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カチューシャは ユーリーに投票を委任しています。
カチューシャ は キリル に投票した。
キリル は ユーリー に投票した。
ロラン は レイス に投票した。
レイス は キリル に投票した。
ミハイル は キリル に投票した。
ユーリー は キリル に投票した。
キリル に 4人が投票した。
レイス に 1人が投票した。
ユーリー に 1人が投票した。
キリル は村人達の手により処刑された。
ユーリー は、 ロラン を占った。
次の日の朝、 レイス が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、 カチューシャ、 ロラン、 ミハイル、 ユーリー の 4 名。
キリル!!!
[ガシャン!と、大きな音を立て。
銃声に弾かれるように車椅子を跳ね飛ばし、幼馴染の前に。
風の如くの速さで、身体ごと割り込んだ。
身のこなしは常軌を逸しているように見えるかもしれず。
その身に、銃弾を受ける為。
キリルを――殺させない、為。
だが、それはうまくはいかなかった。
ロランの体を掠る銃弾は、それを遮る事出来ず
ただ、土の上にどさりと落ちる。
倒れた車椅子が、カラカラと車輪回る音をたてる。
赤く少し欠け始めた月が、影を、落とした]
[兄貴を本気で襲うつもりではなかった。
ただ、本気で引っ叩いてやるつもりだった。
星浮かび始める空に、未だ紅い月は見えていない。
ざわりと本能が騒ぐけれども、未だ理性呑まれているわけでもなく]
────…そうだね。隠れて、いるから、
[走り出す前、仲間へ向けた小さな囁きの声。
それらも全ては、一発の銃弾にのまれて消えた]
[その視界も、すぐに暗闇に閉ざされる。
優しい囁き声も、もう耳に届かなくなる。
イヴァンの育てた花の中に沈みゆく、
それを自覚することは、もう*なかった*]
あなたは悪くない。
[悔やんでいたことを知っている。
人を殺したことも。
それでも、聞こえないのがわかっていて、囁いた]
『悪くない』
[意識は、ふつりとまた途絶えて]
キリル、キリル…――ッ!!
[土の上、腕だけで這ってキリルへと近寄る。
横たわる彼女の横、目を見開いて見下ろした。
まだ、暖かい]
いやだ、キリル……!!
キリル…やだ、ッッ嫌だ…ッ
[叫ぶ、吼える。
その手を両手で包み、自分の額に当てた]
/*
わあああ、ロランが嬉しい。
よおし、今日は地上にいっぱいレスをする日!
赤ログ見えるのかなあ、どうなのかなあ。
見えたらかなり嬉しい気がする。
/*
キリングは心がいてぇです(´・ω・`)ショボーン
そしてデジャヴ。……な気がするんですが。
プロからずっと思ってたんだけどさ。うん。
違ったらまぁ、それはそれで。
[キリルの元へ這い寄るロランの姿>>3を、ただただ…見下ろしていた。
この手では、キリルを殺したこの手では…ロランを支えてキリルの元へ運んでやることなんか出来るはずもなく。
歯を食いしばり、その光景を目に焼き付けることしか…。]
これで、…終わりだ。
[憎まれても罵られてもいい。
……これが自分なりの答えだった。
どうして人狼は、人と同じような姿をし、同じ言葉を操るのだろう。
時に、恋情や友情さえ芽生えて。
全く別の生き物として、自分たちが動物を喰らうのと同じように、人を捕食する物として存在したのなら、…互いにこんな思いをしなくて済んだのかもしれないのに。]
/* あ、ユーリーオフってたΣ(・Д・;)
うーむ。これ以上進められないかなぁ。
というか昨日ちょっと粘っちゃったので、眠いんだ…。
[視覚も聴覚も意識も全て目の前の彼女に注いでいたから、視界の外で構えられた猟銃に気付けなかった。
振り上げられた手は、紛れもない人の手。
そこに殺意が無いことなんて分かっていたのに。]
え、
[叫ぶ声。倒れる音。それらを掻き消す程の大きな音。
でも僕が目を瞠ったのは、そんな物たちが理由ではなくて、たった一つ――]
[散った赤色は、とてもささやかなものだった。
少し生意気な、可愛い妹。
もう少しで手が届きそうな所で、崩れ落ちた。黄色い海へ沈んで行く。]
キリ ル……?
[傍に寄るロラン。遅れて慟哭が聞こえる。
感覚器から伝わる情報を受け止められずに、僕は呆然と立ち尽くしていた。]
[レイスはどんな顔で自分を見ていただろうか。
呆然とした顔か、憎しみの籠った顔か…。
どんな顔を向けられても仕方がない。
例え暴力を振るわれても、抗うつもりはなかった。
しばらくの後、キリルとロランの元へ行き、動かなくなったキリルを抱き上げた。
ここでもまた、何か浴びせられたかもしれないが譲ることはなく。]
イヴァンの所へ連れてく。…いいよな?
[篝火の前で食事をした晩の仲睦まじい二人の様子が思い出され、口を引き結び、ぐっと堪えた。
そのまま、イヴァンの眠る場所へと歩きだした。**]
――っ、 きり、る……っ
[銃声が響いた。
ロランの悲鳴と、車椅子が倒れるが聞こえる。
なにかが――キリルが、倒れる音が聞こえて。
とっさに駆け出し、胸元に赤い花を咲かせて倒れるキリルと、その近くによろうとするロランが見えた]
あ…、あぁ……キリル……っ
[キリルの傍によろうとした足が止まる。
嘆くロランと、もう起き上がる事はないキリルを見つめていた。
幼馴染二人の姿にきつく手を握り締めて。
ミハイルがキリルを運んで行くまで、その場に立ち尽くして、いた**]
[ぼたぼたと開いた目から涙が落ちる。
彼女の手を握ったまま、ずっとそうしていたけれど。
ミハイルが彼女を連れて行くと歩みを寄せる。
ぎぎ、と、音がなるほどゆっくり顔をあげた。
ふるふると頭を横にふる。
ぶんぶんと、ふる]
やだ、連れていかないで……
いやだよ、ミハイル…ッ!
