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ゼルギウスさん…。
[もうすぐ、多分、彼は死ぬ。]
[わたしは期待して、悲しんで、絶望して、悦んで。頭の中がぐちゃぐちゃだ。]
!
[ウェンデルに掛けた声。
意識は当然僅かであれそちらに向いていたから。
銀は交差し。けれど僅か軌道に間に合わず。
手首を切り裂かれる。持っていた刃を取り落とす]
く…っ。
[傷口の痛みより先に、痺れが走り出す。
それが全身へと広がってゆくのを止める術はなく。
ガクリと膝を突いた。けれど倒れはしない。
襲い来るものに抵抗しようと、唇を強く噛み切った]
傭兵 マテウスは、神学生 ウェンデル を能力(襲う)の対象に選びました。
[震える赤、瞬く青。
声はない、けれど、泣いているようにも見える様子]
…………。
[言葉はなく。
けれど。
赤を撫でる指は、そう、と宥めるように]
傭兵 マテウスが「時間を進める」を選択しました。
[短剣を払われ上体が開く]
[続くマテウスの動きにはついて行けるはずもなく]
[振り抜かれた爪はいとも容易くゼルギウスの胸を貫いた]
…が……は…っ……。
ぁ……は………お、まえ……が……。
は、はは……あはははははははは!!
う、らぎり、もの…には……に、あいの……まつ、ろ…か…。
く、はは、ははははは!
[止め処なく胸から紅き雫が零れ落ちている]
[そんな状態でありながら、ゼルギウスは愉しげに笑い声をあげた]
[自分が欲しかったものはとうの昔に失っていたことを理解しながら]
[ゼルギウスは全てを失い闇へと意識を落として行く]
[彼の月は欠けたまま、満ちることは*出来なかった*]
……ここに来て、自ら、明かす、か。
[煌めく爪。
自らをぬけがらと切り離したであろうもの。
現世を見つめる暗き翠は、ただ、静か]
……ぁ――
[金属のぶつかり合うに似た音。
視線を転じる。
その先には、爪があった]
人狼、…………化け物……っ
[幾ら冷静であったとして。
幾ら、死の恐怖の中にあったとして。
花に縛られる限り、ウェンデルが人狼を見逃す事は出来なかった。
――花から逃れる手段が、ない限り。]
[置かれたスープ皿に手を伸ばして、投げつける]
[ほとばしる血しぶきを一滴、わたしは指先で掬いとる。]
おやすみ、ゼルギウスさん。
[ちゅ、と音を立てて、その指を舐めた。]
[貫かれるゼルギウス。
言の葉を紡ぐまでもなく、そこに揺らぎ視える、白]
……お前も、大概……。
[続きは、今は、口にはしない]
[爪を引き抜きながら]
いや、ゼルギウス。
前にお前にかけたことばは嘘じゃなかったぜ。
[腕を振るい血を振りほどき、
ウェンデルのほうをみて]
そうだ、ひとついいことウェンデルに教えてやる。
15歳の少女でもいえたことだ。
[ウェンデルに駆け寄る]
殺してるんだから、殺されもするのさ。
[爪を振り上げる]
大丈夫。
[ゲルダのか細い声に、一言だけ。
必死に上げた視線の先、マテウスがゼルギウスに振るったのは]
……させる、か。
[ゼルギウスが貫かれる。
ただ、その後に待ち受けていることだけは]
させる、かよ……!
[まだ僅かに感覚の残っていた左手で刃を探り。掴む]
ゼルギウスは、信と裏切りに重りを置いた人生を送ったようだな。
[感想はそんな短いもの。
それを否定も肯定もせず。]
[投げられたナイフに翠玉の眼差しが、刹那囚われる。
その間隙を突くように、自らよりもよほど早くゼルギウスの身体を紅に染めたのは、]
…マテウス兄さん……。
[翠玉に雑多な感情が揺れた]
投票を委任します。
神学生 ウェンデルは、傭兵 マテウス に投票を委任しました。
[振り上げられる爪は、避けられない]
――ゃ、……だ!
[裂かれる痛み。
朱い花より、紅い華。
身体から力が抜ける]
や――だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……ッ!!
[誰の名を呼ぶこともなく。
ただ、死の恐怖の中に、堕ちた]
[闇に意識を没する最中]
[最期の言葉が耳に届いた]
──俺だって、お前に向けた言葉は嘘じゃ無かったさ──
[想いは言葉にはならず]
[相手に届くことなく闇へと溶けて行った]
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