶのは、古びた感のある庭道具たち]
[中には添え付けの灯もありましたが、隅のほうまでは分かりません。
灯で照らして、それらしき形状のものを手で触れて探します。]
…っ、
[何かに触れ、慌てて手を話します。
指先を確かめると、僅かに赤い色――血が出ていました。]
刃物?
…こんなところに、危ない。
[今度は用心して触れてみます。
小さなナイフのようでした。
その近くには不自然な、何かを抜いた跡のような隙間がありましたが、わたしは気付いていませんでした。]
………そうか。
[傷のことについては、ただ簡潔に答えるのみ。]
それにしても、時が止まったような倉庫だな。随分と埃くさい。
この鎌は切れるのか?
――無理だな。どうしようもなく錆びている。
[無意識のうちに刃物から探し出していた自分の言葉に、呆れて舌打ちをする。]
ああ、違う。シャベルはこっちだ。
こちらも錆びてはいるが、使えそうだ。
[溜息をつき、シャベルを手に取った。]
[暫くその光を見つめていましたが、やがては眼を逸らします。]
…探さないと。
[それきり、刃物のほうは見ませんでした。
保身を考えるならば、それを手に取るべきだったかも知れませんが。
結局そこではシャベルは見つからず、刃物もそのままにして部屋を出ました。]
時が止まったような、か。
あながち、間違ってないんじゃないか、それ。
城の中も、埃が大分たまっていたしな。
[冗談とも本気ともつかぬ口調で言い。
鎌を検分する様子には何も言わず、自身も錆び付いたシャベルを手に取る]
さて、それじゃ、戻るとするか。
そろそろ、外に出されているだろうし。
――…そうだな。
[自分の脳裏に浮かんだ言葉をかき消すように、栗色の髪の青年の言葉に頷き、外に出た。]
[埃と黴の臭いにまみれた倉庫の外に出ると、今度は「番人」の血と肉の臭いが、ギルバートの身体の中に流れ込んで来た。]
まったく……どこもかしこも異臭だらけだな。まずは「番人」殿を埋めよう。そうでなければ、俺の中の嗅覚が死滅しかねない。
[外に出された「番人」の遺体を見て、肩を竦めた。]
[小さくない桶に水を汲み。
抱えられるだけの布を持って玄関へと戻った。
誰もいないホールで一心に床を拭く。
手にした白い布はあかくなり。
それを漬ける桶の水もやがてあかに染まってゆく]
これでいいのかしら。
[疑問を口にしながらも、ひたすらに床を拭く。
足を包んだ布もまた赤くなっていることには気付かずに]
[倉庫を離れ外へ。
感じるのは死に纏いつく臭い。
それを認識すると、腕に疼きが走る]
……理屈はともかく、早めに埋めるのは、賛成だな。
見てて、気分のいいもんじゃない。
[『番人』の亡骸に一瞬蒼氷を向けて早口に言い放ち。
埋める場所を検分するように、シャベルの先で土をつついた]
[広間の窓。そこから番人を外に埋めようとする青年達の姿が見えた。少し遠めではあったが、何をしようとしているのかはシャベルなどを持つ様子から容易に想像出来る。その際に運ばれた番人から布がずり落ちたのが見て取れた]
………獣の爪………。
倒すべきは、もはやヒトでは無いのかしら、ね。
[ぎゅ、と胸元で左手を握った。終焉の使者を廃さねば、あの番人のようになってしまう。果たして自分の手で、それに抗うことは可能なのであろうか。握った拳がふるりと震えた]
[他に心当たりはなく。
指先の血を舐め、玄関へ戻る前に手当てをしておこうかと、廊下を進みます。
途中、広間を覗きました。
杖の音が止まったのが、聞こえたかも知れません。]
…ええと。
シャー、ロット?
[声の内容までは、遠くて聞き取れませんでしたが。
見えた青い色と声に、記憶を掘り返しながら呼び掛けました。]
[検分をしていたのは足音を聞きやめ、再び布団でくるんだ]
掘るのは任せるぜ
臭いが付いた
[腕を払って、少しでもにおいを落とそうとする]
[掘ってゆく姿を見ながら、男は緋の花へと目をやった]
その通り、だな。
埋めれば、とりあえず彼の無惨な姿は見ずに済む。
[栗色の髪の青年に続き、土に穴を掘る。]
願わくば――…
花の栄養となりて、化けては出てこないようい……
―客室―
[目を開けて最初に見えるのは、ベッドの古びたシーツ、そして]
[見知らぬ部屋の有様。]
…………。
[未だ目覚めきらぬまま、ゆる、と身を起こす。]
[カツリと、背後で音がした。ハッと振り返り、紅紫を細め誰なのかを見極めようとする]
…ニーナ。
どうか、したの?
[その姿を確認すると、名を呼び小首を傾げる。表情は、乏しい]
はいはい、任されるよ。
[クインジーに返しつつ、土を掘る。
力を入れる事で、浅く裂かれた傷が広がるのは感じていたが、その痛みは押さえ込む。
痛みがあれば、疼きは感じない。
否、元々、疼きを感じたくないからこそ痛みを与えていたのだと。
昨夜までは霞の奥にあった思考は、今はごく自然にそこにあった]
[急速に人狼のそれへと作り変えられた身体は、昨夜までは重く軋むような感触が拭えなかったが、未明の食餌で漸く滑らかに動くようになっていた。]
[完璧ではないが、差し障りは無い。]
いえ。
少し、探し物が…
[表情は見えません。
けれど声の覇気のなさもさることながら、何処となく違和感を感じたものですから、]
…どうか、しました?
[全く同じ問いを返しました。]
とむらい。
[土を抉り、掘り返す音が耳の奥に響く。
小さな山が積み上がるのを眺めていた]
そうやるんだ。
[感慨のない声が滑り出る。
つんとした臭いに口許を押さえかけ、
寸でで、先に女に触れたのは逆の手に変えた]
……うん? うん、平気。
[獣に喰らわれた人間の末路を目にするのは初めてだった。
何時もは、喰らった後には“片付けられて”いたから]
動かなくなったら、埋められるのか。
[思いがけずたっぷりと睡眠を取った所為か、昨日の不調が嘘のように身体が軽い。]
[まだ幾らか頭の芯に重さを感じるが、酷い目眩は消えていた。]
[身支度を整え、部屋を出る。]
[昨夜の約束をふと思い出し、シャーロットを見つけるために、階下の広間へと向かった。]
[問い返され、しばし沈黙が流れる]
……玄関ホールの、番人のことは、聞いた?
彼が昨日言ってたことは事実だった。
それが意味することは……。
[そこまで言って言葉は途切れる。話を聞いて居たのであれば、言わんとすることは伝わるだろう]
それで、探し物って?
……化けて出るほど、生に未練があったようには見えんかったけどね。
[冗談めかした口調で言いながらも、手は止まらず。
やがて、緋の一画に土の褥が口を開ける]
……こんなもん、かな?
[独り言のよに呟きつつ手を止め、『番人』の亡骸を見やる。
緋の髪の少年が訪れていた事には、その時にようやく*気がついた*]
―玄関ホール―
[階段を下りる時に真っ先に感じたのは、階下に漂う緊張した空気と、そして異様な臭気。]
[男は訝しげに眉を顰め、足を速めた。]
ううん。
オレは何も、してないよ。
[ゆっくりと頭を振る。
傷の男でも布に包まれた遺体でも花でもなく、
広げられていく穴を、最期の寝床を見ていた]
キャロが花の切り口に触れていたんだ。
あれには毒があるから。
きちんと洗っていると、いいけれど。
はい。
つい、先程。
[後に続く言葉は、聞かずとも察せます。
だから頷くだけで、先を促すことはしませんでした。]
…あ、ええと。
さっき、指を切ってしまって。
それで、何かで消毒できないかと。
[指先を掲げます。
傷は大したものではなく、血も固まりかけてはいましたが。]
[知っているならば、とそれ以上のことは言葉にはせず。事情を聞くとニーナの傍へと歩み寄った]
指を切ったって、大丈夫?
手当てするものはあったかしら…。
代用するなら、アルコールなのだけれど。
[言いながら、掲げられた指先に視線を向ける]
―玄関ホール―
[開け放たれた扉がまず目に入り、]
[次に跪いて一心に床を拭く緑色の髪の少女に気付く。]
おはよう。ネリーさん。
[死体は既に無く、拭われてなお薄く残る赫だけが惨事の痕跡を残し]
[挨拶をする男の声は明らかな疑念を含んでいた。]
大したことはないんです。
でも、一応。
[近付いてくる影を見て、少しだけ手を下げました。
あまり見せつけたいわけではありませんから。]
此処には、ありません…よね。
…アルコール、ですか。
[お酒の臭いを思い出して、少しだけ眉が寄ります。
苦手なのは前に何かあったからなのかも知れませんけれど、そこは分かりません。]
[一度地下室へ戻り荷を置こうと向かう途中、玄関ホールを通る。既にない死体の代わりに熱心に血の跡を消す少女を見た]
だいぶ綺麗になったじゃねえか。
さすが本職といったところかねえ。
[お仕着せを目線で指して立ち止まる]
[染み込み消えなくなった痕をそれでもまだ拭き続けて。
掛けられた声にフッと顔を上げた]
ナサニエル様。
おはようございます。
[赤黒く染まった布を手に立ち上がるとペコリと頭を下げる]
今までお休みでしたか。
それでは何もご存じなく?
[聞き覚えのあるネリーへの挨拶の声に、胡乱な目を向ける。ナサニエルの顔色を見、鼻を鳴らす]
そっちも随分元気になったようだな。
いいもんでも食ったのかい?
生き延びる為の、毒。
[指先を腫らした毒液は、違わずその為のもの]
[巻かれた白を指先でなぞり、碧眼は立ち去る男の背を追った]
[他人に背を向けるのは危険ではと言いかけ]
[その前に扉が閉まる]
――はい。
[頷きが届かない事は分かっていた]
[別の方向から掛かる声に振り返る]
あ。
まだ残っているのですが…。
[一度だけ見た相手の名前は知らず。
他者が呼ぶのも聞いてはおらず。
困惑の表情でペコリと頭を下げる]
うん、消毒はしておくと安心ではあるからね。
残念だけどここには無いわ。
キッチンか、専用の保管庫か…。
……あの人なら知ってそうだけれど。
[思い起こすのは不精髭を生やした男性。けれど先のことがあって表情はやや不機嫌そうなものへと変ずる]
アルコールが嫌なら、綺麗な布で押さえておくのが良いかもね。
これは一体……
[ネリーの持つ布切れと、桶の水を染める赤に目を落とす。]
……血、ですか?
誰かが怪我を?
[臭いが耐え難いというように、片手で顔の下半分を覆って尋ねた。]
[玄関ホールに集まる皆に対して]
で。どうするんですか?
[メモを広げて、あれこれ考えている。]
被害はできる限り、少ない方がいいでしょう。
亡くなった彼の話だと…続くんでしたっけ、これ?
/*
クインジーに薔薇臭が漂うのは何でじゃろう(ぁ
ハーヴェイやラッセルばっかり気にかけてるように見えるからだ、きっと。
そしてねもい。
はい。
[再び振り返って頷いた。
何かを報告するかのように感情の篭らない声で続ける]
終焉を齎すものによって、番人の方が殺されたのだと。
今、外でクインジー様達が弔いを。
―玄関ホール―
いいものと言いますか……
昨夜シャーロットさんとネリーさんと一緒に夕食を作りましてね。
お陰様で、だいぶ。
[ケネスの胡乱な視線に、不思議そうに返答する。]
[嫌なら、という言葉に、眉が寄っていたことに遅れて気付きます。
戻すよう努めながら、]
あの人?…ああ。
茶色の。
[彼女もあの臭いは好かないのだろうかと思いました。
或いはひとのほうかも知れません。]
布か、アルコールか。
…そうですね、探してみます。
[礼の意味を込めて、頭を下げました。
それからわたしは再び、廊下へと*踏み出します。*]
[布地までをも染めた遺体が褥に引き摺り込まれ、
土を被せられていく。
咲き誇る花と同じように。
されど花と異なり、其処に生命はなく。
生きる花の糧と成るように]
燃やすこともあるんだ。
燃やしてしまったら、何になるのかな。
[不意に、男を見上げた。
鏡の如く、その姿を映す]
[顔の下半分を覆うナサニエルから呆れた顔を逸らし、頭が下がると同時に揺れる常盤色のお下げを眺める]
いーやアレからすりゃかなり綺麗になってるぜ。
ま、もっと頑張るってなら止めねえがよ。
[メモを広げる女を一瞥し、さてねと肩を竦める]
燃やすこともあるな
[地面に呑まれてゆく死体を、ただ見る]
[口調は淡々としていた]
灰になる
――それだけだ
[視線を戻し、見下ろす目]
[片手をゆっくりと上げると、その緋の髪へと伸ばす]
そうかい、俺はてっきり…なあ?
[ナサニエルの返答に鋭い目が移るのは今はない緋の華が咲いた場所。それ以上言葉を続ける前にネリーの感情の篭らぬ説明と、それに対する二人の反応をぎらつく目で眺める。既に知っていることに対しての態度は冷静]
[名前を知らずともどうやら人物の疎通は出来たようで。茶色の、と言う言葉に頷きを返す]
うん。
ああ、気を付けるのよ。
ただでさえ視力弱いんだから。
[再び廊下を歩き始めるニーナの後姿に声をかけた。気をつけて、と言うには少々微妙な気分になったりもしたのだが]
殺された……?
