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お嬢様 ヘンリエッタは、医師 ヴィンセント を投票先に選びました。
吟遊詩人 コーネリアスは、見習い看護婦 ニーナ を投票先に選びました。
内から呼ぶ声。
それはまるで誘うような。
それだけではない。
昨日や今日などは、外からも聞こえた。
これまでとは違う。
酷く甘いようで、酷く冷たい声。
呼ばれている。
そう思ったのは、何故だか分からないけれど。
其方へ行ってはいけないと、何故だかそう思う。
其処が何処かすら分からないけれど。
墜ちてしまえば、二度と戻れない闇に飲み込まれる。
僕という存在が消えてしまう。
そんな気がしている。
全て妄想であればと、そう願いながら、
僕は今日も眠りに就く。
昨日より強くなった気がする声も、明日には全て消えていると信じて。
−ガーシュイン家・回想−
[ハーヴェイがそこを訪れる少し前。
メイドの連絡で緊急の往診に招かれた男は、見覚えのある女性がベットに昏々と眠る姿に茶のレンズの下、目を細める]
これは…?
いえ、まずは診察からですね。失礼します。
[脈を取り、体温を測り、目や舌を見……手順に乗っ取った診察が続けられて。やがて下された診断は――]
――眠っているだけ、のようですね。しかし酷く深い眠りです。
まるで昏睡しているような…魂が抜け出たかのような。
[最後は口ごもるように呟くも、メイドへと向き直り]
…もしや昨日、強く頭を打ったりしてはいませんか?
そうですか、貴女は何もお聞きになっていませんか。
では、シャーロットさんなら何か……おや? 本日はいらっしゃらないのでしょうか。
[不思議そうに周りを見回すも、外で会う時は常に傍にいた娘の姿は眠る母の傍にはなく、メイドは曖昧な表情のまま首を振る]
…いるわけがありませんけどね。
美しい彼女の魂は、団長のお力により永遠の美に奉げられたのですから。
[くくっと喉の奥で笑いを噛み殺す]
[動きが止まったのに気付いたのか、メイドが心配そうに声を掛けて。その声に男は、はっとしたように笑みという表情の仮面を被る]
…いえ、なんでもありません。
エレノアさんがこのような状態の時にシャーロットさんが傍にいないなんて、不思議に思えたものですから。
[曖昧な表情を浮かべるメイドに同じく曖昧な笑みを見せ、帰り支度を始める]
しばらく様子を見て、目覚めるなければ栄養剤を打ちに来ます。
もしも頭を打っていたなら、安静にするのが一番ですからね。
では、私はこれにて。
[メインストリートを進み、家が見えなくなったところで溜息を吐く。
扇に纏わりつくような力の片鱗を感じたのは、気のせいだろうか]
まあ、なんにせよ…様子を見るしかありませんね。
[小さな呟きは、今日も賑やかなサーカスの呼び声に紛れて消えた]
[宿に戻る前に診療所に顔を出し、簡単な報告をして。
借りた部屋で身支度を整え、レストランへ早めの夕食をとりに行く]
やあ、どうも。
今日のお勧めは? じゃあそれでお願いします。
[やがて出てきた暖かい食事を胃に収めながら話題に上るのは、今日幾度か起こった不思議な遣り取り]
…はあ、アーヴァインさん?
ラッセルさんとレベッカさんが……
[マスターの何か新手の冗談かなと言葉に笑みを見せたまま、脳裏を過ぎるのは診療所で耳に挟んだ"集団物忘れ"との言葉]
…なるほどね。
いえ、こちらの話です。ごちそうさまでした。
[食後のコーヒーのお供は白いゼリービーンズ。
苦い黒と甘い白を交互に口に運びながら、男は*物思いに耽る*]
[サーカスの音楽は、今日も閉ざされた門の向こうから町に流れていく。明日の夜明けが何を運ぶのか…それはまだ誰も預かり知らぬこと]
投票を委任します。
医師 ヴィンセントは、吟遊詩人 コーネリアス に投票を委任しました。
投票を委任します。
見習い看護婦 ニーナは、吟遊詩人 コーネリアス に投票を委任しました。
[白と黒のハーモニーを口の中で奏でながら、男は魔の囁きに耳を傾ける。
ニーナを取り込まんとする呟きには、我が意を得たかのように孔雀色が愉悦に細められようか]
…ええ、彼女の魂の蕾はさぞかし美しいことでしょう。
試されるのなら、微力ながら私の力も団長に添わせましょうぞ。
[孔雀色を瞼に隠し、"力"を添わせ絡めるように託さんと]
くくく…さて、どうなることやら。
[茶のレンズと瞼と。
孔雀色に浮かんだ"ラッセル"の魂の花への興味は、二重の覆いに*隠されようか*]
ん。じゃあね
アーヴァインさん、見付かるといいけど
今日はちゃんと休むんだよ?
自己管理くらいできるって信じてるからね。
……あ、本は没収したほうがいいかな?
なんてね
[答えに安心したように笑った。
あのサーカスのなにがそんなにこわいのか、なにがおぞましいのか。
――――ただの子どもはまだ*知らない*]
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