[ミハイルの足に縋りついて、懇願した。
苦い顔をするだろうか。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔は、彼を責める色は無く。
ただ子供のように泣きじゃくり、手を伸ばす]
[いくらか問答があったかもしれない。
だが、イヴァンの所へと言われれば手は力無く落ち、
それを留める事はできない。
キリルが、イヴァンの事をどんなに想っていたか、
知って居るから。
土を握り、追う事出来ずその背を見送る。
カラカラと鳴っていた車椅子へと、赤い月の光が注いだ]
…俺が死んでも、キリルを殺させたくなかったのに。
俺なんて残ったって仕方ないのに。
[ギリギリと唇をかみしめる。
きつくきつく目を閉じる。
――絶対に先に殺させないと、思っていたのに]
俺じゃなくて、イヴァンだったら本当に良かったのに。
そしたら、
ふたりで人を食べつくして何処かに行ったりも出来ただろうし。
キリルを、殺させる事もなかっただろうし。
もっと、しあわせだっただろうし。
[考えても詮無い事で思考が埋まっていく]
ごめん…ごめん。キリル。
本当にごめん。
俺……
[涙は止まりそうにもなく]
謝らないで、とか言うかな。
ねぇ、キリル…死んだら何処に行くの。
イヴァンと同じ所にいるのかな。
それなら、怖くない、よね。
じゃあ、
[目を伏せる。
先ほど、死ぬ間際。
キリルが足元を寄せて居た相手を]
レイスを…――食べるね。
[目は紅く染まりだす]
[そのまま随分長い時間自失していたが。
レイスはキリルの傍らにいるか立ち尽くすか、まだその場にいた。
雲の隙間から、欠け始めた紅い月が見えた時、
ゆるゆると、ロランの濡れた視線が彼へと向く。
顔を歪め、地面に手をついたその背が、僅かに反った。
…――と、その時だった。
不意に物陰から黒い風が津波のようにその場を襲う。
荒い息使いと唸り声、波打つ毛並みに獣の臭い。
ものすごいスピードで森から現われた、狼の大群だ。
大きなものは大人の男の腰程までの背丈があり、
黒や銀、灰や茶の様々な獰猛が統率取れた動きでその場を襲う。
ユーリーかカチューシャ、またはミハイルがそれを目撃したならば、
余りに速いその出来事は一瞬の事で、黒い何かが去ったようにしか見えないかもしれない。
だが、その風が去った後。
その場に、ロランとレイスの姿はもう、無かった。
まるでその獣たちが、2人を浚ったかのように。]
如何して、……如何して。
[如何してこんなことになったのだろう。
触れなくても分かってしまった。薬があったってきっと役に立たない。もう遅い。
ああなるのは僕の筈だったのに。
振り返るとミハイルがいた。猟銃を持っている。あれが妹を奪った凶器なのだろうか。]
僕の所為 だ。
[例えそうだとして、僕に彼を責める権利など無い。
膝をついた。手をついて、其処にある土を握り締めた。]
[僕は本当に莫迦だった。
疑心暗鬼に囚われて、妹の大切な人を手に掛けた。
本当に大事な、守りたい存在を、肝心な時に守り切れなかった。それだけなら未だ良い。
殺せだなんて莫迦な事を言った。キリルは泣いていた。
あれが最期になるなら、せめて笑わせるようなことを言えば良かった。
僕は勝手に毒でも飲んでおけば良かったのだ。
何よりあんな事を言って引き止めなければ、彼女はとっくに逃げて無事だったかも知れないのに。
そうして僕は取り残された。これは報いだろうか。
自分の言葉の残酷さに今頃気づくなんて、僕は本当に莫迦だ。]
[ミハイルが何か言っている。顔を向ければ、キリルを何処かに連れて行こうとしていた。
何処へ。伸ばしかけた手は宙で止まる。]
頼、む。
[ロランのように泣いて縋りつけたらどんなに良かっただろう。
僕は俯いて、「イヴァンの所へ」辛うじて聞き止めたその言葉に、ただ一言返しただけ。
反対なんかするつもりも無かったし、2人の仲を壊した僕には、自ら抱いて連れて行く権利も無いのだろう。]
[宙に浮いていた手は地面に落ちた。]
う、あ、……ぁああああァああッ
[怒りと悲しみと後悔と、何処にもぶつけようの無いそれを持て余して叫ぶ。
溢れてくる水で視界が暈けて、周りは良く見えなかった。
こんな莫迦でどうしようもない男に、彼女の兄を名乗ることは未だ赦されているだろうか――]
[黒銀の狼の首に捕まり、夜をひた走る。
レイスの首根っこを咥えた狼は、まだ殺してはいないはずだが、
気は失っているのかもしれない。
そうして向かうのは、結局自分の家だった。
作業場の窓から狼達と共に入ると、作業台に座る。
その後に、レイスを咥えた狼が同じく着地すると同時、
彼の首元へと翻したのは、作業用の良く研がれたナイフだった]
……レイス、
[謝る言葉は紡がなかった。
限りなく尖ったそれは難なくレイスの首の太い血管を裂き、
噴水のように赤が噴出させる。
作業台に仰向けに倒れ込んだその身に覆いかぶさるようにして
傷口を口で覆い、迸る赤を飲み下すが、
噴き出る勢いが良すぎて口端からもボタボタと零れ。
作業台から落ちる赤を、床で狼達が舐める音を聞いた]
[喉潤した後、差し込んだ牙で肉を噛みちぎる。
人ならざる力で首元から服を引き裂いて、胸へと爪を捻じ込んだ。
肋骨に護られた命の塊を、手に取る。
ゆっくり食むと、歯を押し返してくる弾力にうっとりと眼を細めた]
…美味しい。満たされる。
[その身はもう赤以外の色がないというくらい、血を浴びて、
マクシームよりも、イライダよりも、沢山の部位を食べた。
全身に、満たされるという感覚が染み込むように広がるのを感じる]
/*
|`) 場所とかよう分からんから待機なーう。
某動画の影響でうっかりオネェ口調にしてしまいそうだ。
ところで狼側の計画ぶち壊してたらごめんね!