番人の方が。
弔い、ですか……
[血痕の残る床に目を落とし、思案に暮れたように]
[その顔は僅かに青褪めている。]
……誰が人狼なのか、分からないんだもの。
[ニーナがそうなのかもしれない。けれど調べる術は今のところ持ち合わせては居ない。他の誰かかも知れないが、それを知る術は無い。けれど、ここに留められた誰かの中に、人狼は紛れ込んで居るのだ]
終焉を齎すものがいる限りは。
続くように聞こえました。
[翠を伏せてイザベラに答え]
これ以上はなかなか消えてくれません。
綺麗だと仰っていただけるなら、今はこれで。
[手に持ったままの布を、桶の中へと落とした]
しかし、新鮮でない血の臭いは耐え難いな……
[顔を顰めているその理由は、鋭敏な嗅覚ゆえに、であったが。]
[押さえても指の間から洩れる屍の臭いは、彼にとっては不快なものであるらしい。]
私は遺体の様子を存じませんが。
人の手による傷ではなかったそうです。
[淡々と告げる声]
はい、離れた場所に埋めるべきかと。
そう仰っておられました。
…大丈夫、ですか?
[ナサニエルを見上げていた翠が瞬き。
ようやく感情の伴う声が出た]
わからない。でも、続く……。
[ふぅ、とため息をつく。]
正当防衛ですよね。そうでないと、自分が危ない。
たとえ、間違っていても…いや、そうしないと、
自分が。正当防衛ですよね…うん。
[自分に言い聞かせるように。]
そう――灰に。
もう動きもしないし、あたたかくもないね。
[頭上に翳される手の作る影の下。
感情の篭らない、
冷たいというよりは、それを知らぬ幼子に似た眼。
男の表情を、硝子の如く映している]
生きとし生けるものは、
終わるものゆえに足掻くんだって。
あなたも、その為に誰かを、オレを殺す?
[声にもまた、恐れも何も無い。
疑念を形として発しただけのもの]
[答えを望む問い掛けは、されど、誰も居ないその場に落ちる]
されど、それでは私に必要な毒とは何なのでございましょう?
[碧眼がキッチンの中を巡る]
[此処にあるのは、食材と香辛料と、ナイフと]
何か作った方が良いかもしれませんね。
それこそ、誰かに毒を仕込まれぬうちに。
[案外に手慣れた仕種で女は包丁を握る]
[南瓜のポタージュと、青菜を刻んで混ぜたオムレツ]
[白を纏う指先に、妨げられることは無い]
[淡々と状況説明をしていたネリーの声に感情が滲み、己を見上げて瞬く翠の瞳]
[気付いて、]
え?ああ……
大丈夫……と言いたいところですが、よく分かりません。
実感が湧かなくて。
[大きな溜息をついた。]
[再び窓辺へと寄り、外を見やると埋葬が終わる段階まで来ていて。番人の姿は視界から消えていた]
……どうすれば良いのかしらね、これから。
[問いに答える者はこの場には居ない。けれどどうすれば良いのかは本当は分かっている]
[終焉を厭うなら、やるべきことは一つ]
[窓から視線を外し、ソファーへと移動。膝を抱えるようにして座り込むと、紅紫を瞼で覆った。冷える空気の中、沈黙のままに思考を*巡らす*]
[そっと緋い髪に触れ、撫でる]
そうだな
だが、それが――死だ
[見上げてくる目を、恐れることはない]
[男が浮かべたのは笑みではない]
[ただ、わずかに口元は緩み、そして目の奥に瑕は確かにあったけれど、すぐに隠された]
お前は殺せない
だが、お前が死を望むなら――
[囁きは穴に死体を埋める男には届かなかっただろう]
[言いかけた言葉は、途切れ、男はそれ以上言わなかった]
生きている獲物から流れる血が一番美しいな……
そして何より甘い。
[深夜に貪った鮮赤の甘露を思い出し、舌なめずりするようないろが聲に加わった。]
お尋ね者 クインジーは、教師 イザベラ を投票先に選びました。
そうアレは獣の爪痕だ。またはそれに酷似した何か。
素直に考えりゃ終焉の獣――人狼だろうぜ。
…パーツも足りなかったしな。
[最後の部分は呟くように小さく、なぜそれがわかるかの記憶はない。ネリーの声に勘定が戻ったのを頭の隅に残し、正当防衛と繰り返すイザベラを見る]
ああ、狩られる前に狩る。それしか生き残る術はないぜ。
間違いであっても死体は悪さしねえからな。
[獣に気づかれず調べるのは容易くはないと、間違いなく探す術があることは口を噤んで話さない]
正当防衛。
生き残るために必要なこと。
[聞こえた言葉を繰り返し、頷いた。
肯定とも確認ともつかぬほどに小さく]
顔色がお悪いです。
あかは薄くなりましたが、場所を変えた方が良いでしょうか。
直接死体を見ていないからかも知れません……
見たらどうなるか、というのはあまり想像したくは無いですが。
[頭の芯に鉛のような重さがぶり返してきたのを感じ、振り払うように首を振った。]
[出来上がった二皿を盆に乗せ、女はキッチンを出る]
[部屋に戻るかも考えたが、結局は広間の方角へ緋の靴は向いた]
[リィン]
[鈴の音を鳴らし、女は広間へと踏み込んだ]
場所をお借りさせていただきますわね。
[先に中に居た青の少女へと声を掛ける]
[テーブルに盆を乗せ、少女の傍らの窓の先を*見た*]
そこからは、何かが見えるのですか?
[大きな手に触れられる一瞬には、
微かながら身体が震えた。
眼差しより声より、如実に感情を語る反応。
小さく吐息を零す。
撫でられる頃には落ち着きを見せていた]
望まないよ。
オレは、死にたくはないもの。
[はっきりと口にした]
だから、その為に――…
[続く決意は音にはならず、拳を握る。
やがて埋葬は終わり、
かつて番人だったものは土の下に眠る]
……うん。
死んでしまえば、動かないしあたたかくもない。
詰まらない。
[握る拳の内で指先が疼く]
[肉を裂いた爪は今は無い]
先ずは番人と謂っていたけれど。
次は誰かの、決まりはあるの?
[逸る心は次の狩りへと]
なるほど。そうです、そうですよね。
[肯定の返事を得られると、表情が転ずる。
満面の笑みを浮かべて、安堵する。]
ましてや、それを法として咎める者はここにいないし、
倫理的な咎めもされない予想が立ちました。
[メモに書いた言葉は「GO!!」]
踏ん切りがつきました。ええ。
パーツ?
[呟きのような声に尋ね返すのもまた呟きに近い小さな声。
意図したものかそれとも単にあわせる形になっただけか]
生き残るためには、終焉を齎すもの、人狼、を見つけて殺さなければ。
そのための術もまたあるよう、なのですが。
[そこはあえて伏せられていたとは気付かず。
その言葉が他者にどう伝わるかも知らぬまま]
[緋を少し摘み、そっと手の上にとった]
なら、己はお前を殺さない
[土のかぶさる音に、男は手を離した]
[見た先、死体はなかった]
[土が僅かに盛り上がり、そこに番人だったものは眠るのだ]
終わったか
城の中に戻るか?
[ラッセルの足へと一度視線を落とした後、二人に尋ねる]
[ハーヴェイの腕を見た時には、黒紅を細めた]
また疑われたくなければ、早く治すことだ
[少し頭を傾けて、ケネスを見る。]
ケネスさん、でしたか。
あなたは随分と人狼についてお詳しいようだ……
無くした記憶に、この事件の手がかりがあるようですね。
[声音に皮肉の色は無く、口調はあくまで穏やかだった。]
[イザベラの笑顔を一瞥し、要注意と心に留めておいた。手近な部屋の窓から玄関へ抜ける風に身を震わせ、止めていた足を動かす]
ここに居ても冷える一方だ。体を温めねえとな。
[挨拶にもならない声を残し半ば巣穴と化した地下室へ戻る。運んできた食料を片隅に隠し、アルコール度の高い酒を暖が必要な分だけ呑みポケットへねじ込む。酒臭い息は変わらないが汚い前髪に見え隠れする目は*酩酊には程遠い*]
うん…?
もう次の狩りが待ち遠しいか?
[年若い同胞の性急さを揶揄うように]
[だが愛でるように、皮肉な聲は耳もとを擽る。]
特には決まっていない。
もし我らを察知しそうな者がいたら、見付からぬように出来るだけ速やかに狩った方が良い、というくらいで。
……変なの。
[女の時と同様、緋は掬われる侭。
まじまじと男を見て、呟いた]
ん。
[天を目指す花も、
今は地を見詰めているように思えた。
小さな肯定と共に踵を返す。
手をかけた扉は軋む音を立てて開き、
風が冷えた大気を運んだ]
それとも。
誰か、喰いたい奴が居るのか?
[ゆったりと聲ならぬ聲で愛し仔の感覚器を撫でつつ、甘やかす声音で尋ねた。]
だって。
早く獲たいのもあるけれど、
全てに終わりを齎せば、良いのでしょう?
[同胞の問いにも弾む聲は止まない]
嗚呼、番人が謂っていたね。
僕等を脅かす力を持つ者が居るのだって。
[ラッセルの呟きに返す言葉はない]
[二人がどうするかは二人に任せ、振り返ることなくラッセルを追った]
――…喩え、お前が使者だとしても、今度は殺さない
[その言葉は口の中で転がされ、決して届かない]
[一度忘れたかに思えた、忘れられない記憶が決めさせる意思]
温かくしてこい
足だけでも
外は冷たかっただろう?
ううん。
未だ、特別には居ない。
嗚呼、でも。
食べたくない人は居る。
僕の事は殺せないと謂うから。
そういうものは、利用しなくてはいけないのだよね。
[獣は識っている][己が身を護る術を][為すべき事を]
ケネス、様。
[ナサニエルの声にその名を知る。
人狼に詳しいと聞けば、立ち去るその背をじっと見つめていた]
ああ、私もこれを片付けなければ。
[赤黒い桶を持ち上げる]
僕と?
[反射的に疑問を含んだ聲を返す]
うん。僕も、そうしたい。
でも、親しくしていたら、変に見られてしまうかもしれないから。
いけないのかと思っていた。
[傷の男の意思を知らぬ侭、
戻った玄関ホールの面子は先程とは大分異なる]
あ、リィ。
掃除、していたの?
何か手伝ったほうがよかったのかな。
食べたくない人か……
賢いなおまえは。
[押さないながらも確りと、生きる術を身に付けている若い獣に苦笑する]
だが、少し妬ける……
そう、俺はどうなっても良い。
だが、お前はまだ稚い……
俺の所為でおまえの命が中途で断ち切られるのを見たくは無い。
[苦さと痛みを含んだ囁き]
だから、おまえに触れないようにしている…
うん、そうする。
少し洗って来ようかな。
[背からかけられる言葉に振り返り、
肯定してから己の足裏を見る。
血痕は避けて歩いたが、土の欠片がこびりついていた]
のんだくれ ケネスは、冒険家 ナサニエル を投票先に選びました。
ラッセル様。
はい、番人の方が流された血を拭っておりました。
いいえ、全てを消すことは出来ませんでしたが。
一人でもここまでは出来ましたので。
[桶を持ったまま頷き、続けて首を横に振った]
水場には湯は置いてありませんでしたが。
必要でしたら沸かしてお持ちいたしましょうか。
それとも浴室があればそちらを?
[クインジーとの会話を耳にして、小首を傾げる]
……戯言だ。気にするな。
[つい、と急に、聲が薄紙一枚ほどの距離遠ざかったような感触]
[それが、波紋のように男と少年の間に拡がった。]
――さあ、今度はおまえが誰か選ぶと良い。
必要ならば俺が手伝ってやろう。
若い娘が良いか?
それとも、食いでのありそうな男が良いか。
何処と無く癇に障るあの酔払いでも良いぞ……。
[それも、次の瞬間には狩りへの期待に満ちた、愉悦の聲に変わったけれども。*]
そっか。お疲れ様。
浴室――
そうだね、そのほうがいいかな。
そう言えば、鏡って見つかったのかな。
[ふと思い出した事項に首を捻った。
昨日の遣り取りは覚えてはおらず、
探していたもう一人の姿は、この場にはない]
気にする。
貴方の言葉は一つだって多く憶えておきたいから。
喩え嘘だとしても、それは、僕の中では真実に成る。
[拡がる波紋に踏み込み遮る壁に手を伸ばす]
[されど、打ち破る迄には至らない]
あ。
[すっかり忘れていた、という様子で小さく口を開けた。
心当たりがあると言っていたナサニエルの方を見たが、彼も今来たばかりでは]
どうでしょう。
昨夜は程良い代用品を見つけることができませんでしたし。
今日はまだシャーロット様にお会いしておりませんから。
[探していたもう一人がイザベラであることは未だ知らず。
少し困惑の混じる表情を浮かべた]
浴室の場所はどなたかご存知でしょうか。
私は存じませんので。
そうだね。
誰が良いかな――
[合わせるようにかれの意識も他へと向いた]
女の人は柔らかいね。
でも、男を狩る方が邪魔が減るかな。
どちらにしろ、抵抗してくれないと詰まらない。
月が昇るまでに、未だ時はあるから。
もう少し、見てみるよ。
[迷う様は遊ぶ相手を選ぶのと大差は無い。
それもまた、愉しみの一つというように、*笑った*]
ラッセル様。
私はこちらを片付けたら、一度厨房の方へ参ります。
浴室が見つからないようでしたら、お湯をご用意致します。
[そう言うとペコリと頭を下げて、水場の方へと*向かった*]
[曖昧なネリーの答えに首を傾ぎ腕を組む]
そう。
何処にもないってことはないと思うのだけれど。
鏡も、もちろん、浴室も。
なかったら、汚いままになってしまうもの。
[疑問を含んだ眼差しを、他の二者に向ける。
浴室の場所と言えばイザベラの方が熟知しているかと。
答えが得られる前に、逸って何処かへ歩み出しそうでは*あったが*]
[ギルバートは、土の中に埋まってゆく番人の身体を、感情の無い目で見つめていた。]
花でも手折って持たせるべきだったか。
――…いいや。花なら腐るほどあるな。
聖書に書かれた弔いの言葉を、誰も掛けることはない。
これはただ――…「隠蔽」の為の埋葬。
皆の目から、悲惨な「死」を隠す為の埋葬。
[番人が完全に「土に返った」のを見守り、しばし男はその場に佇む。]
この男が言うには、まだ「これ」が続くのだろう?
