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[目を瞑ればテレーズが其処にいて
いつものように口伝を諳んじる声が聞こえるのではと思う。
隅々まで確かめて、此処に居ないと知れたのに
記憶の中の彼女が伝承を謡う。]
一年に一度廻り来る
寿命を問わず死がもたらされる周期……
天上青が咲くまで終わらない
これ以上誰かの命が刈られるのは見たくないなぁ
[テレーズもクレイグもサリィもミレイユも
未だ知らぬメリルも、消えてほしくなかったと思う。]
― テレーズ宅前 ―
[返される頷きに、笑みと共に同じように頷いて]
よし、行こう。
…んー、こればっかりは、なあ。
[肯定も、否定もできない。
きっと大丈夫だと言うのは簡単だったけれど、したくなかった]
[台車をその場に一時預けて、一路]
― → コレット宅 ―
[泣けと言うと零れる、ミレイユの涙。
それを見てサリィに抱き締められている彼女に近付き、ポンポンと頭を撫でてやる]
泣くことは悪いことじゃない。
身体が、心がそうしたいって欲してるんだ。
それを我慢する方が身体にも心にも悪いよ。
だから泣け、思いっきり泣け。
出るだけ出したら後はすっきりするからさ。
[涙の理由は聞かず、落ち着くために必要なことだからと笑みかけた]
― →コレット宅 ―
[こくっと頷いてから、ノクロと一緒に、コレットの家へと。
たどり着いたら、ちょっと口を湿らせて。]
コレットおばあちゃん、かってきた。
[声をかけて、屋内へと入る。]
― コレット宅 ―
おじゃましまーす。
[途中からの同伴者だから、敢えてミケルの後ろについて。
屋内に入ればきょろりと見回し]
んーと…、何処だろ。
[こて、と首を傾いだ]
― 道具屋 ―
[休憩中の札をとって店の中に入る。
カウンターの向こう、定位置に腰掛けて
それからクレイグに渡したと同じ紙を取り出した。
滅多に使わぬペンを取り出してしたためはじめる。
特殊な品の仕入れ先。
保管方法に注意点。
得意先に渡す品の置き場所。
店に並ぶ品が誰の作品であるかまで
思いつくままペンを走らせた。]
ないより、マシ、だよな。
こんなことならもっと字の練習しとけばよかった。
[道具屋としてメモをまとめカウンターの隅に置く。]
― 洞窟奥地 ―
[気を付けて、と言ったノクロ>>54に手を振って。
彼らと別れ、洞窟都市を奥へ奥へと進んでいく。
進むにつれ足元の凹凸は増えていき、平坦な道はなくなっていく。
左右には、手や道具を使わなければとても登れないような急斜面も見受けられた]
[居住区から離れたこの辺りは、危険なため近付かないようにと、子供の頃から厳しく言われていた。
大人になってからも、採集を生業とする者以外は、そうそう近付くことのない場所だろう]
ノクロは、よくこういう所登れますよね……。
[崖の上方を見詰め、独り言ちる。
写本に載っていたのと同じ香草が、視線の先に群生していた。
足の掛かる場所はあるから道具を使わずとも登れないことはないだろうが、日頃そう体を動かさない身で出来るものだろうか]
……やるしか、ないでしょうね。
[時間は限られているし、香草茶のレシピに妥協はしたくなかった。
自分に遺せるものがあるとしたら、それくらいしかないのだし、それに]
今度こそ、……約束、果たさないと。
[言って、決意したように最初の手掛かりへ手を伸ばす。
その約束を交わした相手が、もう消えてしまったことは知らぬまま]
[ミレイユが憑かれているのでは、という話は先に聞いていた。
だから、刈られた自分たちを見て、表情を翳らせてほしくはなかった。
姉の言葉を受けて、滴零す様子に、ふ、と息を吐いて視線を逸らし]
…………。
[同時、思うのは、消える直前に言葉交わしたコレットのこと。
どこかいつもと違って見えた様子。
待宵草を見た後に向けられた言葉。
上手く聞き取れなかったのは、内容への無意識の拒絶だったのかも知れない、とは今だから思うことで。
そこから繋がるものも、幾つかある、けれど。
今は、それは思考から追い出した]
[そんな悪戯な笑みの、奥]
でもね。
ちょっとだけ妬けちゃったのは、本当なのよ。
だって、私じゃクレくんは泣かせてあげられなかったもの。
[口には出せない本音は、心の中のみの呟きに落とした]
[きょろりと見回しながら思いつくままに歩んでいた足がぴたりと止まる]
[声が聞こえた。
確かにこの家に住まう、けれども弱々しくも聞こえる声]
…コレット?
[そろり、キッチンを覗き込めば壁際に座り込む姿が見えて]
っ、!
おい、大丈夫かよ!!
[思わず放り出す腕の荷物。
すぐ傍まで駆け寄れば、膝をつき身体を支えようと
包帯を巻いた右腕を背の方へと差し伸べて]
つっ……
[中盤まで登った辺りで、指先が痛み顔を顰める。
慣れぬ事をしたから、皮が破けてしまったのかもしれない。
しかし、もう飛び降りるにも高過ぎる位置だったから、登り続けるしかないと。
少しずつ、手を伸ばし、足を持ち上げて]
……届い、た。
― コレット宅 ―
[ノクロの問いに、ミケルもまたこてりと首を傾げた。
どこだかはわかっていなかった。
ら、声が聞こえて、こっちかな、って、ノクロを見てから、キッチンへと足を進める。一応、答えだけ先に。]
ミケルだよ。
[そしてキッチンで座り込んでしまっているのを見て、ノクロが駆け寄るのにおくれて、ミケルもまたかけよって、しゃがんだ。視線を合わせるように。]
う、……く……っ、
[頭を撫でられ、背を撫でられ。
極力声は抑えたが、それでも幾らかは零れ落ちた。
滲みきった視界で見渡せば、いつの間にか生者の姿は殆どなくなっていた]
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