僕的には襲撃されても残されても美味しいなーくらいの心持だったんだけど。
[満たされる。満たされる。
足が痺れて居るのが「わかる」。
この衝動に身を任せている時に得られる人ならざる力は、
ひとを食べれば食べるほど、強くなっていく気がしている。
押し殺してきた感情を、顔に出すようにもなってきた。
泣き叫んでひとに縋った等、
少なくとも両親が出て行った時以来した覚えはない。
はむ、と、赤を食む。
少し違う味に、未だ涙が止まっていない事に気付いた]
[銀のナイフを構える前に銃声が、響く。
キリルを呼ぶロランの声が聞こえて、続く大きな音に意識をとられる]
――…ロラン!?
[素早い身のこなしに驚いたように名を紡いだ。
キリルを守ろうとするその行動。
幼馴染という彼らの関係を思えば理解できる。
そう、この時は、理解し納得しようとした。
キリルの身体が頽れるをただ見守る。
ロランの叫びに眸が揺れる]
[ゆる、と首を左右に振り
男はミハイルの方へと歩んでゆく]
これで、終わり……
[彼の言葉を鸚鵡返しに呟いた。
終わりであれば、これ以上失われない。
夜に怯えず常の長閑な暮らしが戻るはず。
否、戻りはしない。
欠けた者が戻るはずもなく
ぽっかりと空いた穴は塞がらない]
ミハイル、済まない。
嫌な役を、押し付けた。
[キリルを殺す事を選んだのは同じだが
手に掛けた彼の負うたモノを思えば謝罪の言葉が零れる]
[ミハイルがキリルをイヴァンのもとへ連れてゆく。
ロランは彼女から離れ難いようだった。
男は視線を落しきつく柳眉を寄せる。
いつのまにか陽は落ちて月明かりが注ぐ。
赤い、月が見下ろしていた。
人狼に怯える日々は去ったはずだった。
夜になろうとも鍵をしめて屋内にこもる必要もない。
そう、思いたかったが――。
カチューシャを家まで送ろうと振り返った時
黒い一陣の風がその場を駆ける]
[何が起きたのか男にはわからなかった。
振り返った時、見えたのは大きく揺れる花々。
月明かりを受けて赤の色をうつした花弁が
はらはらと舞い散っていた。
生温かな獣の匂いが辺りに漂う。
其処に居たはずの
レイスとロランの姿は、消えていた]
[泣きじゃくっているロランの声がいたい。
慰めの言葉も浮かばず、幼なじみの死と嘆きを受け止めている。
キリルがミハイルに抱き上げられるのを見て、ロランを助け起こそうと近寄りかけた。
その時、ふいに強い風を感じて]
きゃあっ!
[黒い風の正体はわからなかった。
近づくまえに、風におされてへたりこんだ。
無意識に閉じていた瞳を開いたときには、ロランもレイスもいなくなっていた]
後で、イヴァンとキリルも食べるから。
そうすれば、一緒にいられるんだろ?
[囁く声が届く相手はもういない。
ただ、ここにいる、と胸元抑える様子を覚えていた。
彼女は少しでもそれで満足してくれるだろうか。
昨日、満足をしたか問うてきた彼女は、
とても満足しているように見えなかったから。]
[お伽噺はまだ終わらない。
人狼はまだ、いる。
そう知らしめるかのような、現象。
男はミハイルとカチューシャを順に見詰める。
その顔は困惑というよりは険しさの滲むもの]
――…終わらない。
キリルだけじゃ、なかったんだ。
[いなくなった二人のどちらか。
それはまだ確かめてはいない憶測に過ぎぬもの]
ミハイル。
キリルをイヴァンのもとに連れて行くのは
夜が明けてからにした方が、良いと思う。
[今は危険かもしれない、と
男はミハイルに言葉を続ける]
…逃げなきゃ。
[月が巡る。
紅く染まる眸が、忌まれる事多い鳥の色に戻っていく。
血でぐしょぐしょになった服は取り換えて、体も拭いた。
この先何処に行くというのだろう。
こんな事をして、最早この村にいられる事は無い筈で。
ぐい、と手の甲で目を拭った。
感情が一周して、少しだけ、笑い声すらたてた]
――…、ミハイル、カチューシャ。
[二人を交互に見遣り名を呼ぶ]
今夜は僕の家に泊まっていかないか?
幸い、部屋は余っているから。
[カチューシャはオリガの部屋に
ミハイルは主寝室に、と考えながら提案する]
[少しだけ考えて、皮細工の作業をした。
ちいさな水筒は、カチューシャの為。
がっちりと太めに作ったのは、ミハイルのベルト。
約束していたそれらを仕上げると、顔をあげる。
黒銀の狼は、傍らにいてくれて。
手を伸ばしてその毛並みに顔を埋めると暖かくて。
自分にはこれしかないのだ、と、また、泣いた]
――ロランの自宅――
[開け放たれた作業場の窓。
酷く生臭い臭いは広場までも漂っていた。
大きな作業机には、仰向けに寝かされたレイスの死体が有る。
首は鋭い刃物で掻き切られ、その上から齧られた痕。
胸元引き裂かれ、心の臓まで喰い荒らされていた。
そこから床まで垂れる血は床、沢山の獣の足跡が沢山ついており、
動物に対しての知識があれば狼のものだとも判るだろう。
きちんと作業場を見渡せば、隅のひとつの机の上に
鹿の革を加工して作られたちいさな水筒とベルトが
置いてあるのが判るだろう。
水筒には可愛らしくリボンが着けられており、
ベルトはガッチリとしていてなかなか千切れそうにもないもの。
作業したての、まだ堅い革で出来たそれらには、
塩辛い透明な液体が付着していた。
だがその場に、ロランの姿は、無く。]
/*
そういえばロランに革で何か作ってもらうのも考えたが
草食系さんは獣の革を身につけるのに少し抵抗があったのだった。
オリガなら何かつくってと強請ってそうだ。うん。
[消えたロランとレイスを探そうとは言わない。
消えたどちらかの身が危険だということは感じていたが
探すあてさえ思い当たらぬ今からでは遅いだろうとも思う。
頷くカチューシャが立ち上がれば
遅れて手を差し出した]
足は平気?