この「惨劇」が。
――『ひどく悲しいものだな』。
[小さく息を吐き、踵を返した。]
俺は中に戻る。
――お疲れ様だな、お互いに。
ん、ああ、お疲れ。
……俺は、少し気晴らしをしてから、戻る。
[ギルバートにはこう返して、城へと戻る背を見送り。
一人きりになると、土の盛り上がりへと蒼氷を向ける]
……は。
ほんとに、最悪だな。
[口をつくのは悪態]
最悪の……当てつけだ。
[死した『番人』に、そんな意図はなかろうとも。
彼に齎された死は、自身には酷い当てつけとも思えていた。
吐き捨てるよに言った後、踵を返す。
向かうは城の外、泉の畔。
取り巻く緋を揺らしつつ、その傍らに膝を突き、左腕を覆う包帯を解いて。
今は空を映す水の内へと、紅に染まる部分を沈めた]
……っつ……。
[冷たさに、思わず短い声が上がる。
微かな痺れめいたものを感じながらもそこを覆う紅を落とし、引き上げた]
……結局、道化でいろ、という事なんだろ?
[問うような呟き。
蒼氷は、紅の下から現れたものへと向く]
護れぬ護り手として、苦しめと。
『いつか』のように。
[『いつか』が、いつであるかは定かではない。
しかし、それは霞の奥に確りとある、記憶]
……大した執念だよ……まったく。
うっとおしいったらありゃしない……。
[低く吐き捨てながら、紅で埋め尽くそうとしていたもの──鮮やか過ぎるほどに紅い、蛇の如き印を睨む。
しばしの空白を経て、ポケットに押し込んでおいた新しい包帯で、紅蛇を覆い隠した]
―玄関ロビー―
[こちらを見るネリーの視線を一瞬、きょとんと見返した後]
[ああ、と思い出し]
鏡…は私に心当たりが。
そうでした。
シャーロットさんと見に行く約束をしていたんでした。
[こんな時にどうでしょうか…と呟き]
[ちらり]
[厭わしげに薄く広く床に残る血痕を一瞥]
[そこから距離を取るように、少し下がる。]
[伝わってくる、玩具を選ぶ子供のように弾んだ、]
[だが、冷徹な狩りの計算も窺える聲]
迷い過ぎて月の出に間に合わぬ羽目にはならないようにしろよ?
俺も適当に見繕ってみよう。
おまえが楽しめそうな獲物を。
[窘めるよりは、却って煽る物言いで笑い返した。]
[思考は長くは続かず、瞼は再び紅紫を解放する。ソファーに座る体勢はそのままに、顔を膝に乗せて視線を窓へと向けた。薄いカーテン越しに緋色が瞳に飛び込んでくる]
…白い花…赤い花…。
白は天咲く喜華<よろこびか>、赤は地を這う悲華<かなしみか>。
……ここには悲しみしかないのかしら。
[呟きは微かなもの。瞳は滅紫へと変じ、窓越しの何かを見つめていた]
[しばらくそうしていると、料理の匂いを纏わせキャロルが広間へとやってくる。場所をとの言葉には何も返さず、視線は窓へと向いたまま]
……緋色しか見えないわ。
…ううん、一つだけ、白が見える、かしら。
[問いに答える声は無感情。呟きにも似たもので、顔を背ける形になっている状態でキャロルにまで聞こえたかは定かでは無い]
[滅紫は濃く、瞳の焦点は合っていなかった]
とりあえず広間に行ってみますよ。
もしかしたらシャーロットさんが居るかも知れないし。
[敢えてきっぱりした物言いになったのは、ここを早く立ち去りたかったからかも知れない。]
―広間―
[扉を開けると、中に居たのは探していたシャーロットと、豪奢な金髪の女性。]
[そちらとは言葉を交わした事はなく、名前も何と言っていたのか憶えが無く、]
おはようございます。
大変なことになったようですね。
[結局当たり障りの無い挨拶からはじめた。]
─広間─
[呟きには疑問の声が返っただろうか。仮にあったとしても、次の瞬間には滅紫は紅紫へと戻り、問いには要領を得ない疑問符を浮かべるのであるが]
[キャロルへと視線を向けた時、丁度ナサニエルが広間へと入って来た]
おはよ。
…その様子だと話は聞いたみたいね。
[膝から顔を上げて背もたれへと体重をかける。短く、溜息が漏れた]
ええ。
もう埋葬された後でしたけれど、話はネリーさんから。
酷い有様だったとか……
[鼻に残る臭気を思い起こし、眉を顰めた。]
ところでどうしますか。
昨日の、鏡のことですが。
こんな時ですけれど、今から行って見ますか?
[わざと軽い口調で話題を振ったのは、深刻な空気を変えたかったから。]
[溜息をつくシャーロットを気遣う柔らかい視線で見下ろした。]
…終焉の使者の宣戦布告。
与太話じゃないと言う証拠。
彼が言っていたことは事実だったと言うことね。
[言いながら再び背もたれから身を離し、ぎゅうと膝を抱える]
ここに居る誰かが終焉の使徒。
終わりを齎すと言うのであれば、番人のようなことはまだ続くはず。
……私達はまだ、終わりには辿り着いていないもの。
[膝を抱える腕に力が籠る。表情も自然と厳しいものへと変化していた]
[軽めの口調のナサニエルをふと見上げる]
ああ…うん。
少し、気を紛らわしたいかも。
行ってみようかしら。
[警戒が無いわけでは無い。けれど、この緊迫した空気から少し逃げたかった]
で、その心当たりってどこ?
[腕から膝を解放し、床に足を付ける]
白?
[うつくしい緋の色の中、一輪の白が咲く様を想像し、女は眉を潜めた]
[言の葉は続く事無く、くれないの内にスープを運び]
[扉の開く気配に視線を上げた]
おはようございます。
具合はよろしくなったのですね。名を知らぬ御方。
[ひそりとした声で挨拶を返し、食事へ戻る]
[チリン]
ああ。
上の階の部屋です。かなり色々なものがあるようでしたので。
[膝を下ろした少女に少しホッとした様子]
[挨拶を返した金髪の女性に]
ええ、お陰様で。
ええと…あなたは…
[と、名を促す間を]
[返る名乗りがあれば確認し、軽く会釈をする。]
これからシャーロットさんと上の階を見て来ます。
もし訊かれたら皆さんにもそうお伝え下さい。
[そう言ったのは、万一を考えてのこと。]
[キャロルの疑問の声。しかしそれ以上の問いかけが無いために紡いだ言葉の説明は無く。自身にも今は伝える言葉を持たぬために]
[床に足を付けた流れでソファーから立ち上がり。ナサニエルの傍へと歩み寄る]
上の階の部屋?
物が沢山あると言うなら、期待は出来そうね。
私の名は、ナサニエル。
以後はそうお呼び下さい。
[丁寧に一礼した後で]
[近付いてきたシャーロットに顔を向け、]
それじゃあ行きましょうか。
迷うかも知れませんが、怒らないで下さいよ?
[先に立って促しつつ、少し茶目っ気のある微笑を返した。]
[リィン]
[沈黙を以って促され、女はくれないを開いた]
私はキャロル、と。
[全身に花と等しき緋を纏う女は、食器を置き目礼を]
此処に於いて、他者を気に掛ける余裕のある方がどれほどにいらっしゃるかは分かりかねますが。
はい。尋ねられたのならば、その様に。
迷っても大丈夫よ。
私この城の間取りは頭の中に入ってるもの。
[くす、と笑みながら少し胸を張るような仕草をする。そうしてナサニエルの後へ続くように歩き始めた]
[部屋への道のりはそれなりの旅となった。]
[男は記憶に残る通りの道筋を、時折今の城の様子とすり合わるために立ち止まりながらも、淀みなく歩いた。]
[間取りは知れども目的の場所が分からねば自ら進むことは出来ず。ただナサニエルの後を追い歩を進めて行く]
[時折立ち止まるナサニエルの後ろで立ち止まり、周囲の確認。帰り道のための目印になるものを探したりした。その間にまたナサニエルは歩き始め、慌ててその後を追うこととなる]
[示された扉は今までのものとは違い立派なもの]
こんな場所もあったのね…。
[感心するようにしばし扉を眺めた]
何だか他の部屋とは違う感じがするわね。
この城の主の部屋、とかそう言う雰囲気。
そうですか?
確かにそんな雰囲気もしますね。
[少し頭を傾け、蒼い髪の少女を見つめる。]
それじゃあ開けますね。
[男は無造作に緑青の浮いた銅(あかがね)の取っ手を握り、]
[閉ざされた扉を開け放った。]
[扉の内側は、誰かの私室と思しい広い部屋]
[窓には、古びた天鵝絨のカーテンが掛かっており、その隙間から洩れた光で中の様子は窺えるものの薄暗い。]
[男は遠慮も恐れもなくすたすたと中へと入っていった。]
[まずは窓辺に近寄り、カーテンを開く。]
[さっとひといきに明るくなった部屋には、色褪せた絨毯が敷かれ、様々な家具が置かれているのが見て取れる。]
[家具のいくつかには埃避けの布が掛けてあったが、何故か一枚だけ、床にそれが落ちている。]
[それは、繻子張りの長椅子の脚の傍で息絶えた小動物のように蟠っていた。]
[男は窓から部屋の中央に戻る過程でその布を拾い、長椅子の背に掛けた。]
[長椅子の座面は、酷く古びて生地が傷んでいた。]
[――しかしそこにはどす黒い染みはない……]
[開くと共に心中には警戒を。しかしナサニエルは何事もないように中へと入って行く。僅かな驚きはあったが、その後に続きゆっくりと部屋へ足を踏み入れた]
広いわね。
この城に住んでた人の部屋なのかしら。
[辺りを見回しながら、一歩、また一歩と部屋の中を歩く。途中でカーテンが開かれ部屋の中が明るくなった。見えた光景に喜色の色が浮かぶ]
うん、確かにこの部屋ならありそうな感じがするわね。
[言いながら鏡のありそうな棚へと近付き探し始めた。埃避けの布があればそれを捲り奥を探し、引き出しがあれば引いて中を探す]
ねぇちょっとナサニエル。
探すの手伝ってよ。
[長椅子の背に落ち着いてしまったナサニエルに視線を向け、鏡探しをせがむ]
流石に私一人で全部探すのは骨だわ。
にしても良く見つけたわね、こんな場所。
間取りは知ってても全部を探したわけでは無かったから知らなかったわ。
[部屋の中央に立ち、ぐるりと見回す。]
[シャーロットの声に僅かばかり得意そうに微笑み]
でしょう?
広いし、物も多いですしね。
[と、戸棚の陰にもう一つ、小さめの扉を見つけ、]
続きの間があるようですね・・・
あそこも見てみますか。
え、何まだあるの?
ホント探すのが大変ね、ここ。
[続きの間と聞いて視線をナサニエルへ、次いでナサニエルの視線を追い続きの間への扉へと視線を投げる。興味が湧いて探索の手を止めてそちらへと意識を向けた]
あ、はいはい。
[少女の率直な物言いに苦笑]
[壁際に置かれたチェストに近付いて、引き出しを開ける。]
寝室や浴室が他にあるかも知れませんよ。
ここには寝台がないから。
[中に入っていた黴臭い衣類に顔を顰めつつ、背後のシャーロットに声を掛ける。]
そう言えば…。
[ここは個人の客間か書庫のような部屋で寝台は見当たらない。辺りを見回してから、視線は再び小さな扉へと向いた]
と言うことは、その先が寝室の可能性があるのかしら。
そっちを探した方が鏡があるかも知れないわ。
寝起きの時に鏡を覗くことだって多いもの。
[それは記憶無き経験から出た言葉だったか。行ってみようよ、とナサニエルに提案する]
[興味を持ったらしいシャーロットに、苦笑いを浮かべつつ振り向く。]
[手にした古着を広げ、自分の胸に合わせる。]
これ、男物です。
だったら髭を剃るために鏡が必要でしょう?
まあ、髭を伸ばしていたとか、召使に剃って貰っていたって可能性もありますけどね。
[少しおどけた仕草で指を顎に触れさせた。]
[衣服をチェストに押し込み、ちいさな扉に向かう。]
では、危ないですからまず私が先に入ります。
シャーロットさんは後から来て下さいね。
[真鍮の取っ手に手を掛けつつ、彼女に厳命した。]
あれ、男の人の部屋なのね。
髭を伸ばしていたとしても、ちゃんと整ってるかの確認をするはずだわ。
そう言うのは自分で見て納得しないと嫌じゃない?
だったらあるわよきっと。
[根拠無き自信ではあったが、そう言い切り。おどける様子にはくすくすと笑いを漏らした]
分かったわ。
[小さな扉に向かうナサニエルの後ろ、陰に隠れるかのようにして扉が開くのを待つ]
[万一があれば、ケープに隠したものを抜けるように気を配って]
[続きの間は果たして、大きな寝台が据付られた寝室であった。]
[寝台にベットメイクの跡はあるものの、その上に座ったか何かして掛けられたカバーが少し乱れている。]
[寝台と向き合うような形で、大きめの鏡が壁に掛けてあった。]
[ここは書斎より更に空気が淀んでいる。]
[男は臭いに閉口して眉を顰めた。]
……ありました。大きいのが。
[そろそろと中に入り、分厚いカーテンを開いて中を明るくした。]
[ついでに窓の掛け金も外して開け放つ。]
こちらは浴室なのかな……
[寝室と付属する形の小さな部屋にも頭を突っ込み]
やっぱりそうだ。
もう大丈夫です。
入って来ても良いですよ。
[顔を出して、少女に向けて声を上げた。]
[開けられた扉から締め切った部屋特有の匂いがする。その匂いに思わず眉が顰められ、左手で鼻と口元を覆った]
何だか空気悪い……。
[部屋の外へと漏れてくる空気にそう呟いた。ナサニエルが顔を覗かせ、安全の確認を告げると中へと足を踏み入れる。入った途端に目に入る大きな鏡。思わず駆け出し近くへと]
あ、あったぁ!
