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―集会場・広間―
[レッグとナターシャが広間に入った瞬間―――二人の首を見えない何かが締め上げ始める。
両足は地面から浮き、宙吊りのような格好になって上へ上へと上がっていき。
その様子を、冷ややかに見つめていた。]
[食事の暇はなかったな、なんて、弾を装填しながらも思った。
ガチャリと戻す音でそれも散っていったが]
―集会場・広間―
[カツ、と足音を立てて広間の中へと入る。
こちらを見ているメイドに向けるのは、ただ真剣な表情だった。
殺意というよりは、これで終わらせるのだという意志を持って]
─集会場・広間─
きゃ…っ!?
…ん…くっ…!!!
[広間に入った途端、息苦しさを感じ身体が浮かび上がって。
何が起きたかわからないままパニックを起こしかけるが、エリカの冷ややかな表情が目に入り、冷静さが戻った。]
…っや、ぱり…あ、なた…なの、ね…?
(なにを………!)
[まだ残っていた『私』が吼える。
力を人に見せるなどと。]
…これでいいの。
…いいの、これで。
私の行く末は、私の証が決めてくれるわ。
[どのみちサーチからは逃れられない。
今日を切り抜けても、自分がサイキッカーだというのはすぐ主にわかってしまうだろう。
なら、いつ見られようが同じ事。]
―集会場・広間―
[片手には銃を既に下げて。
だがそれを持ち上げるよりずっと早く、不可視の力に囚われる]
そ、くる…か…!
……ぅ…グッ!
[喉が絞め上げられ、息が詰まった。顔が苦悶に歪む。
それでも銃は手離さず、痺れそうになるのを必死で握っていた]
─集会場・広間─
……近いけれど、違いますよ。
死が私に降りかかるのであれば、それを厭いはしませんが、自分からそれを望みはしませんから。
……大体、それが望みなら、とっくに自害していますよ。
自分のために、他者が犠牲になるのを厭うのも、確かです。
……けれど、今、ここで望むのは……。
[言いかけた言葉は、現れた二人の姿に遮られる。
正確には、二人の身に起きた異変によって、なのだが]
……っ!
エリカっ!
[とっさ、名を呼ぶ。
考えていた事、理性は認識していた事。
しかし、感情は一時、そこに追いつかず]
─集会場・広間─
………少なくとも、私にはあなた方がサイキッカーでないことは解ってました。
[自らが何物であるか、口にする代わりに、吊るした二人にはそう告げた。
二人が手に武器を持っているのは見えたが、それを落とす事は特にしなかった。
そうして視線は二人から外れ、名を呼んだ主のほうへと向き直る。
その瞳から冷たさは消えていたが、どこかぼんやりとしたような一つの眼差しで主を見て。]
………ぼっちゃまの望みは、何ですか?
[答えの続きを尋ねた。]
メイド エリカが「時間を進める」を選択しました。
─集会場・広間─
[吊るされた二人に、ちら、と視線を向ける。
瞳に宿る焦燥と──僅かな揺らぎに、二人は気づくか]
……私の、望みは。
[ゆっくりと振り返る、エリカ。
向けられる、どこかぼんやりとした眼差しを静かに見返し]
……これ以上。
私のために、あなたが罪を重ねない事、ですよ……!
[静かな宣、それに重なるように。
自動拳銃の安全装置が外れる音が響いた]
[広間の様子をただ静かに眺める]
何人死ぬかな。
――全員、死ねば良いのによ。
[同僚が為す行動を見詰めながら、無感動に*呟いた*]
─集会場・広間─
え、りか…さ…っく……ふ…!
だ、め…!
[緩やかに締める力が強くなるのを感じながらも、エリカとマイルズの遣り取りを聞き。
マイルズの答えと、行動に。
堪え切れなくなった涙が零れた。]
─集会場・広間─
…りゃ、おま…が…!
[首にかかる力は徐々に強くなり。
声も出せなくなってきた。頭が痛い]
……ッ。
[唇を噛み切った。口の端から細く紅糸が顎へと伝ってゆく。
まだその武器も、意識も手放してはいない。
小さな音が響くのを耳が拾う]
[空中でもがく後輩と司書。
それを見上げて、僅かに口は開いたが]
……ふーん。
[そう呟いたきり、また目を逸らす。
生者と別の声が聞こえて――僅かに首は傾げたが]
─集会場・広間─
[主に銃を向けられて、静かに微笑みを向ける。]
………それが一番の近道です。
私にも、そんなことは解っていました。
[ぱさりと眼帯をとると、赤と薄茶のオッドアイが、主を見据えた。]
でも私はズューネだから。
自らの死すら、選べない。
[告げながらも、二人への力は緩む事はない。]
貴方は私の証だから。
貴方が居なければ私は在れないから。
…私の命は貴方のものです。
どうぞ貴方がお決めになって下さい、私の未来を。
―――――――――Mein Ehemann.
[深く、深く、一礼した。]
[私にぼっちゃまは殺せない。
それは、サイキッカーとして力を振るうよりも。
死にたくないと願うよりも。
もっともっと、強い想い。]
─集会場・広間─
[告げられる言葉と、笑み。
何かを振り払うように、強く頭を振る。
乱れた露草色の下から響くのは、赤紫の左目。
向けられる異眸を、色の異なる異眸が受け止める]
……あなたの命が、私の物である、というならば。
[望みのために。
この場で取りうる道は。
ひとつ、しか、ない]
私は、私の望みのために。
……それを、断ちます。
[向けられる一礼。
返すのは、銃口]
……それが……私の、選択、です。
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