[レイスに怪我の手当てをしてもらうはずだった彼女。
あれから様々なことが起こり其処まで気がまわらなかった。
案じるように視線を足元へと注ぐ]
[差し出されたユーリーの手に、小さな手を重ねた。
立ち上がるのを助けてもらって僅かに息をつく。
怪我のことを聞かれて、ようやく傷を意識した]
――うん、ちょっと痛いぐらい、だから。
[なんだかんだありすぎて、一度家に帰ったときに軽く傷口を洗っただけだった。
今はかさぶたができているけれど、なにかあればまた直に開きそうではあるけれど、平気だと頷いた。
ロランとレイスがいたほうへともう一度だけ視線を向ける]
[狼の背に跨るというよりはしがみついて、
深い森の中にいた。
闇の中で、狼の眼だけがらんらんと光る]
…逃げなきゃ。
[それでもまだやる事がある。
みつからぬように村から距離を保ち、
それでも村から離れずに。
うろうろと、仄暗い森の中をさまよう]
[木々の隙間から見える月を見上げる。
狼達の息遣いが、暖かく耳を擽る。
言葉交わす事は出来ない。出来やしない。
長く長く息を吐いて、毛並み握る手に力を籠めた]
…ひとりだ。
[ぽつり、零す。
自分で選んだ事の積み重ね。
判って居る。判って居るのに、涙がこぼれた]
[重なるのは華奢に見える娘の手。
カチューシャの応えを聞けば頷きを向けた。
誘うようにもう一度ミハイルへと視線を向ける。
家に明かりを灯し部屋へと案内すると
蜂蜜をいれて少し甘めにしたホットミルクを差し入れて
風呂に湯を用意して、湯浴みが出来る旨を伝えておく。
そうして、戸締りを確認し男は自室へと戻っていった**]
[ミハイルの返事をきいて、ユーリーの家に向かう。
案内されたのは、都会にでていったオリガの部屋。
差し入れのホットミルクに、強張っていた表情を笑みに変えて。
伝えられた言葉にちいさくありがとう、と答えた。
そしてホットミルクを飲んで落ち着き、湯を借りて身奇麗にした後]
[オリガの部屋のオリガのベッドに体を横たえる。
この部屋で、幼馴染の女子三人があつまったことだってあった。
今は、一人きり。
赤い色を流して横たわるキリルの姿が、瞼の裏に浮かんで。
腕で目元を押さえる]
……
[ロランは、無事だろうか。
不安は消えず。
そのまま、眠る事もできずに夜を明かすこととなった**]
投票を委任します。
カチューシャは、 ユーリー に投票を委任しました。
―― 自室 ――
[気付けば夜が明けていた。
窓から射し込む陽の光が瞼の裏を染めている。
目許を手で覆い、くぐもる声を漏らした。
暫く経ち、明るさに慣れてくればゆっくりと手を下ろし目を開ける]
……ン。
[二年前ならば妹が起こしにきたであろう時間。
朝早くから元気な妹に対して兄の方は朝に弱い。
その妹の部屋にはカチューシャが泊まっている。
意識がはっきりとすれば身体を起こし手早く身支度を整える]
[机の上に置いたままになっているグラス二つと水晶玉。
男は水晶を手に取りそれを覗いた]
もう触れることはないと思ってたのに
[皮肉なことだと思う。
自分の為そうとしている事を思えば苦さが込み上げた。
確かめようとしたのは、ロラン。
覚悟していた結果に深い息が漏れる]
だから、あの時、……
[キリルを止める手立ての話をしたとき
ロランは如何やって止めるのかと問い返した。
彼もまたそうであったから、男に問うたのだと知る]
[あの時は説得すべき相手は其処に居ないと思っていたから
男はロランにキリルを説得する為の働きかけをしようとしていた]
――…あの時、
僕が如何やって説得するのか、知りたかったのか ?