…けど大きいわね、これじゃ運べないわ。
[鏡を覗き込み、ついでとばかりに自分の髪を直す]
[何よりも身嗜みを優先する年頃の娘らしさを、少々呆れながらも微笑ましく見る。]
[少女の後ろから鏡を覗き込み]
[寝台と併せ見て、のんびりと呟く。]
これ、悪趣味ですね…
見えますよ、あの上から、全部。
そっちは浴室?
うーん、男性の部屋となると持ち運び出来そうな鏡は無さそうかしら。
[腕を組み考え込んで、若干困った様相]
けれど鏡があるならイザベラが確認出来るわね。
ここまで来る必要があるけれど。
[それでも諦めきれないのか、前の部屋も合わせてあちこちと持ち運び出来る鏡を探し始めた]
え?
[再び大きな鏡の前に来た時にナサニエルの言葉を聞き、後を振り返った]
何か、不便があるの?
ただ寝るだけじゃない。
[ナサニエルの言葉の意味するものが読み取れず小首を傾げた]
/*
ナサニエルリミット大丈夫なんかーーー!?
も一つ発言返って来るとは思わんかった。
そして初心な子なので話には乗れませn
[絶句し目を逸らす様子にまた小首を傾げ]
変なの。
それより、ナサニエルもも一度探して!
[ぱんっ、とその背中を叩いて別の鏡の探索をせがむ。部屋数があり物も多いため、探し切るにはしばらくの時間を要する*だろうか*]
/*
占い師:ケネス
守護者:ハーヴェイ
霊能者:シャーロット(確定)
こんなところ?
どうにもクインジーが狂信者に見えたりするんだけど、どうなのかしら。
ところでナサニエルは最終的に何がやりたかったのかしら(ぉぃ
多分最初にナサニエルが迷い込んだ(と言うか記憶を辿って入った)部屋なんだろうけど。
うーん、鏡どうしようかなー。
手鏡無いことにしてここに誘き出すとか出来はするんだけど。
[城へと戻り、玄関ホールで足を止める。
散っていた色は薄れ、冷たい空気は静寂を織り成す。
その様子をぐるりと見回した後、ふらり、宛てなく廊下を歩き出した]
[一階の一画。
記憶した見取り図と照らし合わせると、それなりの規模があると思われる区画。
そこは、興味はあれど立ち入る余裕のなかった場所だった]
……何があるんだ、ここ。
[装飾の施された扉を撫で。
それから、力を掛けて押し開く。
開いた先の空間は薄暗いものの、そこにある物の形は見て取れた]
……ピアノ?
こんな物まで、あるとはね……。
[呆れたような口調で言いつつも興味はあるのか、近付いて鍵盤の蓋を開ける。
白と黒の並び。
軽く落とした指が音色を一つ紡いだ]
……まだ、生きてるんだな。
[小さく呟いた後、ピアノの側を離れ窓を覆うカーテンを開く。
射し込む光に僅か蒼氷を細めた後、白と黒から気紛れに*音を紡ぐ*]
うーん。
[一階の片隅。
水の張った浴槽の縁に腰掛け、浸けていた足を上げる。
爪先から落ちゆく滴を、滴が生む小さな波紋を、眺めていた。
水面の揺らぎは僅かなもの。
土を飲み、澱みを抱いた水は間もなく静寂を取り戻す]
そっか。沸かさないといけないのかな。
[冷たい水。
四角く区切られた鏡面。
身を前に乗り出すと己の姿が映った。
足を深く突っ込み、
高く蹴り上げて像を崩す。
滴は対岸の壁にまで、跳んだ。]
土は落ちたから、いっか。
[縁に足を引き戻して立ち上がり、
湯殿の外に置かれていた布で拭う。
ごわりとした感触。
長年放置されていたらしいそれは、硬かった]
[広間を出る青の二人を見送り、またスープへと口をつける]
[食事を終えて、一度キッチンへ片付けに行き]
[閑散とした広間へと戻る]
これはどなたの音なのでございましょうか。
[音の出所を探る様、碧眼を彷徨わせるも]
[座した場所から、動く様子は見せず]
[顔を動かした先、
視線の高さには奇妙な空間が在る。
長方形の枠、彼方此方に落ちたきらきら光る破片。
全てを合わせても、空間は埋まらない。
鏡があったのだと予測するのは難しい事ではなかった。
壊れたのか、壊されたのかまでは、分からねど。]
[水に冷えた足に、古城の床は尚寒い。
駆け足気味に廊下を進み、広間へと辿り着く]
あ、キャロだ。
ちゃんと洗った?
[座す女に声をかけつつ、
暖炉から幾らか距離を置いたところに座り、
足を焔の方へと投げ出した]
[何をするでもなく、ただ静寂の中連なる音を聞いていた]
[扉の開く音に、ようやく女は首を傾げる動きを見せた]
ラッセル殿。
はい。
既に洗い落として、この様に布を巻いていただきました。
[チリン]
[身体を起こし、女は少年の下に近付いて膝を折る]
寒かったのですか。
[玄関でネリーとラッセルの会話を聞いた]
[浴室の場など教える事は出来ないが、男は水場――キッチンの方向は知っている]
[そっちの方ではないかと言いながら、自分は暫く其処に留まった]
困ったもんだ
[記憶はまだ曖昧にしかない]
[ただ、ラッセルを殺すことが出来ないと、男は理解した]
[もし彼が終焉の使者ならば――それに気付いても、誰かに告げられるだろうか]
[自問自答はすぐに終わり、そのままキッチンへと向かう]
それなら、よかった。
[近付く女の指先を見やる]
ちょっとね。
あのまま外にいたから、少し冷えて。
足洗おうと思ったんだけれど、
お湯沸かし方わからなかったんだ。
[鳴る鈴の音。
爆ぜる薪の音。
足下に流れる川のように、旋律が伝う。
源を探して、首を巡らせた]
……なんだろ?
―誰かの私室―
……まだ探すんですか?
[表情はあまり変わらないながらも、声に少々うんざりした響きがあったことは否めない。]
[小さく嘆息]
仕方がありませんね。頑張ります。
[そうして手分けしてあちこちを探したのだ、が。]
[あかのネイルで飾られた指先]
[その内の2本は白に覆われ、隠されている]
浴室の湯の沸かし方でしょうか。
それは、私にも。
[小首を傾げ、女は少年の頬へと華奢な手を触れさせた]
つめたいのですね。
…何かを、お探しでございましょうか。
[何かを探す態を、また女も真似た]
―誰かの私室―
[必死に引き出しや棚を漁るシャーロットの目を盗んで、こっそりと大きい部屋の方に戻る。]
[息抜きをしようと、繻子張りの椅子にどっかりと座り込んだ。]
[ふと、傍の卓子を見れば、チェス盤の傍に並べられた駒が目に入る。]
[それは、対戦中に双方の差し手が相手から取った駒のようだ。]
……。
[無言で黒いポーンを摘み上げ、しげしげと見詰める。]
[食料を探し、適当に食べる]
[肉も割いて食べられるのは、あの死体を見た後でも変わらない]
[硬くなったパンは火であぶり、腹を満たした]
食糧難にならなきゃいいが
[少なくとも男が生きる気であると、言葉からはわかる]
[ふと、その食料庫を見た男は、手を伸ばして瓶を取り出した]
[あけてみても腐ったにおいはしない]
なるほど、番人が飲んでいたんだろうな
[牛乳を鍋にあけ火にかける]
[見えぬ目に緋が踊った]
……女子供と一緒にされるのは嫌がるかもしれんが
[盤面を改めて確認すると、昨日彼がナイトを指してから後にひとつ、更に駒が動かされている。]
……なるほどね。
[くすり]
[自然唇に笑みがのぼった。]
[寝室の方からシャーロットの彼を呼ぶ声が聞こえる。]
[サボっているのがばれたのか]
[何かを見つけたのか]
……今行きます。
[黒のポーンを卓上に戻し、改めて盤上の黒のルークを]
[敵の進撃に備えて自陣の護りを固める位置に]
[指して、立ち上がった。*]
[頬に触れた掌はそのまま。指先越しに熱を与えて]
はい。先程から、どなたかが弾かれている様でございます。
ラッセル殿も、何か楽事はなされますか。
それとも描画の方が御好きでいらっしゃるのでしょうか。
[今の広間以上に閑散としたあの風景画を思い出し]
[碧眼は真直ぐに少年を見た]
[手を払う事はなく、動きを止めた眼は女を映す。
鮮やかな色彩も全て歪め、たった二つの色として]
オレは弾けないよ。
母様が弾くのを、聴いていたことはあるけれど。
うん。絵を描くほうが、好きかな。
[焔へと向いた足を揺らす。
幾つもの音に、椅子の軋みが混ざった]
[先を調べていた杖が、ちゃぷ、と音をたてました。]
…あら。
[赤い花の中、思いもしなかった音に、わたしは少し驚きます。
怪我をした指先には布を巻いていました。
上手く巻けているかどうかはきっと、他の人から見ないと分かりませんが。
その手で慎重に杖を進めて、先を探ります。
ゆらゆらと赤が揺れました。]
…水場?
こんなところに。
[杖を引き戻して先に触れると、冷たい水滴が伝うのが分かります。
規模の程はわたしには分かりませんが、この先には泉があるようでした。]
見習い看護婦 ニーナは、教師 イザベラ を投票先に選びました。
─誰かの私室─
[寝室探索の合間、周囲を見るとナサニエルの姿が無い]
え、あれ。
ちょっとナサニエルー? どこー?
[サボったのがバレたと言うよりは、この場に一人となったことに不安を覚え名を呼ぶ。声はすぐに返って来て、少しだけホッとした。彼を信頼していると言うよりは異変の確認と言った意味合いが強かっただろうか]
これだけ探して無いなら手鏡の類は無いのかしら。
大きな鏡があれば要らないと言えば要らないわよね…。
[ややがっかりしたような声を漏らす。共に居る男は苦笑を漏らしていただろうか]
仕方無い、手鏡は諦めるわ。
けど鏡があるんだからイザベラには教えなきゃ。
見つけたら教えてって言われてるし。
[イザベラとの約束を律儀に守ろうとする。ナサニエルと共にこの私室を出る時]
あ、折角だからナサニエルもイザベラ探すの手伝ってよ。
もしくはどこかで見たとか、知ってたら教えて?
[イザベラ探しまでナサニエルに手伝わせる*つもりだ*]
/*
昨夜のログ見て、
「え、狂信って1人だよね?」
と思わず人数見に行って、自分の役職も確認しました。
武器を取らないことで狼側匂わせたかったんだが、絶対霞んだな!
さくりとCOするしかないのか。
狼さんともさっぱり絡めてないし。
おかあさま?
ラッセル殿は以前の記憶を、
[問い掛けは、椅子の軋む音に、中途で失われた]
[微かに爆ぜた薪に、申し訳程度に視線を彷徨わせ]
[頬に触れていた手を引く]
その。
絵について。ひとつお伺いしても構いませんでしょうか。
番人がいねえ今はアレも貴重な食料だ。
拾いに行っとくか。
[体と頭が温まったところで外に向かう。既に人気のない玄関ホールを名を呼ばれた時と同じ肩を竦める仕草で通り抜けた。緋を踏み分け、土の露出した埋葬の地を一瞥して泉の傍に立つ。月はないが空の縁に緋を映した水面が揺れる]
まったく忌々しいヤツだ。
血の一滴がありゃ獣かどうか調べられるってのによお。
[血の連想からハーヴェイとのいざこざを思い出し渋面になる。元から無精髭に囲まれた顔は夜が明けても大して変わらず、口元の歪みに従う]
[苛立ちに任せ水面に拳を叩きつけると同時、風が吹き緋の波が揺れる。振り向かず驚きに見開く目が映すのは水に溶けたハーヴェイの血が作り出す幻影。風が収まるその前に刹那の像は掻き消え、焦茶色の髪を乱暴にかきむしった]
ケッ! 後生大事に抱え込んどいてハズレかよ!
紛らわしいことすんなってんだ。
[悪態をついてどっかりと座り込み、そのまま背を倒す。緋の花に埋もれているとこちらにやってくる足音と声がした]
え?
……ああ、本当だ。
[知らず滑り出た言葉だったらしく、
一拍の間を置いて瞬いた]
聴いて、思い出したのかもしれないね。
[躊躇いの篭った問いかけには、
僅か首を傾げ先を促す眼差しを向ける]
…なにやってんだ、アンタ?
[それなりの時間、緋に埋もれていた体を起こし杖を持つ少女に声を投げる。焦茶色の髪と鼠色の服が緋から急に生えたように胡坐をかき、ニーナに胡乱な目を向けた]
[近くにひとがいるとは気付かずに、屈み込んで水面を見つめます。
左手で水面に触れました。
赤と青がゆらゆらと揺れて――]
…え。
[はたと瞬きます。
誰かが見ていたなら気付いたでしょうか。
形を映さない筈の眼に、一瞬だけ光が宿ったことを。]
[と、急に声が掛かって、びっくりしました。
上げた眼は、いつもの通りぼやけた色しか映しません。]
何って、…いえ。
少し、外の空気を吸いに。
[微かに伝わるお酒の臭い。
濡れた手を引き揚げて、杖を両手で握ります。
動揺しているのは傍目にも分かったかも知れません。]
[少年が知らぬままの風情である事に、緩く息を吐いた]
[呟きに似た響きに同意する様、首を縦に振る]
ラッセル殿は、あたたかく、うごくものがお好きだと。
絵には、そう言ったものを描かれはしないのでございましょうか。
[また碧眼を少年の瞳へと、女は戻す]
はぁ……はぁ…。
[仮に自室としている部屋の前で、ペンを走らせている。
対象はメモ帳ではなく、壁であった。]
私は一体「誰」なんでしょうか…。
これが私の使命のような気がする。
[δ、θ、λ……複雑怪奇な彼女の「落書き」は、
何やら数式のように見てとれる。
すでに、部屋の中は数式で埋め尽くされている。]
[女の一挙一動を見る眼が不思議そうに瞬いた。
声は疑問を言葉にせず、疑問に対する答えを紡ぐ]
動くものを動かない場所に閉じ込めても、
虚しいだけだから。
[抑揚のなく。
揺らしていた足を下ろすと、
す、と身を引いて、床に降り立った]
……これ以上は無理ね。ピンと来たと思ったのに。
[ふう、とため息をつくと肩と首を回す。
それに合わせて、左眼もぴくりと動く。]
気分転換に、今回のことを考えましょう。
[反対側のまっさらな壁に向くと、
GUARD…DEAD
と書きつけた。几帳面な癖字。]
[泉を見ていた少女が顔を上げる。声をかけた途端、目から光が消えた風に見えて訝しげな声が出た]
外にいるのはわかってるっての。
その杖だよ杖。あと目。
[自分の焦茶色を指しながら立ち上がる。動揺している様子に構わず、包みを手に泉をぐるりと回って近づいていく]
さて、どこにいることやら――
[頭を掠った名前は口にしない]
[火から鍋を下ろしたときに、音が聞こえた]
――まさか
[音のつながりに、男はさすがに疲れたように椅子を引いた]
[記憶が左目にやきついているようだ]
[緋い妹は――生きていた頃、そうしていた]
[思い出すと同時に、頭が芯から痛む]
…済みません。
[返った声に少し萎縮しながら、近付いて来る色を眼で追います。
指差された先を見ることはできませんが。
未だ彼は知らなかったのだと、気付いたのはその時でした。]
よく、見えないんです。
[誰のものとも知れない音律が、静寂の室内に響く]
[それらよりも余程、二人の会話に高低は見られず]
虚しい。ですか。
[床に立つ少年を、膝を付いた姿勢のまま見上げる]
[背の豊かな金色が揺れる]
それは寂しいとは別のものでございましょうか。
少し整理しましょうか。
[Harvey…INJURED
Charlotte
Nathaniel…SICK
と、各人の名前と特記事項を並べ立てる。]
えーっと……メモは、部屋に忘れてきてしまいましたか。
[不調和な左眼が、ぐるん。
Quincy…BLIND IN ONE EYE
Russell
Carol…BEAUTIFUL]
似ているけれど、違うかな。
さみしいは、誰もいないから。
虚しいのは、いなくなったと感じてしまうから。
何もないのと、なくなってしまうのと。
ああ、そういう意味では。
この城は――虚しいのかな。
[女を見ず、彼方を見る瞳]
人が死ぬのも、そうだね。
[Nelly
Nina…BLIND
Gilbert…BLIND IN ONE EYE?]
……誰だったかしら。もう一人。
[イザベラ本人を除く、最後の1人の名前を失念したようだ。
もしかしたら、そもそも聞いていなかったのかもしれない。]
メモがなければ思い出せないですね。
仕方がない。仮に名前つけておきますか。
[Alan Smithee…DRUNK,BEGGAR?
と書いておいた。]
それに私……。
[Isabella]
ホイホイ謝るんじゃねえよ。
で、見えないってマジか?
[少女へと風が運ぶ酒の匂いが近くなり、足音が止まる。鼠色が何かを探る仕草をした後、皮鞘の付いたナイフをニーナの眉間目掛け振り下ろす]
―誰かの私室―
え?今度はイザベルさん…ですか?
[「まだ手伝わせる気ですか?」とは流石に言えず]
[内心、何時の世も若い娘とはずうずうしい生き物だなと、諦め顔で頷いた。*]
[いつしか、薪を焼く火は弱くなっていた。
高低の乏しい声に似て、部屋の明暗も曖昧になる]
あ。
薪、持って来ないとだね。
何処にあるのかな。
[はたと瞬く。
眼は現を映していた]
この音も気になるし、オレ、探して来るね。
[言うなり踵を返した。
開いた扉の先、旋律の源流を辿り*歩む*]
容疑者は、私を含めてこの11人ですよね。
私は死体を直接見ていないが、話によると
それはもうひどい有様だったという。
[特記事項に、INJUERDやBLINDと書いた名前を見る。
そして、深く思案するように首を傾げる。]
果たして、彼らにあのような真似ができたでしょうか。
いや。相手は、私の想像を超えた「何か」を持っているのでは…。
なら、怪我や女性の姿で油断させているとも……。
[深読みか、図星か。そんなことを悩んでいる。]
…。
[もう一度謝りかけましたが、口を噤みます。]
ええ、でも完全に見えないわけでは、
[再び声を紡ぐ途中で、
ひゅ、と風を切る音がしました。
こちらに振り下ろされるものが何だかは分かりません。
ただ滲む空気に少しぞくりとして、少しだけ身動ぎました。
避ける動きにはなっていなかったでしょうが。]
いけませんね。誰もかれも怪しく見える。
まさに、疑心暗鬼を体現していますね。
[いけないいけない、とばかりに目元を押さえる。
目が疲れたのか、両目ともささやかに赤が滲んでいる。]
少し気分転換です。歩きましょうか。
[自室に戻ると、メモ帳とペンを2本取って部屋を出る。
運悪く1本はインクが漏れていることに気づかない。
ポケットを黒く染め、床に滴り落ちている。]
[少年の答えに、女は二度瞬いた]
[おそらく正確には捉えられておらず、探る眼差し]
人が死ぬのも。
[口の中で反芻する]
[薪と旋律を探すと言う声に頷いて、女はその背を*見送った*]
─城内廊下─
だって一人より二人の方が早く見つかるかもしれないじゃない。
[共に歩いて居たらあまり効率は変わらないのだろうが、そんなことを言い。ナサニエルを引き連れて廊下を歩いて行く。イザベルが居そうな場所、彼女の事だからあちこち歩いて居るような気もしていたが、行動範囲が限られている中。歩いて居れば見つかるだろうと言う算段で移動しながら探し始める]
─音楽室─
[ほんの気晴らしのつもりが、いつの間にか熱が入っていたのは白と黒の鍵盤が己が身に親しかったが故か。
霞の奥の遠い記憶、その更なる深淵。
音色を紡いだ記憶は遠く、慕わしく。
鍵盤に向けられた蒼氷は、どこか遠くを見つめるが如く静かで、そして、虚ろだった]
[ニーナが僅かながら動いた分、空を切る皮鞘のナイフがぶれ青い前髪を掠めて止まる。鈍色の眼がはっきりと凶器を捉えてない様子を見て殺気を消してナイフを戻した]
どうやらはっきり見えてねえのは確かなようだな。
その割にゃ…まあいい。
[泉の水面が反射した光を見間違えたかと言葉を切り、首をごきりと鳴らす]
空気を吸うのは勝手だが終焉の獣がうろついてるんだ。
あまりふらふらしてるとやられるぜ。
いや、その前にどぼんか?
膝の付く深さとは限らねえし、せいぜい気を付けるんだな。
[手を適当にひらひらさせて城へ歩き出す。重いブーツは緋の中にまっすぐな道を*作っていく*]
[閉まる扉の音を背で聞き、ふと頭上を仰いだ。
先程は意識にも留めなかったが、
外には夕闇が迫る頃か。
厚い天井に覆われた空は移ろいを見せない。
かぶりを振り、緩やかな流れを逆しまに進みゆく。
源泉に辿り着くまで、そう時間はかからなかった]
[辿り着いたのはキッチンだった。
料理には苦手意識を持っていたが、空腹も感じるし
この奇妙な共同生活がいつまで続くかわからず、
それ相応くらいの技量は欲しかったのだ。]
えーっと。これとこれ……これもかしら。
[適当に材料を取り、フライパンを熱し始める。
そして、静かにベーコンを置いた。]
[ふ、と感じた他者の気配。
蒼氷は緩く瞬き、現在を映す。
白と黒、それが置かれた空間は、記憶の彼方のそれよりも冷たい]
……誰か、いるのか?
[最後の音節を紡ぎつつ、投げかけたのは静かな問い]
[何処から見られていたかなんて知りませんから、途切れた言葉の続きは、わたしには分かりません。
ただぴりと張り詰めた空気が緩んだのは分かって、息を吐き出しました。]
…そうですね。
ありがとう、ございます。
[終焉の獣、注意するような言葉。
口では礼を述べながら、わたしは泉を振り返ります。
――口許に浮かべた笑みは、彼には見えなかったでしょうか。]
熱ッ………熱ッ!!
[ベーコンの脂が、彼女の手の甲へと弾ける。
面倒くさそうな表情でフライパンを握る。]
ああ、だから嫌なんですよ。
ひっ!?
[必死の形相で、弾け飛んでくるベーコンを避ける。]
……特に何も無い。
変なところだけ聡いんだな。
[会話の相手には見えないはしないが]
[困ったように前髪をかき上げた。]
[そうして再び眼を戻します。
焦茶色はかなり遠くに見えていました。
傍に置いていた杖を手に、立ち上がり。
赤の中、茶の地面が見えている場所をゆっくりと*辿り始めました。*]
─城内廊下─
[出発地点は二階の奥の部屋。来た道を思い出し、その通りに戻って行く。ややあって差し掛かるのは客間が並ぶ廊下。そのまま進んで行くと、とある部屋から何かぽつぽつと、続いて居るのが見えた]
…何かしら、あれ。
[近寄り、黒い何かを覗き込む。床に染み込むそれは、酸化した紅の雫にも似ていた]
ずーっと続いてる。
この部屋って誰か使ってたっけ?
[ナサニエルに聞いてみるが、首を捻られる。同じく首を捻るが、別の何かに気付いたナサニエルに声をかけられ思考は途切れた]
うわ、何これ!
誰よこんな落書きしたの。
[壁に書かれた文字。読めない文字と読める文字が左右の壁に並んでいた]
これ……私の名前?
あ、こっちはナサニエルの。
……もしかして、イザベラかしら。
いつも何か書いてたのって彼女くらいよね。
[黒い染みが現れている扉の近くに書かれた文字。誰が書いたのかの当たりを付け、しばし考える]
……これ辿って行ったらイザベラ居るかしら。
そうじゃなくても、この染み、気になるわね。
[よし行くわよ!と染みが続くのを辿り歩み進めて行く。ナサニエルも、仕方なしにその後を着いて来た]
[一時手は止まったが、ゆっくりと開く。
最後の一音が尾を引いて隙間を抜けていった]
あ、ヴィーだー。
[下がった語尾は拍子抜け と言ったふう。
未だ薄く開いた扉の傍に佇んだまま、
旋律を作る白と黒に眼差しを向けた]
ピアノ、弾けるんだ。
腕は平気なの?
―城内廊下―
[困ったように前髪をかき上げたが]
[それでも拒否はせずに、引き摺られるようにシャーロットの後をついて行く。*]
……俺じゃ、まずかったか?
[下がった語尾に、何となくこんな言葉を返して]
ああ……ま、手遊び程度だが。
腕は、口煩いのが多いんで、清めてきた。
元々、大した傷じゃなかったからなんて事もない。
[問いに答えつつ、右手で白を軽く弾く。
左の腕を包む白に、今は紅の陰はない]
もう嫌……。
[顔は青ざめ、涙目になっている。
残ったベーコンを皿に乗せる。黒こげだ。]
せっかくだから、ゆで卵も欲しいところですね。
これなら、私にもできそうですから。
えーっと……。
[きょろきょろしていると、箱形の調理機器を見つけた。
にんまりとし、その中に生卵を入れる。]
これは発電機ですかね。古い型の発電機なんて、
とても珍しいものがありますねえ。
[感心するイザベラとは裏腹に、卵は回る。]
─キッチン─
[黒い染みを追いかけ辿り着いたのはキッチンだった。中で何かしている音がする]
む、誰か居るわね。
[ひょい、とキッチンの中を覗き込んだ。何だか悪戦苦闘する後ろ姿が見える]
…イザベラ?
んー。
女の人が弾くイメージがあったからさ。
[記憶を辿るように首を捻る]
煩いから、なの?
そんなにすぐ清められるものなら、
もっと早くにやっておいたら良かったのに。
ん…ああ、シャーロットさん。
[バツが悪そうに、頭を掻きながら向き直る。]
妙なところ見られてしま―
[キッチンの中にパァン!!という甲高い爆発音が
響いたのは、それと同時のことであった。]
[ミルクを持ち、廊下を歩くのは、どうにも違和感があってたまらないものだろう]
[男にとっては、大した問題ではないが]
[頭痛が治まるとき、それは記憶についてを考えないときと同義だが、廊下へ出た]
[音は止まっていたが、音がしていた方へと歩く]
[イザベラとすれ違うことはなかった]
まあ、女の方が見栄えがするのは確かだが。
[イメージ、という言葉に軽く肩を竦め]
ああ。
顔つき合わせる度に突っ込まれるぐらいならまだしも、いきなり吹っ掛けられるようじゃ、さすがにやりきれんからな。
[疑問の声には軽く、返すものの。
続いた言葉に、蒼氷は緩く伏せられる]
……色々と、あるんだよ。
[空白を経て零れた呟きは、やや、掠れて]
/*
>ネリーメモ
うーん、確かにねぇ…。
怪我が無いとしても、影響が後から出て来る可能性あるし。
一応合わせておこうかな。
村長の娘 シャーロットは、見習いメイド ネリー を投票先に選びました。
[仰向けに倒れながら、シャーロットの方を向く。]
す…すいませんけど、手を貸してくれませんか。
腰抜かしてしまったようです。
[照れくさそうな表情をしてはいるが、顔は青ざめている。]
[沈黙のまま心を委ねていた旋律は消え]
[眼前の焔もまた消えいく様に、か細いものとなっていく]
[柔らかに息を吐いて、女も広間の外へと出た]
[薪を探すつもりか、他の理由があるのか語られる事は無い]
[少し進んだ先で聞こえた破裂音に身を竦め、緋の靴をそちらに向ける]
[チリン][チリ、リィン]
[普段よりも忙しなく鈴が鳴るのは、早足ゆえに]
…何か、あったのですか?