如何、ロランを止めるのか――…
[問うものの答える者は此処に無い。
困ったような、どこか自嘲的な笑みが漏れた]
―― リビング ――
[とれたての卵と牛乳。
それから貯蔵庫に保存していたチーズと豆、たまねぎにじゃがいも。
男は厨房でレンズ豆のスープと、パンケーキを人数分用意した。
作りなれたものではあるがカチューシャには及ばぬ素朴な味のもの。
パンケーキの横には切り分けたチーズが添えられてある。
起こすのは悪いと思ったのか声は掛けなかった。
自分の分を平らげると、
空になった食器だけ片して家を出る**]
俺の事、可哀相だって言って。
駄目な奴だ、って言って。
しっかりしろよ、って、
がんばれ、って、無理するな、って、
[黒銀に顔を埋める。
獣狼は何を感じるのか、ペロとロランの手を舐めた]
愛してる、って。
父さんと母さんの代わりにさ……
[ぎゅ、と。
力いっぱい、抱きしめた]
寂しいよ。
誰か……いて、欲しいよ……
[それでもいてくれた人の事を、餌と見る時が来る。
喰らって満たされる自分を知っている。
だから、叶わぬ夢を零した。
獣にしか言えない言葉。
可哀相ぶった所で、人を喰らう欲は消えないし、
人を喰らった罪が消えるわけではない。
それでも暫くの間、闇の中で獣を抱き締めた*]
[陽光が村を薄く照らし始める頃、
ロランの姿はキリルとレイスの家の裏にあった。
傍らには黒銀の毛並みを持つ狼が控え、
イヴァンの畑に置いたままの車椅子の代わり。
見下ろしているのは、白い花。
可憐に花開いた、その夢のような香り纏う花]
…本当に、いい香りだね。
[呟くと、ひとつの花を土から掘り返す。
あの時、あの山で、そうしたように。
根ごと革で出来た袋に入れると、鞄に入れた。
そして狼の背にしがみつくと、獣は力強く地を蹴り。
いくらかの獣の毛と土踏む足跡を残して、
黒い大きな影は森の中、川の方へと消えた**]
[響く。慟哭のような嘆きの声。
密やかな囁きが、遠く寂しく微かに聞える]
ばか、ロラン。
……ボクが一緒で、嫌だった?
[イヴァンだったら、と>>*1
嘆く幼馴染に、微かに向けるのは笑みの気配。
半ば泣き出しそうな気配を含むものでもあったけれども]
……確かにイヴァンも、兄貴も。
もしかしたらみんなも、人狼だったら良かったよ。
伝染るかもって言ったじゃない?
本当に伝染したら良かったのに。
そうしてみんなで移動してさ、
[そうして人を喰らって生きる。
ひどい空想、けれど何だか幸せな空想にも思えた]
……でも、
だからといって、ロランが一緒で嫌だったことなんてない。
[本当は少し、カチューシャに悪いとも思った。
村に残る幼馴染は3人きり。
カチューシャはロランに親しく、料理も上手い。
ほんのちょっぴり、仲の良さに妬けたことすらある。
それは随分、子どもじみた我儘であったのだけれど。
ロランも、カチューシャも大切だった。
だからどちらの一番でもいたかった。
自分だって、どちらも本当に大切に思っていたのに]
[子どもじみた思いだと分かってた。
けれども、少し。…本当に少しだけ]
…ロランとの秘密みたいで、嬉しかった。
[そっと白状をする。
誰にも何も届かない、今、ここでなら]
……ん、
[彼は兄を喰らうのだという。
こわくない、と。密やかな声に呟き返して瞑目した。
───紅い月が、同胞の目が紅く染め上げている]
兄貴、……ごめんね。
ボク…は、
[止めない。止められない。
兄は呆然と立ち尽くして見えた。そうだろう。
目の前で自分は死んでしまった。
憎むなら、と兄は言った。殺されてもいいと言った。
勘違いだったと言った。
ならばあの行為はきっと、
───…自分を守るためだったのだろう]
[あれがなくとも、いつか恋人は死んだだろう。
兄もきっと死んだだろう。
自分が殺した。いつか殺したに違いない。
この牙にかけ、その血肉を啜ったに相違ない。
彼らを殺したのは自分。
大切な人たちを苦しめたのも自分]
────…。
[言葉なく、その光景を見守る。
目を逸らさずにすべて見た。
兄の首にナイフが振り下ろされるのも見た]
……、…
[ごめんね。と、唇だけで形をつくる。
向けたは喰らわれる兄へか、涙止まらぬ同胞へか。
自らにも判然とはしない。どちらへも、であった]
…───ん。
そうしたら、ボクはずっと、ロランの傍にいる。
[ロランの声に、こくと頷く>>*6
聞えなくても構わなかった。
けれど……想いが、少しでも伝われば良いと願う。
この血肉が、彼の孤独を癒せばいいと──想う]
[さわりさわりと花が静かに揺れている。
花々に抱きしめられたような気がした。
そんな資格ないはずなのに、
優しく慰められたような気がした。
───大好きな、イヴァンの微笑みを見るようだった]
[目を閉じる。
じわりと眦に涙浮かぶ心地がした。
ただ一人の同胞、
寂しい彼の元へも温もりが届けば良いと思う。
…その腕に、触れられれば良いのにと願う]
― ユーリーの家 ―
[夜が白々と明けるまで、幼馴染との思い出を思い返してる。
日の光が窓から差し込んできた頃、家の中で動く物音がする。
けれど、起きて行く事はしなかった。
一睡も出来なかった顔は酷い事になっている]
――……キリル……
[目を閉じて居れば、兄やイヴァン、キリルの姿が脳裏に浮かび。
嘆くロランと、妹をなくしたレイスの姿も浮かんだ。
思考はまとまる事もなくちぢに乱れて。
ミハイルが泊まっていたのなら、その物音も聞こえなくなった頃、ようやく起き上がった]
――会いに、行かなくちゃ。
[レイスか、ロランか。
どちらかが息断えた姿で見つけられるだろうことは解っている。
それでも、どちらにも生きた姿で会えれば良いと願っていた]
[ユーリーが用意した食事は、食欲がなかったから、レンズ豆のスープだけいただいた。
日常を思い起こさせる素朴な味に、ほんのすこし目元を和ませ。
食卓の上を綺麗に片付けてから家を出た]
[花が揺れる。
揺れながら低く詩のない唄を歌う]
[肉体から溶け出した何かが、懐かしい何かに触れた気がした]
『キリル』『キリル』
[花が歌う。弾んで歌う。
まるで祭りの篝火で、青年が恋人の姿を見つけてぴょんとかけよるみたいに]
[幸せだった。
あっという間に壊れていった]
[殺された。
そりゃまあ痛かったし嫌だったし訳が分からなかった]
[日常を愛してた。愛してた相手の裏面まで見切れてなかった。未練はきっと数え切れないほど]
『……………』
[あぁ、まぁしょうがないか。
花はさらさらわらう。きっと紅い血と一緒に何かそういうものは手放してしまった気がした]
[まるであの紅花が黄色い染料を水に溶かしきってしまうみたいに]
[キリルの家に泊まったときに使う予定だったものは、ユーリーの家での着替えになった。
黒ではないけれど、深い茶色のワンピースを選んだのは、兄の死を悼むためであったのに、今ではイヴァンやキリル、イライダを悼むためのものだ。
イライダの死は、昨日、ユーリーの家に落ち着いてから、ユーリーからか、またはミハイルから聞いていた]
[花が揺れる。畑から畑へ]
[そういえば、少し前にイライダの感触に触れたなと思った。
ふらふらさらさら揺れる。
風に任せていれば、旧友の魂にもふれられる気がした]
『ごめんな』
『シーマ。ごめん』
[謝る。何に対して?