[蒼の色彩を見つけ、キッチンの中を覗き込む]
死ぬようなもんじゃないな
どうせなら――
[それ以上は口にはしなかった]
[冷めた目で、一度振り返り、再び音楽室へ向かう]
吹っかけ?
[そういう問題なのかと眉根を寄せていたが、
軽く返された台詞に疑問が口をついて出た。
眼差しは伏せられた眼ではなく、
白の巻かれた腕へと注がれている]
……色々って?
[凭れていた壁から身を起こし、歩みを進める。
僅かな扉の隙間。外と内、二種の光が混ざり合う]
あ、ナ、ナサニエル行って来てっ。
[イザベラの頼みにナサニエルへと声をかける。こちらも身体が竦んで直ぐには動けないらしい。ナサニエルがイザベラの方へと向かい手を貸す。その間に後ろから声をかけられ、首を巡らした]
キャロル。
よく、分かんないけど、何かが爆発したの。
[表情は驚きに強張ったまま、キャロルに対して知る限りの説明をした]
のんだくれ ケネスは、見習いメイド ネリー を投票先に選びました。
違うなら、良かった。
[安堵を帯びた響き]
[けれど続く言葉は低く]
[滲むは獲物を求める獣の欲]
うん。そう。
清めてしまったのだって。
――詰まらない。
問答無用で、掴みかかられるとか、な。
[その際の相手の意図を察するなどかなわぬ事。
それ故か、声音はやや低く]
色々は、色々……。
見たくないものを、隠す、とかな。
[言いながら、右手で包帯を抑える。
抑えているのは、その下にある異質な紅]
いやあ……本当にすいませんすいません。
[ナサニエルに謝りつつ、肩を借りて立ち上がる。]
珍しい発電機見つけたので、見ていたら爆発したんです。
その………
[頭をポリポリと掻いて。]
卵が。
[探す人の声がそこの部屋から聞こえ、さすがに男は暫く悩んだ]
[だが中を覗くと、どうやらピアノの前に座っているわけではなさそうだ]
なんだ
弾いていたのはお前か
[どこか声にはほっとしたような感情があった]
[だが、まずはとカップをラッセルへと向ける]
飲むか?
ホットミルクだが
ちゃんと足は洗ったんだろう?
[話に加わるつもりはなく、*あまり口は挟まない*]
わぁ。こわいね。
……ああ、でも、仕方ないのかな。
殺さないといけないんだもんね。
[日常には異質な筈のその単語は、
違和なく平坦な声の中に溶け込んだ]
……?
それと、清めるのがどうとかと、関係があるの?
[白は手に隠される。
その白の隠すものなど、見えるはずもない。
手は鍵盤へと伸び、押え、一つ音を鳴らした]
爆発、でございますか?
[形の良い眉の根を寄せ、女は室内を眺め見る]
[特に荒れた様子は無いことがか不思議そうだった]
[男の手を借りて立ち上がる人物に、視線を投げ答えを得る]
……。
[とても短い溜息を吐いて、女は奥へと進む]
[もはや炭と化したものの乗った皿]
[その上を何も言わず、屑篭へと放り込んだ]
壊滅的にございますわね。
クー。
クーも、聴きに来たんだ。
[微かな感情の揺らぎを捉え]
……クーも、女の人がよかった?
[疑問と共に視線を返す。
二つの問いかけにはそれぞれ頷いて、
差し出されたカップに手を伸ばして受け取った]
……なんだ、ってな。
あんたも大概、言ってくれる……。
[室内に増えた気配と、声。
蒼氷を向けた先には、カップを手にした赤髪。
声に潜む安堵めいた響きに疑問を感じながらも、それを追求する気にはなれなかった]
/*
ごめんよごめんよ、ありがとう(´Д⊂ヽ
昼から居たからptが酷い。
明日からは昼居ないから、節約出来るよ!
仕方ない、って。
……お前もあっさりと言うんだな。
[違和なく織り込まれた言葉に、掠めたのは苦笑。
だが、それがこの場の真理と受け止めているが故か、それ以上は言わずに]
どう、と言われても、な。
……腕からとれないものを見たくない、いらない、と思っても。
腕を切り落とせなければ、せめて見えなくするしかない。
だから、見えなくするために、血染めにしていた。
そうしたら、厄介の種になったんで、血を落とした。
ま、それだけだ。
[説明は淡々と。
何でもない事のよに、綴られた]
[横を通って行くキャロルに視線を向けながら、何度か深呼吸。強張った身体を解すと一度深く息を吐いた]
真っ黒の何かに、爆発した卵…。
イザベラ、料理ダメなのね…。
[捨てられる黒い物体を視線で追い、呟いた]
学生 ラッセルは、見習いメイド ネリー を投票先に選びました。
作れないのなら、そのままで食べられるものを探した方がよろしかったのではありませんこと?
[開いている戸棚を探すも、その類は案外に少ない事に気付く]
洗うのは、面倒そうですわね。
[特段にそれ以上をする気は無いらしい]
……だって、そう言っていたから。
オレも、死にたくはないし、仕方ないって思う。
あなたは、違うの?
[黒塗りのピアノを背に、床に腰を下ろす。
ハーヴェイの顔は見えず、相手からも死角の位置]
……ふぅん。
服の袖で隠したり、包帯を巻いたり、
それだけではいけなかったのかな。
いえね。少しお腹も空いたし、この共同生活も
いつまで続くかわからないではないですか。
[右眼を誰とも合わさないように横を向く。
すると、左眼はずっと彼女らを見つめるように。]
私もね、お台所の仕事覚えた方がいいかな、と。
慣れないことはしないものです。もう二度としません。
[まだ、力が入らない足取りで皿を取ると、不器用に洗い始める。]
ええ、二度としませんとも。
確かに、言われたけどなぁ……。
[声にはどこか、呆れたよな響きが混じる。
続けて向けられた問いに、思案するよに蒼氷を伏せて]
俺は……そうだな。
生きる時は生きる、死ぬ時は死ぬ。
人なんて、そんなもんだ。
だが、理不尽な死を無抵抗で受け入れる気は、ない。
仕方ない、というよりは、俺が俺としてあるためにやる、って感じかね。
[言葉と共に、再び白と黒に触れる。
旋律が織り上げられてゆく。
それだけでは、という疑問には、ああ、と短く頷くのみ]
……とりあえずそれに卵を入れるとダメってのは分かったわね。
[イザベラが発電機と言う箱を見て、やや呆れたように呟いた]
ああ、そうそう。
イザベラ、鏡あったわよ!
据え付けの大きな鏡だから、ここには持って来れないけれど。
手鏡の類はどうしても見つからないのよね。
[腕を組んで溜息。それでも、当初約束していた鏡の話をイザベラへと伝えた]
え、見つかったんですか!?
[シャーロットの方を向く。手にしていた皿は
流し台にガタターン、と大きな音を出して落ちる。]
どこの部屋ですか?どこの。
そんなもの?
[余り理解していない態で首を捻り]
理不尽じゃない死って、寿命ってことかな。
生死より、自分が自分であることが、大切?
[押されるに従って楽器は内部で振動し、音を奏でる。
背に伝わる感覚を味わいながら、カップを傾けた]
あったかーい。
[続くのは、緊張感のない感想]
[女は漸く、眼の前の人物の視線の向きがちぐはぐであることに気付いた]
[こちらを向いた左眼のみを見つめる]
慣れないことをしないつもりならば、それも危険なのではございませんか。
[皿を洗い出す様を見つめ、背を向ける]
[特段、鏡には興味が無いようだった]
[先行く彼は道の先で待っていたでしょうか。
それとも気付かずに入って行ったでしょうか。
いずれにせよ、わたしもまた城の門を潜りました。
入る直前、聞こえた爆発音に瞬いて辺りを見渡しましたが。]
…ピアノ?
[結局足が向かったのは、微かに流れてくる旋律の方向。]
建設的なご指摘が何もないんですね。
それは結構なことです。外にばかり栄養がいっているのですね。
[そう言いつつ、メモを取り出す。
キャロルのことを書いた下に何やら書く。]
これが見取り図なんですが、どのへんかわかりますか?
[シャーロットに問う。]
あ、ちょっとお皿…!
[流しの底に落ちた皿は大きな音を立てた。割れては居ないようだが、音に思わず目を瞑ってしまう]
……うん、さっきナサニエルと一緒に探して見つけたの。
ナサニエルが心当たりあるって言ったから。
[落ち着いて瞳を開けてから、イザベラに頷きながら説明をする]
ええと、二階の客間をずっと行った…。
ああもう、面倒だわ。
案内するわよ。
どこにあるかは覚えてるし。
[キッチンを立ち去るキャロルには一度視線を向け、またイザベラへと戻した]
お尋ね者 クインジーは、見習いメイド ネリー を投票先に選びました。
……命は自分のものでも、生死は必ずしも、自分だけじゃ決められない。
だから、俺はそんなもん、と割り切ってる……いや、割り切らざるを得なかった……のかもな。
[最後の部分は、どこか独り言めいて]
誰かに強制された訳じゃない『死』なら、理不尽とは言わんだろ。
[間を置いて発した声は、淡々としたもの]
生死と、自分と。
どっちが大事か、ってのは簡単には言えんかね。
生きてこそ、自分でいられる……ってのは、人の受け売りだが。
[旋律は緩く紡がれる。
題名など覚えてもいない、小夜曲。
記憶するのは意識ではなく、幾度もそれを紡いだ指]
ナサニエルさんが…。先程といい、助けられっぱなしですね。
[見取り図を見ながら、にっこりとほほ笑む。
ぎょろぎょろした眼が、笑う時だけ細くなる。]
それでは、お言葉に甘えさせていただこうかしら。
ここの片づけは……他の方が使うであろう前に、
可及的速やかに行えば、何の問題もありませんね。
[案外大雑把な一面を見せる。]
書生 ハーヴェイは、見習いメイド ネリー を投票先に選びました。
[ギルバートは、ひとつの旋律に惹かれるように、ある部屋の前に現れた。]
――…ピアノ?
そんなものがあるのか。
へぇ……年代ものじゃないか。音が落ち着いている。
[この城に来て初めてとも言うべき笑顔を見せた。]
流れ者 ギルバートは、見習いメイド ネリー を投票先に選びました。
[こつ、と杖の音を響かせ、音の源へ近付きます。
途中で逆の方向から別の音が聞こえた気がしたのですが、その時にはもう部屋は目の前でした。]
…あら?
[もう1人、扉の前には先客がいました。]
踊り子 キャロルは、見習いメイド ネリー を投票先に選びました。
あー……うん、手伝うわ。
[片付けを、の言葉には早く終わらせるために手伝うことにする。任せたままではしばらくかかりそう、と思ったかは定かでは無い。手伝う前にナサニエルへと向き直り]
案内は私一人でも出来るわ。
今までずっと付き合わせて悪かったわね。
それと、ありがとう。
[部屋の存在を教えてくれたこと、文句を言わずに探すことを手伝ってくれたこと。付き合わせたことに謝罪し、礼も告げた]
[ナサニエルと別れると、イザベラの片付けを手慣れた様子で手伝い始める]
見習い看護婦 ニーナは、見習いメイド ネリー を投票先に選びました。
でも。
生きる以上、誰かに理不尽な死を強いている。
[あたたかなミルクを飲む合間に、ぽつりと言葉を零す。
それには続きがあったのかもしれないが、
紡がれた旋律と、続いた、扉を開く音のうちに消えた]
ああ。お嬢さん。
貴女もこちらに御用で?
古くて、いい音色だったものでね。
さっき萎えた衝動が、再び沸き起こってきましたよ。
さあ、どうぞ。お嬢さんから先にお入りください。レディファーストですよ。
[ニーナに先に入るよう、仕草で促した。]
本当に、何から何まで。
[表情が一変する。]
自分のことは、記憶がないのでよくわかりませんけど。
でも、おそらくは「理屈ばかり捏ねていて、
体を動かしたり細かい作業したりするのが苦手」
というタイプなんでしょう。わかります。
[慣れない手つきで、*片づけながら*。]
そう判断するには、十分すぎるほど論拠があります。
[指摘が無いと言う指摘]
[少しだけ首を後ろに回し、憐れみの表情を浮かべた]
かわいそうに。
[呟きは届いたか否か]
[女はキッチンを出て、城の中を歩む]
[軋んだ音がします。
暗かった廊下に僅かに光が差し、それまで部屋の中に籠っていた旋律が解き放たれるのを聞いて、扉が開かれたのだと理解しました。]
…いえ。用、というか。
音が、聴こえたものですから。
[声を掛けられて、少し瞬きます。]
衝動?
…あ、ええと。
済みません。ありがとうございます。
[首を傾げる間もありませんでした。
仕草はわたしには分からないのですが、その言葉に何故だか少し照れてしまいます。
頭を下げて、扉の内へと歩きました。]
……ま。
人ってのは、理不尽なものだからな。
[掠れた呟きは、旋律に緩く紛れ]
何やら、大入りだな……。
[開いた扉の先に見えた姿に、こちらは、紛れぬ声で呟きを落とした]
[中には思った以上に、色がありました。
茶が一つと、濃さの異なる赤が二つ。]
…済みません。
お邪魔でした、か?