彼の恐れを共有できなかったことに対して。
彼の仇を愛していることに対して。
幸せになれなかったことに対して。
醜さを隠していたことに対して]
[シーマに馬ァ鹿と後頭部を叩かれたような気がした]
[やがて何より愛しい恋人の気配や、自分を殺したその兄の気配も増えるんだろう]
『……………』
[花はゆっくり揺れている**]
― ロランの家 ―
[先に家を出たユーリーやミハイルの姿はあっただろうか。
レイスの死を彼らが先に発見していたらきっと中に入るのは止められるだろう。
けれど、制止を振り切って飛び込んだ。
――その、凄惨な光景に、足が止まった]
…… れ、いす さん……?
[酷い遺体をみたのはイヴァンが殺されるのを目撃したときぐらい。
人狼に襲われた後がどうなるのか、初めて目にして。
そのあまりの酷さに顔から血の気が引いて、その場に座り込んだ]
[家を出てまっすぐロランの家に向かった。
次第に濃度を増す鉄錆の匂いに柳眉を寄せ窓から作業場を覗いた。
作業机の上に寝かされた男が誰であるかは直ぐに知れる。
夥しい血と獣の足跡――]
レイス、……
[人狼に襲われたレイスは人間と知れる。
犠牲者であるが彼は幼馴染であるイヴァンの命を奪った相手]
キミには生きて、償って欲しかった。
イヴァンがキミに奪われた時間を、生きて――…
[会ってそれを伝える心算であった。
けれどそれは間に合わず獣に襲われた仲間の亡骸があるだけ。
ゆる、と首を振り、男はロランの姿がない事を確かめてから
其処を後にした。
ややしてカチューシャが其処を訪れるが男は知らぬままロランを捜す]
――川辺――
[川辺の小屋。
マクシームの棺の横に並ぶイヴァンの屍体を見下ろす。
脇に屈んで、その手を取った。
冷たく、硬くなった土気色。
持ちあげるのに少し力がいったから、身を屈めて口に含む。
ガリ、と音。
先を千切り、口に入れて飲み込んだ]
…あとは、――キリル。
[小さく呟くと、黒銀の毛並み持つ狼の首へと腕を回す。
狼の力強い跳躍を持って、またその姿は森へと消えた]
ユーリーが「時間を進める」を選択しました。
ユーリーは、 ロラン を投票先に選びました。
[僕の目には何故か、はっきりと見えた。
黒い風の正体。沢山の獣たちの群れ。
恐怖は感じなかった。ただ酷く疲れていた。
抵抗の為の体力は、歩き回った事と流した涙に奪われて。
逃げる気力は、人を殺し妹を亡くして失って。
疲れていた。だからもう、如何でも良かった。
呆と、迫ってくる彼らを見つめた。
はっきりした記憶は、それが最期。
誰かが泣いているような気もしたけれど、それが誰かは分からないまま、
僕はあっさりと、生を手放した。]
[血の匂いのすさまじいこと。
口元を抑えて視線をそらした先。
小さな机の上に置かれたものが視界に入る]
――あれ、は……
[よろりと、壁にすがって立ち上がり、近づく。
置かれていたのは、リボンがかかった鹿革の水筒と、しっかりした作りのベルト。
――ロランが、作ってくれると言っていた、ものだった]
……どう、して……どうして、ロランとキリルが……
[幼馴染の二人。
その二人が行ったことを思い。
けれど、変わらぬ優しさを感じた事も思い出して、ぼろぼろと涙がこぼれた]
―― 川辺 ――
[方々を探し回り草臥れ始めた頃
辿りついたのは川辺だった。
川に落ちたロランと
それを心配そうにみていたカチューシャ。
その時の光景が脳裏に過ぎる]
村にいないなら、森、か……?
[川辺から木々生い茂る其方を見据えた]
ロラーン!