[記憶の限りでは、この場にいるのは全員男性の筈。
意外だと思いながらも、まずは勝手に入ってしまった非礼に気付き、詫びました。]
いや……
あぁ、女の方が良かったな
[クツクツと低く笑う]
[カップはラッセルの手へと渡る]
[男は二人の話を聞く]
[ハーヴェイの――今は血の押さえられた腕を見やったのは仕方のないこと]
[壁に背をつけ、慎重に話を聞いていた]
ああ、うん。
何かそんな感じ……。
[するわ、までは出なかったが、ほぼ肯定の言葉を発する。隣で慣れぬ手付きで片付けているのを見れば、肯定したくもなると言うもの]
[片付けが終わると、イザベラを連れてキッチンを出る]
ちょっと歩くわよー。
ええと、確かこの部屋だったかしらね。
[イザベラの書いた見取り図を示しながら歩みを進める。客間を過ぎ、更に歩いて辿り着く、浮彫の見事な扉。その扉を開け、中へと誘う]
そこの扉の先。
その部屋に鏡があるわ。
[戸棚の傍の小さな扉を示し、イザベラに告げた]
[ニーナに微笑み、続いてギルバートも部屋に入る。]
――…いい音色だ。
でも、どこか悲しいね。
「死」と、それとは別の何かのにおいがする。
それが何だかは、分からないけれど。
[身に着けていたコートを、そっと脱いだ。少しだけ固い音が、床の上に響く。]
みんな、音に呼ばれるんだねえ。
[呼ばれたうちの一人だというのに、
他人事めいた言いよう。
半分ばかりになったカップを手に、立ち上がる]
そうだ。
薪探さないといけないんだ。
何処にあるか、知ってる?
邪魔じゃあないが、美人の弾き手を期待してきたんなら、残念でした、と言わざるをえんな。
[ニーナに向けるのは、冗談めかした言葉。
続いて入ってきたギルバートの言葉に、蒼氷は一つ、瞬く]
……別の、何か?
[中のひとりは、先程泉に――そしてこの眼に映ったひとりでした。
そして彼こそが、終焉の使者であると。
誰にも教えられないのに、何故だかわたしには分かりました。]
/*
今日はキリング無理だけど。
明日はキリング出来たら良いな、と期待。
鳩で発見もしたいところだなー。
でも繋ぐの10時以降だから遅そうだなー。
いえ。
[ふると首を振りました。
本当のところ男性だったことには、少しびっくりしたのですけれど。
そうして別のほうからの問い、薪の場所はわたしも知りませんから、再び首を振ります。]
みにくい。
[自覚無く、唯言の葉がくれないから落ちた]
[キッチンを出て歩む視線の先、時折黒い染みが床に有る]
[汚さぬ様にドレスを支え、良く眺め見る]
…あかでは無いのですね。
[興味を失ったとばかり、女は鈴を鳴らし玄関へと至る]
[番人と黒ずんだあかが消えた様子を横目に外へと出る]
薪が何処にあるかは……残念ながらよく分からないな。キッチンに行けば分けてもらえるだろうか。
[ラッセルに軽く笑みを浮かべて手を上げると、今度は栗色の髪の青年を見た。]
別にピアノの弾き手が美人である必要は無いさ。
[そう言いながら、床に座り、柔軟体操を始める。]
何だろうね――「別の何か」。
命が消える悲しみ?怒り?それとも、恐怖かもしれない。
言葉にならない、何か……かな。
[柔軟体操を終えると、コートを壁際に寄せた。
その中に隠した、護身用のナイフを悟られぬように。]
[それぞれの答えを受け取り、その一つに飛びつく]
本当? 何処?
暖炉の薪が少なくなってしまったから。
そろそろ足さないといけないと思ったんだ。
[薪の場所への問いには、さあ、と短く返す]
いや、連続して意外そうな顔されたんで、ね。
[弾き手についての言に、異なる赤の持ち主たちを軽く見やり]
……悲しみ、怒り、恐怖……ね。
ほんとに、あんたも大概、言い回しが詩的だな。
[疑問への返答に、刹那、眉を寄せるものの。
すぐさま飄々とした表情に戻して、軽く言い放った]
悲しみ……怒り、ね。
[心の奥、零れ落ちるのは掠れた言の葉]
悲しみなどはない。
……人の死で嘆きなどはしない。
あるとすれば……怒り……か。
ああ、暖炉の……
広間のだな
火が消えると面倒だ
[先へ行こうと、扉へ向かう]
……お前は食事はとったか?
[だが、少し気になり、ニーナの傍で聞いた]
オレひとりでも、平気だよ?
[ぐい、と残ったミルクを呷り、口許を袖で拭う。
場所を聞き、早速飛び出そうとして、ふと立ち止まる]
あ、ニナ、何処か適当に座るといいよ。
って言っても、椅子はないけれど。
色しか見えないで歩くなら、疲れるんじゃない?
詩的?――…そうかな。
言葉にならぬものをカタチにすることを性(さが)としているからだろうか?
[旋律に合わせて、そっと腕を天井に伸ばした。 唇が微かに動き、数字をカウントする。]
そう――…こんな感じ。
[胸を逸らし、膝を床につけ、天に伸ばした手を胸に引き寄せ――苦痛とも痛みとも取れぬ、眉をしかめた表情を浮かべた。]
[今度は身体を起こし、腕を左右にゆっくりと薙ぐ。]
[――即興の舞踊。
男は、地を這い苦悶するような動きを続ける。]
ああ、はい。
[赤い少年の声に頷いて、扉のすぐ横に座り掛けましたが、]
え?
[傍まで来た別の声。
それがわたしへ掛けられたと理解するまでには、そう時間は掛かりません。]
…いいえ。
今日は、未だ。
[忘れていたことに気付くのも、すぐのことでした。]
……あれの後で食欲ある人って、
そういないと思うよ。
[直ぐ前にいる男を見上げ、さも当然という風に言った。
振り返った先には舞う男が在り、
しかしそれと知らず、幾度か瞬いた]
わぁ。気持ち悪そう。大丈夫?
言葉にならぬものをカタチに、か。
[微かな引っかかり。
以前、似たような言葉を聞いたような、違うような。
そんな事を考えている間に、始まる舞踏。
蒼氷が珍しく見開かれ、反射的にか、手が止まった]
[ラッセルが言い、ニーナは座る]
[それから、答えに少し悩んで問いかけた]
食えそうか?
といっても、己にはまともなものは作れないが
[と、視線を流す]
[ギルバートが踊っていた]
――それでも食わなければ死ぬぞ
[眺めながら、ラッセルの言葉に苦笑する]
[外に出て、踏み入ったのは森の中]
[地に落ちた枝の、葉の無い乾いたものを選び腕に抱える]
[それを持って城の中に戻ろうとした時、土の盛られた場所が有ることに女は気付いた]
鎮魂の鐘の音の代わりに。
[リィン]
[鈴を揺らし、碧眼を伏せる]
おやすみなさいませ。番人殿。
[爪先で立ち、天から降り注ぐ光を掴むような仕草をしたその瞬間――…]
――気持ち悪そう?
[目を見開き、唇から勢いよく息が飛び出す。]
あっはっはっはっ!!!
確かに!!
気持ち悪そうとは、言い得て妙だ!!
[舞踊は止まり、その場に尻餅をついて笑い出す。膝を叩き、腹を抱えて――…]
[薄茶色のひとが何をしているかは分からずに、軽く瞬きました。
気持ち悪そうという声が聞こえて、少し心配にもなったのですが。]
…少しなら。
[少し考えて、赤毛の男のひとにはそう伝えました。]
それでも、オレやニナよりマシな気がする。
……死ぬのは厭だなあ。特に、お腹空いて、とか。
[呟いた矢先の、大きな笑い声。
眼を見開きますます円くして、その様を眺めた]
どうしたの?
あー、と。
[目の前の展開に、何をどう言えばいいのかわからず、惚けた声を上げる]
俺が弾いてそうなるなら、あいつが弾いたらどうなったんだか……。
[続く呟きは、恐らくは無意識のもの]
[背の豊かな金色を揺らし、女は首を上に傾ける]
何かが足りないと思っておりましたけれど。
この城こそが、そうだったのですね。
毒持つ花に護られた墓碑。
欠けていたものが埋まり完全となったのならば、それこそが滅びの象徴だと。
[眼差しを戻し、女は城の中、広間へと戻り]
[暖炉の中に抱えた枯れ枝を放り込む]
笑い上戸だな
[ギルバートの様子に、そんな感想を一言]
少しか
ミルクくらいにしとくか?
持ってくるぜ
[それから、ラッセルの言葉に、そうだなと同意した]
――まあ、キッチンに行くか
[暫く笑い声に唖然としていましたが、]
…あ、あ。
済みません。
[持ってくる、と言われて頭を下げます。
杖を頼りに、壁に背をつけて座り込みました。
間に呟きが聞こえた気がして、眼はピアノの前のひとに向きます。]
あー……いや。
[勢いよく立ち上がり、尻についた埃を音を立てて払う。]
いやいや、いやいや。
「踊り」が伝わらないなんて、俺もまだまだってことさ、ラッセル。
ああ、可笑しいものだ。
[タン、と音を立ててステップを踏んだ。]
――…楽しげな表情の方が、見ていて楽になれるかい?ラッセル。
[片足だけで己の身体を支え、くるりくるりとその場で回転を繰り返す。10回、20回…と繰り返し、ピタリとその場で止まった。]
――…これじゃ、曲芸だな。
[肩を竦めて苦笑した。]
食事……ああ、なんか食べとかんとな。
[周囲で交わされていた言葉に、思い出したよに呟き。
ふと、視線を感じた気がして、蒼氷を扉の横に座るニーナへと向ける]
どうか……したか?
……何か、違った?
[繰り返される回転を眺めていると此方の目まで回りそうで、
眉間に指を当てて頭を振った]
器用だね、オレには無理そう。
楽しそうなほうがいいかな、とは思うけれど。
そもそも、踊り自体がオレには理解しにくいみたい?
[こちらに視線が向けられたのを感じました。
そうして問いには、やや首を傾けました。]
誰か、ピアノを弾ける方がいらしたのですか?
そう聞こえたものですから。
なるほど――ね。
俺はむしろ自分を不器用な類いと思っていたが……ま、構わないさ。
[くつくつと喉を鳴らして男は笑った。]
まあ、まずはメシでも食ってきなよ、ラッセル。腹をおさめれば、気持ちも安らぐだろう。
[扉の外に向かうラッセルに手を振った。]
[暖炉の焔は勢いを増し、僅かに爆ぜる]
…足りませんね。
薪自体がやはり必要なのでしょう。
[何処にあるかを考えて、つい先程までの記憶に思い当たる]
[黒焦げとなった元食物のすぐ近く]
戻った方が良いかもしれませんね。
[先の事は努めて思い出さない様にしつつ、緋の靴はキッチンへと]
[問われた言葉の意は、すぐには理解できず。
しばしの空白を経て、ようやく答えにたどり着く]
ああ……。
いや、ちょっとな。
今の曲を、最初に俺に聴かせた奴の演奏だったら、どうなったのかと、ね。
もっとも、ここにはいないから、確かめようもないが。
[何でもない事のよに言いながら。
一つ、二つ、鍵盤を弾く]
[ラッセルが扉の外に出たのを確認し、ギルバートはピアノに寄り添い肘をついた。]
あははっ……俺らしくもない。
観客を間違えた。
[そう言いながら、笑いながらバンダナを外す。]
[バンダナを外した拍子に、革製の眼帯がするりと外れた。ギルバートの左目は――正確には、瞼の奥は――ぐちゃぐちゃに腐り落ち、変色していた。]
いや……技術不足を棚に上げる訳ではないけれど、さ。
[しかし彼は、眼帯が外れたのに気付いた様子では無かった。]
―キッチン前―
……変なにおいがする気がするのは己の気のせいか?
[立ち止まり、ラッセルに尋ねた]
[と、向こうからキャロルの姿]
へぇ……
最初に君に聞かせたという人間は、君のピアノの師匠か誰かかい?
君の演奏は素晴らしかったよ。
本当に、心惹かれた。
だからこそ、身体が勝手に動いたのかもしれない。
――…是非、君に最初に聞かせたという人の演奏を、俺も聞いてみたいものだ。
[空白は長く。
不味いことを聞いたかと、口を開きかけた時、返事が返ってきました。]
最初に…
あら。
記憶が、あるのですか?
[繰り返して、ふと瞬きます。
皆記憶をなくして来たのだと、聞いていたものですから。]
[言いながら、もうひとりに眼を向けて。
違和感を感じました。]
赤い…?
[よく見えないのは、きっと幸いだったのでしょう。
いつもと違う色彩に、届きはしませんが、思わず手を伸ばしていました。]
師匠……とか。
そういう相手じゃなかった……とは、思う。
はっきりとは、言えんのだがな。
俺のは所詮手遊び、あいつには及ばん。
もっとも……比較しようにも……もう、いない。
だから、聴く事も、できないな。
[何気ない口調で言いつつ、蒼氷をギルバートに向けて。
目に入った眼の様子に、再度、言葉が止まる]
……あんた、それ……。
その、眼……。
……気の所為じゃないと思う。
なんだろう。
[警戒の篭った眼差しを扉に向ける。
他へと気の向いたクインジーを余所に、手をかけて開いた]
[リィン]
[足取りは常以上に緩やかで、鈴の音も微か]
[廊下の向こう。見つけたのは二色のあか]
[思わず、ほう、と吐息が洩れる]
御二方も、此処に何か御用事が?
[キッチンの扉を開ける様を見て近付き、くれないを開く]
そうか……残念だな。
そんな風に君が寂しげな顔をするのだから……さぞや美しく、魂の込もった演奏をする方だったのだろうな……
[寂しげに右目を細めて、永遠に聴くことのかなわぬピアノの音色に思いを馳せた。が――…]
え………?目?
[自分の手元を見つめる。
バンダナと共に、革製の眼帯が握られていた。]
あ……いつの間に………!
[反射的に、左目を手で隠した。]
あぁ、ラッセルは薪を取りにきたが
己は――食事をしてない奴にミルクでももっていくところだ
お前は食べたのか?
[しかしそれ以上言葉はなかった]
[ラッセルがあけた先、室内は荒れていた]
―キッチン―
[突然の開放に些か途惑いつつも、これ幸いと]
そうですか。
じゃあ私はこれで。
[思わずにっこり微笑んでしまったのは、半分くらいは本気だった。]
[眼帯の奥の様子は、確りと見て取れていたけれど。
隠される様子に、すぐに視線を逸らす]
……さっきの連中が戻る前に、隠しておいた方がいい。
見られて、楽しいもんじゃないだろうしな。
[見る側ではなく、見られる側を慮るような言い回し。
それは、自身も他者の目に晒す事を忌避する要素を抱えるが故のもの]
―キッチン―
[とは言え他にやることも無い。]
[皆空腹なら何か作った方が良いのだろうかと保存してある食料を見ながらぐずぐずしているうちに、手早く片づけを終えたシャーロットは、イザベラを連れて出て行った。]
行ってらっしゃい。
[微笑んで手を振るさまは暢気そのもの]
はい。私は既に。
スープとオムレツを。
まだ南瓜のポタージュならばあるかもしれませんが。
[必要かとは言外の問い掛け]
どなたにです?
[幾ら片付けようとも、こびりついた臭いまでは落とし切れない。
中に顔を突っ込みかけたところで、新たな気配に其方を見た]
えーとね、ニナにかな。
もしかしたら、ヴィーとか、バートとかもだけれど。
[会話に横から口を挟む]
そう――…だな。
ひどく醜く、見苦しいものを見せてしまったな。
すまない……。
[ハーヴェイに背を向け、急いで眼帯をつけ直す。眼帯の紐をきちんと結ぶと、きょろきょろと辺りを見回し、小さく礼をした。]
まして、そちらのお嬢さんはなおさらだ。
こんな化物みたいな顔を見てしまったら、夢に出てきて怖い思いをするかな?
[赤い色が隠れます。
眼、という単語が聞こえて、はっとなりました。]
それは…怪我を?
[その酷さは分かりませんが、眉を顰めます。
しかし続いた言葉に、伸ばしていた手はゆると地に降りました。]
[名前は先にラッセルが答え、男も頷く]
そうだな
ニーナには持っていってやるとはいったが
ついでだから持って行くか
そんなものがあったのか
あまり食べたくないようだから良いかもしれないな
お前が作ったのか?
[キャロルに尋ねる]
それ程に…
[化け物、という語に、傷の酷さを感じてますます眉を顰めました。
その間に、赤のあった場所にはいつもの色が戻っていました。
何かで覆ったのでしょう。]
…いえ、わたしは。
見えませんから。
[気に掛けるような言葉には、首を振ります。]
そんなに、気にしなさんな。
……あんたの方が、きついだろうし。
[口調だけは軽く言いながら、左の腕を掴む。
今は白の下の紅蛇を抑えつけるように]
[ニナ、ヴィー、バート、名前から一人一人を思い返す]
[思考が漂う臭いに妨げられるので、そっと口と鼻を白を巻いた指先で覆う]
3人とも食べてはいないのですか?
[尋ね、確認を得る]
[二人の後ろ、廊下に少し窓を探し、開けた]
そうか。
見えないのか……これはこれは失礼しました、お嬢さん。見えない方に言うのも、申し訳無い話だったな……。
この件については、気にしないでくれ。
でも、彼の包帯は見えるようだね。色は見えるのか……。
知らないな
あの二人が食べたかどうかは聞いていない
ニーナは食べたらしいがな
[窓を開ける様子を眺めた]
[風が抜けていく]
いいえ。
[気に掛けられることでもないと、首を振りました。
続いた言葉には一つ頷きます。]
…ええ。
弱視、みたいです。
[もう一度、頷きました。]
有ったと言いますか、
[ほんの僅か、女はくれないを閉じ、間を作る]
[顔の横に垂れた金色を指で絡め、引く]
はい。私が。
似合わぬやもしれませんが。
[ハーヴェイを見て、肩を竦めた。]
まあ…これのおかげで俺は、神の掌の上で成立する「完全なる美」の世界からは永遠に排除されたわけだが。そんなに気にしてはいないさ。
何より、これがあるおかげで、真に美しいとは何かを考えることはできるようになったからね。
[軽く笑い飛ばそうと、小さく声を上げて笑った。]
それより、君の腕は大丈夫かい?
音色の美しさ故すっかり忘れていたが、ピアノを弾いたら傷が深くなってしまうかもしれない。気をつけて。
[ややあって。]
[厨房には、焦げくさい臭気に混じって、温められたアルコールの匂いと微かな香辛料の香りまでが充満し始めた。]
似合わない?
男が作るより似合うと思うが
後で己も貰って良いか?
腹を空かせた奴らにあげた後に
[キャロルを見ながら、尋ねる]
そうか……分かった、お嬢さん。
これからは気をつけるよ。
もしかしたら、俺の影か、身体が何処にあるかくらいなら分かるかな?もしそうだとしたら、嬉しいなぁ。俺の踊りは見える必要も無いけれど、さ。
前向きな考え方だな。
[笑う声と、語られる言葉。
それに対する言葉と共に、ふ、と口元を掠める笑みは、飾り気なく]
ああ……腕の方は、大丈夫だ。
元々、さして深い傷でもなかったし……真面目に清めておけば、すぐに塞がるだろ。
[軽く言いながら、ぽん、と軽く白を叩く]
[何かと金属の擦れる音]
[人の気配]
どなたかまだ、いらっしゃるのでしょうか。
[少しだけ、言の葉の響きは暗く陰った]
[扉の薄く開いたキッチンからは、焦げ以外の香りが零れた]
獣ならば…?
ああ。そういう、事になるのかもしれませんね。
[くれないから、落ちる言の葉は短い]
[考えてもみなかったと、言う風に]
―キッチン―
[スカーフで鼻を覆った男がひとり、小鍋を火に掛けて温めている。]
[アルコールの匂いはそこから強く漂ってくる。]
それは、分かります。
…踊りまでは、見えませんけど。
[少し申し訳なさもあって、眉を下げました。
そうしてふと扉の外、2人が先程過ぎて行った方向に、何気なく*眼を向けました。*]
…どうやら命がどうこうって騒ぎって訳じゃなさそうだな。
番人がやられたのは寝静まってから…だろうな。
夜になる前に休んどくか。
[窓と扉の鍵を閉め、警報代わりに部屋にある割れやすいものをその傍に置く。ベットを背に毛布を巻きつけ、包丁の柄を握り締めて*目を閉じた*]
私は、似合わない、そう思いますが。
[少しだけ頑なな響き]
それは構いませんが。
…毒が無い事をお祈り下さいませ。
[嘯くように、くれないは笑みを模る]
[確りと扉を開いてみれば、
流れ出る匂いは想像していたものとは異なり、
焦げ臭さは大分薄れていた]
……くさーい。
[それでも、そう漏らしたのは、先日の記憶が色濃く残るから。
口許に手を当てつつ中へと入る]
薪って何処……、あれ、ナット?
また料理してるの?
[ハーヴェイの言葉に、笑ってみせた。]
前向き……なのかな?
所詮は踊るための口実さ。
踊ることができるなら、最もらしい御託を並べることなんて容易いさ。
……本当に好きなことには、言い訳を並べてまでしてもしがみつくということかな。
毒ね
[くつりと笑った]
先に食べるのがいるんだから、毒があったら己は食わないぞ
[暫くして、キッチンに入る]
[ミルクとパン、そしてキャロルの作ったスープを取ると、男は音楽室に*それを運んだ*]
或いは人である内に食物を捧げれば、多少慮っていただける可能性もございますわ。
――苦しませる事無く終焉を授けて下さるかも。
要らぬ優しさではありますが。
[そう告げて男を残し、キッチンの中へ]
いいや、仕方ないさ、お嬢さん。
俺の影が少し見えるだけで十分さ。
飛び跳ねる音がうるさかったら、ごめんな。
[そう言って、静かに笑った。]
それで、か。お嬢さんが音に引きつけられてここにやってきたのは。視力が少ない人は耳が冴えるというのは、本当なんだね。
[髪をくしゃりと掻き、ちいさく*笑った*]
前向きだろうさ。
自分のやりたい事、そのために動いて行くんだから。
[からかうよな口調で言い、再び鍵盤に指を落として行く]
……少なくとも、俺よりはずっと前向きだと思うぜ。
[独り言めいた言葉は、再び紡がれ始めた旋律と共に零れ落ちる。
呟きが届き、その意を問われたとしても、返すのはどこか*曖昧な笑み*]
[料理に意識を向ける男に幾つか声をかけた後、
キッチンの中を探し始める。
薪を見つける前に探り当てたのは、調理用の刃物。
がた、と存外大きな音を立てて一本を抜き取り、じっと見詰めた]
学生 ラッセルは、書生 ハーヴェイ を能力(襲う)の対象に選びました。
[その場に残っていた青年に目礼をして、その近くにある鍋を温める]
[ポタージュを皿に移し、中に入ってきたあかの髪の男へと手渡して行く]
[チリン]
[掬う度、鈴の揺れる音]
私は広間に戻りますが。
薪を運ぶのは手伝いが必要でございましょうか?
[問いはあかの少年に向けて]
[先程の事を見られた気まずさからか、鍋の近くに立つ男にはあまり碧眼を向けなかった]
[ふ、と響いた音に首が傾げられる]
何かをお探しですか?
[鈍い煌き。
側面に指を滑らす]
……んーん。
こういうの、持っていた方がいいのかなと思って。
でも、わかるように持っていたら、逆に危険と思われて襲われそう。
[揺らめかすと、その先端が木の扉に当たり、僅かに削った。
元の通りに戻して、戸も閉める]
運ぶのは、一人でも平気だよ。
……多分。
[程なくして薪置き場を見つけ、抱え上げる。
「重い」という感想は、平気と言った手前、飲み込んだ]
それじゃオレは、広間行ってるね。
[無論、獣たるかれに刃は要らないけれど、
牙を恐れる人を演じるなれば必要かと思う。
月の出ぬ間には、その力も望む侭には振るえぬのだから]
書生 ハーヴェイは、見習いメイド ネリー を能力(守る)の対象に選びました。
見つかっては、意味がありませんね。
それに、扱い慣れぬならばご自身が危険なだけでございましょう。
それでも生き延びるのに必要だと思われるのならば、お持ち下さいませ。
私は未だ、何も持ち得ておりませんが…わかりやすく見える力も、無力に見える様も時には、等しき効力を持つ場合も、或いは。
[長い睫毛を伏せ、僅かな笑みの形を作る]
[重たげに薪を抱える少年を見て、まずは女はキッチンの扉を*開いた*]
ううん。いいや。
確かに、その通り。
扱い切れない力は、却って己を不幸にするから。
[作られた笑みの真意は見えない。
映していたのは、ほんの一時。
厨房を出る際に内へと視線を向ける。
香り立つ鍋。
平和と思える光景。
それこそが異質と成り得る今。
一瞥して厨房を去り、広間へと歩みゆく。
燻る暖炉に薪を放り込むと、大きく音を立てて*燃え上がった*]
/*
イザベラ戻っては来ないかー。
まぁしゃあないね。
後で補完するとして、その部屋に居ることにしとくのが良いかなぁ…。
[立ち去る間際に向けた眼差しは同胞を捉える]
ねえ。ギィ。
狩りの前に、ギィの処に行ってもいい?
朝を迎える時には、自分の部屋に居るから。
今日はヴィーを狩ろうかと思うんだよ。
邪魔そうな人を消す方が良いでしょう?
それに抗ってくれるみたいだから。
あの鼠の人は変な臭いがして、僕は厭だな。
それに、バートはギィのほうが欲しそうだもの。
[扉を示した後、イザベラは奥へと入って行く。少女は後には続かず、手前の大きい部屋に留まった。共に入るべきでは無いと、何となくそう思ったために]
[イザベラを待つ間、少女は何をするでもなくその部屋に居た。部屋の中を順繰りに見て、一点を見て動きが止まる。それはこの部屋の物を見るのではなく、更にその先、この部屋から離れた遠くを見つめていた]
……白い、花……。
緋色の中の、白。
[小さな呟き。瞳は紅紫から滅紫へ。焦点の合わぬ瞳が向いて居たのは、番人が埋められている方向。少女の瞳には、彼女にしか見えぬ夢幻の華が*映し出されていた*]
―キッチン―
[扉から入ってきた三人に、男はさっと顔だけで振り向いて]
やあどうも。
随分と長い間外で話をしてましたねえ。
[布地ごしのくぐもった声で挨拶をし、そんな言葉を付け加えた。]
[話しかけては見たものの、三人共に断られ、軽く肩を竦めて苦笑する。]
[火から鍋を下ろし、用意したカップに丁寧に注ぐ。]
[濃い赤紫色の液体から、湯気と共に香気が漂……っている筈だが、鼻にこびり付いた焦げ臭いにおいでよく分からない。]
[男はスカーフを外すと、温めた酒を上機嫌で啜りはじめた。]
[そのままキッチンの作業台に腰を乗せて、黙って三人の様子を窺っていたが]
[カップで隠れた口元]
[包丁を手にする少年に、スッと目を細める。]
[一瞬、鋭い光。]
[やがて三様に去ってゆく三者を]
[じっと見詰める男の双眸は、]
[笑みともつかぬ、軽く持ち上がった口の端はそのままに]
[奥底に硬質の光を宿して、消えることは無かった。*]
[同族の少年が去り際にこちらを一瞥]
[唐突な申し出に、男は面白がるような聲を返す。]
構わないが……
どうした、急に。
俺がおまえに触れたいと言ったのを気にしているのなら、あれはそんなに気にしなくても良い。
のんだくれ ケネスは、見習い看護婦 ニーナ を能力(占う)の対象に選びました。
ヴィー?
包帯の男を狩ると言うのか?
[伝わってくる少年の聲は愉しげで]
いいだろう。確かに厄介な男の頭数は減らしておくに越したことは無い。
抗う様を見たいと言うのなら、ちょうど良い獲物ではある……
違うよ。
僕が、そうしたいからするの。
死ぬ心算はないし死なせる気もないけれど、
何時、どうなるかは分からないから。
[許可には小さく笑みが漏れた]
[今、彼の顔を]
[その瞳の奥を覗くことが出来たなら。]
[剣呑な光が宿っているのが見えただろう]
[狩りの衝動]
[情欲と紙一重の]
[底無しの食欲]
[勿論それを見ることの出来る人間はこの場には存在しない。]
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