[声を張り上げ名を呼んでみる。
入れ違ったことには気付かず声は虚しく響くのみ]
[どれだけ泣いていたのかもわからない。
血の匂いが体にまとわりつくのも気にならなくなった頃、涙を拭って、水筒を手に取った。
ミハイルへのベルトはその場に彼が居ればもって行くだろうし、いないなら、置いていくことにした。
眠れていない上に泣いた顔はさらに酷い事になっているが、それを気にする余裕もなく、ロランを探しに村の中へと戻った]
逃げなきゃ。
…でも、――キリルの事は、ちゃんと、
――約束、だから。
[呟き、ガサガサと森を進む。
どこにあるのだろう。
鼻をくんと嗅いでみても、夜の遠い今、その位置は判らず]
―朝―
[きちんと眠れたのか、自分でもわからなかった。
瞼は閉じていたけれど、ここ数日、まともに寝ていないのにも関わらず頭では考えるのを止められなかった。
レイスか、ロランが人狼。まだ、終わらない。また誰かが殺されるのか。
どちらかが人狼なら、どちらか既に…もう生きてはいないかもしれない。]
二人とも人狼なら、生きているかもしれねぇ…かな。
…なにを、馬鹿なこと―――。
[ベッドに身体を横たえたまま、ぽつりと。
生きているのが当たり前だったのに。
それを打ち消さなくてはならない現実が痛い。
幼い頃からずっと見てきたのに――。
どちらが人狼だったにせよ、キリルを含めた記憶の中の三人は自分と変わらない人間で。
可愛い弟であり、妹で。
ベッドの上で頭を抱え、大きな身体を丸めた。]
[森の入り口あたり、うろうろしていると
木々の隙間から、ふわふわと柔らかそうな髪が見えた。
大きな木の影から、そっと覗く。
烏色の髪は影にいいが、青白い肌は少し、目立つ]
…――
[カチューシャだ、と、木々の隙間から見て。
他に人がいなさそうだったから、少しだけ、姿を見せる]
[イヴァンの元へと思ったが。
もしかしたら、また血腥い出来事が起こる可能性も考えてしまって。
イヴァンとマクシームの静かな眠りを邪魔する気にもなれなくて。
結局、どこに向かってよいかわからぬまま――
脚は自然と自宅へと向いていた。]
―自宅―
[もうずっと…一人きりで暮らしてきた家。
いつも以上に静かなものだった。
開かれたローズウッドの扉。]
そういや、…一昨日の晩はロランを泊めたんだったな。
[母親が使っていたベッドへとキリルを寝かせた。
胸元に赤黒く咲いた花に視線を落とす。]
イヴァンには…会えたか?
[返事など返ってくるはずもなく…。
ベッドに背を預けるようにして、腰を下ろした。
傍らには、猟銃を置いて――。]
ユーリー。
[相変わらず世界は暗いまま。だけどその声が誰のものかはもう分かる。
2つ年下の友人、と言える程親しくは無かったかもしれない。
彼に向けられた言葉に、僕は多分苦い笑みを浮かべていた。]
……悪い。
でも、きっと無理だった。
[僕を今まで引き止めていた存在はもう居ない。
あの時獣が来なくても、きっといずれは死を選んだ。
それに大事な息子を手に掛けた殺人者を、イヴァンの家族は許すだろうか。
生きて償う。そんな事ができる程の強さは、僕には無かった。]
ミハイルが「時間を進める」を選択しました。
ミハイルは、 ロラン を投票先に選びました。
カチューシャが「時間を進める」を選択しました。
[呼べど返事はない。
聞こえていないか。
それとも会いたくないか。
分からぬまま、飴色を掻く]
――…みつかれば殺される、と思ってる、か。
[ぽつ、と呟いて花色を閉ざす]
[銃声が届いたような気がした。
目を開ける。
どこかとても遠い場所のように、赤い血の色を眺めていた。
次いでまた意識は閉ざされ、次に認識するのはやはり墓地。
生ある者たちの感情が重く、空気を沈めているような気がしたけれど、
死した者たる彼女に、それは関係なかった]
……しばらくしたら、勝手に、消えるのかしらね。
[首をかしげて墓を眺める。]
長生きしたほうだと思うのよ。私。
消えたら褒めてちょうだいね。
――…家、見てこようかしら。
…ごめん。
[何に対して謝ったのか。
ロランの表情は少し虚ろで、疲弊を見せていた。
ゆるゆると頭を横に振り]
――キリルの体、どこにあるか、知らない?
[できるだけ低く淡々とした声で紡いだ。
黒銀の狼の首を撫ぜると、唸り声は止まる]
[ロランの虚ろな表情に、痛みをこらえるように眉を寄せた。
低い問いかけには小さく首を振って]
ミハイルさんが、連れて行ったから……
あたしはしらない……
[ロランが撫でて、唸りがとまる狼を見る。
それからロランへと視線を戻し]
――もう、戻れない……?
今からでも、やめられない、の……?
[幼馴染を失いたくはない。
そんな気持ちが表情に滲んで、じっとロランを見つめた]
[小さく首を振るのに、そっか、と呟いて。
すぐに踵を返そうとしたけれど。
カチューシャの視線に視線を絡められ、動きを止める]
…キリルの事は殺すつもりだったんでしょ?
じゃあ、俺の事だって殺すってちゃんと思わなきゃ。
[カチューシャの表情が必死に見えて。
思わず、少し眉を困った風に寄せて、声を返してしまった]
ユーリーを…信じるんでしょ。
[恐れるように、でも堪えきれぬように名を呼んだ。
ああ、そういえばここはどこなのだろう。
皆ここにいるのだろうか。
イヴァンも、兄も、マクシームも、イライダも]
っ、……それ、は……
キリルのことも、止めてくれるなら……ユーリーさんを説得しようとはおもって、いたよ。
――嫌だよ……おにいちゃんも、キリルもいなくなったのに。
ロランまで、居なくなるの……?
[当たり前に大切な人たちが傍にいた時間は遠い。
ぎゅ、と皮の水筒を抱きしめ]
ユーリーさんを信じていても、
生きていてほしい、って思うんだもの……っ!
[叫ぶような、悲鳴のような、そんな訴えがこぼれた]
[やくそく。と、言った。
彼を縛りたかったわけじゃない。
どこか自棄な彼に、絆を感じて欲しかった。
生きるために、生き抜くために約束をした]
[幼馴染の叫びが、突き刺さる。
胸元をぎゅと握って少し前によろけかけた。
目を閉じる。ぐ、と、強く唇を噛締めて、顔を背け
ぐい、と目元を拭った]
――カチューシャ、…ごめん。
俺、…有難う……そう言って貰えるのが、
とても…嬉しい。
[震える声で告げてから、ゆると顔を向ける。
真っ赤な目は、少しだけ笑っていた]
けど…
[続ける言葉。眉を下ろし、困った声。
ふるふると頭を横に振る]
…やらなきゃいけないことがあるんだ。
キリルを探しに…ミハイルのとこ、行ってくる。
[遠くから、名を呼ぶ声が聞こえた気がする。
人の耳では聞く事叶わぬ程微かなそれが届くのは、
人でない事を自覚させる、一端で。
ガサリと音をたてて身を翻した。
行き先を告げてしまったのが何故だったのだろう。
――――考えるだけの余裕は、とても無かった。]
[人の気配が無くなった。何となく見上げてみたが、いつまで経っても何も見えて来ない。
どうやら僕の視力は喪われてしまったらしい。
今が昼なのか夜なのか、僕の居る此処が何処なのかも分からなかった。]
他にも居るのかな。
[僕は確かに死んだ筈で、だけどこうして意識がある。
他の人もそうなのか。確かめようにも、何も見えなければ動きようも無かったが。]
( ───にげて )
[音にせずに唇がかたちを紡ぐ。
届かない、それがこんなにももどかしい。
……嗚呼。
自分の我侭が、遺した言葉がまた大切なひとを危険に晒す]
[意識は、ふ、と掻き消え。
次いで気付くのは、家の扉の前。
少し笑った。]
便利よねえ。
[しばらくの間、といっても時間の経過は曖昧で。
家の様子を眺めて]
ロラン……
[泣きそうなまま、ロランを見つめて。
嬉しいというロランの笑みに、安心しかけたけれど。
続く言葉に瞳をみひらき]
やらなきゃいけないことって……
――待って、ロラン……っ!
[問いかける前に、彼は行ってしまった。
すばやい動きで茂みにまぎれて離れたロランを追いかけたけれど。
森に入る前にその姿を見失って]
……ミハイルさんのところに行くって言ってた……
ミハイルさんに、会わなきゃ……
[呆然としかけたけれど、ふるふると首を振って気を取り直した。
まだ、まだ時間は、あるはず――]
[ミハイルの家の裏側へと回る。
それは、イライダを襲う時にそっと抜け出した、
泊めてもらった部屋の窓を覗きこもうとして、身を離した。
中に人の気配を感じる。ミハイルだろうと思う。
もしかしたら、ユーリーかもしれないとも思う。
うろうろと周りを巡る様子に少し警戒が薄いのは、
先程カチューシャに会ってしまったからなのだろう]
っ、ロラン?
駄目。行っちゃ駄目だよ。
……もう、いいから、
[猟銃を持つミハイルの家。
ボクはひどく恐ろしい予感に目を見開く。
ぎゅ。と、胸元に手を当てた。
そこに受けた傷は、痛みを伝えてこないけど]
──…カチューシャ、お願い。
ロランを殺させないで……!
[ひどく虫のいい願いと知りながら、
共にあった幼馴染へと、届かぬ願いを小さく叫ぶ]
[そう、虫のいい願いだろう。
殺さなければ殺される。
紅い月は今宵も天に昇るだろう。
───彼の瞳は、今宵も赤く染まるのに違いない]
――。
[何か、感じた。
旅人を弔った日に感じた、森の中の違和感に似ている。
獲物を狙う側から、狙われる側になったようなそれ。]
来た、か…?
ロランは、 ミハイル を能力(襲う)の対象に選びました。
[もどかしい思いで、手で顔を覆った。
また自分は、我侭でロランを危険に晒す。
あの時と同じだ。
14年前も、こうして彼を危険に晒した。
雨の中、泣きながら植えた花を忘れてはいない。
…なのにまた。
再び同じ過ちが、繰り返されようとしている]
…約束を、違える訳にはいかないから。
これだけはしないと、…
[呟いて息を吐く。
意を決して、狼の後ろ足は大きく跳躍をした。
ガシャアン!と高い音を立てて窓ガラスが割れ、
その身はミハイルの家、ローズウッドの扉の部屋へと踊りこむ]
[それでも、ミハイルがどこにいるのかは知らなかったし。
駆け出す気持ちに寝不足の体はついていかなくて。
早足程度の動きで森から離れようとしたとき、川の方から音が聞こえた気がして振り返る。
視界に入ったのは、狼か、それともユーリーだったろうか]
…ミハ…ッ
ごめ、ん……!
[狼の足は止まる事無くそのまま疾走する。
素早くキリルの遺体を見つけると駆け寄り、
その腕へとかぶりついて。
首をぶんぶんと振り、その手首から先を千切りとる。
その間、ロランはその首にただただしがみつくのに必死で
ぎゅう、と、黒銀に顔を埋めていた。
――ミハイルの顔を見たくない、と言う風でもあって]
[森の中には入らなかった。
川辺の砂利を踏み、戻ろうとすれば
華奢な人影が眸に映り込む]
カチューシャ …
[彼女の姿を見詰める男の目許がふ、と和む]
ロランが「時間を進める」を選択しました。
――ロラン!!!…ロラン!!
[名を呼ぶことしか出来なかった。
「ごめん」と言ったっきり、狼の躰に顔を埋めるロラン。
人間だ。感情を持った、ただの人間。
眉間に皺が寄る、]
……これから、どうするつもりなんだ…!!
[銃は手中にあるが、大きな狼を前にしても構えるのも忘れて、ロランへと問う。]
[人影が見えてほっと息をついた。
それがユーリーだと知れば、安心したように肩から力がぬけて]
ユーリーさん……
[その表情までは見えなかったけれど、呼ばれた声は聞こえて。
駆けるというよりは早足、という速度で彼へと近づいた]
ロラン、居たの。
狼に、掴まってた……ミハイルさんを探しにいくって……
やらなきゃいけないことがあるって……
[不安そうな瞳で背の高い人を見上げ]
ミハイルさんが、どこにいるか、知ってる……?
リトヴィノフさ──…ミハエル。
お願い。見逃して。
[祈るように名を呼び直す。
猟銃持つ彼を、恨んではいない。
責任感の強い彼のこと。
覚悟の上のことだったろう]
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